28.悪役令嬢と歓迎パーティー②
このパーティーで悪役令嬢が、自分の気になる男性が気にかけ始めているヒロインに対し、初めて行動を仕掛けるのだ。
ノアの場合、お兄様であるリュートと婚約者であるグレン。もう1人の悪役令嬢カルアラの場合、教師であるカルク先生と騎士団長の息子であるマティス。
この前、私がバレンタ先輩を脅したから、例えマティスやカルク先生に気持ちが向いているヒロインでも、虐めたりはしないだろうから、この役は私しか務まらない。
すれ違いざまに、ヒロインの足を引っ掛け、こかせる。慣れないヒールを履くヒロインは、足を挫いて立てなくなってしまい、周りのご子息ご令嬢にコソコソ笑われる。その場面で、現段階でヒロインへの好感度が最も高い攻略者が颯爽と現れ、ヒロインをお姫様抱っこをして、立ち去るのだった。
ちなみに、好感度が同じくらいの場合、定番なのがグレンである。
『綺麗な夕日ですわね。でも残念です。せっかくのパーティーなのに、こんな状態で。』
『なら、このまま一緒に踊りませんか?』
と、攻略対象者によって少し流れは違うが、踊り場で、夕日を背景にお姫様抱っこをしたままクルクル回る。
そう!なんと素晴らしい場面!!
この機会に、さらに攻略者はヒロインに心を奪われ好感度が一気に高まるのだ。
「確か、会場となっている大広間をすぐ出てのところだったわよね。」
場所まではあんまり詳しく覚えてないけど、行けば分かるか。
と大広間をでて、外で待つ。
「ここで何してるのだ?」
「クロノワール様。クロノワール様こそなにを?」
「少し忘れ物を寮まで取りにいっていたのだ。これから大広間に戻る。」
「そうなのですね。バレンタ先輩がいないと心配されてましたよ。」
「あぁ、報告ありがとう。」
「仲良くなれたようで良かったです。」
「あぁ、バレンタ先輩は、俺の話しを楽しそうにきいてくれるからな。」
「それなら良かったですわ。さぁ、早くお戻りになって。」
「あぁ、そうするよ。ノア嬢はグレン様と踊らないのか。」
「早く戻ったほうがいいといったのですよ私は。さっさと戻られたほうがよろしいのでは?」
これだから空気読めないと言われるのだ。この男は。よくバレンタ先輩はこんなのに付き合ってられるよね。
「でもグレン様もノア嬢のこと探しているかもしれない。一緒に戻ろう!」
「グレン様は今お忙しそうなので。落ち着いてから声をおかけするつもりです。」
「ん?そうなのか。それは大変だ!俺もグレン様のお手伝いをしなければ!!では、先に戻らせてもらう。」
本当に寮に戻っていて知らないみたいだ。なんで王子が忙しいか分かってない。
なら敢えてこんなバカに言う必要もないだろう。
とりあえず邪魔者はようやくいなくなった。それにしてもヒロインはいつ現れるのだろうか。やっぱり場所が違うのかもしれない。
「少し移動しましょうかしら。」
その時、後ろからズバーと大きく音がすぐ後ろできこえた。下を見ると、すぐ隣にピンクのドレスを着た人が倒れている。
「貴方、大丈夫かしら。」
声をかけて気づいたが、そのご令嬢はピンク色のドレスだけでなく、薄ピンクの髪だった。
(ヒロイン!)
「痛っ!」
「あぁ、足を挫いてしまったのね。」
「貴方が、転ばせたくせに。」
(ん?少し違うようだけど、なんだかこの展開…)
「ここにいたのですね、ノア。マティスから聞いて…大丈夫ですか?カティー嬢。」
「グレン様、その、コケてしまって…あは、はは。」
辛そうに笑いを見せるヒロイン。これは、どうみても故意にやられたという風に見せている、気がする。そして、今1番近くにいるのは私。
「大丈夫ですか?先程なにか大きな音がしたと思ったんですが、貴方だったのですね。立てますか?」
王子はヒロインに手を差し伸べる。でもヒロインは立てそうにはない。
「足を挫いてしまったのですね。少々失礼します。」
「きゃぁっ。」
王子はヒロインを華麗に抱き上げる。
「保健室に連れていってきますね、ノア。戻ったら一緒に踊ってくれますか?」
「えぇ、よろしくお願いしますね。王子。」
そのまま立ち去る2人はまさしく、ゲーム通りで、美しい光景だった。
「これで今日の私の役目は終わりね。」
なんだかやけに疲れを感じ、1回トルカのとこに戻ったあとすぐ自室に戻ることにした。もちろん、王子と躍ることはない。




