27.悪役令嬢と歓迎パーティー①
入学式を終えてから2ヶ月半後、ようやく学園生活に慣れてきた新入生のために、歓迎パーティーが開かれる。
クラブ、クラス以外関わりのない人と知り合うためのパーティーであり、もちろん全校参加だ。関係を築きやすくするため、一応は無礼講となっている。それもあり、王子の周りには同級生先輩関係なくご令嬢が集まっている。
「ノア。」
「お兄様!周りのご令嬢は宜しかったのかしら?」
少し前、同じく兄はご令嬢に取り囲まれていた。それはそうだろう。顔は整っているし、将来有望な侯爵家の跡継ぎ。なにより醸し出す魔性のオーラが周りを虜にしていくのだ。それなのに、婚約者がいない。こんな優良物件、狙わないほうがおかしい。
「あぁ、せっかくのパーティーだもの。ノアの傍にいたいからね。」
「あ、りがとうございます。」
私の前ではそんなことないけど、お兄様は滅多に笑わない。だから、周りは黄色い声を上げる。私も、その笑顔にドキドキして顔が赤くなる。
「トルカ嬢。いつも妹がお世話になっているね。これからもよろしくお願いするよ。」
「あ、い、え、私の方がノア様には助けられてばかりで。」
私の隣にいたトルカは、お兄様が来た時に、隠れるように私の背後で小さくなった。今も私の後ろから半分体をだして挨拶するだけだ。もしこれが別のご令嬢の場合、この機会を逃さずお兄様に関わっていくんだけど…
「ねぇ、ノア、久しぶりに1曲踊ろうよ。」
「そうですわね。いいかしら、トルカ。」
「も、もちろんです!私もノア様とパンドュース先輩の華麗なダンス見たいです!!」
「では、少しノアを借りますね。では、お嬢さん、お手をどうぞ。」
お兄様の手をとり、流れている曲に合わせダンスを始める。
「本当に入学おめでとう、ノア。ノアとまた、気軽に会えて嬉しいよ。」
「お兄様、2週間に1回帰ってきてたじゃないですか。」
「それでも毎日会えてた頃に比べると、やっぱり寂しいんだよ。兄として情けないかもしれないけど。」
「そ、んなことありませんわ。私もお兄様に会える回数が減ったこと寂しく思っていましたもの。」
小さい頃に言った言葉、『私には何でも話して欲しいのです。』この言葉を言った後から、お兄様は少しづつだけど、自分の思いを私には伝えてくれるようになった。誰々にこう言われて、少し悲しかったとか。
そのおかげもあり、今ではハッキリ伝えてくれるようになった。いい事なんだけど、私に対する今のような思いの発言も増え、ハッキリいうと私の心が持たない。妹相手にこんなにドキドキさせるなら、ご令嬢なら1発でノックアウトだ。なのに、婚約者を未だに作らないなんて勿体なさすぎる。それじゃ、どんどん良いご令嬢がいなくなってしまうのではないかと心配した。なので、何度も私から婚約者を見つけたほうがいいと言ったけど、その度に『ノアは僕が傍にいたら嫌かな?』と言ってくる。そんなこと言われたらもう、何も言えなくなってしまうではないか。
こんな優しいお兄様が、リュートルートに入ると、いずれ私を追い出すとは想像もつかない。
「殿下は優しいかい?」
「えぇ。」
「なにか殿下のことで嫌な思いはしてない?」
「なにも。」
「そう、ならいいんだ。殿下は人気者だからね。僕としてもノアが傷ついていないか心配なんだ。」
「私はなにも問題ありません。」
「僕は何があってもノアの味方だから。だから、1人で抱え込まないでね。」
「お兄様。」
ちょうど曲が終わってしまった。
「やっぱりノアはダンスも上手だね。楽しかったよ。じゃあまた。」
「はい、また。」
平静を保つよう努力したけど、周りのご令嬢のようにキャーーー!と黄色い声を上げたいのを我慢していた。よく頑張った私!と褒めてあげたい。
「ノア様!素敵なダンスでしたよ!!もう見とれちゃいました。」
「お兄様のエスコートが上手だからよ。さすがお兄様だわ。」
「パンドュース先輩も素敵でしたけれど、ノア様も負けていません!」
「ありがとう、トルカ。私、少し風にあたってこようと思うの。」
「なら私も!」
「すぐ戻るから。」
「分かりました!」
トルカを一緒には連れていけない。悪役令嬢なのは私だから、私だけでいいのだ。私さえいれば取り巻きなんか必要ない。
「まずはヒロインを見つけないと。」
イベントを成功するために。




