24.悪役令嬢、風邪を引く
調査を初めて1週間。1つ気づいたことがある。王子はヒロインに気があるということ。
なんでと理由を聞かれると、困るんだけどなんか雰囲気がそうなのだ。ヒロインをみる目が優しい。気がする。
「ノア様、放っておいていいのですか!」
「なにか問題あるのかしら?ここは食堂よ。仲良く昼食をとっているだけだわ。それにクロノワール様もご一緒ですし。」
「ですが…あのご令嬢、タリスミア様のことを軽々しくお名前で呼んだりと。非常識ですわ!」
「王子がそれでいいのならいいのでないかしら。大丈夫よ、このまま私がなにもしない訳がないでしょう。だから、貴方は今は動かないで頂戴。」
「ノア様がそう仰るのなら。」
※※※
「第1王子を暗殺する許可をください。」
「あのね、ユラン。そんな許可を出す訳ないでしょう。大体貴方執事でしょ、暗殺なんて。」
「ノア様の婚約者であるにも関わらず他のご令嬢に現を抜かすなんて有り得ません!」
「いや、現を抜かしていると決まった訳じゃ。」
「でもノア様はそう思いなのですよね?」
「まぁ、なくはないかなと。」
「大体ノア様にそう思わせることがいけないのです!
俺は、ノア様のためなら何だってします。もちろん証拠も残しませんのでバレることはございません。」
おかしい、執事として育ててきたはずなのに。いつの間にか、優秀な執事は暗殺まで出来るようになっていたなんて。
いや、どう考えてもおかしいでしょ!なにこれ、ゲーム補正ってやつ!?いつ、ユランが暗殺計画を実行してもおかしくない状況だ。。そうなったらもちろんユランの主人である私は、何と弁解しても死亡ルートに突入するに違いない。
「そういう問題じゃないのよ、ユラン。はぁー、ココリア、このおバカ、なんとか教育し直してあげて。」
なんでユランとマルベス様で、こんなに違うのだろうか。マルベス様は傍にいてくれるだけで安心するのに、ユランは何をやらかすか分からないからドッキドキである。1回マルベス様の爪の垢を煎じて、飲ませてあげたいくらい。
「私には不可能です。」
「諦めるの早すぎでしょ。いい?ユラン、なにも絶対なにもしないでよ!」
「…」
「返事は?」
「かしこまりました。」
「そんなあからさまに嫌な顔をしないのよ。なんだか少し疲れたわ。ココリア、寝る支度をお願い。」
「かしこまりました。」
今日はやけに疲れた気がする。いつもと同じように過ごしているのに。
「熱がありますね。今日は学園はお休みした方がよろしいかと。」
「道理で体がダルいはずだわ。」
どうやら風邪を引いたようだ。まぁ、慣れない環境が今になって疲れが出たのかもしれない。お医者様も呼んでもらったが、寝たら治ると言われたので安静第1だ。
「少しでも食べられそうですか?」
「今は、要らない。」
「ですがお薬を飲まないといけません。プリンはどうでしょうか。」
「プリン、食べる。」
「わかりました、少々お待ちください。それまではゆっくりお休みになってくださいね。」
「う、ん。」
そう言ってココリアは退室して、広い寝室には私1人。
こういうとき誰か傍にいると、気持ち的にも楽だなー。28歳の私は1人暮らしで、恋人も友達もいないから心配して家にくるってことはなかった。体を動かすのもダルいからとりあえず薬と水だけ飲んで、あとはずっと寝る。多少の空腹は寝ればおさまるから、食べなくても…
『ちょ、まぢで死んでんじゃん。大丈夫!!』
『いいー?風邪はね、栄養も取らないと治んないだよ。ほら、プリン買ってきてたから。』
『プリンってそんな栄養とれないじゃん。』
『食べやすいほうがいいっしょ。屁理屈言うなし。』
あれ、この声どこかで聞いたことがあるような。そうだ、彼女は私の…
「じょ、、ま。お、、、さま。お嬢様。」
「ん、ん。」
「プリンをお持ちしました。先に食べてお薬を飲みましょう。」
「んー。食べさしてくれる?」
「あーん。」
「お、いしい。」
「それはよかったです。ユランがお嬢様のために作ってましたから。喜びますよ。」
「本当、なんでも出来るのね。あの子は。1つくらい欠点というものがないのかしら。」
元々暗殺者という設定だから、何にでもなれるように器用なんだろうけど、逆に欠点が知りたくなる。
「さぁ、今はそんなこと考えずに食べてください。」
「ふふ、懐かしいわね。」
「何がですか。」
「私が初めて風邪を引いた時も、貴方がずっと傍で面倒みてくれたわよね。」
7歳に記憶を取り戻して、初めて引く風邪。その時も今と同じようなやり取りを繰り返した。私がプリンが食べたいって言ったから、シェフと病人が食べやすいプリンについて相談して、どうでもいいことばっか喋る私に、早く食べて早く寝ろと促した。
「私が、初めてお嬢様の風邪の時のお世話したのはお嬢様が7歳頃のお話なので、初めてではないと思いますが。」
「細かいことはいいのよ。本当にありがとうね、ココリア。ここまでついてきてくれてありがとう。」
「…食べ終わったらゆっくり眠ってください。」
「ユランに、美味しかったって。」
「お伝えしておきます。お休みなさい、お嬢様。」
※※※
「ユラン、お嬢様がプリン美味しかったって。」
「本当ですか!喜んでいただけたのならそれは嬉しいですね。」
本当にお嬢様は変わられた。昔は美味しかったなんていうことはなかったし、ましてやありがとうなんて。
「変わって欲しく、ありませんでしたよ。お嬢様。」




