22.悪役令嬢、チャンスを逃しません
学園に入学してはや1ヶ月。学園での過ごし方や、規模の広い学園内の行き来にもだいぶ慣れてきた。
「なんだか様子が変ね。」
歩いていると、他の令嬢がこちらをみて、小声でヒソヒソ喋っている。婚約者である王子を取り巻く令嬢を蹴散らしたりしていたので、評判は悪いと思っていたが、それでもこんなヒソヒソ遠巻きにされるのは初めてだ。
「あの…ノア様。」
「何かしら。」
「黙っていた方が良いかなと思ったんですが。」
「ん?」
「やっぱり、ここではなんなので放課後、どこか静かなところで話しましょう。お時間空いていますか?」
「えぇ。分かったわ。」
トルカの心配そうな顔つき。これは只事ではないということを感じた。
しかし、この周りの態度には嫌になる。こういう扱いは苦手なのだ。嫌な思い出しかない。
「ノア様?顔色が。」
「なにもないわ、ごめんね、考え事をしていただけなの。」
「そ、うですか。」
せっかく生まれ変わったのだ。楽しい記憶だけを心に秘めて、 嫌な気持ちは忘れられたらいいのに。
※※※
「ノア、今日もし。」
「ごめんなさい、王子。今日はトルカとお約束があるのです。」
「ノ、ノア様!今日でなくても。」
「いやいいんですよ、トルカ嬢。先方の約束が先ですから。」
「でででですが…」
「こちらこそ気を使わせて申し訳ないことをしました。では、明日はどうですか?」
「特に予定はありませんわ。」
「では明日は空けといて下さいね。」
「分かりましたわ。申し訳ございませんでした王子。私の勝手な都合で。」
「約束を守る所がノアの魅力ですし。」
「ありがとうございます。」
「ではまた明日。」
「えぇ、また明日。」
※※※
王子と教室で分かれたあと、屋上庭園に向かった。風が気持ちよく、花のいい香りがして、学園内最高の場所トップ3に入る。幸いなことに誰も居なかった。
「す、すいません、折角のタリスミア様のお誘いを私なんかのことで。」
「私はトルカの事も大事に思っているの。」
「ノア様!嬉しいです!」
「ところでお昼頃に言っていたお話って。」
「あ、の、その。」
「そんなに言いにくいこと?」
「最近、ある噂が流れているのです。」
「噂…それは私のことかしら。」
「いえ、タリスミア様のことで。」
「王子の?」
「はい、タリスミア様がノア様以外のご令嬢に恋慕を抱いていると。」
一瞬全ての動きが止まった私を、トルカは傷ついていると勘違いしたらしい。
「やっぱり傷つきますよね。なので言わないようにしようとおも」
「本当に!?」
「あくまで噂で」
「そうとなれば早速噂の真偽を確かめなければ。」
「ノア様?」
「ちなみにお相手について、なにか噂は流れているのかしら。」
「お、同じクラブのご令嬢ということしか。」
この張り切り様に、トルカはついてこれないようだったが仕方ない。
これで、婚約破棄が出来るかもしれないのだ。
一時期、王子の行動に驚きと恥ずかしさから挙動不審になったが、元々グレン様のことは、好きだったのだから仕方ないと思うことにした。婚約破棄されるまではグレン様を堪能すればいい。破棄されれば、ゲームにない新しい人生を歩んでいく。やってみたいことは色々ある。
そう決めたのだ。
「同じクラブのご令嬢ね。ありがとう、トルカ。」
今はそのご令嬢が気になるが、どうしたものか。自慢ではないが、あまり人付き合いはいい方ではない。同じクラスのご令嬢だって、ようやく私にも話しかけてくれるようになったのだ。
第1、女性の割合が元々少ない。まぁこの時代、頭のいい女性なんて、余程跡継ぎである婚約者がおバカか、結婚をせず働きたいかのどちらかしかいない。だからこそ、特別クラスの令嬢は、私とトルカを含めて5人しかいないのだ。これでも昨年よりは多いらしい。
「うーんやっぱり潜入が1番なんだけど、王子にバレたらどんな感じかみれないかもだし。そうだ!いい人材がいたわ。」
「私も出来るだけ情報集めてきます!」
「ありがとう、トルカ。信頼してるわ。」
「はい!!」
折角のチャンス逃すわけにはいかないわよ。




