21.ユランと寝不足お嬢様
主人であるノア様と知り合って、もう5年になる。
ノア様は、俺の命の恩人だ。ノア様とあの日偶然出会わなかったら、今も奴隷として働かされていたに違いない。だからこそ、少しでもノア様の役に立ちたいのだ。しかし、どうしようも出来ないこともある。
「ノア様、どうかされましたか?この前から寝不足のようですが。」
そう、この前夕食後に第1王子であるグレン様のお部屋を訪ねたあとから様子がおかしい。かれこれ3日、あまり眠れていないのか目の下にクマができている。学園に行く際は、化粧で誤魔化してはいるものの、よく見たら気づくし、眠たそうにしているのでトルカ様あたりは心配しているに違いない。
「ねえ、ユラン、ユラン=スピア。私は一体どんな人物?」
「いきなりどうしました。」
「いいから答えなさい、ユラン=スピア。」
「ノア様は素敵な方です。」
「そういうのじゃなくて、もっとなんていうか…そう王子と関わっている時の私はどんな感じ?」
「うーん、自信家でいつも余裕がある素振りをみせ、グレン様を振り回すような。たまに、グレン様からの逆襲があると、グレン様の思い通りに行動しているだろうなと思うほど真っ直ぐな人と感じています。」
「え、もしかしてバカにされてる?」
「まさか!そんなことあるわけが。」
「まぁ、まぁいいわ。そう私はいつでも相手を振り回す側なの。だから今回のことだって、動揺はしたものの犬に噛まれた程度だと思えば。」
「犬に噛まれたのですか!」
「うん、ちょっと黙ってなさい。そうよ、それほど気にすることなんてないのよ。はぁー、なんかスッキリしたわ。ありがとう。ユラン。」
「なにもしていませんが、お役に立てたのなら良かったです。ホットミルクをご用意いたしましょうか。」
「そうね、お願いするわ。」
最近、いきなり両手を顔の前で振ったり、ため息つく回数が多かったりと、挙動不審な態度が見られたが、確かにスッキリした表情をしているし、もう大丈夫だろう。
思った通り翌日には、いつものノア様に戻っていた。




