20.悪役令嬢とクラブ活動
この学園には、前世で通っていた学校と同じように、クラブと言うものがある。共通の趣味をもつ者が集まり、仲を深めるというものである。
もともとこの学園は、知識を身につけることを大前提にはしていない。勉強に必要なことは、家庭教師に聞けばいいのだから。よって、貴族の通う学校はコミュニティを形成することに重点を置いている。
ご令嬢の場合、より良い結婚相手を見つけるために通う人が圧倒的である。
「ノア様はなんのクラブに入られるご予定ですか?」
「そうね。やっぱり剣術クラブかしら。」
「ノア様の腕前はさすがですものね。ノア様と一緒のをと思っていたのですが、出来そうにありませんわね。」
「トルカは良いなと思ったクラブはあるのかしら。」
「1番はノア様と同じクラブにすることなんですが。」
「それ以外では?」
「うーん、本を読むことは好きなので?乙女の読書クラブには興味を惹かれましたわ。」
「乙女の読書クラブ?」
「はい、恋愛小説を読み、皆で感想を言い合うクラブですわ。」
「へぇー。なら私もそのクラブに加入しましょうかしら。掛け持ちがダメっていう規則はないから問題ないと思うけど。」
「はい!ノア様さえ良ければ一緒に入りたいです!」
「ノアは剣術クラブと乙女の読書クラブに加入するのですね。」
「お、王子。」
いつの間にか王子が後ろにいた。
「聞き耳ですか?王子とあろう者が。」
「たまたまですよ。僕もノアと同じクラブに入りたいとは思っていたのですが。乙女の読書クラブははいれませんしね。」
「剣術はいかがですか?王子も剣術を嗜んでいますよね?」
「そうなんですが、剣術だと絶対あいつが…」
「あいつとは?」
「いえ、こっちの話です。残念ながら一緒のクラブにはいることは難しいかもしれませんね。」
「それは残念ですわ。王子と少しでも一緒にいたかったんですが。」
「本当にそう思ってくれているなら嬉しいですね。では、」
「今日の夕食後、僕の部屋に来てください。まっていますよ。」
隣にいるトルカにも聞こえないように、私の耳元で囁いた。
「トルカ嬢、お邪魔して申し訳ありませんでした。」
「い、いいいえ。」
「ではこれで。」
「び、びっくりしました。ノア様、ノア様?」
「い、、えなにも、ありませんわ。」
さ、さすがグレン様。ゲームでさえ画面越しにキュンキュンしてたのに。現実で、しかも耳元で囁かれなんかしたら堪らない。
『今は小さいから余計気になるんでしょ。大きくなったら気にならないんじゃない?』
いつかマリちゃんが言っていたことが、現実になってしまいそうだ。
※※※
トントン
「グレン様、ノア様がお越しになられました。」
「どうぞ。」
「失礼致します。」
「わざわざ来てくれてありがとう。」
「いえ、ですが夜も更けていく時間ですので、あまり女性を呼び出すのはどうかと。」
「婚約者以外呼び出すことはありませんよ。」
「そうですか。」
「ヤキモチですか?」
「いえ、王子として振る舞いには気をつけていただきたいだけです。ところで今日呼び出した理由をお聞かせ願えますか?…何を笑ってるんですか。」
「いえ、別に。入学してから、ノアとの時間があまり取れなかったですから、静かなところでゆっくり話したいなと思いまして。」
「そういうことですか。」
「今日は月も綺麗ですしね。」
窓の外をみると、綺麗な満月が既に現れていた。
さすが王子の部屋。いい場所の部屋である。部屋も3部屋あり、ゴージャスである。
「綺麗な満月ですね。」
「ゲームをしませんか?」
「ゲームですか?」
「最近やってなかったですし。貴方の好きなものでいいですよ。」
「いいですね。では…」
といつものようにチェスを始めた。
「週末マリベナに会いにいったそうですね。」
「えぇ、よくご存知で。」
「まぁね。それにしても本当にマリベナとは仲がいいですね。」
「大事な友人ですもの。」
「マルベスの孫ということも含めていますか?」
「最初はそれもありましたけど、今はマリベナさん本人に魅力を感じています。それに、マリベナさんのお宅にいくとマルベス様に会えますしね。」
「マルベスは元気そうでしたか?」
「えぇ。会いにいったらどうですか?」
「そうですね、近々手土産をもって会いにいこうかな。チェックメイト。」
「あら、あら。負けてしまいましたね。」
「着々勝率も上がってきているみたい。」
「みたいですね。今日のお願いはなんですか?またグレン様とお呼び致しましょうか?」
「それも魅力ですが」
頬に王子の唇が当たる。
「今日はこれで満足しましょう。」
「………」
「ノア?」
「き、今日はこれで、失礼します!!」
「あっ!ノア!!ふぅー、やりすぎましたかね。」
※※※
「おかえりなさいませ、ノア様。どうかされましたか?そんなにお急ぎで。」
「ユラン、、、私」
「ノア様?」
「今日はもう寝ます、おやすみ!!」
「お、やすみなさいませ。」
※※※
(あのバカ王子ーー!いきなり何を…)
枕を両手で軽く殴る。
「バカ、こんなの絶対ゲームに…いやその場面がなかっただけ?うーん分からない。」
ユランの未来が変わったように、もしかして悪役令嬢ノアの未来もは変わりつつあるのだろうか。
結局その日はうまく寝れなくて、翌日トルカに心配されるのであった。




