19.悪役令嬢、初めての休日
「え!?ヒロインいなかったの?」
「そうなのよ!驚きでしょ。1週間経つんだけどピンク色の髪なんて、どこのクラスにもいなさそうで。
まぁ悪役令嬢らしく王子に群がるご令嬢は、蹴散らしてるけど。これで少しずつ王子に、嫌悪感を持たせていくつもりよ。」
ここは、マルベスの息子夫婦と孫マリベナが住んでいる家である。今日はこちらにお邪魔させてもらった。勿論町娘の格好だ。マリベナの母は快く歓迎してくれるし、この格好で街をマリベナとうろつくこともあり、ここら辺の人は私のことを覚えてくれている。
これなら、平民落ちしても馴染めないことはなさそうだ。
「ヒロインがいないと婚約破棄の展開に持っていけない可能性のほうが高いと思うんだけど。まぁ王子がヒロイン以外の女の子に、惚れることがあればいけるか。」
「そうよ、ヒロインがいなくても、他の子を好きになればいい話だし。そうなったらとことんイジメて…私イジメって好きじゃないんだよね。」
「まぁイジメ好きなやつは性格的にどうかなとおもうけどね。」
「確かに。」
「そういえばさ、断罪された後はどうするつもりなの?」
「とりあえず平民落ちなら、肉屋のご主人が、頼ってこいっていってくれたの。マリちゃんのお陰だわ。肉屋のご主人に、言ってくれたんでしょう?」
「まぁ、こんなことしが出来ないけど。」
「十分だよ、本当にありがとう。で、もし、国外追放になったら剣術を活かして護衛とかいいよね。とりあえず当てはあるからなんとかなると思う。」
「伊達に8年無駄にしてた訳じゃないんだね。」
「当たり前でしょ!人生かかってるんだから。そういえば、マリちゃんは今何してるの?」
「うん?」
「お仕事。」
「あぁ、服をつくってる。」
「へぇ!凄いじゃん!!」
「まぁ、昔から裁縫とかは好きだったからね。」
「へぇー。今度仕立てをお願いしてもいいかしら?」
「でもお貴族様に出すような技術はまだないんだけどね。」
「じゃあ町娘用の服を2着お願いするわ。急ぎではないから。」
「わかった、なおちゃんにピッタリの作るから楽しみにしといて」
トントン
「ノア様、お迎えに上がりました。入室してもよろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
お迎えが来たみたいなので今日はこれでおしまいだ。戦争のことについて、もう少し知りたかったが仕方ない。
「失礼します。本日はノア様がお邪魔いたしました。ありがとうございます、マリベナ様。」
「ユラン様、平民にそんな仰々しい態度はやめてください。私こそノア様と話をさせていただいて楽しかったですし。ノア様、ではまた今度お話しましょう。」
「えぇ、ありがとう、マリベナさん。では。」
少し離れたところに止めてある馬車までの道のりをユランと歩く。
「ありがとうね、ユラン。」
「全くです、旦那様に内緒だなんてバレたらどうするおつもりですか。この前叱られたばかりでしょう。」
そう、入学式を間近に控えたついこないだのこと。今日と同じようにマリベナとお買い物にいっていた時のこと。勿論護衛としてユランが少し離れたところにいたのだが。近くで物盗りがあり、逃げ出した犯人により、後ろから掴まえられ人質にされた。首筋にナイフが当てられる。ユランの華麗で正確なナイフ投げにより犯人は、難なく捕まえることができたが、ナイフがかすっていたのか、首筋からは少量の血が。それを知ったお父様とわざわざ学園から駆けつけたお兄様により、マリベナの家にいくのはいいが街を歩くのはやめなさいと言われたのだった。それが嫌なら、護衛を2、3人囲むようにつけると。
「だって街を見て歩きたいんだもの。護衛なんかいたら邪魔くさいし平民に紛れられないでしょ?それにユランなら、私に怪我をさせる前に守ってくれるでしょ?」
「信頼してくれるのはありがたいですが、現にこの前怪我を。」
「あんなの怪我のうちに入らないわよ。あーあ、お父様がいいって仰れば体術も身につけたいんだけどな。」
「剣術だけで十分でしょ。何を目指しているのですか。」
「だってー、この前みたいに力つよく掴まえられたらどうしようも出来ないでしょ。だから…」
「ノア様に危害をくわせる前に命をかえても俺が守りますから。だから安心してください。」
イケメンに言われたい言葉ベスト3に入ってるぞ、これ。もう本当に皆して私をドキドキさせてやめてほしい。心臓が持たない。
「さぁ学園に帰りましょうノア様。」
「そうね。」
こうして学園入学後、初めて迎える休日が終わろうとしていた。




