第7話:遺産とロトで15億円ゲット。秘密基地買って転校します
玲那が死んだ後は色々とあった。終末期患者が医療機器を外して死んだのだから、安楽死を疑われても仕方がない状況だろう。
警察の聴取もあったが、俺は「玲那は安楽死なんかじゃない、最後まで懸命に生きたんだ」と言った。主治医の「機器を外したことで死期が早まったとはいえないほどの病状だった」という証言もあって、俺は玲那の亡骸と共に無事に病院を後にした。
2日後、マンションに作られた祭壇に、玲那の骨箱を置く。
「玲那、玲央、帰ってきたぞ」
遺影の隣に、探してきた玲央の写真も置いて手を合わせる。
「玲那が言ってくれたように、本条玲央にも松井善造にも囚われないで、新しく生まれたと思って青春楽しんでみるな」
俺は新生活に向けて、相続などの手続きを進めていく。
玲那は、旦那が事故で亡くなった時の損害賠償を残してあったし、保険金などもあり、二億近い遺産になって驚いた。
未成年の遺産相続なんて、普通は親族が出てきて面倒なのだが、相続に強いという弁護士を頼んでサクッと終わらせた。
玲央の口座にも、父が亡くなった時の賠償金があり、合計で3億近い金になった。
遺産の時に頼んだ「山内弁護士」ってのが感じよかったので、投資メインの法人を作ってもらい顧問契約を結ぶ。
俺は対外的には天涯孤独の17歳の高校生で、本来は住むための部屋の契約等、色々と面倒なのだ。だが、その辺りも法人を作って、その名義で契約するとものすごく楽になる。
それに、未来視でロト当てる予定だからな。未成年で保護者が居ない俺は、顧問弁護士が居ないと換金すら面倒くさい。
そんなこんなで、しばらく行ってなかった高校へ久しぶりに行ってみたのだが、結構な変化があってビックリしたよ。
「ウワッ…少なッ」
まず、教室に入ったら10人しかいないのだ。
もともと35人だったのだが、木元たち逮捕・退学組が結局10人、俺の「追い詰めてやる宣言」に怯えて辞めたのが3人、転校していったのが7人、後は登校してきてないらしい。
うーん、それを聞いたところで何も罪悪感はないな!
でも、どう考えても、この学校でキラキラした青春は出来そうな気がしないわ(笑)
「ヨシッ!俺も転校しちゃおう!休んでる奴らに、『俺はもういないから、何もしないよ』って教えてやんな」
誰も俺の事を知らない学校で、爽やかな男子として出直そう!
「失礼しまーす、本条玲央入りまーす」
職員室は凍り付き、皆は恐る恐るこっちを見ている。
あれ?ここもなんか随分人数が少ない気が……。
まあいいや、お?ちょうど教頭いるな。
「教頭ー。本条玲央は精神的ショックで転校しまーす!」
「え⁈ 本当にか?転校するのか?」
コイツ喜んでるなあ、周りもちょっと嬉しそうだわ。
「転校先が決まったら、俺の弁護士から連絡きますから、《《くれぐれも》》、良い評価よろしく」
そして俺は何処に行くかジックリと検討する。
うーん、別にこの街にいる理由も無いからなあ。
地蔵だって、土地は地元の寺に渡してあるし、今後の修理や管理費として、まとまった浄財は渡してあるから大丈夫だろ。
せっかく転校するなら、知ってる人間がいない方がいいよな。
……そもそも俺って、高校の勉強について行けるんだろうか。
バカな工業出なのに35年も勉強ほったらかしてるしなあ。ここは偏差値が低くて、でも共学で楽しそうで、金出せば卒業とFランの推薦くらいくれる私立を探そう。金ならあるのだ。
そしてネットなどで探して、「ここなら良いかなあ」と思ったのが『教育法人至誠館学園』の『至誠館高等学校』。
同じキャンパス内に小中高、大学に大学院まである、関東屈指のマンモス校らしい。
偏差値は、下は「スポーツ科」でなんと30前後。だが明るいバカ達で、運動部なのにネチネチしてる奴は少ないとの口コミ。
大学への内部進学は推薦のみで、入学前に掛け算からやり直すという噂すらある。
上は「理数科」で、偏差値は最低70を超えている人間が集まる別世界だ。殆どが旧帝大などを目指し、至誠館大学に行く人間はいない。
そして多くを占めるのが「普通科」だ。
これはまさに「普通」で、偏差値も40くらいから70近い層までバラバラなのだが、生徒数も多く、色んな部活があって明るくて楽しいという口コミが多い。
いわゆる陽キャやオタクもいるのだが、お互いに上手くやっていて校内も荒れてないし、目に付く虐めも無いらしい。
そして、この高校の良い所は、赤点をとっても追試や補習で進級できるし、内部試験で大学に合格できない生徒は、寄付金を納めてボランティアをすると推薦で内部進学できるのである。
これはデカイ。
たとえFランでも、俺は大学に行きたいのだから。
俺は山内弁護士に連絡して転校の手続きを頼むと、至誠館高校のそばへ新居を探しに向かった。
初めて見た至誠館は、とにかくデカかった。
全部合わせたら東京ドーム十数個分の敷地に、小中高に大学、各研究棟や体育館、グラウンドに講堂。こりゃもう街だな……。
全てが至誠館学園の敷地というわけではなく、学園ができる前からあった小さな住宅街や商店街、町工場が残っている。
商店街は学生や職員たちから親しまれており、活気がある。
普通なら騒音で苦情が来そうな町工場も、工学部系の施設が近いせいか、今でも動いている工場が多い。
俺は一目でこの街が気に入った。
住宅街でマンションやアパートを探したのだが、競争率が高く、俺が気に入る物件はなかなか見つからない。
今日は空振りかなあ……と歩いていて、工場が続く場所に出た時、張り紙をしている工場を見つけた。
『売り物件。内部居住可』と書いてある。
俺は「ここだ!」と閃いた。車やバイクも置き放題で騒音も気にしなくていい。そしてなによりも、昔作った秘密基地のようなワクワク感があるわ。
俺は山内弁護士に張り紙の連絡先を伝え、購入希望を出してもらい、無事にこの秘密基地を手に入れたのだ。
入学試験までの間、俺は地蔵から貰った未来視を初めて使い、12億のロトを当てておいた。お金は大事だからね。
山内弁護士に付き合って貰って換金を終えたあと、工場の支払いを済ませて、理想の秘密基地にすべくリフォームを発注した。
そして、今度の学校は申請しておけばバイク通学が可能らしい。元々バイクは16歳から乗っていたので、一発試験で取りに行ったら、油断して一度落ちたよ。次の日には無事に取れたけど。
準備は完璧だ。
そして俺は、『至誠館高等学校』への初登校を迎えたのだ。




