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『ドワーフのおとちゃんに拾われた転生児、魔力解析チートで成り上がります』  作者: 草野いずみ


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14/15

第14話 ぼく、ただ足しただけだよ?


ぼくはギルドの隅で、お気に入りの複雑な木の立体パズルを組み立てていた。


そこへ、おとちゃんが大きな紙の束を机にドンと置いた。




「よし……今月のギルドの帳簿集計終わりっと……。


 フローリアが後で確認するはずだけど、計算はバッチリなはずだ」




ぼく(心):


(おとちゃん、今月の収支報告書かな……。何が書いてあるんだろ……)




ぼくは気になって、椅子から身を乗り出して机の上の紙を覗き込んだ。




数字が綺麗に並んでいる。




1、2、3、4……。


大人の手書きだから少し崩れているけれど、規則正しく並ぶ数字の列を見ているのは、パズルみたいで面白い。




ぼく


「おとちゃん」




バルカン


「ん?なんだ、レン」




ぼく


「ここの計算、合計が合ってないよ?」




おとちゃん


「……は?」




ぼくは数字の列を指先でトントンとなぞった。




「ここの支出を全部足すと、合計は“1238”になるはずなのに……こっちの帳尻合わせの欄が“1236”になってる。二つ、足りないよ」




親方


「……おい……ちょっと待て……」




おとちゃんは顔色を変えて、もの凄い形相で帳簿に食い入った。


何度も何度も指で数え直して……




バルカン


「……ほんとだ!! 二つ、確実に足りてねぇ!!!」




ギルド員A


「えっ!? 二つ!? どこですか親方!?


 俺が昨日、一時間以上かけて電卓叩いて確認したはずなのに!!?」




ギルド員B


「レン坊、一瞬見ただけなのに、なんでそんなこと分かるんだよ!!?」




ぼく


「えっと……なんて言うか、この数字の並びを見たときに、ここだけパズルのピースが抜けてるみたいに“スカスカ”して違和感があったんだ。だから頭の中で足してみたら、やっぱり違ってた」




ギルド員A


「“スカスカ”って何だよその超感覚派の天才みたいなセリフは!!?」




おとちゃん


「レン、お前……一瞬で四桁の暗算を終わらせたのか!?」




ぼく


「うん。こことここと……ここの数字を順番に組み立てていったら、全然違ったからさ」




ギルド員B


「5歳児が“四桁の合計チェック”を普通にサラッとやるなぁあああ!!?」




ぼく(心):


(そんなに大騒ぎすることかな……。ただの算数なのに……)




◆




そこにフローリア先生が現れた。


いつも通り、静かで冷涼な空気をまとって近づいてくる。




フローリア


「騒がしいわね。……今度は何があったの?」




ギルド員A


「フ、フローリア様……レン坊が……レン坊が……」


「帳簿の計算ミスを一瞬で見抜いたんです……!」


「僕が徹夜でチェックしても気づけなかったのに……!」




フローリア


「……帳簿のミス?」




ぼく


「フローリア先生。ここの合計、足し算が2つ足りないんです」




フローリア先生は数字の場所をちらっと見て、数秒で脳内計算を終えた。




「……本当ね。確かに二つ抜けているわ」




親方


「なぁフローリア……これって……また魔力とか関係あるのか……?」




フローリア先生はぼくをじっと見つめた。


その目は、魔法を見たときとは違う、もっと深い、学学者としての驚愕の色だった。




「……いいえ。これは魔力じゃないわ。純粋な“数理の才能”よ」




親方


「…………」




フローリア


「四桁の複雑な集計のズレに即座に気づくなんて、普通は大人でも苦手よ。まして、まだ5歳の子どもが誰に教わるでもなく自然にやってのけるなんて——」




ぼく


「だって、ここだけ形が歪で、スカスカだったから」




フローリア


「スカスカ、ね……」




フローリア先生はゆっくり膝を折り、ぼくの目を真正面から見つめた。




「レン。あなたは、魔法だけじゃなく……数字の世界の“構造”までも、その目で掴んでしまうのね」




ぼく


「……?」




フローリア


「この子は、ただの『規格外の魔法使い』という枠には収まらないわ。論理、数字、魔力……どれをとっても、“構造を理解する感覚”が異常に早すぎる」




親方


「おいおい……またおとちゃんの心臓に悪いことばっかり言いやがる……!」




ギルド員A


「レン坊……もう凄いとか通り越して、なんか……将来がいろいろと恐ろしいぞ……」




ぼく


「ぼく、そんなに怖い子に見える……?」




親方


「怖くねぇ!! すげぇだけだ!! ちょっとすごすぎるだけだ!! いや、だいぶすごすぎるけど!!」




ぼく


「ふふ。おとちゃん、ありがとう」




フローリア先生は深いため息をついた。




「……バルカン。レンの教育方針、さらに前倒しで急ぎましょう。魔法の制御だけじゃない。数学も、論理学も……この子は“全部”際限なく伸びていくわよ」




親方


「全部ってなんだよ!!? どんなバケモノに育つんだよ!!?」




フローリア


「才能が多すぎるのよ、この子は」




ぼく


「おとちゃん。ぼく、こうやって数字を綺麗にパズルみたいに足していくの、すごく好きだよ」




親方


「……おう。お前が好きならおとちゃんは全力で応援するけどよ……。ほんと、すげぇな……」




ぼくは帳簿を見ながら、また数字を頭の中で並べ替えたりして遊んだ。




(なんか……ぐちゃぐちゃだったものが綺麗に整うと、すごく気持ちいいんだよね……)




それはぼくが、ただの魔法使いではなく、世界のあらゆる“構造”を解析する存在になる——その最初の証明だった。

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