26.崩れた壁と季節外れ
お読み頂き有難うございます。ご評価、ブクマ誠に有難うございます。
続きです。
予約投稿は初めてなので、ドキドキしますね…。上手く行くと宜しいんですが。
この間直したばっかりなのに、城が壊れているようですね……。
私達が駆けつけた時には……土煙が立ち上っていた。
石で美しく積まれてる壁に………ぽっかりと大穴が空いている。
……さっきの地鳴りはこれか!?
ええ!?何でなの!?まさか砲弾でも受けたの!?
で、でもその割には義兄さまも隊長さんもシラッとしてるわ。
………一体何があったの!?
「お、お城が……壁が……」
「ああ、また崩れてる」
は!?義兄さま今何て言ったの!?
また!?
まただと!?
お城の壁はそんなに崩れるもんじゃないでしょ!?こんなにでっかい石が積み重なっているのよ!?
そして固定してあるんでしょ!?漆喰とかコンクリートでさ!
勿論偉そうに語れないよ、建築はサッパリだから!!
でもさ、ジェンガじゃないんだからそんな崩れない筈でしょ!?
崩れてるけどさあ!!
それに、壁が崩れてるのもショッキングだけれど、崩れた壁石に絡みついている植物がまた異色で…度肝を抜かれた。
黄色の雄しべ雌しべが可愛い…可憐な白い花に……超・有名な赤い実が着く……。
日本ではハウス栽培とか有るけど、異世界では……こんな晩秋には決して咲かない筈の植物!!
「この滅茶苦茶見た事のある蔓植物は……い……イチゴ!?」
「うん、苺だねえ」
何で崩れた壁に苺が群生してんのよ!?
さっきまで普通の壁だったでしょ!?崩れたとしても壁石とかそれなりの瓦礫が有る筈でしょ!?
何でいきなり苺生えてんだよ!!おかしいだろうが!!
このお城、まさかグリーンカーテンとかで苺とか育ててんの!?
出来るかどうか不明だけど!!しかも今秋だし!!そして何故苺を!?
それにしても花は可憐だけど大きいし、生ってるのは粒の大きい綺麗な苺だ……。廊下の灯りに照らされてツヤツヤしてる。
まさか食べられたりするの!?
呆気に取られて混乱しまくる私を余所に、隊長さんは生い茂る苺ごと瓦礫を踏んでゴロッと蹴とばしていた。
冷静だ……。
仕事の出来る騎士様カッコいいけど、リアクションが薄い方だな。
人の事全く言えないけどね。
「……誰が生やしたんでしょうね……」
「生やした!?」
「間違いなく木属性でしょう、こんな非常識な事するのは……」
あ、そうよね!!非常識なんだここの常識でも!!良かった!!
って……何でそれで納得できるものなの?
お城の壁が崩れて…崩して?更に苺を生やすってどういうこと!?
誰がやったのか知らないけど、どういう心境だったの!?
木属性って……殆ど周りに居ないからサッパリ分からない!!
いや、属性で性格判断って…あああそれも分からん!!
「そ、それよりもルディ様達は!?」
「埋まって息してないと嬉しいけど生きてるでしょ。
それよりアローディエンヌって、苺まあまあ好きだよね?
この季節に珍しいねえ、コレ食べられるのかな」
珍しく興味深そうに眺めてると思ったら!!
そりゃ苺は嫌いではないが、そうじゃないだろ!!
確かにちょっと食べられるかなとは思ったけどさ!!
それより皆様!!皆様よ!!行方不明なのよ!!
「苺なんか後でいいですから!!ルディ様!!レルミッド様!!フォーナ!!」
瓦礫に触ろうとしても義兄さまが離さないので、取り敢えず大声を上げてみる。
うう、どこに行かれたのお三方!!
「ブギュウ」
そうしたら、何故かフロプシーが私の腕の中から抜け出して、フワフワ瓦礫へ向かっていった。
「フロプシー、何か分かったの!?」
「ブギュウ」
「ふうふええええ……」
あっ!!この可愛いのに何だか掴みどころのないふわっとした声は!!
凄い!!凄いわフロプシー!!居場所を当てられるなんて何て出来るウサギ?なの!!
「フォーナ!!」
「無事だったのか」
「アロンさああああん!!」
アレ、声は聞こえるのに、何で姿が見えないの!?何処!?
ぐるぐる見回しても誰もいない!まさか、瓦礫の下に!?
でも、聞こえかたが……変かしら?
……瓦礫の下にしては、何か音の反響が変?
「アローディエンヌ、上だよ」
「は?」
上?上に何が……。
義兄さまに促されて上を見ると……
綺麗に幾何学模様になった…とにかく素敵な模様の天井の一角に………何と、紺色の髪に水色の侍従服の少女……フォーナが引っかかって、バタバタしているのが見えた。
場違いにも……室内で手放した風船みたいになってるわ、と思ってしまった。
ってええ!?浮かんでる!?
何でなの!?
今まで浮かんでなかったじゃない!!何で突然!?
「はううううう!!また浮かびあがっちゃいましたああああ!!」
「……何で!?」
「一時的にしか徴を焼いていないしね」
「何で!!ちゃんと助けてあげて下さいな!!」
そんないい加減な!!
私がイラッとして義兄さまを見たら、逆に頬を膨らましてジト目を向けてこられた。
「ええー。だってえ、あの綿毛神官アローディエンヌに馴れ馴れしく引っ付くんだもん」
「は!?義兄さま以上に私に引っ付いてくる人はいませんわよ!!」
「……そっかあ、じゃあこれからも誰よりも引っ付くねえ。えへへえ」
「はあ!?」
「勿論、僕がアローディエンヌに触るのは愛してるんだから当然だしい、合意のもとだけど、たまには想いを確かめ合わなきゃねえ」
いや、だから迷惑さは義兄さまの方が断然上だと言いたかったのだけど……どういう理屈!?
いや、別に義兄さまに抱きつかれるのが嫌だって事はそりゃ……こういう関係なんだし吝かでは無いけどね!?
売り言葉に買い言葉じゃないけど……。
しまったな……要らん事言ってしまった。不安だ。
「と、取り敢えずフォーナ、義兄さまが降ろしてくれるから!!」
「アローディエンヌの頼みだからな。今度こそ恩は必ず労働で返せよ」
「はいいい!!」
「義兄さま!!」
「はうううう!!」
一体今度は何の無茶振りさせるのか、実に不安だけど義兄さましか頼れないし……困ったことが発生したら……その時考えよう。
義兄さまが上を向いてフォーナに向けて手を翳すと、フォーナの体が………また漫画のように炎に包まれてしまった。
……しかし、人体に影響は無さそうだと思っても…何度見ても慣れんな。
人体発火みたいで怖すぎる。絵面も酷いし気の毒だし。
あ、柱にしがみ付きながら降りて来た。運動神経いいな、フォーナ。
此処で誰か攻略対象が居れば、キャッチしてくれただろうけど……居ないしな。
「はうう…怖かったです、二重の意味で!!」
「で、でしょうねえ」
炎に包まれるのに慣れる訳が無いわよね。
半泣きだし。挙げ句義兄さまからの脅し…恐怖は尽きなかったわよね……。
「感動の再会でじゃれ合いはその辺でいいだろうか。
其処のレルミッドの連れの君、廊下で何が起こった?」
そ、そうよ!!ルディ様は!?レルミッド様は!?それにアルヴィエ様はどちらに!?
「そ、そうなんです大変なんですよお!!」
フォーナはテンパりながらも話し出した。
「あのですねえ、私達はロナウドさんに着いて行って廊下を歩いていたら、
言い争う声が聞こえたんです」
「言い争う声?」
「お1人はフィルル姉さまでした。
そしてもうお1人は…先程お会いした黒髪の女性…ミーリヤさんだったでしょうか」
「…え、何で?知り合いなの?」
「いえ…分かりませんが…。
多分ですが、フィルル姉さまの…お嫌いな感じだと思いますので、交流は無さそうかと」
……まあ、合わなさそうでは有るけれど、言い争うまで仲が悪いって程には見えなかったけどな。
「何で嫌うのかしら?あんなに美人でいい人なのに」
「……アローディエンヌう、私以外の女を褒めるの?」
は?私以外の女?
おい、ただ感想を述べただけでしょ。
何で私が浮気野郎みたいな謂われ方をせにゃならんの……。
「……義姉さまは後で褒めてあげますから、黙っててください義兄さま」
「やだあ!今褒めて撫でて!!僕そこの綿毛神官助けたのに!!」
煩えええ!!子供か!!
ああもう話が進まない!!仕方ないな!!
私は取り敢えず義兄さまの腕を撫でておいた。
「……義姉さまは誰よりもお綺麗ですし、義兄さまは人助け出来て偉いですね」
「わあい。帰ってからも楽しみにしてるね」
「……ふざけないでいただけます、義兄さま。フォーナ、それで?」
「え、ええと……取り敢えず来た道を引き返そうか、と言う話になったんですけれど……振り返ると、何故か立派な椅子が有りまして……」
「は?椅子?」
「はっ、傑作」
「……最悪だ」
何で椅子?
誰か運んでる最中とか片付け忘れたとかかしら?
アレ?何で義兄さまが半笑いで、隊長さんが蟀谷を抑えてんのかしら。
「レルミッドさんが吃驚されたのか、叫んでしまわれまして…それでお二人が気付かれまして」
「そ、そうでしょうねえ。お声大きいから……」
「そうしたら………突然フィルル姉さまがミーリヤさんを突き飛ばしたんです。
そしてこっちに来られてルディさんに手を伸ばされて……」
「ルディ様を!?」
「その時何故か、よく分からないんですが…
フィルル姉さまが変な光に包まれたのが見えたんです」
「変な光?」
「二股に一部割れた雫のような、まだらな光です」
………二股に別れた雫のような、まだらな光?
雫のような…………まさかハートの模様!?
………嘘だろ。
私の脳裏に、忘れかけていた蠢くハートがどろりと……まざさまざと浮かび上がる。
まだらに蠢くハートの前で、邪気無く私を嘲笑いながら微笑んでいた少女……あの光景が。
暑くもないのに、背中に汗が伝うのが分かった。
嘘でしょ。
まさか、ロージアが関係しているの!?
「それは、どんな色だったの?」
「赤とか緑とか……色んな色が動いているような」
「…………何処かで見たことあるね、それ」
「義兄さま」
義兄さまがそう言うってことは、やはりロージア?
それとも、私が知らない…別物?
「危ないって、叫んだら……蔓が私を守ってくれて……
気がついたら浮かんでて、下にアロンさんとアレッキオさんと隊長さんが」
そこでフォーナは瓦礫を見た。
その目には涙が溜まっている。
「この蔓が多分私を守ってくれましたが、
レルミッドさんとルディさんとロナウドさんは、どちらに!?」
「フォーナ………」
「恐らくだが、レルミッドだけは確実に無事だ」
それまで黙って聞いていた隊長さんが眉を寄せた。
「どういう事ですの?隊長様」
「チェネレでいいですよ。義妹姫」
「では私もアローディエンヌで……」
「遠慮しておきます」
こ、断られた………。メッチャ早く断られた。
……これも名前が長いからか。
「話し出すとレルミッドが喧しいから、取り敢えずルディ様を探さねば」
「部下は?」
「死んでなきゃ出てきますよ」
………全幅の信頼の賜物なのか、放置なのか口調で分かりづらいわね、チェネレ様。
アルヴィエ様はいいのかしら、本当に…。
「それと、……君、何者だ?」
「はえ?」
「……フィルル皇女を姉さま呼ばわり出来るのは、皇帝の子供だけだろう?」
「……はうう!?」
し、しまった。
非常時だから…忘れていたけれど……。
ば、バレバレじゃない!!
「フォーナ、と言う名前から推測すると……皇帝の数多い側室の子供の1人か?母親は誰だ」
「は、はうう!!キャスといいます!!」
「ふぉ、フォーナ!!馬鹿正直に言っていいの!?」
「あ…」
「……第四側室、キャス夫人か……。その年格好だと…夫人の連れ子か」
「はうううう!!」
「どうして此処にいる?……ソーレミタイナは何を考えている?」
「そ、そ…な、何も……」
「どう言う事ですの?」
え、何の話?
隊長さんの表情は全く変わらない……。
む、無表情怖え。
私も傍から見たらこんな感じなのね…。
「我が国が招待したのは、ファーレン皇女とフェレギウス皇太子。
しかし碌な説明もないままフィルル皇女が我が物顔で出張ってきました。
……しかも、皇籍から外された皇女まで此処にお揃いとあらば……」
「ち、違うんです…私は、姉さまを探しに…止めに……」
「え?」
フォーナの顔色が滅茶苦茶悪い……。
え、何がどう言う事なの?
「義兄さま」
「ああ、他人んちまで来てお家騒動とか、ウザいにも程が有るんだけど」
義兄さまはすっかり分かってるみたいだけど、にべもないな!!
「すみませんんん!!!此処まで、強引に来るなんて…ニックも見つからないし…」
「そーのお話ー、私にもー詳しく聞かせてくれるー?」
はっ、さっき聞いたことある間延びした割に上品な声が!!
声のした方を見ると…
白っぽい髪の巨乳美女が……マデル様じゃないか。
何故かレルミッド様、アルヴィエ様、バルトロイズ様、あ、サジュ様迄!!
何故!?
と、取り敢えずイケメンの4人もの男性を引き連れて階段を下りてくるところだった。
場違いだけど、凄く何か、濃いキャラの男性に囲まれているのに、女主人感が…凄い!!
おわ、階段降りるのに胸が凄く揺れてるのが凄くエロい!!
…長い鎖のネックレスが胸の間に挟まってるし!揺れてるし!!
大人な雰囲気だわ。そして、逆ハーレム感が凄い!!
……マデル様、凄いな!!
そして3人の騎士様とレルミッド様、かっけえ!!華やか!!
「アローディエンヌ、何余所見してるの」
「皆さんを見てるんですが」
「……何かさあ、変な事考えてたでしょお」
「……いえ、全く」
「えー……本当かなあ。見るなら僕でいいでしょ?」
……に、義兄さまのガン見が怖いな。
別に見てただけじゃないか…。何にも触って無いしさあ。
妄想しながら見てるだけでも駄目なのかよ…。駄目なのね……。
でもさあ、義兄さまだってドレスの群れに囲まれてたじゃないの。
私なんかイケメンと美女ガン見してるだけじゃん……。心狭いわ。
「フォーナ…お前、無事だったのかよ!!」
「れ、レルミッドさああああん!!」
「ハ、ハァ!?」
あああっ!!義兄さまに絡まれている内に、フォーナがレルミッド様に抱き着いて行くイベントの瞬間見逃した!!
目の前だったのに!!
でもまだ抱き着いてる!!
何という眼福!!
「は、離せやボケ」
「うわああああよくご無事でええええ!!」
「……フォーナお嬢ちゃん、俺も居るんだけど」
「ロナウドさんもよくぞご無事でええええ!!」
あ、レルミッド様が滅茶苦茶動揺してる……。
ボケの言い方が弱いし。
滅茶苦茶眼福なんだけど……。
でも、わああああ、生の主人公のイベントだあ。素敵ー!
「うっわー……レルミッド先輩迄女っ気が……何なんだ……」
く、暗い声が……。
アレ?何でサジュ様が死ぬほどげっそりしてるの?
何が有ったの!?
他に一体何のイベントが起こったと言うの!?
あれ?でも居られない。
人が、足りない!
ルディ様は?そして……マデル様と一緒におられた、フィルル皇女と言い合いをしていたという、ミーリヤ様は?
「る、ルディ様は……どちらに?」
「それなんだけどねー。こっちもー予想はーしてたけどー困っちゃったのー」
マデル様の表情は、かなり曇っていた……。
……何が、有ったと言うの?
足元の苺が繁ったのに気付いた彼女は、蔓を撫でた。
「……この苺……今日はー林檎の気分じゃないのねー」
え……本当にどう言う事なの?
何が何で林檎?何が気分?
訳が分からない……。
此処は王城なので、椅子(玉座)も出番があるようです。
そしてサジュが加わりました。久々の出番です。
だけど居るはずの人が二人足りません。
次はアローディエンヌ視点ではなくなる予定です。




