21.入り口で喚かれると入れない
お読み頂き有難うございます。今回ちょっとばかり長くなりました。
移動からお城までの話になります。
義兄さまはしょっちゅう、アローディエンヌとフォーナは初登城、レルミッドにとっては一年ぶりですね。
誰もそんなに行きたくない夜会、スタートです。
いかんいかん。
私としたことが……レルミッド様を褒め称える前にフォーナにツッコミしてしまったわ。
いえ、レルミッド様も私達にツッコんだんだけどさ。
激レア感SSRくらいの盛装レルミッド様を、欲望のままにガン見したいところだけれど…ツッコミ頂いたことが気になり過ぎて、私は自分の衣装と義兄さまの衣装を見比べた。
私はモブだし、義兄さまの格好はどうせイケメンだからとサラッと流したけれど……うわあ、ホントだわあ。
そこはかとなくコレ、色味似てるしアクセサリー似てるし…バカップルの象徴、ペアルック(そこはかとなく)じゃん。
ええええ。……仮にも独身偽装して婚活現場に行くのに、ペアルックっぽいって……。
駄目だろ義兄さま!?謀ったな!?
あ、それともアレか。
義兄妹仲が宜しすぎね?ウフフ、ブラコンシスコンね、で通る!?
それ…でも…いいような。
って、嫌だ!!何か…嫌!!
何か、その誤解…されてもないのにイラッとする!
別にいい気もするのだけれど!?何でだ!!
「素敵です!お揃いですね。本日も仲良しですね!今日はアロンさん!」
「……お前ら何考えてやがんだよボケ。時と場所を考えろや」
「散々嫌がってた割に、常識的な事を言わないでくれる?鳥番」
「煩えええええ!!」
フォーナは今日もマイペースだな。
男の子の…と言うか侍従みたいな格好なのに……。
て言うか……本日は義兄さまと仲良しを推したら駄目な現場!!
そうよ、レルミッド様のご指摘通りだわ。
謎のイライラにかまける暇は無いわ。
現状を何とかしないと!
「……き、着替えを…」
「そんな時間ないよお、アローディエンヌう」
「では欠席を…フォーナとお待ちしておりますから、レルミッド様と義兄さまは」
「止めろボケ!!何でアレキちゃんとツレになんなきゃなんねえんだ!!
鳥肌立っただろうがあっ!!」
「そうだよ、だあめー」
全力で二人に拒否られたわ。……別にいいと思うけど、駄目みたいね。
殿方二人が、て言うより何で『こんな奴と!?』って想いがヒシヒシと伝わるわ。仲悪いなあ…。
いや、義兄さまと仲のいい人を探し出すのが難しいのだけれど。
……ああ、ルーロ君、お立場は不可能だけれど来てくれないかしらと思ってしまうな。
いやしかし、レルミッド様とルーロ君の仲が…どうかは分からんわ。
……他力本願は駄目ね。私がしっかりしないと。
そして、先日散々皆様から文句が出た公爵家の馬車の中に、私たちは座って揺られている。
で、馬車だけど他にも何台か有るらしい。けど、地味なのは無いらしいのよ。残念ね。
仮にも高位貴族なんだからお忍び用とか無いのかしら…。
まあ、義両親…前ユール公爵夫妻は庶民的なのを好まなかったようだし、義兄さまも継がれたばっかだし、無いか。
…て言うか、今回夜会に乗り込む…いえ、義兄さまにつられた、夜会にお邪魔するのだから、ちゃんとした派手っぽい馬車じゃないと駄目みたい。
因みに、レルミッド様とフォーナは、何と歩きでアルヴィエ侯爵家から来たそうだ……。
場所が何処だかは知らないけれど、家と家の間と言うか、隣のお邸とは…下手すりゃバス停1駅2駅…いや駅馬車か、くらい離れている。
……侯爵家の方と皇族なのに、健脚なのね。
しかもこの格好で歩いてくるとか目立たんのかしら。
やはり攻略キャラとも有ろう方とヒロインは、そんな些細な事は気にしないのね…。
フォーナはアルヴィエ侯爵家にお世話になっているらしい。
…かの怪しい転生者かつサポートキャラの保護者、オルガニックさんと連絡が取れないんだとか。
フォーナ的には良かったのか悪かったのか…。
…でも、仮にも保護者と連絡が取れないってのは困った事だと思う。
ただ、個人的には…悪いのだけれど心配出来ないのが本音だわ。
で、今回も席次マナーとかへったくれも無く…私の横には義兄さまが頼まれなくても座っている。
……6人くらい乗れるから、いい加減へばりつかないでほしいんだけど。
…ああ、もう何時もの事だからいいわ。
正面の二人をじっくりと眺めることにするし。
レルミッド様は流石にフードは被っておらず、綺麗な草色のコートを羽織っておられる。
彼の灰色の髪と紫の目とまた合っているのよ…。緑から青ベースのお衣装も似合うなあ。
縁取りの刺繍も綺麗だし…ご本人は衣装が窮屈なのか、眉間の皺が取れないけれど。
流行は男女全くよく知らないけれど、コレ選んだ人グッジョブ。褒めて遣わしたい。
何時も赤いフードだけれど、取った所ゲーム振りに見たわ。
目が暗がりでも綺麗。素敵よねえ。写真撮りたいわー。
このたまに文明レベルが若干狂ってる世界って、写真は無いのかしら。
そしてフォーナは水色の…男の子の格好なのよねえコレどう見ても。
ベレーと丈の短い上着に、同系色のズボン。アルヴィエ侯爵家のお仕着せなのかしら?
……何て言うか、紺色の髪の毛とよく合ってはいるのだけれど…。
流石にオーダーメイドは駄目でも既製品ドレスは用意出来なかったのかしら。
それだったら私が用意…出来る程ファッションセンスが無いな。
……駄目だ。主人公を飾ってキャアキャア言うには、服飾センスが必要だった。
ああ、私の選択こんなところでも間違えてた!!
引き籠ってボケっと本読む生活だけじゃダメだったわ!!女子力!!
「…それで、どうしてフォーナは侍従のような格好を?」
「一応皇族なんでしょ。
アローディエンヌの身柄を守らせるのに、ソーレミタイナの身内が居たら面倒だと思って」
…だからって男装させずとも良くねえか。
そして昔のアニメじゃないんだから、服変えたくらいで身内バレしないっておかしいわよ。
それにこんなに可愛い主人公フォーナが男装で、
モブの私が装飾過多って話の流れ的におかしいわ。
あ、そうだ。
この服、フォーナが着ればいいんじゃない?
背はそんなに変わらないし…。
体型も…あ、コルセット問題が有るけどそこは何とかこう…頑張るとして。
最悪の場合、王城の使用人に手を貸して貰えないかしら…。基本他力本願は駄目だけど…。
「私と服を取り替えたら良くないかしら。王城で部屋でもお借りして」
「駄目だよ。アローディエンヌの為に選んだ服だよ?他の奴が着るとか有り得ないよ」
「そうですよ、アレッキオさんが心を込めた贈り物なんですから」
「たまにはいい事言うね、綿毛神官」
ケチだな義兄さま…。
この頃、私の服の殆どを義兄さまが選んでんだから、1着位いいじゃないか。
それに主人公とあろう者が、何悪役令嬢と意気投合してるんだ。
作品は違うけど、何かダメでしょ。
「でもフォーナ、ドレスを着たいでしょう?」
「え?着慣れないので着たくありませんよ?アロンさん、気にして下さってありがとうございます!」
おい……まさかの主人公、ドレス拒否かよ。
夜会なんてヒロインの夢かつハイライトじゃないの?
大体の乙女ゲー主人公は、ドレスに夜会でテンション上がるもんでしょ!?何でよ!!
「……ドレスに憧れが無いの……?」
「え?アロンさんも無さそうですよね」
「…まあ、有りませんけど」
……女子力低いな、私達って。
いや私の女子力はどうでもいい。フォーナだよ。
主人公だよ。ヒロインなんだよ!?
折角攻略対象と一緒に居るのに、
イベント起こりそうな展開に男装だと!?
それは2回目くらいの夜会イベントに回して欲しいわ!!
しかも今回は男装で次回は是非ドレスに!!みたいな気もなさそうだし!!
「そんなアローディエンヌも可愛いよお?」
「お前らが何の服だろうがスゲーどうでもいい」
レルミッド様は服飾に興味がお有りで無かったわね、そう言えば。
服を褒められるイベント無かったからな…。
まあ、ある意味殿方らしいと言えばそうなのだけれど。
「でもだからって…男の子の格好なんて。しかも皇族なのに臣下のような格好なんて」
「大丈夫です、皇族から抜けてますから!」
「せ、せめて侍女で!お化粧で印象変えるとかあるじゃありませんの」
あ、意外に侍女姿のフォーナとレルミッド様も…萌えそうなシチュエーションかも?!
「大丈夫ですよアロンさん。我が神は男装も女装も皆分け隔てなく差別なさいません!」
「…寧ろ男装女装如きで、罰を当てる神が有るの?」
「居られますよ!アレカイナ連合国の1つで、温泉で有名なシーランケードの神様がそうです!」
「へえ、そうなの…」
コスプレの一環でキレるとか心が狭い神もいるんだな。
と言うかこの世界の神関係全然知らないけど。
あの『恋を愛する女神像』の事…も殆ど知らんな。
意外と街中に点在してるなあとは思ったけど。
通りのど真ん中…中央分離帯みたいな所にも設置されてたわよね。
何の為なのかしら。
神様の像に言うことじゃ無いけど邪魔そうよねえ。
て言うか温泉地で崇められているコスプレ嫌いな神かあ…。
地味に気になるけど、他国だし全然関係ないし、信仰心も無いから深く突っ込んではいけないわね。
他人のコスプレには大いに興味有るけど、他の国で見りゃいいだけの話だし。
温泉か…。地味に海よりは元日本人としては行きたいけど…別に疲れては…あるけど。
義兄さまに頼むのも何だか面倒な気がするわね。
そして話の流れ上、流したけれど、「あれかいな、知らんけど」って…。
……アレカイナ連合国ってことは、国が集まってるのよね。
まさか他の国も科白になっているのかしら。
……制作スタッフは一体何を考えて地名を名付けているの……。
そして何故関西弁……。
…まさか、アレカイナの人って関西人ベースなのかしら。
油断ならないわ。
……知れば知るほど、国名が私を笑い殺しに掛かってくる…。
夜会は気を付けないと。
「ねえねえアローディエンヌ温泉行きたいの?」
「……まあ、まあまあですかね」
「わあ、行こうねえ。楽しみだなあ」
「ブギュウ…ブギュ」
「……イチャつくなボケ共が」
う、レルミッド様とフロプシーとに突っ込まれてしまった。
スゲエな、裏拳出来るのフロプシーって。偶然かもしれないけど。
あ、因みにフロプシーは私の横に居る。
何故かと言うと、…フォーナは蹴られてから何故か怯えてるし、レルミッド様は無関心だし、義兄さまは…勿論触りすらしない。
…何か自分で連れて来た割には若干仲悪いんだ…。
いや、フォーナとレルミッド様はいいよ。
でもさあ……マジで何でフロプシーを連れて来たの義兄さま。
生き物を可愛がるタチでもないのに。
…と言う事で、消去法で私しかいない訳だ。いいんだけどさあ。
こういうフワモフな生き物って乙女ゲーとかだとモテモテなんじゃないの?
……何か、持て囃しもせず申し訳ないわね。
多分本人…いや、本ウサギ?は気にしてないだろうけど。
……しかし…ウサギ?を抱えて…初めての夜会か…。
何て電波な夜会デビューだ。モブには敷居が高いわよ。
…まあ、私のようなモブを積極的に見る人も絡む人も居なかろうが、
万が一不思議ちゃんキャラ扱いされないか気がかりだわ…。
結構貴族って暇らしいからな。……変な噂にならなきゃいいけど。
しかもレルミッド様とご一緒するなんてね。思ってもみなかったな。
まあ、この組み合わせ自体が異色で謎よね…。筆頭公爵と謎の美青年&美少年。
……義兄さまとレルミッド様がド派手だし。
フォーナは…目立ったら駄目なんだろうけど、可愛いし。
たかがウサギ?を連れた添え物モブにまで目は届かなかろう。
「……鳥番、邪魔。叩き下ろしたい」
「俺だって帰りてえわボケエエエ!!」
「アレッキオ様、間もなく王城で御座います」
……御者さん、ナイスタイミング!!
2人を止めてくれて有難う!!
空気を読める使用人大賞を贈りたいわ!!
「ですって、義兄さま。
レルミッド様に喧嘩を売るのはおよし下さい」
「アローディエンヌう、別に僕悪い事してないじゃない」
「お前どの面下げて…」
「お、落ち着いて下さいレルミッドさあん!!はう!!」
「ハァ!?て言うかお前何くっ付いてんだボケ!!」
「馬車が揺れてくっついちゃったんですよ、すみませえん!!」
流石主人公、レルミッド様の肩にフォーナの頭が乗ったわ。
ラッキースケベ…とまでは行かない接触加減ね。
しかしどうせならお膝に乗る位ガタッと…揺れないか、ウチの馬車。
……高性能なのよね。手前味噌だが流石公爵家と言うか。
……しかし、うーん男装か…。
いや、とても似合っていて可愛いわ。ショートカットも侍従姿に良く似合うし。
まあ、考えようによっちゃあ、疑似禁断な関係っぽいこともない。
本人達も気にしてないしな…。
私だけ気にすんのも何か疲れて来た。
……しかし、このドジッコ具合で果たして侍従に偽装できるのかしら。
レルミッド様が面倒を見られるのかしら。
……うわあ、主従逆転な気がする。
…私は出来るだけ面倒を掛けないようにしなければ。
壁の花というか、壁の柄の一部位の存在感にならねば。
それなら多分大丈夫。モブの本気、目に物見せてやるわ!!
「到着致しました、アレッキオ様。ご準備を」
「開けて」
と、私が意気込んでいると、義兄さまの返事を受けて馬車の扉が開かれた。
着いたみたい。
馬車止まりまで立派ね。流石王城。
改めて近寄るととても大きいお城ね。
…白い漆喰が所々焦げたような跡が有るけれど…まだ修復途中なのかしら。
大火事だったもんな……。義兄さまが確実に噛んでそうな大火事…。
本人は全く気にしていないけれど。
でもとても素敵よ。ゲームなら荘厳なBGMが掛かっていそうよね。
まあ、今は私達とおんなじような招待客で普通にガヤガヤしてるけど。
因縁付けられても困るし、失礼のない範囲で外を見回したら、流行りなのか結構露出高い女性が多いな。肩やら首やら胸回りやら大胆ね……。
ド派手だ。私には似合わないデザインだ。寒そうだ。
うーん……服飾に興味を持とうと思ったけど結構ハードル高いなあ。
「……相変わらずボケみてえにウゼエ城だな」
「その点は同意する」
レルミッド様はサッサと降りられて、フォーナも後に続く。
……フォーナがドレスだったらなあ。
きっと馬車から降りるのに足元覚束ないとかでドジッコ属性が仕事して、トキメキでキャッキャウフフなイベントでさあ。
もしかしたらスチルが用意されていただろうに。
今回貴族と侍従みたいな感じだからなあ。…全く何も起こらない…。
さて、お客人達が降りた事だし…。
……私も一人で降りようとしたら急に視線が揺れて…義兄さまの薄青い瞳が、にこやかな顔が間近に有る。
…え、ちょ、何で抱き上げんの。
心臓が何故か、ドキッと跳ねた。
「……ちょ、義兄さま」
……此処は、普通に義兄と義妹やらなきゃならんのでは?
手を貸すところでは?
……何で抱えて降ろすのよ。
「なあに?僕の可愛いアローディエンヌ」
「……別に何でも」
義兄さまは何時も通りだ。
寧ろ私がどうしたんだ。
何だこの動悸。足がいきなり付かないのを、体が吃驚したのかしら。
「おい、何時までくっ付いてんだ其処のボケ義兄妹」
「も、申し訳ございません」
「煩いし空気読んで、鳥番」
「読んだだろうがボケ!!」
あ、ちょっとボケの言い方が小さい。王城だものね。
流石に空気を読める常識家でいらっしゃるわ!!
「所で、招待状持ってきたよね」
「……ああ、叔父上様がねじ込んで来やがった」
「招待状?」
「これだよー」
義兄さまが何時の間にか封筒をヒラヒラ振って、見せてくれた。
……どっかで見た紋章…わあ、王冠入りって事は紛れもなく王家の…国王陛下の紋章ね。
逆らえないタイプのお手紙オーラが漂ってるわ。
「招待状だよ。僕とアローディエンヌのだよ」
「まあ……。それにしても今まで来たこと無いのに、何故ご招待頂いたのでしょうね」
「……アレキちゃんから離れつつも、野放しにせず見張れって事じゃねーのか」
「……有り得ますわね」
消火剤を用意するみたいなもんか。子供の時みたいに。
どうしよう、義兄さまがキレた現場に…この歳で幼少期みたいに誰かに抱えて連れて行かれる羽目になったら。
おお、恥ずかしすぎるわ、それ。…どうか何もありませんように。
「俺を安全に置いておきたいならアローディエンヌと離さなければいい」
「知らねえよ。お前ん所のオッサンに言えや」
「はあ、嫌だよおアローディエンヌう…」
「往生際の悪い野郎だな、アレキちゃん」
「鳥番は今回は諦めが早いね。ショーンが居るからだろうけど」
「煩えボケが」
「ショーンって、ショーン王子様がお出でに?お知り合いですかレルミッドさん」
「………まーな」
あれ?フォーナは…ルディ様=ショーン王子様って知らないの?
ルディ様の事は、フォーナには教えていない?
何故なの?どういう思惑なんだろう。
どうせご本人がお出でいらしたら、隠すまでもなくバレバレだと思うのだけれど。
と言うかあの方は、白魔法使いみたいな格好でも、王子様オーラがキラキラしておいでだったわね。
流石本物の王子様は違うわよねえ。
「……さあて、行こうかあアローディエンヌう。この上なく居心地悪いけれど、ちょっと我慢してねえ?」
「いや、義兄さま別行動でしょ」
「覚えてたあ?」
何サラッと一緒に行こうとしてるんだ。小首を傾げても騙されないわよ。
後、何こんな所で王城を堂々とディスってるんだ。不敬は止めろ。
「サッサと陛下のお役に立ってくださいな」
「……分かったあ。アローディエンヌのお願いだから我慢するねえ」
いや、私のお願いでなくても勅命を守ってくれ。
でもまだグズグズしているし…義兄さま早く行ってよね。
いい加減レルミッド様がキレているのが目を遣らずとも分かるんだけど…。
「早く行けやボケ。アレキちゃんが居たら目立つだろうが」
「……アローディエンヌにかすり傷1つ付けたら…」
「が、頑張りますからあ!」
「じゃあねえアローディエンヌう」
……やっと行ったわ。…周りから視線を感じるわねえ…。
やっぱり義兄さまのせいかしら。レルミッド様も視線を集めておいでだし。
ああ、もう振り返らなくていいから早く行って欲しい。
「……私達も入りましょうか」
「ブギュウ」
片手でフロプシーを抱え、私は王城の夜会にお招きされることとなったのだった…。
……しかし、人多いな。モブとしても賑やかしとしても要るだろうか私。
レルミッド様とフォーナはイベント的に要るだろうけどさ。
義兄さまが先に入ってくれていたせいもあるのか、全く誰にも咎められなかった。
何というか…入り口も派手だわ。金銀使いたい放題って感じ?
実際の金なのか他の金属なのかは知らないけれど…。どうやって作るのかなあ。
それにこんな5メートルくらいありそうな扉ってどうやって閉めるのかしら。魔法?
「立派で大きな扉ですわねえ」
「神殿にも大きい扉がありますけど、コレは本当に豪華ですねえ」
「お前ら、何で扉に喰いついてんだボケ」
そ、それもそうだな。
お城入って食いつくのが扉って……。しかも大してどうでも良さそうな扉…。
せめて大広間っぽい所入ってから…シャンデリアとかにすれば良かった。
それに、他の人達は王城の使用人たちに先導されてるみたいだけど、超普通に入ってしまったわ。
……しまったな。何故か誰か止めてくれないし。
若干不審そうな目で見られているし……。
「どうしましたかアロンさん」
「いえ、先導を待つべきだったなと思ったの」
「ハア?面倒臭えな。
行く方向は其処らに居る奴ら見てたら何となく分かんだから、行きゃいいだろうが」
「そうですね!」
「……いいのかしら」
まあもう来ちゃったしな。
誰も追いかけて来ないからしょうがないか。
若干所々で警備に立ってる騎士様の視線が生温いけど。
「よおレルミッド。って女連れかよ!?何時の間に。彼女か?」
「……ハア?何が有っても選ばねえよボケ」
「そうですよ!アロンさんには愛しのアレ…」
「フォーナ!!
此処で言う事じゃ無いし、此処じゃ無くても言わないで欲しいわ」
「は、はううすみません!」
「何だフラれてんのか?アレ?そっちの子女の子か」
「は、はえ!?どうして分かるんですか!?」
……色々ツッコミたいけれど…。取り敢えずフォーナの衣装よ。
ホラなあ、初対面の騎士様にすら見破られているじゃん……。仮装にすらなっていないってなあ…。
先行きが不安過ぎるわ。
「事情が有んだよ。聞かねえでくれるか」
「分かったよ。まあ気を付けろ。大広間はあっちだけど…」
どうやらレルミッド様のお知り合いで有るらしい騎士様は、ちょっと苦い顔になられた。
あら、ちょっとイケメンだな、この三十路っぽい騎士様。
「何と言うか…何か有ったら必ず逃げろ。絡まれたら絶対逃げろ」
「……何が居んだよ」
「国外からややこしいのが結構来てるって噂だ」
……ええ!?
何よそれ……。陛下のお妃様探しでどうしてそんなのが集まるの!!?
お上品な催しじゃないの!?
……私の考えてる夜会と違う気がする…。
それを伺って…一気に私達の足取りは重く、ブルーになってしまった。
いえ、騎士様が悪い訳では無いのだけれど……。
「……帰りてえな。おいこのままズラからねえか、義妹」
「魅力的なお誘いですわね…」
「駅馬車拾って街中でも出てよ。飯食いに行こうぜ…」
「好き嫌いは御座いませんので、そのご提案はとても惹かれますわ……」
「はうう……」
しかし、基本真面目な気性のレルミッド様と小市民気質な私。そして流されるフォーナ。
誰も敵前逃亡…いや、逃げるような面子ではなく。
…ああ、……大広間に着いてしまったな。案外足早いな私達…。
他の人達はもっとダラダラ…いえ、優雅に歩いているから超遅…いえ、ゆったりお出でだけれど。
それにしてもやだなぁ。どれだろ、ややこしい人って。
手早く見つけて近寄らないように絡まれないように…。
「お前中々顔がいいな!!全財産を寄進すればボクの慈悲をやってもいいぞ!!」
私は耳を疑った。
非常識な言動は勿論だけれど……き、聞き間違い!?
「……ロージア?」
「クソボケブス!?」
……やっぱり!?
レルミッド様も反応されたってことは本当だわ。
何故!?
何故、ロージアが!?
大体あの子、こんなところに出てきていいの!?
ルディ様毒殺の嫌疑が挙がってるのに!?
でも、いない。居ないわ。
あの派手な頭を染めているのかしらとも思ったが、いない。
誰なんだ。
よく似た声……なの?
何か嫌な予感がするわ。
「勿論その魂も体も全てを捧げよ!!お前のような者には身に余る光栄だろう!嬉しかろう!!」
「ひ、ヒイイ…」
さ、探すまでも無い。
……何か、とんでもない事をデカい声で言ってる人が居る。
……見た目は、全然ロージアじゃない。私達よりも遥かに歳上。
なのに…何か、幼い偉そうな喋り方…と言うか。
……聞けば聞くほどロージアが偉そうに喋ってるよう。
そして、此処からでは反対を向いているから顔は見えないけれど、殿方の服装をしている。
体型からして…スレンダーな女性みたいだけど、ボクっ子?
流石異世界…。一人称拙者に続いて、ボクっ子…しかもロージアとそっくりな声とは。
地味にお目に掛かった事ないけど、ややこしそうなオーラを感じるわね…。
髪の色は…黄緑に赤が混じった色?かしら?
……熟れかけの林檎みたいな変わった色だなあ。どうなってんの?
「……よよよよりによってフィ、フィルル姉さま……!?ファーレン姉さまは…!?で、でもお声が…何故です?あのお声は…どなた?」
……え、あの貴族の人にタチ悪く絡んでるのって、フォーナの身内なの?
いきなりのエンカウントかよ。
姉さまと呼んではいるけれど…どう見ても顔が青ざめているし…。
もしかして…あの人、悪役令嬢だったりするのかしら?
いや、それにしては頭が悪そうね……。
もしそうだとしたら…歴代一番頭悪そうな発言だ。
正直、芸風を変えてきすぎと言わざるを得ない。
それに声が違う?どういうことなの?
どうしてフォーナの…ええと、血の繋がらないお姉さんがロージアと同じ声?
……風邪とかじゃあ、無いようね。滅茶苦茶喚いてるもの…。
フォーナの姉、喚き蝙蝠フィルル登場。
コイツ、パーフェクトなヒューマンより要求が高いなと書いてから気付く…。




