20.飾られても派手にはならない
お読み頂き有難うございます。評価、ブクマも有難うございます。
夜会の準備に結構使いますね……。
アローディエンヌがこの拙作始まって以来に着飾りますが、大して盛り上がっていませんね。
特に豪雨でもないし、おじゃんになりそうにない、普通に曇りの日……。
うーん、普通に開催されるわね、夜会……。
こっちは行く側だからまだ気楽だけど、準備する側からしたらお天気って重要よね……。
流石にお天気だけはどうにもならないわ。
で、あの後夜会の詳細…と言うより概要を聞いたけれど、
どうやらメインは国王陛下のお嫁さん探しみたいなのよね。
……ロージアが上手い事攻略してれば起こらなかったであろう出来事かあ。
でも彼女がお妃とか……駄目だこりゃって結果にしかならんな。
それにウォレム様エンディングは……どっかの素敵なお家で穏やかにお茶してたけど、ロージアの立場は明らかになってなかった。
ルディ様のは結婚式だったけど。でも王太子妃の記述は無かった気がする……。
……今から考えればお二方とも身分的に…愛人ってケースも有るんだな。
まあ…王子と王弟だもんな。
更に今ウォレム様は国王陛下だし。
……現実的に考えてこの国って……身分が重要絶対なのよねえ。
例外は有るかもだけれど…例外は偶に…イレギュラーだから例外なので有って……。
そう思うとあのゲームエンディング、それから二人はめでたしめでたし…でも無かったのかしら。
まあ終わった事を考えても仕方ない。
今回の夜会は、お独りの身の上である国王陛下の為の夜会では有るが、陛下お1人だけでは客寄せ効果が薄いと。
沢山集まる婚活中の国内外のお嬢様方の為に、何人かイケメンを用意しとかないと、ってことか。
失礼な話よね。いいじゃないの国王陛下だけで。
寧ろ、国王陛下の総ハーレムなぐらいにしといた方がいいと思うの。
……でも義兄さまそしてルディ様、レルミッド様…が加わると。
分かるけど……ルディ様以外滅茶苦茶ミスキャストじゃないかしら。
顔はそりゃあ滅茶苦茶宜しいわ。全員素敵だし、許されるなら一日中ガン見してたいわよ。
出来れば離れて。
でもね…対外的にも猫を被らない人選過ぎよ……。
滅茶苦茶無視されるか、底抜けに冷たいか、恐ろしい程噛み付かれるか…。
只の想像でも酷いな。
私が他国から招待された立場なら、迂闊に声を掛けず慄いて帰りそうよ……。
義兄さまとレルミッド様相手なんて。
そしてサジュ様…はお仕事らしい。残念だわ……。
あの方が一番普通の対応を……ああでも別にゲーム中では女慣れしてなかったな。
……ルディ様が一番見てて心配ないかしら。
でもちょっとキャラ思ってたのと違ったしな。どうかしら……。
「アローディエンヌ様、少し失礼します」
「……ぐえ」
たった今着せ替えられ中……。5人くらいの使用人に囲まれてるわ。
夜会用のコルセットってアホほど締めるのね…。こんなんだっけ?
貧相だから凹凸を付けたいんでしょうけど…盛ろうが絞めようがあんまり変わらん気もするわ。
そして服だけれど……何つーのかしら。
飾りは豪華だけど、本体は偽物のプラスチックのクリスマスツリーになった気分がするわね。
いや、アレはアレでいいのだけれど……。
でもどう着飾っても所詮モミの木(本物)見たら落差スゲーみたいな感じがさあ。
あ、多分此処にクリスマスとかは無いわ。
でも聞いたところ恋人だか変人だかの祭典はあるらしい。
……ゲームでは無かったなそんなイベント……?
まさか次回作で有ったのかしら。
しかし恋人は兎も角変人の祭典って何なのよ。
聞き間違いであってくれ、変人の何を祝う気なんだ。知りたくない。
大きい鏡には自分が映っている。
そばかすが若干浮いた鼻と、あんまり外出ないから生っ白い顔色が色々塗られて多少赤みを乗せている。
……つまり大して変わらんって事だ。
折角化粧して貰っといて何だけど、多少健康そうなモブになったって位だな。
いやー、モブだわーって。何処に出してもモブだわー。
…って最近も結構激しいめに自分のモブさを思い知ってたな。
別にいいけど。
義兄さまが用意した衣装が……ド派手でなくて良かったけれどね。
ドレスは肩を出さなくて首が詰まっている。
バーガンディっていうの?赤褐色と言うか暗めの赤で…
チョコクリーム色のアンダードレスって言うの?の上に被せた意匠でまあまあ華やか。
……何だっけ。興味ないから全然聞いてないし忘れたけれど。
まあ、兎に角貧相さが……3割減くらい(当社比)しそうな上品なドレスだと思う。
流行には全く詳しく無いからな。
だって自分のファッションとかそんなに興味ないのよね。
……でも、貴族の子女として女子力無さ過ぎかしら。
……駄目よね、これでは。仮にも女なのに……義兄さまに衣装関係放りっぱなしって。
干物っぽいわ…。否定はしないけど。
夜会終わったらちょっと自分でも努力してみるか……。
まあ……この夜会ドレスは……ピンクのフリフリ地獄でなくて本当に良かった。
子供の頃は……義姉さまと揃いで、結構ピンク多めでフリフリ地獄を着てたんだよなあ。
姉妹にフリフリなお揃いって……可愛いんだろうけどな。
でも但し美少女姉妹に限るって奴よ。
モブが着るとな、埋まるんだ。服に負けるどころじゃない。
負けるならまだ敗者として存在出来るじゃん?
でもな、派手さの前には、モブつまり無個性など消え失せるのよ。
いやあ、当時は顔面偏差値が高低差有りすぎて…最早別ジャンルだった。
モブと美少女使用例です。
お買い求めの際は参考比較してみてください、みたいな?
最早次元が違いすぎて悔しさとか遥か彼方な感じよね。
それにあの服共は…まあ、再起不能にされた奴ばっかだったから、
ある意味ピンクでフリルは戦友とも言えなくないか。
今は最早無理と言うかキッツいだけのジャンルと化したけど。
美少女は美女……いや美青年へ、モブはモブへ。
進化?いいえ、ステータスそのままのスライド移動でデカくなっただけです。
「アローディエンヌ様、お足元を」
使用人がまた寄ってたかって何かを調整している。
何か疲れて来たわ。まだ何かやるのだろうか。あ、アクセサリーか。
アクセサリーもこんなに着けたの……初めてね。
どれも不思議なアクセサリーばかり。
左耳にイヤーカフ…のようなもの。右耳にピアス。ネックレス。
左手に腕輪。右足にアンクレット。
……いや、多くね?
多いよコレ。
絶対に多いわよ。
鉄製なら囚人ですか?ってくらい鎖と金属に塗れてんのよ。
何でや。
正式なマナーって……耳と首と指輪位で良くなかったっけ。
そんで、手袋だっけ?
こんなに多いのに、ケバいとかジャラジャラ鬱陶しいようには…見えないのが凄いけどさあ。
そして重くない。……何なんだ、その超高価そう!みたいな感じが怖いわ。
そしてマナーしきたりその他色々!!無視っぽいな!!
どれにも深紅から薄い青にグラデーションになったドロップ状の石がぶら下がっていて、動くとシャラシャラ軽く鳴った。
…これもあって、飾りだけ場違いに豪華なクリスマスツリー(プラスチックの本体)気分が抜けないのよね……。
特にイヤーカフとネックレスと腕輪に、やたらと石はぶら下がっている。
滅茶苦茶繊細で綺麗だけど…どっかに引っ掛けてひとつやふたつ無くしそうだわ。
高そうだし……。あんまり動かんようにしないとな。
……それにしても、何でこんなに飾るんだろ。
頭に防御力の無い割には色々付いた帽子?ヘッドドレス?まで装着されたわ。
主役は義兄さまで私はオマケ……なのだけれどねえ。
あ、違うわ。ガチの主役は国王陛下だった。お妃さま探し!!
いかんいかん。その他大勢賑やかしとして参加するのに、主役を間違えるのはいかん!
顔に出ないだろうけど、うっかり言ったりしたら超不敬だわ!!
「アローディエンヌう、仕度出来たかな?」
義兄さまも相変わらず暗めの色彩だ。
上着は私と同じバーガンディ。下の服は茶色で、濃い茶色ーのベストは地味と言ってもいい。
まあ、顔が派手だから服が地味でも華やかなのよね。
珍しく左手の中指と親指には金色の指輪が光っている。
親指の奴は…シールリングよね。手紙に使う、ウチの紋章を蝋垂らして封印する指輪。
たまにしてるのは見た事有る。
でも中指の奴は初めて見るな。割と幅広の指輪に濃い青の滴状の石が嵌まっている。
若干私の付けてるアクセサリーと意匠が似ているような…。
おんなじ所で作らせたのかしらね。御用達のお店沢山有りそうだもんな、ウチ。
まあ、何の格好してても退廃的イケメンだからなあ……。
義姉さまの時は結構明るめの……でもないか。濃い目の色合いなんだけどな。
まあ義兄さまならショッキングピンクでも真っ白でも真っ黒でも何でも似合うと思うわ…。
極端な話、ダサTでもダサくなんないんだろうな……!くそう、チートイケメンめ。
「義兄さま」
「わあ、似合うねえ可愛いねえ!閉じ込めて剥きたいなあ」
感想言う前にセクハラされた。
……後、物騒だなおい。
ゆで卵じゃねえんだから、出会い頭に止めろや義兄さま。
「いやふざけないで貰えますか。コレ着せて貰うのアホほど時間掛かったんですのよ」
「勿論、何時も剥きたいなあって思うほど可愛いけどねえ」
「……ゆで卵の殻でも剥いといてください」
「いいよ、アローディエンヌの分も剥いてあげる」
いや、何で私がゆで卵食いたいみたいな話になってんのよ。
大体この格好で食える訳無いだろ!
「向こうに行ったら、別にマナーとか気にせず誰彼無視したらいいからね」
「何でや!只の無礼者じゃありませんの!!」
「後、別に名乗らなくていいからねえ。視線を合わせる必要もないからあ」
「そこまで!?社交の場ですわよね!?」
「だってえ、あの場には基本にこやかな屑しかいないよ?
そんな知り合いもどきが増えたら害悪だもん」
「……散々ですわね」
私の世間知らずさとロージアに付け入られた経歴から
「そんな義兄さま、普通の人もいるんじゃないかしら」……とは反論できんな。
それに……一応私の身分って筆頭公爵の義妹。
身分やお金目当てに寄ってくる人も居るわよね。
サジュ様にも先日ご忠告頂いたことだし、初対面でにこやかにされて、騙されても困る。
でもなあ、ある程度は大人のマナーとして必要じゃないかしら。
義兄さまの評判……あんまり良くなさそうだけど、私が更に下げるのもちょっとねえ。
こういう場合は大人しくにこやかにしてろとか……言わないのよねえ義兄さまは。
それに、強制的に私の面倒を見させられるレルミッド様のお家の面子とかもあるじゃない…。
アルヴィエ侯爵家…代々近衛を輩出されてるお家柄なのよね。
知らなかったわ、そんなお家の方だなんて。お母様が侯爵家のお出なのよね。
ゲーム中は全く出て来なかったな……。と言うか家族の事殆ど聞かなかったし……。
……あれ?何でアレ……恋愛エンディングに行けたんだ?
「だから、鳥番の側から離れちゃ駄目だよ?」
「はぐれたら道を聞いてウチの馬車を探すか、最悪駅馬車で帰りますわよ」
「もおー!もしはぐれたら僕を呼ぶのお!分かったあ?」
「はいはい」
「はぐれなくても呼ぶんだよアローディエンヌう」
何でや。
私にかかずらってる暇ないでしょ。夜会でも義兄さまは色々有るんだろ。
……妙齢の美女やらに囲まれると言う…華やかな社交のお仕事が。
……あー、何でかイラッとすんなあ。
いかんいかん。昼ご飯を少なめにしたのがいけなかったかしら。
血糖値って大事よね。
「用事もないのにお忙しい義兄さまを呼びませんわ」
「ええー聞き分け良すぎるの寂しいよお…」
義兄さまが私の指をきゅっと握ってきた。
……いや、別にちょっと離れるだけでしょうが。
「でも…我慢する。今晩だけだし」
「何の我慢ですか。大袈裟な」
ああー、面倒だなあ。
結局フォーナの言ったことも…気になるし。
「フギギ」
「……あ、フロプシー」
茶色の塊がてしてし私の足を叩いている。
そうそう、名前を付けたのよねこのウサギ?に。蝙蝠寄りの名前は思い浮かばなかったからさあ…。
ウサギで凄く頭を使ったわ……。前世の記憶フル活動……したようなしてないような。
……まあ……時計じゃあ微妙でしょ。3月も今3月じゃないでしょ。
で、ウサギが出てきそうな話って……他に有るかなーと思ったら、アレよ。
マクレガーおじさんに追いかけられるウサギの妹さんの名前を失敬したのよね。
子沢山な方ね。その内赤いベストでも作ったら着てくれるかしら。
今はリボンで出来た首輪を付けているけれど。
何色がいいかって見せたら、偶然かもしれないけれど臙脂色を選んだから臙脂ね。
「ブブウ」
「あ、浮かんだ…」
何度見ても謎だな、この浮き方。羽も動かしてないのよ。
それなのに…この小さいとは言えウサギボディを浮かすとは…。
あ、一応風魔法?らしい。
すげえな。人間である私は全く魔法を扱えないと言うのに。
ウサギ?にも負けるモブさって……。
「ちょっと、邪魔しないで」
「ウサギ?に何を言ってますの。どの道この子も一緒に連れてくんでしょうに」
「そうだけどお。これからアローディエンヌと城内でお別れするんだから空気を読んで」
相変わらず無茶苦茶だわ義兄さま……。
ウサギ?に何を求めとるんだ。空気は読まんだろ、生き物なんだから。
義兄さまがフロプシーを押しのけようとしたら、フロプシーは避けて私の肩に乗っかった。
……おお、流石浮いてると軽やかと言うか。
モフモフが頬にくっついてちょっとくすぐったい。
「ちょっと、アローディエンヌのドレスに毛が付くだろ。
気が利かない蝙蝠ウサギだなあ」
「ブギュウブ」
「別に気にしませんけど」
「ブブウ!!」
「……やっぱり、こんなのと手を組むんじゃなかったかな」
だからウサギ?に何を求めてるんだよ。
でもちょっとフロプシーって、人が言ってる事分かるんだろうか。
鳴くタイミングが結構……合ってると言うか。
「義兄さま……大人げない事はお止めくださいな。相手はウサギ?ですのよ」
「だってえー」
ブツブツ言いながら、義兄さまが私にすり寄ってきた。
……何でや。
ドレスがあるからあんまり力一杯ではないけれど、其処はまあ手加減するんだな。良かったわ。
「いや、離して頂けません?どっちにしろ明日にはいつも通りでしょう」
「やだあ」
「やだあじゃなくて」
そろそろいらっしゃりそうじゃないの…。
頼んだもう二人の方々が…。
「アロンさあーん!!」
「ほら、いらっしゃいましたし!」
「……空気を読まない奴が湧いて出たね」
「頼んでおいてそれはないでしょう、義兄さま」
「……ルーロが使えればなあ」
「そう言えば今回はいらっしゃらないんですわね」
そう言えば出来る臣下、ルーロ君はそう言えば今回姿を見せていない。
ドートリッシュも居ないし。
「……ルーロはコレッデモンの伯爵だよ。陛下の婚活夜会には流石に突っ込めないよ」
「……成程」
それに既婚者だもんな。
しかし婚活夜会って……なあ。……他の言い方無いもんかしら。
王様のお妃様探しなんて、ときめく一大イベントの筈なのに……台無しだわ。
話が話なら南瓜の馬車に硝子の靴の出番じゃないの。
是非お近くで観たいなあ、そんなベタな現場。
……あ、アレは王子様のお妃様探しか。
でもルディ様も居らっしゃるし、そんなに違いは無いわね。
「まあ、待機はさせてるから何か有れば動かすよ、安心してねえ」
「……出来るだけ何事も無い事を祈りますわ」
と言うかルーロ君…何処まで義兄さまに忠実なの。
他国の伯爵様なのに……。お国の事はいいのかしら。
働き過ぎじゃないかしら。心配だわ。
「て言うかお前らさっさと出て来いボケ共が!!」
あ、いけないわ。
早く行かないと……。
盛装なさっているであろうレルミッド様も楽しみ!!フォーナも可愛いんだろうな!
ワクワクして使用人が扉を開けるのを待ったら……。
「お前ら……お揃いとかねーだろ」
「何故フォーナは男の子の格好を……」
私とレルミッド様は互いに同時に突っ込んでしまった。
蝙蝠ウサギの名前が決まりました。湖水地方が舞台の童話より。
次回、レルミッド、フォーナと感動の再会にはなりません。




