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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編2 スキル剥がし編

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81/212

18.勅命と不機嫌

お読み頂き有難うございます。

話は再びユール公爵邸に戻ります。

中々進まないな……。

秋の庭に爽やかな風が赤くなった葉っぱを揺らして吹く。

空は高い。

そしてその空に紺色の短い髪を揺らして浮かぶフォーナ…。

……1時間程経つけど、人が空中に浮いてるのマジ見慣れないな。

風船かってくらいに浮いてるし…何時降りられるんだろう、彼女は。


「…」


結局の話、フォーナから聞けたのは……彼女のあまり明るくなかった生い立ちと、サポートキャラにして、転生者のオルガニックさんを除いた攻略キャラが、全員ゲーム的には…売約済みだと言う事。


……いや、舞台が此処なのかえっと…隣の国なのか知らないけど、

それって有りなのかしら。

乙女ゲーで攻略対象全滅って、始まる前に終わっとるじゃないか。

しかもオルガニックさんは、自分から攻略キャラからイチ抜けた宣言でしょ…。

そんなゲーム展開、有りなの?

いや多少未来が変わるのはまあしょうがないのかもしれないけれど…サポートキャラなのよね?

主人公であるフォーナをサポートしないって…しかも攻略対象の方からも抜けるって…。


…どう考えても…あまりいい印象を抱かないわね。

確定では無いけど、同じサポートキャラとしても、転生者としても。

それにさっきの蝋燭の事も有るしなあ…。

うう、怖いよう。

あの言い方は…ゲームの展開的にも、ファンとしてはちょっとモノ申したいわ…。

ゲームではどんなんだったんだろう…オルガニックさん。

最早さっきのブレブレキャラが焼き付いて、妄想すら出来ないわ…。

…でもなあ、ゲーム中とおんなじだったのって…おられたかしら。

少なくともサジュ様もちょっと違うし、ルディ様は結構違うし、

レルミッド様は別人説を推したい位に違うし。

あ、国王様はキャラ一緒だった気がする。

あんまり喋れてないけど。

…そういや義兄さまもゲーム中と一緒…で無いわね。

まあ…時々結構…悪役令嬢が出るけど。


「お前、説明ド下手くそな割には、やたら昔言われた事とか覚えてんだな」

「え、えへへ。褒められちゃいました。

記憶力は昔から良いんです」

「マジか、暗記科目楽勝じゃねえか」

「あ、それは…覚えるのは覚えるんですが、試験とかではその通り丸ごと出ないと…」

「……」


成程、応用力が無いと…。

あ、レルミッド様が…あの顔を…。

ゲーム中で、ロージアが頭の悪いアホな選択肢を選んだ時の表情をしているわ…。久々に見たわ…。

私に向けられてはいないけど、向けられるとちょっとしたトラウマものね…。

この方基本聡明で頭良いものね…。

素敵ー、理知的イケメンだわー。

常識的だし…うう、嫌われているのが実に口惜しいわ…。

っていけない。ガン見しては。

心の中のオタク特有の気持ち悪さを見抜かれてしまう。


「それで、予知能力と言うのは…置いておいて、義兄さまの件だけれど」

「あ、はい。アレッキアさんですよね!」

「…まあ義兄さまでも義姉さまでもどっちでもいいけれど…今はアレッキオなのだけれど」

「?そうなんですか?アレッキオさんですね!」

「……何で意味分かってねーのに返事出来んだお前」

「?」


……何がおかしいか分かってない顔ね…。

可愛いけれど、何だろう。

大丈夫だろうかこの子って庇護欲が湧きそうで……困るわね。


「……あの、フォーナ。どうしてオルガニックさんは義兄さまの事をご存じなのかしら。」

「そうですね。予知能力だと思っていました!」

「……胡散臭え」


レルミッド様が滅茶苦茶嫌そうね。

まあ…確かにオルガニックさんの好感度が上がりそうな事は、何一つ聞かされてもないし起こってもいないわ。

フォーナには悪いけど。

取り敢えずオルガニックさんの生い立ちでも聞いとくか。


「……オルガニックさんは王族か貴族でいらっしゃるの?」

「いえ、普通のお家の生まれですよ」

「だったら流石に他所の国の貴族までご存じではないでしょう?」

「あ、そうですね!そうだと思います!」


……返事は物凄く良いな。

だが不安だ。この子…本当にサポート要るタイプだな。

心配だ…。どんな未来になるかは知らないけれど。

ゲームとしての攻略対象が事実上全滅してるんだものね。

それでも何でかレルミッド様を引き寄せて、一緒に私の目の前に居るのは、余程の豪運か、ヒロイン補正か。


「……」

「聞けば聞く程胡散臭えな、変態蝋燭野郎」

「えええええ!?結構頑張って褒めましたよ!?」

「……普通人に褒め言葉言う時は頑張らねえ。

そんなの只の太鼓持ちだろうが」

「……わあ、ホントです。レルミッドさんって賢いんですね」


レルミッド様がぎぎ、と音の出そうなぐらい引き攣りながらこっちを見た。

ええ、同意しますわ……お気持ちは、とても分かるわ。

多分この無表情ベースじゃ無ければ、私も似たような顔に変化している筈。


「……義妹、お前コレ引き取らねえか?」


うーん、レルミッド様が何で面倒見てるのか、聞いてもいいのかしら。

タイミングが掴めないわね。


「……義兄さまが怒り狂うのは間違いないので、それはちょっと……」

「ペットみたいに言わないで下さあい!!」

「取り敢えず一旦預かれ。便所行ってくる」


風船の紐を渡すような感覚でひょい、とフォーナの服の紐を渡された。

反射的に受け取ったら…腕が勝手に上に上がった。


「え!?」


何で!?どうして!?

フワフワその場に浮いていたフォーナが…。

途端に引っ張られる感覚が!!


「は、は、はううう!!レルミッドさん!!

魔術!!魔術をお忘れです!!

押し付けてくる風が!!」

「室内にでも籠ってろボケ。流石に疲れた」

「はううううう!!!」

「え、ええええ!?」


強風の日の傘以上に…上空に引っ張られるんだけど!?

何なのコレ!?

どういう事なの、フォーナ!!


「うわあああんアロンさぁん!!」

「ちょ……」


思わずフォーナが私の首に手を回す。

紺色の髪の毛が目の前に広がって、抱き着かれたのが分かった。

私の体重が重しになって、安定したけれど…この体制まあまあ辛いぞ!!

そりゃ女の子の華奢な肩と腕だけど、私そんなに力無い!!

だって長らく引き籠ってたんだもの!!

ああ今何か…ブラックホールに吸い込まれそうな人を助ける人、みたいな疑似体験をしている!!

いや、其処迄強くないのかもしれないが…気分的に!!

空に浮いてる人ってファンタジーだととても思ったけど、現実見るとそんなに快適でない!!

寧ろ大変!!


「レルミッド様早くお戻りください!!」


ああ、もういない!!レルミッド様ったら遥か彼方!!

よっぽどトイレを我慢されていたのか。

スミマセン!!気が利かなくて!!

と言うか室内ならこんなビックリ現象起こらなかったわね!!

義兄さまにキレられても室内でお話すりゃよかった!!

良かれと思ったさっきの私の馬鹿!!


「すみませんアロンさん!!お手数をお掛けしますうううう!!」

「ちょ、動かないで!!手を離してしまいそう!!」

「……何をしてるのアローディエンヌ」

「手を離したら、このフォーナって子が空に浮かんでしまいそうなんです!」

「……そっかぁ」


……ん?

今私誰に説明した?

フォーナが首に齧りつかれてるから視界が凄く狭いけど……。

……まさかのまさか。



「駄目だよアローディエンヌう。僕以外に抱き着くのを許しちゃあ」


この声は………。

うっわあ……義兄さまだよ。

帰ってくるの、早くね?

タイミング、悪くね?


「はわわわわわあ!!

よく分かんないけど、赤い髪に薄い青い目でスッゴイ美人さん…。

噂のアレッキア…アレッキオさんですか!?」


その噂、物騒なんだろうな……。

場違いにもそう思うわ。


「義兄さま!!」

「取り敢えず、アローディエンヌ。

この綿毛みたいに浮かんで迷惑にも張り付いてるのは?

燃やして良い関係かなあ?」

「えええ!?

どんな人間関係でも出会い頭に燃やしちゃいけませんよお!!」


正論だ…。時々正論言うんだなあ、フォーナ。

だが…あんまり良くないわ、フォーナ。

怯まないのはいい事だけれど…勇気と無謀は違うのよ…。

主人公に攻撃力とか無かった筈だし…。

いや、どうなんだろう。

でも、フォーナあんまり強そうに見えないわ…。

頭もそんなに賢くなさそうだし。


「に、義兄さまお平らに」

「……まあ、大体報告受けたけどね」


だ、だよなあ。

ここメッチャウチの家だし。

使用人の目も耳もがっつり動いてるわよね…。


「い、意地悪さんですよ!?意地悪さんが居ますよ!!」

「取り敢えず何時までアローディエンヌに触ってるの。

落ちて」

「お…落ちて!?酷いです!!」

「に、義兄さま、降りてではなく……?」

「アローディエンヌう、動いちゃだめだよお」


え、何!?

疑問に思う暇もなく、何時の間にか背後くっつかれてるよ。

義兄さまの暗い褐色のコートの腕が私を抱き寄せた。


って何しとんのよ!何で義兄さままで私に張り付くの!?

わあ悪役令嬢と新主人公のサンドイッチだあとか、思わなくもないけど中身が私だし!!


「義兄さまぁ!?」

「はあ、いい匂いがするねえアローディエンヌう」


だから首に顔を埋めるな!!

うわあ前後からくすぐったい!!


「はわ、はわわ。……何でそんなに密着されてるんです!?

ごきょうだいですよねえ!?」

「煩いなあ……」


あ、マズイ。この声の感じ、マズイ。

義兄さま、と呼ぼうとしたその時に…。


「いい加減アローディエンヌから手を離せ」


耳元で、義兄さまの冷たい声がした。


次の瞬間


「はえ?」

「フォーナ!?」


ぼわ、と漫画みたいにフォーナが……赤い。


いや、赤いじゃないよ!!

炎!?義兄さま、何したの!?

……まさか、フォーナが、丸焼きに!?

義兄さま、フォーナを焼いたのおおお!?


「はい、おしまい」

「おしまい!?」


え、何!?何がおしまいなんだよ!?命!?

止めてよ折角4作目とは言え主人公に会えたのに!!

いやいやいやいや、主人公じゃ無くてもいかん!!

人殺しはいかん!!


「フォ、フォーナ!!」

「はうううううう」


あ、フォーナが地面に転がってる!!

良かった何処も焦げ…ちょっと襟元が焦げてるわね。

御免…。でも命が助かって良かった…。


「に、義兄さま!!何を為さったの!?」

「疑似的に徴を焼いたんだよおアローディエンヌ」

「し、しるし?」

「その綿毛神官、呪いに掛かってたから」

「の、呪い!?」


何だよその物騒なモンは!?

て言うか呪いなんてそんな非科学的なモンあんの!?

ってこの世界がファンタジーで非科学的だったな。

たまに色々おかしいけど。

……毒と言い、呪いと言い、やべーわ。ついていけるかしら


「ふわあ!!久々の地面です!!はぎゃ!いた!」

「ブウ!ブブブブキュウ!!」


フォーナが羽の生えたウサギに足蹴にされている。

え、……何処から入ったの?ウサギなんて…。

潜り込んできたのかしら…。

結構ウサギって塀とかの下掘って脱走したりもするからなあ。


………んん!?

羽え!?

いやいや!!ウサギは羽なんか生えてないわよ!?

しかも鳥の羽じゃなくてコウモリみたいな皮膜の羽!!

何で!?用途は!?


「な、何ですの、あの…ウサギのようなものは」

「うーん、協力者かな」


やっぱり義兄さまの仕業だった!!


「………ペットを持ち込まれたんですか?」


……珍しいな義兄さまが動物飼おうなんて。

そして珍しい動物だし…。見た事無いなこんなの。


「僕が不在の時、アローディエンヌを守って貰おうと思って」

「………ウサギ?に?」


普通に小さいな。小さめのウサギ?だ。

幾ら私がモブでも…

流石にもう少し大きい四足歩行でないと、守って貰える気がしないのだけれど…。


「はうう!!可愛いけど、ちょっと痛いです!!」


そしてフォーナが足蹴にされまくっている…。

何故だ。恨みでも買ってるのか?何処で?実は知り合い?


「蝙蝠ウサギって言う種類らしいよお」

「……どっちつかずな名前ですのね」

「あのねえ、蝙蝠寄りのウサギらしいよ」

「…寧ろ蝙蝠寄りの生き物って何ですの」


プラスよりのマイナスとかの説明ならまだ分からんでもないが、別の生き物じゃないか。

どういう進化過程を経ているんだ…。

生物苦手だから説明されてもスルーするけどさ。


「はううう助けて下さいいい!!アロンさあん!!」

「あ!!」


そうだった!!

フォーナが未だ地面に転がったままで、ウサギ?に蹴られているんだ!!

……変極まりないけど、ちょっとこのまま放置は酷過ぎる。

私は義兄さまに羽交い絞めにされかけた腕を…


「離して下さいな義兄さまァ!!」


外れねえし!!


「王城がねえ…本当に雑音と異臭だらけで…疲れたよーアローディエンヌう」

「そんな失礼な。ゴミ捨て場じゃないんですから」

「ある意味大正解だよ。賢いねえ僕のアローディエンヌは。

僕も鼻が高いよお」

「もう義兄さま離して下さいったら!」


ジタバタしていたら余計に抱え込まれた!!


「……出やがったな、アレキちゃん……」

「寧ろ君が仕組んだんだろうに。いや、ショーンの入れ知恵か」

「はう!!レルミッドさん!!」


正義のヒーロー(個人的)!!

レルミッド様がフォーナを助け起こしてくれているわ!!

そして何時の間にお戻りに!?

って結構経ったか!?

義兄さまに気を取られて全然気付かなかった!!


「アローディエンヌを利用した挙句、この綿毛神官の呪いを解かせるように誘導ご苦労様。

中々ふざけた趣向だ。許せないな」

「はうえ!?」

「え?」


私とフォーナはポカンとした。

え、何!?


「……フツーに慈善事業じゃ解かねえだろ、テメエは」

「する訳無い。ちゃんと対価は貰うから」

「……」


……コレ、仕組まれていたの!?

フォーナをじっと見たら、青くなってブンブンと首を振られた。

ええと、フォーナは何も知らない?


「……『王様』でもアルヴィエ侯爵家の一員でもいいけれど、ルカリウムじゃない君に対価は払って貰う」

「……ハア?俺が素直にアレキちゃんの言う事聞くとでも思うのかよ?」

「単純な君にも出来る簡単な事だよ。

見てたけど、君アローディエンヌに恋愛的な意味でとことん興味無さそうだしね」

「ハァ?アレキちゃんの義妹に何でちょっかい掛けんだよ、ウゼエ」


……うん、骨身に沁みて分かっているけれど、実際お伺いすると超虚しいわね。

いや別にレルミッド様が私に恋愛的な感情なんて、コレぽっちも無いとは分かっているけれど。

それにしても義兄さま何聞いてんの。

家へ上げるなっつーのを聞かんかった私への精神的お仕置きか何かか?


「今度の陛下の夜会、君がアローディエンヌを全面的に守りなよ」

「「「……」」」


え、夜会?

……そんなモンあんの?


「……や、夜会ですか?」

「……待てやあああああ!!

誰がそんなモンに出るって言ったボケエエエエエエ!!」

「多分強制的に出されると思うよ」

「ふざけんなボケエエエ!!」

「……」


しかも私も出るとは言ってないし。

それにしても…珍しいな。

何時もみたいに義兄さまが張り付かないの?


「アローディエンヌう、夜会でね、僕は偽装独身者になれって勅命を受けたの」

「へえ」


へー独身の偽装…。

よく分からんが、やっぱり私と義兄さまは結婚出来て無かったみたいね。

……そんな気がしてたけど。

ん?何かチクチクイラッとするな。


「でも君以外に靡く訳が無いから心配しないでね」

「はあ」

「……ヤキモチ妬いたりしない?」

「妬くようなことをなさるんですか」

「しないよ!!」

「そうですか。何だか知りませんが頑張って下さいね」

「……ちょっと機嫌悪いね?」

「いつも通りですが」


……何で義兄さまが独身と偽らないといけないんだ?

大体夜会ってアレだろ、婚活の場だろ?

……山ほど美女が来るんだろうな。

……それが義兄さまに群がる訳か。

……子供の頃は山ほど群がってたの見たけど…大した感想も湧かなかったのにな。

うーむ何だコレ。

陛下の勅命ならお仕事の一環なんだろうし……

そんな疚しい事でも無かろうに。

そうよいつも通りだ。

私はいつも通りの塩対応無表情キャラ、アローディエンヌだ。


「……痴話喧嘩も大概にしろやボケ」

「そう、鳥番にもそう見える?」

「……アレキちゃん、俺に笑うな怖えわ」

「はう、とってもカッコいいですけど何だか背筋が寒いですね。

アレッキオさん…」


……何で義兄さまが上機嫌なのよ。

さっきまで苛々してた癖に。


「ブキュウ」


足元で鳴いた茶色の毛玉の塊がたしたし、と私の靴に前足を乗せた。

……得体は知れないけれど…垂れた耳が可愛いな。

ちょっと気が晴れた気がするわ。


…アローディエンヌがヤキモチを覚えた!!(だが塩対応)

次辺り夜会の話の予定。

……何か、やっと貴族モノっぽくなりましたね。夜会大好き!


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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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