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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編2 スキル剥がし編

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78/212

15.蝋燭から齎されるのは

お読み頂き有難う御座います。

序盤からちょくちょく名前だけ登場していたニックさん、登場(仮)。



「こ、こうなったら、ヒミツ兵器です!!」

「ハァ?……何だそりゃ」


フォーナだけが盛り上がって、レルミッド様の目が白けているわ…。

私も多分同じような…いや、変わらん顔をしているか。

多分だけど、やっぱ表情が動かないなあ…。

義兄さまは動いてるよーとか言ってるけどな。

…義兄さまって、たまに私が分からんジャンルで私を見ている気がするわ。


「アロンさん!燭台お借り出来ませんか!?」

「燭台ィ?」

「え?……こんな昼間に?」


何で燭台。

しかも室内でもないのに。まぁ良いけど…。


「て言うか望み通り連れてきてやっただろうが。

いい加減俺を解放しろやボケフォーナ」

「大変有難く思っておりますレルミッドさん!!」

「サッサと保護者とやらと合流しろボケ。

俺はこんな危険地帯に居たくねーんだよ!!」

「危険地帯!?

アロンさんが快く招き入れて下さった、こんなに素敵なお家が危険地帯だなんて…何てことを仰るんですか!!」


いやあまあ…つい…好奇心で招き入れてしまったわね。

今は反省してるわ。

そして危険地帯との認識ですかレルミッド様。

お、お気持ちはちょっと分からんでも無いけど…

一応普通の屋敷…の筈。

取り敢えず私は住んでたし…トラップ床とか毒沼とか溶岩沼とか無いし…。

矢の仕掛けも無いし、罠に掛かった事無いしな…。

私も全部の部屋に入ったこと無いから…もしかしたら本棚弄ったら、地下室くらいは出てくるかもしれないけど。


「煩えよ!!俺が何に嫌がろーと勝手だろうが!!」

「どんなご事情が有ろうと、好意を差し向けて下さった方に、そんな乱暴な物言いは褒められたものでは有りません!!」

「煩えな説教ババアかお前は!!」

「説教では無く人としての心得です!!」


え、な、何だ…。

ボケっとしてたらフォーナとレルミッド様が何時の間にかモメてしまっているぞ。

コレは…お止めするべきなの!?

でも、攻略対象とヒロインがキャイキャイやってるの可愛い気からもっと見ていたい…。


「……」


…アレ、何だ?テーブルに燭台が生えた?

あ、キョロキョロしてたら使用人が燭台持ってきてくれたのか。

何時の間に…。

……うーむ、筒抜けだったのか。声、大きいもんな…レルミッド様。

ゲーム中では其処迄感じなかったが…中身?が違ったもんな?

うーむ、本来のレルミッド様って喧嘩っ早いんだなあ…。

其処も萌えるけれど。


「あの…取り敢えずどうぞ、燭台と蝋燭ですが」

「ああ!!有難うございますアロンさん!!貴方の御優しい心に感謝と感激を!!」

「ハァァ!?お前も何意味分からねえコイツの要望聞いてんだボケ!!

主体性を持てや!!」

「す、すみません…?」


お、怒られた…。怒られてしまった。

いや、この間から結構怒られているな、レルミッド様に…。


「……ええっと、火打石火打石…」


フォーナは…マイペースね。

服を探ってるみたいだけど…何で火打石なんて持ち歩いてるの?

まさか神官しつつ冒険者でもしてるのかしら。

ってRPGじゃないんだしね…って分からんな。

観察していると、フォーナがガチャガチャ火打ち石を打ち付け始めた…けど着かないみたい。

空中だもんな。


「おい…ざけんな空中でやんなよボケ!!火花が風に散るだろーが!!」

「す、すみません」

「もういい貸せボケ!!」


……レルミッド様、もしかして滅茶苦茶面倒見良い?

口はお悪いけど。


レルミッド様は慣れておいでのようで、火打ち石をフォーナから奪うとパッと燭台に火が灯った。

フォーナの服の紐も離してないのに器用だわ。

昼間に蝋燭かあ。

……今の生活に慣れると、何か変な感じね。

前世だと普通に昼間の屋外でも照明がギラギラしてたのに。


フォーナは短パンから…あ、なんかウエストポーチみたいなのが下がってるわ。

成程、さっきの火打石はアレから出したのね。

あんな薄着によく入るなーと思ってたんだよ…。

ボーっと見ていたら、ポーチから塩の入れ物みたいなのを出して

そして蓋を捻っている…。


え、何だアレ。

何で蝋燭に塩?


「ふぬぬ…蓋が固いです。ええっと、ニックーニック聞こえますか?」


フォーナが…何故かその中身?を燭台に振り掛けて、しかも蝋燭に話しかけ始めてしまった。



「「……」」


何してんだこの子。

ツッコミを入れるのも忘れ、目を見張る私とレルミッド様。

マイペースにフォーナは蝋燭に話しかけている。

……ええと、どういうこと?

何かこう…それっぽい魔法?ってどれっぽいんだ。

で、でもレルミッド様の反応からして、メジャーな感じでは無さそうね。


「ニックーニックー」

「……いや、何をしてるのかしら?」

「蝋燭通信ですよ!」


……何だそりゃ。

蝋燭業界の業界雑誌みたいな名前ね…。

有るのかどうか不明だけど。

って、え?

通信!?


ちょっと待て。

通信なんて言葉…義兄さまには通じなかったわ。

どういう事!?

フォーナの国には…通信手段が有る!?

しかも何故か…蝋燭で!?

どういうメカニズムで!?魔法!?


「ツウシン?何だそりゃ」

「遠くの相手とお話が…出来るらしいです」

「ハァ?らしいィ!?」

「湿気が強いと上手く行かないらしくって…あっ、ニック!!」


素人目にはサッパリ分からないが、蝋燭に何か変化が有ったらしい。

フォーナの顔がパッと明るくなっていた。

流石主人公、ふとした瞬間まで可愛いな。


『フォーナ!?』


ってえ!?

蝋燭から男性の声がする!?

で、電話みたいなもん!?

しかし何故に燭台なの!?あ、蝋燭!?


「ろ、蝋燭からこ、声が…!?オバケか!?」

「いえ、おばけでは無く、ニックです」


何だかレルミッド様の顔色が宜しく無いようだけれど、大丈夫かしら。

そしてまた出て来たニックさん。

だから誰なんだ…。


『え、何でそっちレルミんの声がするんで御座るか?』

「……れるみん?」


……久々に聞いたなその呼び方。

レルミッド様推しが呼んでたのを聞いたこと有るわー。

凄くテルミンの様だと当時は突っ込まれていたわね…。懐かしいわ。


いや待て、そっちより、何だその語尾……。

……もしかして、もしかするのか?

この、蝋燭から聞こえてくる謎の声は…


私と同じ、転生者!?


「あの…もしもし?」


…でも違ったらどうしよう。

取り敢えずコレ、私の声も届くのかしら。

試してみよう。


『!?ちょ!!』

「ちょ?」


ちょ?何だ?


『ちょっとフォーナ!!フォオオオオオナアアアアア!!!』

「はいニック!」

『可及的速やかに報告せよ。

お前の横に居るのはどちら様でどなた様だ!?』

「はいニック。レルミッドさんとアロンさんです!!」

『よくやったキタコレエエエエ!!!』


う、煩え!!!!

蝋燭から響いてくる大声に私とレルミッド様は耳を押さえると言う、珍体験をする羽目になってしまった。

この蝋燭、マジで煩い!!

スピーカーでも内蔵されてんの!?

いや、でも普通の燭台だよな!?


で、でもコレ…ニックさん!?結構重症?なオタクの人…!?

乙女ゲームやるタイプの男性が、転生者!?


「クソボケに…煩え!!」

「う、煩い…」

「やっば!!マジやっば!!

アロンたん!!アロンたんのお声キュンキュン!!

て言うか何で拙者テレビ電話機能付けなかったのうわああああん!!」

「ハァァァァ!?何なんだこの蝋燭…!?

ヤバいオバケが憑いてるとしか思えねえ!!」


え、お化け入りの蝋燭…。

流石にそんな物は無いだろ!?

でもヤダ有ったらどうしよう怖いけど!!

そしてこのニックさんって人の喋りも、まあまあ何だか危険な気配!!声がデカくて煩い!!


「い、一応普通の蝋燭の筈なんですが」

「嘘つけえええええ!!

最早アレキちゃんちに有るモンは信用出来ねえええええ!!」

「おおお落ち着いて下さいレルミッドさん!!

この蝋燭は無害です!!ちょっとあっちでニックが興奮してるだけです!!」


そ、そうなの!?本当なのフォーナ!?

それに、ニックさん?

興奮って言うか…何か、ちょっと…ジャンルが…違う気がするけれど。


『こっほーん、ちょっと荒ぶっちゃった。

スマンで候、御免ねアロンたんレルミん』

「その呼び方止めろやボケエエエエ!!ぶっ飛ばすぞ!!」


あ、やはり気に入らないご様子ね。


『サーセンスミマセンレルミッドさん。

お話の仕方が変わってますねクールっすね』

「……お前、何モンだ?」

『ああ是非とも生でお顔を見てお話ししたいなあ。アロンたんも勿論ご一緒に』

「よし死ねやド変態」

「あの…」


どうしよう。

まさか二次と三次が分けられない人?

結構な変人だわ。


「義妹お前は黙ってろ。

お前は気に食わねえが、流石に変態蝋燭野郎は棄て置けねえ」


怯えてしまったら、何とレルミッド様が庇ってくださった!!


『アロンたんを庇うレルミッドさんハアハア』


こ、懲りないなこの人。

そして……あんまり考えたくないし、自惚れでも気のせいでないとしたら…この人、もしかして…私に好意を抱いて…るのかしら。

転生者でかつ、…まさかの私推し!?

ええ!?有り得ない何でや!!

義姉さまとかロージアじゃなくて!?

もしくはフォーナもとっても可愛いのに!?


しかし…何度考えてもこの反応…。

物凄くオタクが萌えキャラに悶える時の反応に聞こえるんだけど。


……嘘だろ。私に?

この貧相極まる無表情モブサポートキャラ、アローディエンヌに!?

……義兄さま以外にそんな特殊趣味が居るとは…世界は広いな。

意味が分からん。

しかもどう聞いても転生者でしかない…この話っぷり。

て言うか一人称拙者を実践する人なんて本当に居たのね…。

失礼ながら都市伝説かと思っていたわ。

実際そんな喋り方する人と付き合い無かったもんだから…。


「あああ余計に何か怒らせちゃったじゃないですかあ!!

ニックったら!!」

『そだったそだった。

で、何がどったのどう拗らせたのフォーナ。

お前がまた説明理屈抜きで思いの丈をぶちまけたの?

おニイさんてばそれ止めろって、吐いて死ぬほど言ったでしょ』

「自分なりに頑張ったんですよお」

『うんうん説得の時に脊髄反射ダメゼッタイ。

結果社会で過程を褒めてくれるのは子供の時だけだぞお』

「…コイツ何か死ぬほど腹立つ喋り方しかしねえな」

「……そう、ですわね」


それに…この人のキャラがよく分からないわ…。

ブレブレじゃないかしら。


『えっとー、知ってる方も知らない方もー、拙者…いや、ボクはオルガニック・キュリナっていいます。

ヨーロシークね?』


取り敢えず一人称はボクにするみたいだわ…。

あんまり子供の声に聞こえないけど、お幾つなのかしら。

……何だか、素なのか演じているのか、よく分からなくなってきた…。


「したくねえわボケ!!」

『冷たい反応もアザッス!ゴチっす!』

「……あの、レルミッド様差し出がましいようですが、反応すればするほど思う壺かと」

「……分かってる煩えな義妹!!」

『駄目っすよレルミッドさん。

ボクにキレるのは良いけどアロンたんにキレちゃあ』

「ハァ!?大体テメーが苛々する喋り方してんだろうが!!」

『てっへペロリーン。

よくオルガンに似てる名前だねって言われるけど、

個人的にはオーガニックだと思ってます』

「!?」


……オーガニック…。

通じない。その言葉は通じない。

この世界にはそんな言葉は、無い。


さっきから、どうして?

自分は転生者だと、駄目押しして来たの?


「……ハァ!?おーがにっくって何だよ」

「分からないならいいんすわ、レルミッドさん。

アロンたんはどーうかな?」

「……」


私は背中に汗が伝うのを感じた。

……コレは、どう答えるべきなのかしら。

此処にはレルミッド様も居る。

只でさえ私は彼から…疑惑を向けられている。

迂闊な返事は、出来ない…わよね。


……オルガニックさん、彼は…一体何を企んでいるのかしら。

只単に…ウザキャラを演じている訳では、無いのよね?


「義妹?」

「……アロンさん?」

『あはっ、いやぁお顔を見て是非ともお会いしたいなあー。

生でアロンたんのお返事をお耳に入れたいなあ』

「……貴方は、一体何なんですの」

『もしかしたら、君と一緒なのかも?なーんてね』


私と一緒?

それは、転生者として?

それとも……他の何か?

嫌だ、意味が分からない。

何だか心がザワザワする。


「フォーナ……彼は、一体どういう方なのかしら」

「ニックは」

『ゴメンね出会ってないけどお話ししたばっかで

ちょっとビビらしちゃったかな?

でも、大体分かっちゃったで候』

「……」

『いやあやっぱりお会いした…』


……嫌だ。

……何だか知らないが、嫌だ。

……私、三十路以下略なのに。

きっと、前世でもっと嫌な目に遭ってる筈なのに…。

精神年齢、この体に引き摺られてる?


分からない。

……何か、反応しなきゃ…。

喉がひり付く。

蝋燭から目が離せない。

その炎から……。


ぶしゅっ。


私の目の前で、燭台の炎が消えた。



え?


「熱っ!!クソボケが!!」


え?あ…レルミッド様が手を振っている。


「……義妹、お前は気に喰わねえが」

「は、はい…」


どうやらレルミッド様が、何と素手で蝋燭の芯を抑えて消して下さったようだ。


声が聞こえない。

その事にほっとして、肩の力が抜けた。

手が震えているのが見える。

知らぬ間に俯いていたらしい。

目線を上げると真っ直ぐな紫の瞳にぶつかる。

混じりっけ無しの、澄んだ強い目だわ。


「何だか知らねえが、其処迄怯えてんのに放置は出来ねえ。

お前はこの変態蝋燭野郎に関わるな」

「え……」


薄く煙を上げる燭台は、普通だ。

何の声も聞こえない。

………怖かった。

怖かったのか、私。

キャラがブレた胡散臭い人(転生者)がまた増えましたが、本体は出ていないと言う…。

蝋燭から声は出ていますが、ホラーでは有りません。ジャンルは恋愛です。

そして蝋燭業界の方、業界紙とかで蝋燭通信が発行されていたらお詫び申し上げます。


あ、作中の蝋燭と燭台自体は呪われていません。普通です(笑)


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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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