12.怪しくないとの自称は怪しい
お読み頂き有難う御座います。
謎の浮いてる女子から逃げようとするが逃げられない感じからスタートです。
「うーむ…。助けてしまったからにはお嬢さんを送らざるを得ないな」
「ええ…マジかよ。そんな面倒くせえの嫌だぜ」
別に其処らに放置でいいじゃねえか…。
浮かんで飛んでいっちまうかも知れねえが、木の幹にしがみ付くとか有んだろ……。
「お兄さん嫌がらないで下さいいいい!!
このままでは私、物理的に天まで召されてしまいます!!」
マジか、どんだけ浮くんだよ……。
妹とやらもよくそんなもん姉ちゃんに状態異常付与出来んな…。
どんな喧嘩でそんな事になるんだ……。殴り合い位にしとけや。
「せいぜい塔の天辺くらいじゃないか。体重とか服の重さも有るし」
「うう…オールちゃん…其処迄鬼畜さんじゃ無いと信じてます…。
あ、オールちゃんは妹の名前です…」
いや、妹の名前とか聞いてねえし。勝手に情報流し込んでくんなボケ。
「はっ!!そう言えばお名前をお伺いしてませんでした!!
私、フォーナ・トドロンと言います!!」
「……へー」
「そうか」
だから勝手に名乗られても困るっつーの。
俺らのしょっぱい対応に女は愕然としたみたいだった。
顔の間近くで目ェ剥いてくんな。怖いだろうが。
「な、名乗って頂ける気が全く感じられません!!
私怪しいものじゃ有りません!」
いや、充分怪しいだろ。こんな豪雨で木に引っかかってる奴…。
しかも移動魔術でもないし状態異常で浮いてるとか聞いたことねえ。
……物凄くややこしい気配しかしねえ。
「俺ら今面倒ごとに関わりたくねえし」
「申し訳ないが見知らぬお嬢さん、
君とはただの通りすがりとしてお別れしたいんだ」
「そんなあ!!見た所お二人共凄い魔力をお持ちですよね!?」
「普通だ」
「普通だな」
「そんなシレッと大嘘吐かないで下さいいい!!
この今良い感じに押し付けている風の力といい、他人のパラメータ観察といい、そんな事を普通の人は出来ませんからああ!!」
コレが俺らの普通だっつーの、煩えな……。
「助けてやったのに因縁付けんのか?アァ?」
「寧ろ助けて頂いたから、好意を以ってお話しているんじゃないですか!!」
「僕らの事は一切合切気にしないでくれ。
物語でも有るだろう、人助けに報酬を求めない感じの……」
「まあ、本来なら貰えるモンは普通に欲しいけどな」
「……レ……我が従兄、要らんことを言うんじゃないぞ」
あ、イトコ呼びで行くことにしたのか。
……まあどっちにしろ面倒ごとになりそうだから
ルディ呼びは出来ねえし。
……名前バレるよりは、まーいいか。
しかし何でコイツ、俺らに喰いついてくんだよ……。
押しの強い女だな。
結局俺がこの女……フォーナを抱えて歩く事になっちまったしよ。
体重は全く感じない。
空き袋抱いてるのと変わらねーが、見た目が……なあ。
…たまに街中で見るボケみたいなバカップルみたいじゃねえか、コレ。
まあ、幸い誰も通らない大雨で良かったが……
たまに通る馬車から見えてねえか心配だ……。
雨の中……いや天気関係ねーや。
女抱えて歩いてるとか……間違いなく「うわ、バカップル、頭沸いてんなマジウゼエ」って感じじゃねえか。
俺なら間違いなくドン引くわ。
「お二人はイトコなんですね!!」
「そーだよ」
「お顔立ちは……あまり似ておられませんか。仲良しさんですね!!」
まあ、似てねえイトコなんて腐るほど居るからな。
「……取り敢えず、この見知らぬお嬢さんを何処かに押し付け……保護してもらわないとならないな」
「うええええ!こっちの白いお兄さんも結構酷くないですか!?」
「お前…助けて貰った分際でウゼエ。文句多い」
「うええええすみません!!
お礼をしたいので是非お名前を教えて下さいいい!!」
「嫌だっつうの」
「すまんな、面倒ごとに巻き込まれたくないんだ!」
「どうして私が厄介ごとに巻き込まれていると気付かれたんですか!?」
おい、コイツ……ボケなのか。
俺らがそんなボケ野郎に見えるとは……。
「……ル……イトコ、コイツ稀に見るボケ決定だな」
「なかなかとぼけたお嬢さんだな」
「そ、そんな事ありません!!
ちょっとドジだと幼馴染によく怒られますが!!」
「よく怒られてんだったらちょっとじゃねえだろ、
とんでもないドン臭さなんだろ」
「ううう!!貴方、ちょっとニックに似てます……。口調は違いますが!!
あ、ニックは幼馴染みです!」
幼馴染の事まで聞いてねえよ……。
要らん情報が入ってくるこの感じ……面倒ごとに巻き込まれる気しかしねえ。
頼むから外れてくれ俺の勘……。
「ニックったら酷いんですよ……。
あ、此処にも一緒に来たんですけどね!!何でもオシ?に会いに行くとか……」
「押し?」
……押し車使う商売の兄ちゃんか?
野菜屋とか食いモン売る店の店員は、仕入れによく使ってるけど…そういう系か。
いや、どうでもいいな……。面倒ごとは御免だ。
コイツの幼馴染みとかマジスゲーどうでもいい。
結局首に齧りつかれてるからフードも直せねーし。
雨が直撃して首から入ってきやがる……。
冷てーし腕生温いし。
「ああああああ!!」
ぼーっとしてたらフォーナに物凄い声で叫ばれた。
耳が!!
鼓膜破れるだろうがあああああ!!
「っ!?煩えええええええ!!!!
耳元で叫ぶボケがいるかああああ!!」
思わず怒鳴り返したら、後ろでルディが耳を抑えて蹲っていた。
「……ふ、二人の声が滅茶苦茶煩いぞ……!!
耳がキーンってする……」
「す、すみません白いお兄さん!!」
よっぽど喰らったのかそのまま動かねえ……。
俺はフォーナを抱えたまま、ルディに駆け寄った。
「すまんルディ……」
「……うう、やっぱり風属性は声がでっかいぞ……レルミッド」
「す、すみませんすみません、
ルディさんと、レルミッドさん……ですね!?」
「あ」
「あ……」
お、俺らのボケ!!
只単に名前言い渋った野郎みたいになっちまったじゃねえか!!
「意外と策士だなこの女……」
「いや、……認めたくないが、単なる僕らのうっかりな結果だぞ」
煩えルディ。
普通に突っ込むな。
「うっかりさんですか、イトコさん達は」
「……コイツに言われると滅茶苦茶腹立つな」
「ぶへ!!」
ムカつくから魔力を重めに置いてやった。
頬っぺたやら顎やらの肉を顔面に集めてやる。
おお、ブスなツラだ。
誰にやってもブスになるから面白え。
まあ、髪の毛でよく分かんねーが。
「つ……潰れますううう!!ごめんなさいいいい!!!」
「ハハハ、ボケなツラ面白えー。ブース」
「ひろいい……!!」
「……うーん、女性を苛めるのは良くないが、生き生きとしているなレルミッド」
お前が言うなルディ。
さっきまでアレキちゃんを叩きのめすのが楽しいとか言ってた野郎に言われたくねえ。
……あ、アレキちゃんはさっき野郎だったけどよ……。
「あの、あのあのあの!!ご迷惑ついでに伺いたいんですが!!」
「迷惑掛けてるつー自覚有るなら離せや」
「私のような罪深き者は天まで飛んで行ってもいいと!?」
「其処迄言ってないが……フォーナ、君は……まあいいか」
「何ですか白いお兄さん……いえルディさん。気になります」
「……そんな無理矢理覚えてくれなくてもいいんだが。
寧ろ忘れて欲しいぞ」
「貴方みたいにキラキラしたお兄さん、
中々忘れがたいと思います」
「……嬉しいんだか悲しいんだか分からんな……」
流石にこんな状況じゃ、女好きのルディでも嬉しくねえか…。
「どの道君は国外の人間だろう。宿とか取って無いのか」
「どうして私が国外の生まれだと!?」
「服見りゃ分かる。
此処ら辺の女はお前みてーに足出してねーよ」
「ええと……ウチの国でも別に足は出さないです。
これは私の単なる趣味なんですが……」
へー良い趣味してんな……。
……まあ、見る分には減らねえしな。
「眼福だとは思うが、治安的に危ないのではないか?」
「こ、この上に普段はローブを着ています!!
ただ、暑かったので……」
「この気候で暑いとか、雪国から来たのか?」
「南の隣の国ですが」
南の国から来て暑いだと?
そう言えばさっきから張り付いてくる体も生温かったが…
何時の間にか熱い。
……嫌な予感しかしねえ。
「……それは、普通に発熱しているんではないだろうか」
「へっ!?発熱?」
「……風邪や熱病に掛かった経験は無いのか?」
「えーっと、妹は有ります」
「話の流れえええええ!!
今、お前が掛かったか聞いてんだろうが!!」
「……えーっと、ありません!多分!!」
多分って……風邪ひいたことが分からんとかマジか……。
頭悪いのか?……良くはなさそうだな。
「頭が痛かったりクラクラしたりしないか?」
「長時間木にぶら下がっていたので……だからでは?」
「長時間ってどんだけだ」
「雨が降る前からです。鐘の音を2回位聞きましたかね」
……2時間雨に打たれてたのかよ。
そら風邪のひとつも引くだろ。
「……宿の名前は?」
「えっと、分かりません」
「……この国には誰かと一緒に来たんだろう?」
「幼馴染のニックとです」
またどこにでも居そうな名前だな………。
「.…もっと正確に名前は分からないのか?」
「オルガニック……苗字は……何でしたっけ。いっつもニックって呼んでるから……」
「でしたっけじゃねえよ……」
……しかし、別に俺ら宿屋関係に顔が広い訳でも何でもねえしな。
探すにしても……って何で俺らがそんなのやらなきゃなんねえんだ。
くそ、大雨過ぎて見回りの騎士全然見ねえし!!
「……此処は未だ東地区だな」
「オイ……ルディ」
「……アルヴィエ侯爵家なら、まだ近い」
「……じいちゃんちにコイツを運べって!?」
「……仕方ないだろう、彼女を放置して逃げたら浮くし……」
「ルディが土の重しでもすりゃ…」
「流石に風邪をひいている女性を生き埋めにする気は無いぞ……」
た、確かにそんな事したら俺らが普通に犯罪者だな……。
うわ、マジかよ……。
じいちゃんちに…びしょ濡れの女連れとか……。
じいちゃんと……叔父上様にイジられる未来しか見えねええええええ!!
「……今から戻ってアレキちゃんちに放り込まねえ?」
「普通に無理だろうな……。もっと手前で彼女を拾えば良かったんだろうが…」
「うう、何だか分かりませんがお二人が酷い……。神よ…その旗を私に……」
訳分からねえ事を言うと、フォーナは意識を手放した……。
みたいだが俺の首からは手を離さねえ。
しつけーな!!
「オイ!!いい加減離せや!!」
「……取り敢えず支えてやったらどうだろう。腹を括れレルミッド」
「お前…他人事だと思って!!
コレからじいちゃんちで何て言われるか予想付いてるだろーが!!」
俺は水を吸って重くなった服より重くなった気分で、じいちゃんちに足を向ける羽目になった…。
で、着いたのがアルヴィエ侯爵邸。
まあ……何処の貴族かっつーか、俺のじいちゃんちだ。
来たことは……此処一年で何回か有るくらいだな。
……アレキちゃんちよりはデカくねえが、居心地の悪さは似たようなもんだ…。
貴族の家が居心地いいとかねーしな。
取り敢えず門の横の門番小屋をガンガン叩くと、中に居た居た門番は俺の顔を覚えていて……フォーナの方を滅茶苦茶見られた。
……いや、分かるけどよ。
頼むから好奇心満載の顔を隠せや。
「お坊ちゃま……あのノエミお嬢様の小さかったお坊ちゃまが
女の子をバカップル……いえ、お抱きになって!?」
バカップル言うなオッサン。
確かに抱えざるを得ない状況に陥ってはいるが…<。
お坊ちゃまって……ムズムズ来るような呼び方だな……。
此処一年でやたら呼ばれるが……言われ過ぎて反抗する気も失せたぜ。
「……好きで抱えてんじゃねえ……荷物だ荷物」
「すまんが、中に入れて貰ってもいいだろうか。僕とその女性込みで」
「はっ!!王子、今お開けします!!」
一応口調は丁寧だが、断らせねえ言い方っつーか、ルディは命令しなれてんな……流石っつーか。
まあ、大した押し問答にならずに開けて貰えたのは良かったけどよ……。雨だしな。
じいちゃんちに叩き出されたら……このカッコで街中に帰らなきゃならねんだもんな。
流石にそれは…恥ずかしすぎる。
オマケにルカリウムの誰かに見つかったら大声で囃し立てられる…。
瞬間的に一族中に広まる!!
あああまだこっちの方が……マシか!?
どっちもどっちだぜ……。
んで、結構長い家までの道のりを歩いて家に入ったら、ドカドカいわしながら誰かが上から降りて来た。
階段軋んでんじゃねえか。貴族の館の癖に煩え家だな……。
俺が突っ込むのもなんだが、
礼儀作法とか行儀とかどうなってんだよ。
「レルミッドが……あのレルミッドが女の子を連れて帰ってきた…だと!?」
「…-おお、しかもフードが……フードを取って…!?」
「王子…男とつるみ過ぎて女と全く絡まないレルミッドが、
女の子をバカップル抱きして帰宅だと……!?」
「あのレルミッドが……。
口が悪すぎて全く女の子に縁のないレルミッドが……。
その内強制的に見合いを組もうと思っていたが、自主的に女の子を……」
いや、どういう早さの伝達具合だよ!!
今入ってきたところだぞ!?
後俺の事スゲエ馬鹿にしてねえか!?
悪かったなモテなくてよ!!野郎とばっかツルんでて何か迷惑かけたかよ!?
それに何で今日に限ってこっちに居るんだよ叔父上様!!
じいちゃんまで居るしよ……!!忙しいんじゃねえの!?
いっつも大して家にいねえじゃん!!……って大雨だからか。
そらそうか。
じゃねえよ!!
「って……どういう意味だじいちゃん。強制見合いって!!」
「……レルミッドもそういう年頃なんだな、諦めろ」
「お前1コしか変わらねえだろうがああああああ!!」
「嫁だな!?」
「……嫁か…。どういう生まれの娘さんだ?レルミッド?」
「誰の嫁だボケエエエエエ!!単なる人助けだあああああ!!」
じいちゃんちは…大騒ぎになった。
察しのいい読者様なら、浮いてる彼女の名前にピンと来て頂いたんではないでしょうか。
多分お察しの通りです。
そして何気にレルミッドのお祖父ちゃんが初登場ですね。
登場人物の中で一番血縁が出てますね、レルミッドは。




