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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編2 スキル剥がし編

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11.雨の中でも浮いている

お読みいただき有難うございます。

未だレルミッド視点です。

悪役令嬢をやり込められてウキウキのルディくんと疲れたレルミッドが雨の中家に帰る途中の話です。

「いやあ雨がとても強いな!!」

「お前、滅茶苦茶機嫌良いな……」



まだ手を振ってるルディを引っ張って俺らはアレキちゃんちを後にした。

後ろが気にはなったが、背中が熱いから振り返らなかった。

…この雨の中何故かフードが焦げてる気がすんだけどよ。

いや、……無事魔王城みたいなのから抜け出せただけ有難えよな、多分。

それにアレキちゃんちに丸腰で行く方がおかしかったな。

今度はちゃんと武器とか……いや、俺武器なんか使えなかったな。

……弓もド下手くそだから狩りはもっぱら魔術頼りだし……。

……取り敢えず何か準備してから乗り込もう。

一生行きたくねーけどな。


「一年程前なら雨の日に外に出るのは無理だったからな…。

無駄に馬車の中に押し込められたり、傘を持った使用人が背後霊のように持って着いて来たり、ウザかったぞ」

「自慢話はまだ聞いてやらなくもねーがオバケの話は言うな!!」

「レルミッドは比喩でも駄目なのか。筋金入りだな。

あ、もしかして死霊に痛い目に遭わされたのか?どんなのだった?」


…どんなのだったじゃねえよ。

オバケなんかルディに会う前に遭った事有るか!!

楽しそうに聞いてくんな!!


「いや遭わされてねえし!!それに別に怖がってねえよ!!

危険だから避けてえだけだって言ってんだろ!!」

「分かった分かった。

そう言えばさりげなくサジュ・バルトロイズを置いて来たな」

「……あ?」


そう言えばそうだった。

アイツ、本来は俺らのツレだったよな。

結局他の騎士のにーちゃん達も来てねえし…。

アレキちゃんの横槍…いや、情報とやらに感けてんのかもしんねえ。

…しかし、ルディがサジュを疑ってるとはな…。


「サジュの件…本当なのか?」

「うん?彼はコレッデモンの出だからな」

「そう言ってたな」

「さっきコレッデモンから2名ほど悪魔が来たと言っただろ」

「……その呼び方止めろや…マジもんのオバケみたいだろうが」


大体悪魔とかろくでもねえし。

マジで出てきたらどう始末付けんだ……。

始末結構簡単に付けそうだな、ルディなら……。

今別に体調も悪くねーみてーだし。

…いや、ルディばっかに押し付けるのもな……。

でもオバケに関わりたくねえ……。


「悪魔の正式名称か?

……えーっと、リメイ公爵令嬢とダンタルシュターヴ伯爵令嬢だ。

本人達の名前は知らんぞ」


噛みそうな名前だな。

貴族の名前とか……覚えられる気が全くしねえ。

しかも他所の国とか……いいか。別に……。

それにしても令嬢を悪魔呼ばわりってどんな国だ。

何が蔓延ってんだよ、普通に怖えわ。


「……いや、覚えねえしいい。……とりあえず女か」

「王妃探しだからな。

陛下は入り婿は探していなかったと思う」

「……お前オッサンにぶん殴られるぞ」

「僕は陛下の趣味趣向を知ってはいないからな」


いや、おちょくるなら本人にやれっつーの。

て言うか、男女両方込みで嫁を探してる国王とか、前代未聞だろうが。

少なくとも俺はそんな話は聞いたことねえぞ。

……でもまあ取り敢えず一般的な嫁探し……なんだよな。

ルディがおちょくるから自信無くなって来たぜ……。


「両方美人らしいぞ。全く興味が湧かないが」

「……珍しいな。

女好きの癖に美人に興味が湧かねえとか、ルディどっか悪いのか」

「僕を何だと思っているんだ。

僕にだって好みと選ぶ権利はある」

「…無差別に声かけてるとしか見えねえよ。

義妹にまで声掛けてただろーが」

「アローディエンヌか?何が悪い?」


あっけらかんとしてんな……。

寧ろコイツがドン暗い所、最近見ねえのは有難いけどよ。


「…未だアイツの疑惑は晴れてねーし、アレキちゃんの…モンだろーが。」

「ああ、それか。過去はいいんだ。

それにアレキをやり込められるのは楽しい」

「よくねえだろーが!」


アレキちゃんをやり込めるのは…まあ置いといて、あのクソボケブスだって未だに見つかってない。

こんだけ時間が経ってんのに……。騎士団もイラッとしてるみてーだな。

あんな事が有ったんだ。

あの義妹が関わってんなら、聞き出すべきだろうが!!

またあんな事が起きねえとも限らねえんだぞ。

まあ、あんまりアレキちゃんと関わりたくねえけどな!!

近寄らずにブッ飛ばす方法が有るなら知りてーわ!!


「アローディエンヌは見てれば分かったぞ。

表情は変わらんが、嘘が吐けない雰囲気を醸し出していたぞ」

「いやそんなボケみてーな事有るか。

……全く分からなかったぜ?」


雰囲気ィ?そんなもんで分かる訳ねーと思ったが、ルディの事だ。

俺の知らねえ何か……隠し玉がボケ程有りそうだな。

無駄に色々出来るしなコイツ……。

楽器も出来たし、弓も普通に射ってやがったし、繕い物も出来てた……。

流石元……じゃねえ、今も王子……。

て言うか繕い物はウチのばあちゃんに習ってやってたらしいな、知らなかったけどよ。

…意外に何でもソツなく出来る野郎だよな……。

『全く何にも出来ません、やりません、やらせます』みたいなツラだけどな。

……自分ちでは色々やってるみたいだ。

案外おっちゃんと普通の親子やってんだよな。


「うん、まあ言ってみれば勘だ」

「ハアアアアア!?勘ーーーッ!?」


勘!?

まさかの根拠なしとか有りか!?

あんだけ今まで講釈垂れといて勘だと!?


「……ロージア・ハイトドローに手を貸したのは事実らしいからな。

でもそんなに大したことでもなさそうだ。

それを不問にした僕……好感を抱くだろう?」


……義妹が出来そうな事がショボそうだって判断して、狙いを変えたのか…?

マジかよ、ルディ……悪どいな……。

…背筋が寒いのは雨が服ん中に入ったからだけじゃねえよな。


「アローディエンヌはこれからもアレキの手の内に居るだろう。

そんな彼女に優しくしておけば……未来の僕に何か利益が齎される可能性は、有るぞ」


爽やかにゲスい事言ってんぞ、コイツ……。

義妹を手下に組み込もうってことかよ……。

アレキちゃん絡みで何か有ったら……義妹を使おうってか。


「……そんな打算……上手く行くとも思えねえ。

しかしそんな腹で、義妹によくもまああんなニコヤカに出来んな…」

「打算だけじゃないぞ。

表情が動かないのも個性的で可愛いじゃないか」

「……お前の趣味が分かんねえ」


何も燃えてる中に手ェ突っ込んで掻き回すことすんなよ…。

って今まさに掻き回して来たんだったな、ルディ……。

それで滅茶苦茶気分良くしてたんだったぜ……。

忘れてたぜ。傍迷惑過ぎてな……。

またそんな悪どい事言ってんのに、笑顔が無闇矢鱈にキンキラしてんのがまた……。

得なんだか損なんだか分からねえ野郎だ。


「それはそうとレルミッド、木から何かぶら下がって…」

「ぶふがっ!?」


雨でずり下がってきたフートで前がよく見えなかった俺は、何かに激突した。

何だよ!!どっかから何か飛んできたのか!?


「……」

「……おお」


フードと目線を上げて、俺は絶句した。

ルディも珍しく、ビックリした声を出してやがる。



其処に有ったのは何の変哲もない木だった。

道の横に植わった木だ。

……ただ、其処からは……一番下の枝から何故か…2本程、見慣れないものがぶら下がっていた。


……最初は風がまーまー強かったから、洗濯物でも飛んできて、引っかかったんだと思った。

女モンの服に見えるしな……。

ちょっと変わってるけど……色合い的にな。

こんな素材の服…知らねえけど、多分女モンだ。

だが、その……女モンの服には、中身が有った。


「……足?」

「……足だな」

「何で足だ?」

「知らんが、処刑台からぶら下がってる足のようだな」

「ハギャアアアアアア!!」


要らん事言うなルディィィィィ!!

って言うか、何で木から足がぶら下がってんだボケがアアアアア!!!


「……けて……ださーいぃ……」

「足!!足!!何でこんなトコにオバケがいんだよ!?

暗殺現場!?まさかの処刑場か!?

こんな街中に処刑場出来る位荒んでんのかァァァァ!?」

「ん?」

「足だけ置いてくとかどんな趣味してんだボケエエエエ!!!」

「レルミッド、死んでないぞ」

「煩えええええ!!

俺は何が何でもオバケには関わらねええええええ!!」

「生きてるというのに」


ホラ、とルディが俺に…俺の手が生暖かい濡れたモンを掴ませてきた。


生暖かいだとおおおおお!!!

気持ち悪ィィィィ!!


「何で足掴ませるんだボケエエエエ!!!」

「掴んでるだろ。死霊じゃない」

「……ハッ!?」



感触が、有る?

俺は無理矢理掴まされた足をまじまじと見た。



……土の感触はしねえ。と言う事はルディの土人形じゃねえな。

……マジモンの人形でもねえな。

こんな感触の人形は…知らねえな。

売ってんのも見た事ねえし。

何か不気味な髪の毛クルクルしたのが

玩具屋の窓辺に並んでるのは通りすがりに見た事有るけどよ。

アレ、何かの呪いの人形か?

草原生まれのガキに見せたら泣きそうだよな……。

ここんとこ帰ってねえから……揶揄えそうな年頃の奴はデカくなってるだろうし……。


ってそうじゃねえ。

……生きてる?

……って事は……コレ、人間の足か!?

本物の!?

……いや、何でだよ。


「……」


何かよく分かんねえが、取り敢えず何でか木に引っかかって生きてんだな?

生きてんならいいな。

オバケじゃないなら全く危険……かどうかは分からねえか。

……まあ、生身の女で危険ならブライトニア飛ばせるし、いいか……。


俺は足を引っ張ってみた。

……人間の足の感触だな。

皮膚の感じからして、未だ若い……。


「……痛い……助けてくださぁい……」


返事がある。若い女の声だ。

だが……。


何かおかしいぞ、この感触……。

……止まる寸前の鳥みたいな……って言うのか…?

……俺はまあまあ力を込めて……女の足を引っ張っている。

普通、こんなに長い事ユサユサやってたら落ちてくる筈だ……。


「……オイ、ルディ……」

「何だ?何処か引っかかっているのか?」

「……浮いてんだけど、コイツ」

「何?」


俺の言葉を聞いて、ルディがこてん、と首を傾げた。

滴がフードから零れ落ちて、顔と髪を濡らしている。

……コイツ、暗がりなのにこんな時でもキンキラしてんな…。

魔術街灯有るけど暗いのによ。


「……ちょっと失礼するぞ。

見知らぬお嬢さん。君のパラメータを見てもいいか?」

「へっ?何だか分からないけど……どうぞどうぞどうぞ!!」


いいのかよ、そんな安請け合いして……。

パラメータって結構個人情報満載らしいし……。

まあ俺には見えねえからどうでもいいが。

お互いこの無駄にでけえ木の葉っぱの影と枝でツラ見えねえし…。

……ただでさえ怪しいのによ……。

よくそんな生返事出来るな。


あ、今の俺ら、気軽に知らねえ奴の人助けとかしてる余裕……ねえよな。

今襲撃されたらヤベエな……。

雨でヤベエ奴の気配とかサッパリ分からねえし。

ルディとアレキちゃんの話が気になった訳じゃねえが…。

……ルディを守りつつ、逃げられるか?雨が邪魔だ……。


「……ルディ、厄介ごとならズラかるよな?」

「勿論だ、見捨てよう」


ルディは女に甘いが、容赦無えのは男女平等だよな。

提案したの俺だけどよ。


「見捨てないでくださいいいい」


…あ、聞こえてたか……。

こんだけ雨降ってんのに地獄耳だなコイツ……。

まあまあ小さい声で喋ったつもりだったんだけどよ。


「レルミッドの声は良く通って大きいからな……。

流石風属性だ」

「いや関係ねーだろ!!」

「僕調べだが、風属性の人間は声が大きい」


……そんな適当な調べが有ってたまるか、と怒鳴りそうになったが……。

確かに俺らルカリウム一族も声デケエし、オーフェンのオッサンも、あのサジュのねーちゃんもデカかったな。

……いや、物静かな喋らねえ風属性も居るはずだろ。

俺は信じるぜ!!


暫く上を向いて、目をパチパチしていたルディは俺の方を見た。

……何だよ。

気軽に終わりそうな感じじゃねえな。


「……ふむ、珍しいな、浮遊の状態異常が付いているぞ」

「そ、そうなんです……!!

妹に悪戯されて、浮いちゃったんです……!助けてぇ!!」


……ハァ!?

妹に悪戯されただァ!?


「身内の不始末なら自分で片付けろよボケ…」

「出来ないんですー!!

妹はちょっと……思い込みの強い子で……あっ、そこもとっても可愛いんですけどね!」


聞いてねーし。

何でこっちが何も言ってねえのに

家族の事ベラベラ喋り出すんだ……。

ルディもそうだったな、そういや……。


「……イタズラにしては……複雑な術式が組んであるな…」

「ハァ!?術式ィ!?」


術式が複雑って……悪い予感しかしねーんだけど!!

ルディも首を捻っている。


「コレ、僕達が何とかしないとダメなんだろうか?

非常に面倒そうだぞ……」

「助けて下さいってばぁぁぁぁ!!」


女が騒いでいる。

……何でこういう時に誰も通らねえんだ。

あ、豪雨だからか……。

そりゃ誰も家から出ねえよな。


ヤベエ、死ぬ程面倒臭え……。

……怪しいしよ、忘れずにサジュ連れてくりゃ良かったぜ……。


それにしても雨が強えな…。

サッサと帰りたいぜ。


「……降ろせばいいんだな?」

「レルミッド?」

「降ろして下さいいいい!!」


俺は即席で適当に魔力を練った。


「頭庇っとけよ、ボケ女」

「はい!?」


多分いるであろう女の頭辺りを…デカい風の塊で押しつぶす感覚で、下に引き寄せた。

塊を頭上に押し込んで、足を引っぱって手を離したら…落ちてくるだろ。


「風が!?ボワボワします!!」


制御してるのに煩え女だな…。

何て言うか…意外にやると面倒臭えし、この術…。

やり過ぎると風が切り裂きそうだし、丸くするってのが…。

あ、コレ、水属性とか土属性なら楽そうな術だな…。

しまった横に土属性いるじゃねえか。

ルディにやらせれば良かったぜ…。

土をドサッと被せれば解決じゃねえか。

…まあ重みで下手したらどっかの骨折れるか潰れるかもしれねえけど…

そこはルディなら何とかしそうだし。

アイツ回復魔術も使えるしな。


「うわあああっ!!」


あ、枝折れた。

……しかもまあまあコレ…ぶっとい枝だな。

この嵐で…誤魔化すの無理か。

後で叔父上様に怒られそーだなあ。

あのオッサン、貴族の癖に細けーんだよな…。


「きゃあっ!!」

「……ハァ?」


何か凄く生温い濡れたモンがベタっと俺に張り付いて来た。

その勢いでフードが剥がされて…

俺は後ろにひっくり返りそうになるのを堪える。

雨が頭に直撃して冷てえ!!


「…おお、レルミッド。やるな」

「……」


俺の首に齧りついていたのは…同世代の女だった。

顔も頭もボッタボタで前髪が張り付いてよく分からねえが…、濃い赤紫の目が隙間から見える。ツラは分からねえ。雨で尚且つ木の下で暗いしな。

…髪が矢鱈短い以外は…いや、秋なのに…滅茶苦茶薄着なのがまず変だった。


……ボケなのか、この女。

……俺が秋で着込んでなきゃ、…いや、着てても分かるなコレ…。

こんだけくっつかれてりゃ嫌でも…って。

……落ち着け俺。

俺の好みは…もっと凹凸のあるねーちゃんだ。

こんな…足はまあまあ好みか。

こんな裾の短いズボンよく着るよなあ若い女なのに。

何処の民族衣装か知らねえが、流行らねえかなコレ。

ってそうじゃねええええ!!


「……離せこのボケエエエエ!!!」

「びゃっ!?

止めて下さい浮いてしまいますううう!!」

「浮遊を無理矢理相殺したのか…。

面白い事をするな、レルミッド」

「ルディ、早くこのボケを剥がせえええええ!!」

「嫌です!!私を離さないでくださいいいい!!」

「おお、凄いな…。

レルミッドが女性と修羅場を繰り広げているかの様だ」

「面白がるなあああああ!!」

「浮きますからああああ!!」


取り敢えずこの女、馬鹿力だな!!

何で離さねえんだよ!!

落としてやったんだから早く降りやがれ!!

冷てえし!!

レルミッド、木に引っかかった風船のように浮いた怪しい人物を強制的に助けるイベント発生。

若い女の子のようです。


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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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