3.常識との闘いイン王都
お読みいただき有難うございます。
アローディエンヌ、住んでいた所で一人常識と戦います…。
で、王都……。
王城広場っていう所に着いたらしいわ。
へー……まんまバスのロータリーみたいになってるのね。
バスが馬車なだけと言うか。
待合と言うか、バス停……馬車停?も有るわね。
形が違うだけで、色合いは一緒みたい。
何で緑と紫なのかしら。
「あちらの金色旗の駐車場の待機所ににおりますので、お帰りの際はお声がけくださいアローディエンヌ様」
「……分かったわ」
来たこと無いからついキョロキョロしてしまうわね。
……これでも一応4歳から王都育ちだと言うのに……。
4歳以前は何処に住んでたんだか知らないけど。
……私って、私の事すら知らないなんて……本当に度が過ぎた世間知らずね。
「貴族用の駐車場が銀色で、一般が白なんですのよ」
「へえー……勉強になるわね」
そう言う些細なことから覚えないといけないわね……。
貴族が銀で一般が白……そんなところからそれっぽいのね。
「近距離は三角で、長距離駅馬車が台形の停留所ですわ。
行き先と時間が書いてありますのよ。」
「成程。もしはぐれたらアレに乗ればいいわね……」
長距離馬車で帰ろうかと思ったけど、よく考えたら近距離の馬車で王都内の本邸に帰ればいいわよね。
流石に誰か居るだろうし。
私の顔覚えてない使用人が居たら、それはその時考えたらいいわ。
「え、若様をお呼びにならないんですの?」
「……恥ずかしいもの」
いや、当方結構な良い歳だってば……。
道端で義兄さま呼ぶとか何処の罰ゲームだよ。
思わず顔が……動いてないかも知れないけど、背けてしまった。
「まあ!そのお顔で呼ばれたら、若様は滅茶苦茶お喜びになられると思いますけど!」
「……喜ばれても」
「照れ屋さんですのね!義妹姫様ったら!」
いや、違うんだが……。
義兄さまは…ちょっと甘い顔すると……百倍甘えてくるからさあ…。
そのくせ甘やかしたいらしいけど何でや。どっちだ。
ドートリッシュには何というか……私と義兄さまはわき目も振らずラブラブ一直線に見えているらしい。
……若干解釈の違いって言うか………何と言うか、色々……難しいのね。
「何か食べたいものは有りますかしら!?やっぱり義妹姫様はお高い所でないといけません?
それとも買い食いとかはしたないかしら」
いや、別に全然買い食いなんて気にしないけど。
ただ、着てるのがドレスだから溢しても困るし、買い食いを上手に出来る自信が無いのよね…。
流石に食べこぼしだらけで服屋に買い物行くのちょっと。
「はしたなくは思わないけれど、取り敢えず座って食べられるところだったら……あの空いてる席が有るわね」
「いえ……あそこ大衆飲み屋さんですから……。義妹姫様、危ないと思いますわ」
え、マジか……。
……居酒屋だったのか。
……いや、看板も何にも見て無かったのよ!!典型的なボケをするつもりはなかったの!!
通りで赤ら顔のオッサン……殿方ばっかが入って行くと思った。
……流石にこのなりじゃ入れないし、何か騒ぎが有っても困るわね。
……無難にカフェかしら……。
でもこの形態のお店をカフェって呼ぶのかしら、この世界。
喫茶店?うーん……。
「……お茶も飲めるお店的な所で……昼食とかどうかしら」
「それが宜しいですか?じゃあこっちですわ」
……最初からドートリッシュに任せれば良かったわね。
で、何だかお洒落なカフェっぽい……お店に連れてきてもらったわけだけど……。
「何時もは、あの斜め向かいのお野菜屋さんで見切り品を買ってますのよ!」
「……倹約家なのね」
見切り品って……この世界にも有るのね。と言うかドートリッシュは本当に倹約家なのね。
何か大きな買い物でも控えてるのかしら。家とか?
あ、もしかしてご領地のお屋敷の建て替えとか考えてるのかしらね。
「私も通りすがっては居ましたけど、入るのは初めてですの!
何になさいます?」
「へー、何が美味しいのかしらね……」
私はメニュー表を捲り……見て固まった。
書いてある字が読めないんじゃない。世間知らずと言えど、貴族教育は最低限受けてる。
曲りなりにも此処で生きてるから……読めるのよ。
難しすぎる専門用語とかは無理だろうけど。
そして別に元々庶民だから「やだこんな庶民っぽいの食べらんなーい」とかでもないわ。そんな根性は持って無い。
そうじゃなくてね。
意味が分からないのよ、このメニュー表!!
麺類(赤)とか肉料理(捏ねたもの)サラダ(白)とか!!
魚(酢)とか!!菓子(小麦粉)とか!!
勿論絵も無いから首を捻るしかないでしょうが!!
何なのよなめんとんか!?罰ゲームか!!
それともコレがこの世界では普通なの!?
「……これは、どういう調理法でどんな内容の料理なの……?」
「赤そうな麺でしょうか、分かりやすいですわね」
「……何処がかしら」
赤い麺なんて言われても、トマトソースのパスタなのか、はたまた辛い中華麺っぽいのか。
それともエスニックな感じの辛い料理なのか……色々あるでしょうが!!
何なら日本人的に狐がトレードマークな某麺も、パッケージは赤いわよ!!
これだけの情報でどうしろってのよ!!ギャンブルか!?
「何だ姉ちゃん、何か分かんねえのか?」
これは……素直に店員さんに聞くしかないわね。
こんな目隠しに近いメニュー……困るしかないじゃない。
大体席に案内されて座ってしまったのだから、お店を出るには申し訳ないし。
それにとてもいい匂いが厨房から漂っているし、出来れば普通に此方でご飯を食べたいわ。
「全部が全く味の予想がつかないのですけれど」
「これなあ、ウチの客共は学のねえ冒険者共が多いからよ。
凝った名前にしてても読めねえんだよ」
そんな適当な……。
ご近所から苦情は来ないのかしら?
「いえ別に凝らなくて結構なんですけど。せめて魚をどう調理してあるとか書いて頂けません?
折角美味しそうな匂いがしてますのに、ワクワク出来ませんわ」
「……珍しい客だな。
アイツ等煮ても揚げても一緒だとか言いやがるし」
冒険者って結構アバウトな味覚なのね……。取り敢えず店員さんからレクチャーを受けることにした。
……結構熱く語られてしまったわ。よっぽど鬱憤が溜まっていたのね。
「はあ、食べられりゃ揚げようが煮ようが何でもいいじゃないかしら」
「お前みたいなのが居るから作り甲斐がねえんだよ!!
バカスカ流し込んで食う奴は死ね!!」
何故か感想を溢したドートリッシュが超怒られていたけれど。
本当に他のお客さんに鬱屈したものを抱えていたのね、店員さん。
取り敢えず……お肉をトマトソースと香草で煮て麺に掛けたのが麺類(赤)で……所謂ミートソースね、
肉料理(捏ねたもの)がチーズインハンバーグだったわ。
……分からないわよ……。
寧ろ分かる人がどうかしていると思うのだけれど。
あ、前者が私で後者がドートリッシュの頼んだメニューね……。
「……とても美味しいわ、濃いのに後味爽やかね」
「お肉が潰れる程柔らかいですわね!」
と言うか……ハンバーグ?だからお肉は最初から潰れていると思うのだけれど。
若干ドートリッシュって味音痴?
えーと、あんなメニューなのにお料理は凄く美味しかった。
周りの人を見ると、冒険者の人達なのかしら?
ごっつい人も居るけど、細めの男の子も居るし……あら、女の人も居るわ。
しかし共通して……量が多めの料理を……流し込んでいるわね。
確かにこりゃ作り手は苛つくわ……。
でもあのメニューの書き方は無いわ……。
その内一般のお客も遠ざかるわよ。
それにしても冒険者って見たの初めてね……。攻略対象者には居なかったし。
珍しいけれど、あんまり見てるのも悪いわよね。
まあ、私モブだから多分気にもされないと思うのだけれど。
だってあからさまに……町の人と服の雰囲気違うのに、誰も突っ込まないし。
……目立たないのはいい事だけれど何か複雑ね。
まあ、いいわ。
食後にお茶をお願いすることにした。
お茶(白)で、ミルクティーですって……。
……ミルクティーて書きなさいよ……。
せめて牛乳入りのお茶とか……。
「……兎に角、これを頂いたら買い物をしましょうか……」
「そうですわね!あっ、義妹姫様、硬貨の種類をご説明しましょうか?」
「それは物凄く知りたいわお願いします」
それ、凄く役に立つわ!!
今の私は其処らの子供より世間知らず!!
知識が一番足りない、チュートリアルよ!!
……ロージアは全くモノにしてないけどね。
「えっとお、コレが私のお財布ですわ」
あら、可愛い布製のお財布ね。
お札が無いから小銭入れオンリーなのね。
一つ一つ小さいものから大きいものまでテーブルに出して並べてくれた。
「一番小さいものから、1ゼニゼロ、10ゼニゼロ…」
駄目だ。あかん。やばい。
……名前が何度聞いても可笑しいわ。
何でこんな名前なの……。
通貨単位でどうして笑わせに掛かってくるのよ!!
真面目に話が入ってこない!!
「流石に10万ゼニゼロは持ってないんですの……」
「そ、そりゃそうよね…」
普通に10万円……いや、ゼニゼロか、笑うし慣れないな……。持ち歩くのはおかしいしね……。
て言うか10万が硬貨……凄い金額ね。
「あっ、有りましたわ!!」
「え、何が?」
「向かいの武器屋さんで10万ゼニゼロ出してる人が居ますわ!!」
え、向かいの買い物が見えるの!?凄いな……。
滅茶苦茶視力が良いわねドートリッシュ…。
て言うか武器屋……。そんなもんが有るとは…。RPGっぽいわー。
まあ間違いなく私には縁遠いわね……。非力モブだし。
私は向かいの武器屋へ目を向けた。
……結論から言うと、視力がそんなに良くない私でも確認できた。
「……遠近法?!」
「え?」
「……ドーナツ!?」
「どうなさいましたの義妹姫様。ドーナツ何処かで食べます?」
……いや、どうなさいましたのじゃなくてさ。
此処にもドーナツは有るのか……じゃなくてだな!!
「食べたいわけでは無いわ、あの……鎧の方が持っているのって…10万……」
「ええ、10万ゼニゼロですわね」
で け え よ!!
1……ゼニゼロ(慣れない)が外国の小さい硬貨みたいで普通で……そこからジワジワ大きくなるから気を抜いてた!!
「何でドーナツ位大きいのあれは……」
「何か色々有って、持ち歩きが不便に大きく作られてるらしいですわ」
何か色々って何……。でもきっとドートリッシュはよく知らない感じよね…。
それにしても大きすぎるでしょ…。邪魔すぎる…。
ああでもやっと朝に言われた事が納得できた。
何でお釣りがそんな?とか思ったけど……。
ええと、仮にアレを貰って何処かで支払って……あんな大きさのもんがお釣り……99枚位?
まあとりあえず沢山貰う状況……。
おお、何と言うか、実にクレイジーだわ。
そりゃ米袋位でっかくないと入らないし重そうだし……いくら何でもあのでっかさで軽い訳が無いわよね…。
この世界にアルミみたいな軽量金属は無いだろうし。
いや、待てよ……。
朝、危うく渡されそうになった破片もまあまあでっかかった気がするんだけど……。
ええっと、1000ゼニゼロ?くらいの大きさだった……。
いやでも……あれ10個集めてもドーナツみたいなでかさにならないわよね。
集めたらまさかでかくなるとか無いわよね……。
どうしよう、実はピザ位でかかったら。
「……参考までに聞いておきたいのだけれど、1ゼニナシ……だったかしら。
あれの本来の大きさはどれくらいなのかしら」
「見たこと無いので分からないですわね……」
……1億円……じゃない、1億ゼニゼロ見れる人なんてそうそういる訳ないわよね。
普通に働いていて見れない大金には変わりなさそうだし……。
ああ……駄目だ、この通貨単位に慣れる気がしない。
この時ばかりは無表情で良かった……。
何処の世界にお金を見て笑う奴が居るの……。ド変人すぎるわ…。
何て転生した現代日本人に優しくない通貨単位なの……。
製作スタッフの悪意しか感じられないわ。
「だから姉さん、冒険者止めて帰ってきて……。ニックだって心配を…」
「今帰る訳にはいかないでしょ!フィ……ナコが居る限り…」
……何だか後ろの席の人が揉めてるわね。
良く見えないけど……20代くらいの女性と、まだ小さい子が言い争ってる。
お姉さんが冒険者なのかしらね、お家に帰ってきて欲しいのね…。
10歳くらいかしら?子供って久々に見るなあ……。
真ッ黒い髪にグレーがかったピンク色かしら?な目に……ちょっと褐色の肌が可愛い……。
まあ、兎に角とても可愛い男の子だわ。
お姉さんは栗色の髪におんなじような色の目みたい。
ちょっと顔に布巻いてるから分かり辛いけど。
それにしても……この世界の人って……たまに実に変わったカラーリングと出会うとビックリするわ……。
ドートリッシュもそうだけど、滅茶苦茶異世界感を感じるわよね。
口数が少ない、大人しい感じの美少年…。
あ、身近じゃルーロ君も美少年よね。
でも最近ちょっと背が伸びてきて美青年になりそうな感じ。
それにしても可愛い子ねえ。
思わず見ちゃうな。
何せ殆ど引き籠ってたからマジマジ見た事有るのって
自分以外じゃ義兄さまの小さい頃くらいなもんだし。
……あの頃の義兄さま……いや、義姉さまもだが、恐ろしく可愛かったからな。
まあ、当時は過労死するかと思う位、見た目を眺めてる暇も無かったけど……。若さって偉大ね。
「おいおい坊主、いい歳して姉ちゃんに甘えてんなよ」
「俺らが姉ちゃん守ってやるよ」
何なのよ人が美少年見物をしている時に!!
ベタすぎる邪魔が!!
何なのよもう……。
なんて分かりやすいチンピラ冒険者が現れてるのかしら……。
もしかしてこの辺、あまり柄が宜しくない感じ?
気にもしなかったな……。
「ちょ、何するの!!」
あっ、女の人が掴まれてる!!
店員さん……さっきの店員さん……駄目だ、思いっきり目逸らしてる!!
別に戦えとは言わないけど、裏口から出て警備の騎士とか探しに行くとかしてよ!!
他の冒険者も遠巻きに見てるだけだし!!
「うーん、ぶっ飛ばしてやりたいですけど義妹姫様の護衛だしなあ」
「……何だあ?嬢ちゃんも加わりてえのか?」
ドートリッシュの勇ましい呟きにチンピラ冒険者が即座に反応している。
……こういう輩って耳はいいのね……。
どうしよう。不穏だわ。
目立たないモブらしくこっそり私が抜けて、警備の騎士様探してこようかしら……。
ただ、土地勘も無いし足も遅いし…。
「なあに?やるっての」
「勇ましいねー」
「ドートリッシュ……止めて、怪我をするわ」
「平気ですわ、多少の怪我位」
いやいやいやいや!!ダメでしょ!!何故そんなに血の気が多いの!!
ドートリッシュって伯爵夫人じゃ無かった!?
ちょ、え……ええ!?
コレ、義兄さま呼ばないといけない状況なの!?
まだ王都に来て1時間と経ってないのに……もう私の王都見物はお開きになってしまうの!?
……いや、そんなくだらない事に拘ってる場合じゃない。
人命には代えられないわ。
お姉さんを抑えられた子供だって顔を青くしてる。何もしないで怪我をさせるなんて真っ平だわ。
私が声を張り上げれば……!
「………おおっと、地味なお嬢ちゃんはこっちに来な。何もするんじゃねえぞ」
「!?」
何時の間に……!!
後ろにもチンピラ冒険者の仲間がいるなんて!!
ヤバい、本当にピンチ!?
って思ったら……。
まあああああ!!!やだああああああ!!
来てくださったの!?
流石攻略対象!!
ヒーロー登場してくれるなんてええええええ!!!
ゼニゼロの謎がちょっと明らかに(笑)
助けに来てくれたのはまあ…あの人です。
次にあの人が出てきます。悪役令嬢は出ません(笑)




