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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
番外編

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番外編そのろくの21 知られざる王様と隠された王子様

お読みいただき有難うございます。

レルミッドは恐怖の椅子(玉座)から逃れられるんでしょうか。

そしてルディ君との感動の再会です。椅子が無ければ。

「元気ですね、レルミッド」

「レルミッド、7日ぶりだな」


久しぶりの我が家…つーかおっちゃんの家だ。

ちょっとしか離れてねえのに、何かやたら懐かしいな。

俺を出迎えてくれたおっちゃんとルディの笑顔が眩しい。

滅茶苦茶長い間離れて暮らしていた筈なのに、何だこの二人の馴染みよう。

微笑ましい…よな。


「お、お……おお」


何故だ、滅茶苦茶喜ばしい筈なのに…許してくれルディ。


俺は…俺は…背後が恐怖過ぎてお前の幸せを今、手放しで喜べねえ。



「玉座に付きまとわれていると言うのは本当か」

「…………マジだ」


取り合えず入れと言われて、

俺とルディとおっちゃんは馴染みの居間で茶を飲んでいた。



……その間も、俺の背後には椅子がある。

ずっとだ。

ずっと有るんだ…。

勿論王城からパクッて来たわけじゃねえ。

寧ろ触ってすらいねえ。俺はマジで何もしちゃいねえ。

いつの間にか、其処に有るんだ…。



あれから俺は……椅子に付き纏われている。

……返しても、返しても…何故か俺の近くに有るんだ。

……叫び疲れる位悍ましいぜ…。

だって、椅子に付き纏われるんだぜ。

ドアを閉めてても、いつの間にか近くに有るんだ……。

魘され捲ってるから寝不足だしよ……。


「本当に気に入られてしまったんだな、忌々しいな」

「分かるか!?」

「勿論だ、此方の意思を無視して付きまとうなど生きていようと生きてなかろうと有害だ」

「可哀想に、酷い目に遭いましたねジェラルディン」

「父上が気にしてくれて嬉しいぞ」


……クソボケブスに付きまとわれてただけあって説得力あるな。

椅子よりアイツヤベエもんな。変な会話カマしてくるわ、毒盛って来るわ……。

あっ、やべ。椅子の方がマシだと思っちまった…。


おっちゃんとも仲が良さそうで何よりだが……。

頼む、何とかしてくれそうなのはお前しかいない。

王弟のオッサン…陛下のオッサンは忙しいとかで全く役に立たねえんだよ!!

玉座が行方不明とか普通に一大事だろうが!!


「なぁルディ、あの椅子オバケかなんかなのか?

……気が付いたら俺の部屋の前に置いてあるんだ……。怖すぎるだろ」

「レルミッドは怖がりだが、確かに玉座が追いかけてくるのは怖いな」


一言余計だぜ。しかし、ルディに怖いとか言われる椅子すげえな。

だってコイツオバケ使いなんだからよ。

…まあ、感心する意味もねえけど…。


「ふむ、死霊じゃないな」


ルディの能力は心の底から嫌だけど、頼もしいことこの上ねーな。

………取り合えず、オバケじゃねーのは…良かった。


「ってじゃあ何なんだよ気持ち悪ぃぃぃぃぃ!」

「あんまりよく知らんが、昔々に作られたものらしいぞ」

「昔に作られたモンは俺を付け回さねーだろ!!」

「確かに迷惑だな。えい」


眉を顰めたルディが椅子の背面に回り、バリって音がした。

付いてる飾り…何か赤い石の付いてる棘?突起?を持ってやがる。



……えっ。


毟ったぁ!?

それ、壊していいもんなのか!?

おっちゃんも唖然としてんぞ、オイ。



「……ジェラルディン、それは毟って良いものなんですか?」

「大丈夫だ、後ろの方を毟ったから目立たないぞ」

「……そう言う問題じゃ無くてだな……」

「火事で痛んだとか欠けたとかで大丈夫だろう!」


……コイツ、王族だわこういう所。

俺の庶民的感覚とは全く折り合わねえ。

おっちゃんもビビった表情してんじゃねえか。

弁償とかどうしようって顔だぜ…。よく分かる。


そんな俺らを尻目に、ルディは椅子に喋りかけた。

……何してんだ、コイツ。

まさか、椅子と喋れんの?

……有り得るな。オバケと喋れるんだし、椅子や机と喋れても…いや、やっぱそれ普通に怖えな。


「お前の破片をレルミッドが片時も離さず持って置くことにする」

「ハァ!?何勝手な事言ってんだ!?嫌だぞ!!」

「だから帰れ、玉座よ。大きなお前が付いて回ったらお前の主は迷惑なんだ」


そうルディが椅子を撫でると……何も起こらねえな。

当たり前だが椅子は何ともならねえ。

光りもしなかった。

……まあ、玉座の間の時は色々考えがブッ飛んでたから…

光ったことに疑いもしなかったがよ…。

民家で魔術でもなしに光る椅子とかただの怪奇現象だよな。

まあ、追いかけてくる時点で立派に怪奇現象なんだけどよ。


「取り合えず語り掛けて見たが、こんなものでどうだろうか」

「取り合えずかよ!?何かそれっぽかったのにかよ!?」

「僕は生きてる人間と死霊としか喋れないぞ。椅子は範疇外だ」

「普通はオバケとは喋れねえし、椅子は俺も無理だよボケ!!」


……椅子はムカつく位にそのまんまだ。

……蹴とばしてえ。

弁償したくねえから蹴とばさねえけど……。

それにしても馬鹿みたいに石やら飾りの付いた椅子だ。

よく毟れたな、ルディ……。俺の膝に載せられた破片の断面はぶっ壊したことを主張している。

…破片自体も何もねえな。何か石は付いてるけど。

高そうだ。

いや、高そうって段階をとっくに越してバカ高そうだ。

物理的に…壊せないことはねーけど…無理だよな。

俺の庶民的感覚が…本能が弁償を恐れてる…。

流石に草原じゃねえんだ。高そうなモンの前じゃ壊さねえかビビる神経は持ってる。


「一応石で出来てるから僕とも多少意思疎通が出来るかと思うんだが…。

何も起こらないな」

「いや俺だって意思疎通なんか出来てねえけど!?

寧ろ椅子と喋れたら怖いだろうが!!」


何言ってんだルディ!!お前俺を何だと思ってんだよ!!

只の田舎育ちの一般人だっての!

椅子と喋れるような特殊能力はねえよ!!

鳥に付き纏われるのは有るけど!!付き纏われたくねえのに!!


「一般人は玉座に座れないぞ」

「そ、それは…母ちゃんがたまたまそうだったってだけだろ!?」

「僕もそうだが」


そうなんだけどよ!!

ああああああ!!何だコレ!!

何かイライラモヤモヤする!!


「取り合えずこの破片を身に着けておいたらどうだろう。

玉座は安心するんじゃないだろうか」

「俺の安心はどうすんだボケ!!」


何で椅子に気を遣わなきゃなんねえんだよ!!

寧ろ生きてる俺の安心と安全はどうなったんだよ!?

そっちが大事だろうが!!


「まあまあ、取り合えず椅子を返して来て貰おう。

誰か居ないだろうか、頼みがある」


……さっきまで気にしちゃいなかったが、

そういや家の外に何か騎士が居たな。

護衛が付いてんのか…。

って俺もあっちの家から送って貰ったんだけどよ。

悪いよなあ。火事で忙しいのに。


「なあおっちゃん」

「何ですかレルミッド」

「完全にルディが王子じゃなくなった訳じゃ無いのか?

其処ら辺どうなんだろうな」

「普通に私の息子として暮らすには時間が必要なんですよ。

多少の見張りは許容します」


おっちゃんがシレッと言った。

……あれ、そう言えば従順なる囀り…効いてねえ?

口調はまだ微妙な敬語だけど。

さっきからおっちゃん王家の事つーか、ルディと普通じゃねえが、喋れてんな。

と言う事は、ルディは王家から抜けたって事で間違いないんだな…。

……良かった…。そればっかりは本当に良かった…。


で、何度見たか分からねえが、

この家に似付かわしくない派手椅子は、騎士の兄ちゃんたちに運ばれて行った。

じいちゃんちから何回か椅子運ぶの頼んでるから…慣れてんな。

最初はビクビクだったけど。

今は普通に其処らの椅子並みにぞんざいに持ってったぜ。

……個人的には全然構わねえが、いいのかよ。


そして……1時間が過ぎた。


「椅子が、戻ってこねーー!!」


俺はこの一週間程の恐怖と苦労と心労を思い返して…地味に涙が出た。

こんな…こんなことで解決するなんて!!

便所に行くため部屋から出たら戻したはずの椅子にビビり…。

階段上がったら俺が寝てる部屋の前に椅子が戻り……。

何度ぶち壊したい衝動に駆られたか……。

椅子のギラギラした宝石の高そうさに…練った魔力を発散出来なかったけどよ。

……考えたくない位、恐怖だったぜ……。


一体、誰がこんな傍迷惑な仕様に作ったんだ……。

迷惑な!!

ぶっ飛ばしてえ!!


「ヤベエ……こんな事で椅子が戻ってこないなんて!!

全く発想が無かったぜ!!ルディ…天才だなお前!!」


飾り毟った時はどうしようかと正直焦ったけどよ!!

お前の思い切りの良さが俺を救った!!よくやった!!

後は王弟…王様のオッサンが椅子の欠けた事に何か言ってきたら

どう文句を言うかだな…。

て言うかあのオッサンがしょっちゅう座れば解決じゃねえか!

王様の癖に玉座に逃げられてんじゃねえよ!


「良かったな、レルミッド。

これを続けたら椅子自体に付き纏われないと思うぞ」

「……え、続けんの?」

「続けた方がいいと思うぞ」

「お前…こんな呪われたっぽい椅子の破片を持ち歩けって!?

…鳥より嫌だ!!」


寧ろ鳥の方が…いや、鳥も充分にウゼエわ。

椅子の方が恐怖だけどな!!

ここ何日かで人生の恐怖を味わった気がスゲーする。


「多分手放すと即座に戻ってくると思うぞ。

しつこかったんだろ」

「しつこかったよ!!」

「いいじゃないか、首から下げとけば…。

ロナウドかアルヴィエ侯爵に頼んで破片を通す鎖でも作って貰うといいぞ」

「ハァ?誰だアルヴィエ侯爵って」

「貴方の御祖父様ですよ、レルミッド」

「……!?じいちゃんってそんな偉いさんっぽいのかよ」

「ぽいんじゃなくて普通に偉いほうだぞ」

「……いや、家普通だったけど」


貴族っぽさ欠片もねー家だったぞ。

貴族の家とか知らねえけど……。いや、王城と比べる方がどうかしてたな。

でも庭荒れてるし。窓ガタガタしてる所も有ったし……。

おっちゃんの家より3つ程度部屋数が多いだけだ。

そう言えばちょっと顔を見には来たけど…直ぐどっか行っちまったな。

仕事で忙しいってロンのオッサンは言ってたけどよ…。


「隠れ家的に作ってるだけじゃないのか?本邸は普通に東地区にあったと思うぞ」

「東地区って…あの駅馬車が無駄に豪華な路線か?」


何か地味に豪華っぽい駅馬車だったよな。色合いが紫と緑なのは変わらねえが。

何で豪華っぽくしたんだろうな。

貴族、駅馬車に乗らねえだろ…。通勤する使用人仕様か?

意味分からねえよな。用事ねえからあの路線乗った事ねえけど。


「そうですね、それです。お若い頃は随分恋多き貴公子だったとか」


うっわ恋多き……とか身内のそういう情報知りたくねえ。

あっちのばあちゃんは俺が小さい頃に亡くなったんだけど……。

ちょっとだけしか覚えてねえし。

でも優しかったのは覚えてる。

勿論クソボケな王女の方じゃ無くてじいちゃんの嫁な。

そっちを思い出すとムカムカするからな。


「……勘弁してくれ。情報がおかしいだろ……。

何でいきなり俺の身内に爵位持ちだの王家だの出てくんだよ……」

「?居たら問題なのか?」

「普通は居ねえんだよ!」

「まあそうか。確かにそんなのより、信頼できる家族と鳥と一緒に居られる草原の方が羨ましいからな」

「……ジェラルディン」


ちょっと感極まったらしいおっちゃんが、ルディの頭を撫でていた。

抑え目の色彩のおっちゃんと、キンキラの色合いのルディ。

……似てねえ。

……でも、しっくりくる。

収まりがいいって言うのか……。

あの王城の中庭で、王妃のババアに向けた目よりも、ずっと穏やかだ。


……普通は、親子と言えどももうちょい距離有るモンじゃねえの?

何でそんなに懐いてんだ。

こういう所は素直過ぎんだな、ボケ。



「そう言えば……結局何で俺は…ルディを小突けたんだろーな」


あの時は全く何も知らなかった。

自分に流れる王家の血とか…未だに分からねえ。

椅子に付き纏われることも物凄え気持ち悪い。

……ハッキリ言って……俺の許容量を超えている。

魔力とは違う、何か濁ったものが腹の中で渦巻いているような気がした。


「……」

「レルミッド、僕は草原を一目見て好きになった」


黙った俺のルディの手が俺の手を握った。

白っぽい手だ。

目を上げると、薄い茶色の目とかちあう。

……あのブスに絡まれてた時みてえに、濁ってない。

子供の時とおんなじ色だ。ホッとする。


「……何もねーのに物好きだな」

「そこに居たレルミッドは鳥を連れてたな。仲良くなりたいと思ったぞ!

お前を傷つけなくて良かった。丁度良かったじゃないか!!」

「丁度良かったぁ?」

「そうだ、レルミッド。お前は僕を助けてくれたんだ。細かい事に囚われるな。

僕はお前と友達かつイトコでとても嬉しいぞ」


ニコッとルディが微笑むと、おっちゃんがルディごと抱き込んできた。


「ジェラルディン、レルミッド。大人の事情に巻き込んで、本当にすみません」

「おっちゃん」

「父上」


ぽた、ぽた…と頭が濡れてるのが分かる。

ぎょっとして上を向いたら…おっちゃんが泣いてる!!

ハァ!?

あのおっちゃんが!?

マジかよ……。

ルディ迄ぎょっとしてんぞ!?


「父上!?」

「……これからきっと君らは…無駄な苦労を…君達を、守るから…」

「……な、泣くことはねーだろ!!大丈夫だ!?

何だか知らねえが、俺強くなったんだろ!?楽勝だって」

「そ、そうだぞ父上!!僕だってもう普通に戦えるぞ!!寧ろ父上を守ってあげるぞ!!」

「いや……」


おっちゃんは結局、そのまま…泣いた。

ルディと俺は必死で色々言ったが…漸く泣き止んだかと思ったら、暗いからもう帰れって。

……まあ、若干心配だけどルディが居るからいいよな。

親父を慰めるのも息子の務めだろ…。

俺は自分の親父なんかは慰める気にもならねえが…あの親子には必要だよな。

ずっと離されて暮らしてきたんだから。



「……」


もう星が見えるな。冬場は夜になるのが早え。

ロンのおっさんち…いや、俺のじいちゃんの別邸?への帰り道。

来るときも付いて来た騎士の兄ちゃんが付いて来て、送ってくれた。

まあ、普通じゃねえよな。

目深にフード被ってるガキに騎士が付いてんのって。

さっきも通行人3度見位されたし…怪しいのは分かるけどよ…。

あの通行人、ガン見し過ぎじゃねえか?

好きで目立ってんじゃねえっての。


しかし…俺の立場って微妙だよな。

変な椅子に好かれたが…椅子の機嫌は取りたくねえし。

王城に居るわけでもねえ。

……俺の扱いって…どうなんだ?



「おう、帰って来たかレルミッド」

「……タダイマーロンオジウエサマ」


結論、俺は根負けした。呼ぶよもう呼んでやるよ!

棒読みだけどな!!

しつこすぎんだよ、ロンのオッサン!!

まあ、それは過ぎた事だからいいんだけどよ……。

かなりムカつくが。

心の中ではロンのオッサン呼びは止めねえ。どうせバレねえし。

間違って呼ぶかもしんねえけど、あっちがどうせ無理強いしてんだからな。


「……聞いていいか?」

「何だどうした」

「俺らって、どうなんの?」

「俺らって事は、ショーン様とレルミッドでいいのか?」

「おう」

「微妙だな」

「……具体的に、どう微妙なんだよ」

「まず、学園は卒業前に出る事になるな」

「それは別にいいけどよ」


ハッキリ言ってそんなに思い入れねえし。

無駄な事喋れなかったから基本人付き合いしてねえし。

フード脱げねえか剥がされたりしねえか

ビクビクすることもねえしな。

まあ、地味に田舎じゃ学べねえし、授業はまあまあ面白かったけどよ。


「まあ、とりあえずはゆっくりしろ」

「ゆっくり……」

「取り合えず騎士団とルカリウムでお前らは守るから、ゆっくりしろ。

もうちょっとショーン様が体調戻りゃ一緒に遊びに行ったっていい」

「遊びに……」


マジか……。

王都来て3年程経つけど、全然言われた事ねえ単語だな。

遊ぶ…って何すんだっけ。

塔と学校と家しか行ってねえ気がする。

後、必要最低限の買い物……。


「まあ、騎士付きだが。事情知ってる奴ら付けるし」

「……マジか。どこのお嬢扱いだよ」


結局騎士が付いてんのかよ…。

心底嫌そうな顔してた俺に、ロンのオッサンがウィンクしてきた。

だから野郎に野郎が止めろよ!!

癖か!?ふざけんな。


「しょうがねえだろ、『魔法使いの王様』と『死霊使いの王子様』なんだから」

「止めろ!!」


そのダッセエ名前は今すぐに!!

そればっかりは許可しねえ!!

何が何でも拒否するからな!!

漸く話の裏側と言うか表側と言うか…、『魔法使い』の話が終わりました。

長かった!!

此処までお付き合いくださってありがとうございます。

残りの謎は、本編2で書いて行きたいと思います。

ジャンルは恋愛の割に番外編そのろくは恋愛の欠片も無くてすみません。

でも書いていて楽しかったです!

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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