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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
番外編

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番外編そのろくの13 門の向こうで躍るもの

お読みいただき有難うございます。ご評価も有難うございます。

悪役令嬢とレルミッドの仲悪さが際立ってます。

…意外と絡ませるとよく喋るなあ。

案外イトコ同士より舌戦になりますね。

それから10日。

俺は初めて薬を作り上げた。

……効果は知らねえ。

先祖代々とか言う割に扱いが雑な本の

書いてある通りにやっただけだからな。

実際の状況で試す訳にもいかねーし。

取り合えず残酷な塔で当番してる時に、

餌の木の実に掛けたらバカみてーに寄ってきやがったから

まあ、悪くねえって事か。

でも鳥共が食欲無くすって見た事ねーんだけどな。

……大丈夫かよ。


親戚のオッサン共はアレキちゃんの依頼だっつったら

何も言わなかった。

誰を処刑するのか、それすらも聞かなかった。


そして、約束の時間が迫る。


……。

正直今でもやりたかねーわ。

処刑っつっても殺人だろ?

手ェ貸すとか…どうかしてる。

薬を入れたそこらに有った金属製の入れ物がやたら重く感じた。

服の内側の隠しに突っ込める位小せえのにな。


「鳥番」

「……アレキちゃん」



来ちまったよ。

相変わらず足音がねーな。

魔力量がすげーから存在感は有るけどよ。

俺が振り向くと、鞄提げてるアレキちゃんが居た。

……珍しいな。

あー、女の服ってポケットねーんだっけ。不便だな。


「……貴族のお嬢の癖に、自分で鞄持つとか変わってんな」

「自分の用事に自分の持ち物を持ってきて何かおかしいの」


コイツは本当に感じ悪ぃな。

見た目がいいだけにスゲー腹立つぜ。


「そんな事より持って来たよね」

「……ああ」

「じゃあ交換。私のはこれだ」



アレキちゃんは丸めた紙に革紐が巻き付いたものを鞄から出した。

俺も服の隠しから容器を取り出す。


「こっちは……まあ、コレだ」

「使い方は?」


……説明すんのか、アレ。

適当には覚えてるけど…詳細微妙だな。

何だっけか。

俺が黙り込んだ理由をアレキちゃんは汲んだようで、肩を竦めた。


「簡単でいいよ。知ってる内容と照らし合わせるから」

「……白い服を着せた罪人に飲ませて、最上階から落とす。

そんだけだ」

「文言は?」

「……何だっけな有ったっけな、そんなの。

古臭え面倒え奴だった気が」

「……君、本当に覚える気無いものは全く覚えないんだね…。

もういいよ、この入れ物に書いてある」

「はっ!?」

「はじゃないよ。仲間内で聞いてないの?」


アレキちゃんが俺に入れ物の底を見せてきた。

確かに何か書いてあんな。

……アレおっちゃんちに有った其処らの入れ物だった筈だぜ?

んな気の利いた感じの入れ物だったのか?




「『残酷な愛に殉じて、口を閉ざせ』……?

何時の間に。家に有った適当な入れ物だった筈だが」

「……誰かが気を利かしたんだろ。いい加減だね…報酬減らしてもいいの?」

「減らすってどう減らすんだよ」


アレキちゃんは紙を持ってない方の手を俺に差し出した。

ボヤッと音がして、火が薄く灯っている。

その手をいきなり振り回しやがった!!


「フードが焦げんだろ!!近え!!何すんだボケ!?危ないだろうが!!」

「私は魔術はまあまあ得意なんだ」

「まあまあァ!?」


んな魔力量でまあまあとかか!!

普通の魔術師が怒り狂いそうな事言う奴だな!!


「ちゃんと加減が出来るから、森を燃やすことも出来るし、

この紙を所々焦がして穴開きで渡すことも出来る」


小首を傾げて、フワフワと炎が飛び散る。

生き物みてーな動きの火だ。

小さな火だが、俺が下手な事を言えばあっという間に燃える。

紙に触りそうで、触らない程度に……。



……人の足元見やがって!!!

悪ィ顔だなこの女!!


「……悪かったよ」

「単純」

「……風使って薬をぶちまけてもいいぞ、ボケ?」

「それは困る」


コイツと俺は本気で相性が悪いみてーだな。

分かってたけどよ!!


「じゃあ、あげるよ」

「コレが本物だって保証はねーだろ」

「出来るさ、ショーンを使えばいい」

「……は?」

「ショーンに協力させればいいだろ。君の徴を解くのに」


俺の徴?

……アレキちゃんはもしかして誤解してんのか?

俺が徴を解きたい訳じゃ無くて…

いやそりゃ解けるに越したことねーけど、

自分の徴の事を二の次以下だと考えてるんだがな。


後、もしかしてアレキちゃんは……

ルディの徴の事を、知らねえか?

……有り得るな。

アレキちゃんが俺に言ってきたのは、

ブスがルディに盛った毒の事だけだ。

それ込みで俺に何も言ってねえで、

隠してるって場合も勿論有るけどよ。

だけど…ああ、何が正解だ?

苛々すんぜ!!


だけど隙を見せれねえ。

アレキちゃんはマジで危ねえからな。

その魔力もだが、頭の回転もだし、性格もヤベエ。

それにアレキちゃんは味方じゃねえ。

只単に今だけ利害が一致してるだけだ。利害以外は信じるべきじゃねえ。

ルディの徴の事は言うべきじゃねえな。

更に悪い事になりかねねえ。

小さい頃から、ルディを殺すのに躊躇いはねえ奴なんだから。

そんだけの力を持ってるってのは分かったし。


コイツとは利害が一致しただけだ。

これ以上、関わり合いになる必要はねえ。


「……アリガトよ」

「此方こそ」


形だけでも有難そうにしたらどうだよ!!

心の底からどーでも良さそうなツラだなホントによ!!

ムカつきを抑えつつ、俺は渡された紙を開いてみた。

……無駄に凝った作りだな、ボケ!


それなのに…其処には…全く俺の予想外の一言しか書いてなかった!!

一言!!

一言だぜおい!!


「……おい、何だよこの『冬の夜会の日、夕方17の鐘が鳴ったらに王城へ』って!?

解き方はどーした!?」

「門まで来たらその内入れるよ。」

「その内もどのウチもねーよ!!

大体庶民の俺が王城に正面から入れる訳ねーだろ!!」

「入れるって言ってるだろ煩いなあ」

「別に入りたくねー!!」

「続きはちゃんと効能が分かってから渡るようにするから」

「ハアアアアア!?」

「失敗されたらちょっと困るしね」


こ、こ、コイツ……!!

怒りで頭から湯気出そうなんだが、俺!!

此処までムカついてんのに全然魔力が溜まらねえし練れねえ!!!

クッソ腹立つクソボケエエエエ!!


「この期に及んで二段構えたあいい度胸じゃねえか!!」

「慎重派なんだ」


それは信用してねえ或いは疑り深過ぎるっつーんだよ!!


「ボケ!!本物なんだから今言いやがれ!!」

「何処の誰が保証するのさ。

君の一族しか立証出来ないし、グルなら困る」


何なんだコイツマジぶん殴りてええええええええ!!!

腹立つ顔でシレッと抜かすなボケ!!


俺は散々怒鳴ったが、ボケしか言ってねーから結局、

アレキちゃんを言い負かすことは出来ず…言う通りにする羽目になった!!!

あああああ腹立つ!!

アレキちゃんのクソボケエエエエ!!!

二度と!何が有ろうと!絶対に!!

アレキちゃんに手は貸さねえええええええ!!!



それから間もなく、ムカつきも収まらねえまま息が白くなる季節になった。

王都は不愉快な位寒ぃな。

底冷えっつーの?石畳から直に冷気が上がってくるっていうのか。

この季節ばっかりは残酷な塔の上で鳥共が寄って来てもまだマシだな。

只、季節柄乾燥してっからクシャミは益々酷くなるけどよ…。

これ絶対俺何処か悪いんじゃねえの?

医者行ったら、まあどうしようもないしなるべく鳥から離れろって言われたが、

おっちゃんに却下された。

鳥と離れてえぜ、いい加減。


この鳥共見る度に処刑の事が頭を過るしな…。

もうしょーがねえけど。

あれから俺とルディは会う事すら出来無かった。

クソボケブスは何でだか俺をチラチラチラチラ見てきやがるけどな。


……俺の行動した結果と腹ん中が分かってたら、

んなツラは出来ねえと思うけどな。

クソボケブスうぜえ。

俺の何がいいんだ?

自慢じゃねえが年中フード被ってて怪しい奴だし、

不愛想にしてるし

あんま喋らねーしフツーに不審なんだが。

見かけだけならルディかサジュ・バルトロイズの方が絶対いいだろ…。

……何故か同じ位の頻度で見られてる気がするぜ。


「夜会…」

「どうしました、レルミッド」


夜会に行けって言われたけど、確か明日だ。

と言うかドが付く庶民の俺が何でお貴族様の夜会とやらに行かなきゃなんねえのかね。

女なら喜ぶかもしれねえけどよ。

しかも門の前で待ってろってどういうことだ。

雰囲気でも味わえってのかよ!?


……行きたくねえなあ……。

何で王城の門の前で待ち合わせなんだよ……。

しかもルディをどーやって探し出して徴を解こうか全然思いつかねえし……。

あの王妃のババアの問題も在る。

気にしないようにはしてるが……。

悪い考えばっか過るぜ。

……もし、あのババアが言ってた『慰みものの兄弟』が……

ウチの親父とおっちゃんだとしたら、とかな。

知りたくもない。聞きたくも無いが……あのババアはルディの母親だ。

何でウチの親父とおっちゃんに関係が有るんだよ…。

嫌だ、考えたくねえ。

……どうすりゃいいんだ。



「……王子に、会いたいんです(でもルディに会う前にあのババアに見つかったら)」

「王子殿下と仲が、いいのですね」


俺を見下ろしたおっちゃんの顔は微妙だった。

……おっちゃんもルディの事良くは思ってねえんだろうな。

親父とよく似た一緒のツラだ。


「……」

「……アレッキア姫のお誘いに乗りなさい、レルミッド」

「……は?」


思いがけねえ言葉に俺はポカンとしてしちまった。

確かにアレキちゃんの事は言ったけど、放置だったよな?


これまで何も言わなかったのに。


「アレッキア様から、我々にもお話が」


……おっちゃんたちにも接触しただと!?

何ちゅう奴だクソボケ!!


「きっと、今なら、もしかしたら」

「叔父さん…?」

「今、の最善を尽くせるかもしれませんよ」


今の最善?

どういう意味だ?おっちゃんを見たら、顔を顰めて首の後ろを擦ってやがる。

……こんな適当な会話でも発動すんのかよ!!従順なる囀り!!

結局何の事かも分かんねえし!!

何なんだあの持って回ったような言い方!!

俺らの一族が一番嫌いな感じじゃねえかあああああ!!


「すみません、叔父さん…もういいですから(おっちゃん、大丈夫なのかよ!?)」

「……大丈夫です」


いや、無理だろ。顔青くなってきてるしよ。

おっちゃんからこれ以上は何も聞けそうにねえな。

……明日を待つしかねえか。

俺はおっちゃんに肩を貸して塔を降り、その日は何事もなく済んだ。



そして翌日。

17の鐘は確かに鳴った。聞いた。

だが、それ以上に煩く鳴り響いているのは、他の鐘……。

災害時に避難誘導する、鐘……だよな、コレ。


俺が此処に着いた瞬間、ガンガン鳴り響いてるのは、何でだ?

疑問に思ったのもつかの間、俺の前には王城の立派な門と、その先に見える炎。

……火事だ。

それも半端な火事じゃねえ。

普通に、いや、それ以上に……デカい炎が俺の目の前で生き物みてーに躍っている。


俺は大火災と呼ばれそうなモンに巻き込まれる羽目になっていた。



……いや、俺は一体何を見てんだ?

昨日までは滅茶苦茶表面上穏やかだったぞ、おい。


「ハアアアアア!?」



何で待ち合わせ場所が炎に包まれそうになってんだよ!?

ここ、王城だぞ!?

門番もすっかり逃げちまって、誰も居ねえし!!

悲鳴すらも聞こえねえってことは…粗方逃げたのか?

これじゃ正門から入り放題…って……アレキちゃんの仕業だろどう考えても!!

何やってんだあのクソボケ!!

とうとう本当に放火しやがったのかあああああ!?

そりゃ人も逃げるわボケエエエエ!!


て言うか俺どうすりゃいいんだ!?

城の方が火の元っぽいぞおい!!

あっ、中!?

城の中!!!

ルディ!!


そうだルディは無事なのか!?

あのボロボロの為体で逃げられるのかよ!?

踏み込むにも俺水の魔術なんて全く使えねえぞ!?

風なんて使ったら燃え上っちまうし!!

まだ燃え広がる前に建物壊すくらいしか…方法はねえか!?

純粋な魔力だけで燃えてるならまだ消しようが有るが…。


って普通に燭台やら照明の松明も転がって来てんな!!クソボケ!!

魔力と普通の放火両方か!?ああああ!腹立つな!!

て言うか何で消火作業してる雰囲気すらねえんだよ!!

居ねえのか水魔術使い!!何で常駐してねーんだボケばっかかよ!!

非常識にも程があるだろ!!どんだけ城に無能ばっか詰め込んでんだよ!!


「今晩は、レルミッド・ルカリウム様」


ハァ!?今俺の名前呼んだの誰だよ!!

呑気に今晩はじゃねーよ!!

誰だ!?


「あぁ!?どちら様でいらっしゃいますか!?(誰だこの非常時にボケ!!)」

「アレッキオ・ユール様の忠実なる臣下、カイジュ・ルーロ・ノロットイです」


俺がキレつつも振り返ったら、其処には炎を背後にしながら笑顔を浮かべた奴がいた。


この状況下でよく笑えんな胡散臭え!!

悪役かよ!!

肝が据わってるのはいいけど、おかしいだろ!!

コイツ、アレキちゃんの回し者か!?

どっかで見た事あんぞ!!

城が燃えてしまいました。

炎をバックに微笑むのは神官商人かつご主人さまかつ伯爵さまです(笑)

時系列的には9、10、15、16話くらいでしょうか。



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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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