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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
番外編

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番外編そのろくの12 猫が導くは檻の中

お読みいただき有難うございます。

時系列的には8、9話くらいでしょうかね。

レルミッドは猫ならオバケでもまだ許容範囲内のようです。

俺とオバケ猫が踏む枯れ葉の音が森に響く。

猫を追いかけて俺は森の中を歩いていた。

……先導してんの猫だけど、オバケだしな。

こんなに微妙な気分で追いかけんの初めてだぜ。

いや、前みてーにオッサンの土人形共に担がれるよか大マシだけどよ。

と言うかこの森王城に繋がってたんだよな。

知らなかったぜ。

……これまでは大体オバケに連れ去られてたからな。

あの野郎どう見ても誘拐だろ……。


猫が赤い植え込みの中に入ってったから、どうにか隙間を見つけて体をねじ込む。……小せえガキになった気分だ。

まー、草原に潜れるような植え込みねーけどな。


抜けた先には、見覚えのある庭が有った。

凝ったテーブルと椅子もそのまんまだ。

そんで、思った通りの奴もいた。

……最後に観たよりも、大分弱った姿で。


「久しぶりだな、元気にしていたか、レルミッド」


久々に見たルディは顔色が血の気が殆どなくて、青白かった。

元々色白いけど、これ異常だぞ……。

やっぱり、あのクソボケブスが毒盛りやがった結果なのか?

アレキちゃんが言ってた通りなのか……?


「あの猫は可愛いだろう? 城内に迷い込んでしまっていたんだが、不幸にも死んでしまってな。

お前が猫好きだと言ったら引き受けてくれたんだ」

「……」

「そんな顔をするな、レルミッド」

「お前のツラが微妙だからだよ」

「ハハハ、確かにな……」


俺の顔が微妙だったみたいで、ルディは乾いた笑いを上げた。

……声も掠れてるし、顔引き攣ってんぞ、ボケ。


「……あのクソボケブスは、お前に何をした?

お前が今苦しんでるのは何だ?毒のせいか?」

「……彼女のせいだとお前も思うか?」

「ああ」

「そうか……状態異常なのは確かだがな。

どっちかと言えば……本当の毒よりも、毒のように滲みる言葉が変だった」

「……言葉?」


あのブスが言ってた『選択肢』とやらか?

意味が未だに分からねえが、王子には出て来てたとか言ってたもんな。


「例えば、話の流れとは関係無い……。思ってもいないことを言わせられるんだ」

「は?無理矢理に話題変えられるってことか?」

「……それに等しいな。

とにかく……何かよく解らない理不尽な力が働いている気がする」


理不尽な力……? 精神を操ってるってことかよ?

そんな事出来んのか?

あー、それも毒込みで出来たりしたのか?

あんのクソボケブス!!


「……そうだ、レルミッド、毒とはどういうことだ?」

「ブスがお前に贈り付けたモンに、毒が塗ってあるって聞いた」

「……誰からだ?」

「アレキちゃんだ」


ルディの眉が思いっきり歪んだ。

いや、分かるけどな。

アレキちゃんの強烈さは散々分かった……。


「アレキが接触してきたのか……? 平気だったか? ムカつくだろうあいつは」

「かなり不愉快だったが、まあ無事だ」

「……アレキが調べたって事は、腹立たしいが本当だろう。

彼女の前では飲み食いしないようにしているし……贈り物……を受け取らされたことはあるな」

「……それが毒じゃねえの」


取りあえず今ルディは弱りに弱りまくってるのは、

その会話の選択肢とやらが主な原因なのか? それとも贈り物とやらの毒か?

錯覚するような弱い毒って言ってたけど……相乗効果になってんのかもな。

何を幾つあのブスが寄越したかは知らねえが、弱い毒でも蓄積してたら致命傷だろうな……。

しかもただでさえルディは弱体化してんだしよ。


「すぐに処分させたんだがな……。触るだけでもマズかったかもしれないな……。

確かに体調は悪くなったし、彼女が傍に寄るとおかしくなる」


あんのブス!!


「夜中にあのクソボケブスが彷徨いてんの見た。

変な店に出入りしてんのかもしんねえな」

「そうか……何を考えて僕にそんな事をするんだろうな……」


余程怠いのか、ルディは手を動かすのすらしんどそうだった。


「じゃあ取り合えず解毒か? ……方法を……市販の毒消し買ってくるか!?」

「普通の解毒方法では無理だろうな」


……そうだろーな。

通常の毒消しで何とかなるんなら、とっくにルディは元気だろうよ。

あのブスを絞めるにしても、物を処分したんなら証拠はねえ。

裏通りに踏み込むにしても…何処の店か分からねえし、とっくに逃げてる可能性もあんな。……何か、他に方法はねーのかよ。

あのブスは何か、何をを言ってた……?


……そうだ、名前。

ローディって言う……奴の名前!!


「ルディお前、ローディって名前知ってるか?」


アレキちゃんに聞けなかったな。

あのクソボケブスが言ってた選択肢とやらを教えた奴だ。

ルディなら何か……知ってるかもしれねえ。


「……ローディ……。……アローディエンヌ……?」

「……アロー?」


……長え!! 言えねえし覚えらんねえな!!

何なんだその噛みそうな名前は。て言うか、あのクソボケブスが言ったのそんな名前だったか?


「アローディエンヌ、ではないのか?」

「いやそんな長え名前じゃ……無かったような」

「レルミッドは大体長い名前を面倒がって略すからな……」


煩えな。呆れた目で見んなボケ。まあ確かにそうだけどよ……。

途端に自信がなくなるじゃねえか。


「……もし……アローディエンヌなら……関わらない方がいいぞ」

「ハア? 何でだよ」


折角手掛かりっぽいのによ。


「アレキに対抗が出来ない今、止めておいた方がいい」

「ハァ?アレキちゃんが?

いやでもソイツが何か知ってるかもしんねえんだよ」

「知っていてもいなくても、彼女に会う事は不可能だ」

「何で」

「軟禁されているからだ」

「ハァ!?」


軟禁んんん!? 何だそれ!

罪人か何かなのかよ!?


「かなり幼い頃から軟禁されているんだ。アローディエンヌに会う事は不可能に近い」

「ど、ど、どういう奴なんだよ。

あのクソボケブスに何かやらかさせた奴かもしれねえのに」

「いや、仮にそのローディというのが彼女だとしても、アローディエンヌは物理的に何も出来ない」

「魔力とか毒物の知識とかを、ブスに教えてやったって考えられねえか?」


軟禁されてるっつっても、もしかしたら何か知ってるかもしんねえし。


「吃驚するぐらい大した能力のない一般人だから

考えるだけ無駄だ」


む、無駄なのかよ……。吃驚するくらい能力ねえ一般人…。

しかも軟禁中……そりゃ何にも出来ねえか…?

あのクソボケブスを操ってる黒幕かと思ったのによ……。

と言うかアレキちゃんとどういう関係だ、その謎の奴。


「すまん、レルミッド……。ちょっと疲れた」


あっ、調子に乗って喋らせ過ぎちまった!! 滅茶苦茶弱ってるの忘れてたぜ……。

顔真っ白じゃねえか!


「寝ろ! 何で誰もお前を労わらねえんだよ」

「城の中で僕を気を遣うものなんていないんだ」

「……ルディ……」

「しかしお前が王都に来てくれて本当に心丈夫で嬉し……」


ルディが言葉を切って、向こうに目をやる。

は?誰か来たのか?


「人払いをした筈だが、この為体か……。侍従共め、余程命が惜しくないと見えるな」

「……とりあえずお前も、もうちょっと城の連中と歩み寄る努力をしろよ……」


一方的に圧迫されてるだけかと思ったけど、弱ってようとルディだもんな……。

……すげえどっちもどっちな気がして来たんだけどよ。


ぐったりしたルディを動かすわけにもいかず、結局はその場に留まることになる。

そしたらきらびやかな格好をした40代位の女がジャラジャラと供を侍らせて此方に歩いてきたのが見えた。


ド派手なオバチャンだな……。見るからにウザそうな恰好だしよ。何の為にそんなガチャガチャしてんだ?

布と金属の固まりとしか思えねえ無駄さだぜ。


「はは、うえ……何故ここに……」


ルディは色々混じった苦いものを飲み込んだような声で、そのオバチャンを呼んだ。

母上? このババアが?

……実の息子に徴を捺した、クソボケ王妃か!!


「慰みもの、あぁ慰みものなのね」


ハァ? 何だって? ナグサミモノ!?

慰み者ってアレかよ、お前の愛人ってことか!?

誰がだよ!

何ちゅう失礼なんだよこのババア!? 俺がドン引いて警戒心全開にしてるにも関わらず、すげえ勢いで寄ってきた。


キモイ。

何で俺に寄ってくる?息子はそっちだぞ。大体何言ってんだ?初対面だぞ、俺。

ババア……王妃の目、濁り切ってんな……。

魔力も何か、気持ち悪ぃし。

……あのブスみたいなドロッとした魔力じゃねえか。


「兄なの?弟?」


誰だよそれ。

誰かと勘違いしてんのか?

何を見てるんだ?このババア。


「うふふ、どちらでも構わないわ……来て?」


心の底からゾッとするような気持ち悪ぃ声で俺を呼んできた。

え、何だこのババア。行かねえよ。

怖気しか湧かねえわ。


「わたくしを連れていって。お前達の……草原へ」

「……ナグサミモノ?(ババア、目が気持ち悪ィ!!)」

「わたくしずっと、ずうっと……待っていたのよ。

連れ出して、連れ出してよ……ねえ」


何だよこのババア、ジリジリ寄ってきやがる…。

気持ち悪ィ。なのに体が動かねえ。


……従順なる囀りのせいか!?

後ずさる位なら、イケるか……?


「母上!お気を確かに」


尋常でない母親の様子に、ルディは宥めようと俺とババアの間に入ってくれた。

チッ、どー見ても調子悪そうなルディに庇わせちまった。

あーーームカつく!!

コイツが王家の輩である以上俺にはぶちのめせねえからな!!

ぶっ飛ばしてえけどよ!


「慰みモノ、聞いて? わたくしこの子を産んだの」


俺がルディに疑問を投げかける前に、

ババアはルディを指差した。

いや、何言ってんだこのババア。

お前とルディの親子関係なんぞこの場にいる全員が知ってるっつーの。ボケてんのか!?

意味が分からねえで俺らが呆気にとられてんのに、どっか目がイッてやがる。


それから、とんでもないことを言い放ちやがった。


「あれはお前達どちらかの子供よ……。ねえわたくしを連れ出してったら!!」

「王妃様!!!」


ハア!? ハアアアアア!? 

コイツ何言ってんだ!?

どっかで金切り声の女の悲鳴が聞こえた。空気が凍ったかと思う位、体が固まった。


何言ってんだ、このババア。


……誰が、誰の何だって?


「誰か! 誰かそこ不届きものを追い出しなさい!!」


俺とルディが立ち尽くしていると、王妃のババアに付いてたメイドみてーなのが大声を出しやがった。


って俺!?

何で俺だよ!?

そのババアをどっか連れて行けよ!


「なっ!? (不届き者!? 俺が!? 俺がかよ!?)」

「ふ、ふざけるな誰が不届き者だと!? そいつは僕の友達……ぐっ」


ルディが俺を庇ってくれたのにも関わらず、

あっという間に人が集まってきやがった。こんだけ人居てたのかよ!?

騎士団はいねえみたいだが……こんだけ雁首揃えて囲まれて、魔術無しじゃ太刀打ち出来ねえよ!

馬鹿じゃねえの!?

俺よりそのババアの管理をちゃんとしろよ!


「処刑鳥番!? 何故此処に」

「何故お前が!?」

「いや、違うあの兄弟ではない……。息子か!? くそっ……こっちに来い!」


知らねえよ!

勝手な事ばっか言いやがって!!

伸びてくる手に咄嗟に抵抗しようとして、魔術を使おうとすると首の後ろが……従順なる囀りが無茶苦茶痛む!!

痛え!! 煮えた鍋に手ェ突っ込んだより痛え!!


「っつ!!」

「止めろ!レルミッドに何をする!! レルミッド、レルミッド!! 大丈夫なのか!?」


俺の背中を撫でさする気配がする。ルディだ。俺を庇って……!!


ああクソボケ……痛え!! マジで痛ぇ!!

ダラダラ汗だの涙だのヨダレだのが流したくもねーのに出てきやがる…。

これが、物理的に首が飛びそうな状態って事かよ。

ふざけんな!

ルディも体調死ぬほど悪ぃのに!!


「レルミッド? レルミッドというの?

私の慰みモノ……どちらの名前?どちらでもいい…」

「違います王妃様!あれは子供です!

貴方の慰みものではないのです!!」

「こども……」


ババアがふらふらしながら好き勝手言ってやがる……。

付き添いのメイドに何か言われて、人の隙間から見えた王妃のババアの動きが止まった。


……うわ、こっち見てるしよ!!


「……あの子こそがわたくしの本当の子供なのね?」

「王妃様!?」

「そうよ、王家らしいショーンなんて要らない。

慰みものとの子供…愛らしい子供……わたくしのオオォオォ!!」


んな訳ねえだろ!! 何なんだこのババア!!

実の息子の前で何を抜かしてんだよ!? コイツ本気でどうかしてんぞ!?


それに、思いっきり俺は親父と母ちゃんの息子だっての!

あんな気持ち悪ぃババアの子供な訳が有るか!!


「寄ら…ないで下さい(何言ってやがんだこのババア!! ルディに謝れ!!)」


王妃のババアから逃げたいと思う気ィすら駄目なのか、焼けるように首が痛んできやがった!!

ルディが手を伸ばしてきたが、俺を引きずり込む人の波に、俺らは引き剥がさた。



その後は何が有ったか分からねえ。

全然だ。

気が付けば、俺は……どっかに寝ていた。


ギャアギャア鳴く鳥が煩え。

……聞き覚え有り過ぎんな。鳥の鳴き声か?


目の前に広がるのは空だった。

箆で薄く塗ったみてーな雲が見える。

……外?

何で、俺は……王城に居た筈で……。


俺は辺りを見回した。

燃えるように赤く染まった木々が目線の下に見える。

風が…冷たい。此処は塔の上……か?

あのクソボケな鳥どもが俺の周りにみっしり張り付いてやがる。

羽毛がくすぐってえ。

流石に暑くはねえけど……。


「叔父さん……?」

「お帰り、レルミッド」


グシャグシャと俺の頭をおっちゃんが撫でた。

んん?……フードが、ねえのか。

あのドサクサで脱げたか……。

久々に風に晒される首と頭が気持ちいいな。


あれは、夢じゃねえ。

一体どういうことだ。

ルディは?

王妃のババアが言った事は?

兄弟って何だ?

慰みものって……何の事だ?


頭の中がこんがらがり過ぎて、喋れねえ。

暫く口を開けなかった俺を、おっちゃんはじっと待っていた。


「叔父さん、お伺いしても?(つか、聞かせろよ)」

「どうぞ」

「王妃様が私に、慰みものと仰せられました

(何なんだよあのババア……クソウゼエ……)」


ああ、みたいな納得した顔をされた。おっちゃんは知ってんのか。


「その問いは草原で聞きましょう」

「どうしてですか

(いや、今がいいよ。こちとら訳わかんねーんだけど)」

「首の徴が聞いています」

「……(このクソボケな隷属印かよ)」


家でも…筆談でも喋れねえ事なのか?

おっちゃんはフードに包まれた首をトントンと叩いて、

声を出さずに口だけを動かした。


『余計な事を喋れば、首が飛ぶ』


……マジかよ!!


「王都では従順でありましょう」

「……伯父さんのお心は、草原にあられますか?

(草原なら話せるってのかよ?)

「生まれ故郷を愛さないものはおりましょうか」

「私もです(あのド田舎、自由に喋れるってだけでマジ懐かしくなってきやがった)」


取り合えずルディとアレキちゃんとは普通に喋れるけど、

それ以外はずっとこのボケな喋り方だしな。


「……全ては、王家の思し召し……」

「そうですね。(あのババアとそのツレのジジイ、マジ許さねえ)」


つまり今何を尋ねても無駄って事か。


俺は今王都からは出れない。

つまり王妃のババアの言った事は謎のまま……。

ルディも俺の力だけでは助けられねえ。


塔は高い。

此処からは街が、城が良く見えた。まるで豪華な鳥籠みてえだな。


あのババアが言ってたことは勿論気になる。

一体何の事なのか。

だが、どうしようもねえ。

何も教えて貰う事は出来ねえんだからそっちは一旦諦める。


それよりも、あの呪われた鳥籠から、ルディを助けなければなんねえ。

ルディが親に殺されてしまう前に。


俺に出来ることは少ない。何もかも足りない。

……アレキちゃんに、手を貸すしか道は残っていない。

手段は選んでらんねえってことか。

あのクソボケブスよりも、ルディの方が大事だ。

恨むなら恨め。甘んじて受けてやる。

お前も俺に恨まれてんだからな。

アローディエンヌの外での評判が露わに(笑)

そして変な事を言う王妃が初登場しました。

次辺り『冬の夜会』の時系列になりそうですね。


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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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