番外編そのろくの11 一方的な通達と代償
お読みいただき有難う御座います。
悪役令嬢と魔法使いの舌戦です。
「……一体何の御用でしょうか(つか、フツーに帰ってくれ)」
「ああ、鳥籠に入ってちゃ話も出来ないか」
いや、聞けよ。
相変わらず話になんねえな。
まあ俺の隷属の徴のせいもあんのかもしんねえけど、絶対アレキちゃん友達いねえだろ!!
自然と嫌な顔になっちまうのは仕方ねえわな!
「……」
「うわっ!?」
アレキちゃんに睨まれたと思ったら、目の前に熱量が…炎が巻き起こった。
火!?
火ィィィィ!?
何で火が巻き起こるんだよ!!何も言ってねえのに攻撃かよ!?
て言うかここ、森ん中だぞ!?
周り落ち葉だらけだろ!!
燃やす気か焼き殺す気かああああ!?
「なななななな何すんだこのボケエエエエエエ!!こんな乾燥した時期に火ィ使うなクソボケエエエエ!!」
「ああ、本来はそんな感じなの。柄が悪い」
「火ィ燃やす方が可笑しいだろクソボケ!!」
「煩いな…」
煩いじゃねえだろおおおおお!!
何で俺の方が変な事言ってるみたいな被害者ヅラしてんのコイツ!!
アレキちゃんおかしいだろおおおおお!!
「…まあいいや、取り合えず話は出来るし」
「話ィ…!?一体何を言ってやがんだ…ん?」
……話?
あっ!!
「口調が戻ってやがる!!」
「鈍いなあ…」
おまっ…何の説明も無しに火ィ向けられて鈍いだとおおおお!?
どういう神経してやがんだアレキちゃんよおおおお!!
「いや鈍いなぁじゃねえよ!!今お前俺を焼き殺そうとしただろ!!
一体何がどうなってんだよ!!」
「徴を一時的に焼き切っただけだよ、煩い…」
「ハァ!?徴を一時的に焼き切る!?何だそれ、アレキちゃんそんな事出来んのか!?」
「何その呼び方…実は私の事そう呼んでるの…」
いちいちムカつくなコイツ。
心底軽蔑してますって視線どうにかしろよ!!
お前が声かけて来たんだろうが!!もっと下手に出ろよ!!
何でいちいち人の神経逆撫でしてくんだよ、性格悪ぃなああああ!!
あーでも気に喰わねえみてーだからずっとそう呼んでやろ!!腹立つしな!!
「だったらどうする、アレキちゃん」
「別にどうもしない。勝手にすれば」
可 愛 く ね えー!!
ああ良いぜ、お望み通りそうしてやらあ!!
其処らで呼んでやる!
ババアになってもアレキちゃん呼びしてやらあ!!!絶対そこまで付き合う予定ねーけどな!!
ああああああムカつくぜええええ。
いや、落ち着け俺。
感情をグチャグチャにしたらまたあの魅了とやらにやられかねねえ。
……取り合えず穏やかに話をしてやらねえと。
それに、考えを変えりゃルディ以外と普通に話出来んの久々だからな!!
俺は心が広えんだ、アレキちゃんと違ってな!!
「……アレキちゃんは徴とか呪いに詳しいんだな?」
「それ君に教える義理あるの?」
「……お前が言ってきたんだろうがあああああ!!」
ヤベエ、コイツと話してるとマジで頭に血ィ上りまくるな。
しかし…徴に関する事がアレキちゃんが知ってるとは思わなかったぜ。
あんまり機嫌損ねるのも良かねえな…腹立つけどな!!
本ッ当に腹立つけどなあああああ!!
「気が短いな…大体鳥番よりこっちは王城に小さい頃から行ってるんだよ。
君よりは相当詳しいよ」
「そーかよ!!そりゃすんませんでしたねえええええ!!」
「あのヘラヘラ呑気な馬鹿従弟と違ってね」
「お前本当に腹立つな!!」
「本当煩いな。まあ、ショーン側の人間と友好的に付き合えるとは思わないけど」
「いや、喧嘩売って来てんの全面的にお前だよな」
アレキちゃんはウザそうに目を細めて俺を見た。
……本当に可愛いけど死ぬほど腹立つな。
何なんだこのグラっとくる感じ…あー腹立つ!!
「どうでもいいけど、私に魅了されるなよ」
アレキちゃんが俺に向けたのは、其処まで見透かしてくるような目だった。
薄くて青い、氷のような目に…心臓が結構大きく動いた音がしたのが聞こえる。
かわ…いくねえよ!!腹立つなああああクソボケエエエエエ!!
全然可愛くねえ!!全くだ!!
誰が魅了されるかあああああ!!
「……されねえよクソボケ!!」
「どうだか。君魔力多い割に単純そうだし…。
まあいいや、私のスキルの事は聞いてるだろ。
これ以上どうしようもないから精々頑張って足掻いて」
おいいいい!!他人事だなああ!!
ムカつく傍迷惑スキル振り回しやがってボケ!!
ちったあ申し訳なさそうにしろよ!!
「そんな事より、君、薄赤い髪のちょこまかした屑女に
纏わりつかれてただろ」
「……ああ?」
薄赤い髪のクズオンナ?
思わぬ奴の事に俺が顔を顰めると、聞いてねえと思ったのかアレキちゃんがも一回繰り返した。
「ショーンに今纏わり付中の屑だよ」
「……あのクソボケブスかよ!!」
「…呼び方柄悪いね…。まあ、違いないけど。
ロージア・ハイトドローって名前」
「知らね。興味ねえ」
あのブスの名前?知らねえな。
と言うか覚える気はねえ。
クソボケブスで良いだろ別に。俺は困らねえし。
「興味ないから覚えないって呑気でいいね。君、ショーンの為にあの屑女を排除したいんじゃなかったの」
「……何で知ってる、アレキちゃん」
「ショーンに纏わりつくあの屑女を射殺しそうな目で見てるじゃないか」
「アレキちゃんには関係ねーだろ」
「ショーンがよっぽど大事なんだね。アイツは女好きだけど、いいんだ」
「ハァ!?俺だってそうだよボケ!!」
「あっそう。どうでもいいけど君女子と関わらないからそう言う説も出てるよ」
ハアアアアアア!?
そういう説!?
俺が野郎が好きだって言うのか!?
好きな訳ねえだろおおおおおお!!!
切り刻むぞ!!
「ハアアアアア!?
何処の誰の流したデマだよボケエエエエエ!!
従順なる囀りの事がバレたらヤベエから人付き合いしてねえだけだ!!
女子だけじゃなくて野郎ともあんま関わってねえわボケエエエエ!!」
「ああそう、聞いてないしどうでもいいんだけど…。本当に自由に囀らせると煩いな」
……コイツ、喧嘩売りに来てんだな?
腹の中の苛立ちと魔力がグルグル混ざるような感覚がする。
だが、上手く魔力は練れない。
……これも隷属の徴のせいか?
若干警告のように首が熱を持ってきてるのが分かる。
「とにかく、私もあの屑女が気に入らないんだ」
「ハァ!?知らねえよ!!」
「今言ったよ、聞いてたの?」
「……アレキちゃんよ、俺と争いたくて此処に来たんだな?わーった、首飛ばされる前にカタを付けりゃいいんだな?」
「馬鹿なの?私だって王族の端くれなんだけど。力使う前に首が飛ぶよ」
「先の事は知らねえよ」
「私とやりあいたいとかそんなくだらない事の為に首飛ばすの?
ショーンはどうするの」
「……ッ」
……腹は立つ。
本当にアレキちゃんはムカつく。
だが……。
正論だな。
「本当に仲が良いんだね…訳が分からないね。ショーンの何がいいんだか」
「ルディをバカにすんなら俺は帰んぞ」
「……しょうがないね、話が進まないし…」
アレキちゃんは風に乱された長い髪の毛を払った。
辺りの真っ赤に染まった葉っぱと一緒の色だ。
絵になんけどよ、腹立つな。
「端的に言うよ。残酷な愛に殉じる塔で処刑を行うから、手を貸せ」
処刑?
……処刑って…。
物騒な意見に俺は顔を顰めた。
……残酷な愛に…何だっけか?
……ああ、残酷な塔。あの塔の名前そんなんだったな。
処刑を行うって…アレかよ。
此処に来た初日におっちゃんが言ってた奴!!
滅多にそんなモンやらねえって言ってた…
鳥に…鳥共に生きたまま喰わせる処刑かよ!?
アレキちゃんは俺をじっと見たままだった。
ちょっとそこのゴミ箱動かすの手伝えよ、
みたいな態度でな。
……コイツ、マジで言ってんのか?
聞いただけでも相当残酷だったんぞ!?
三年ちょっと前だったけど、
あの時食ったモン吐きそうになった位には気分悪かったし。
「……誰をだよ」
「この流れで察しなよ。ロージア・ハイトドローに決まってるだろ」
「……処刑なんて単語、俺みてーな庶民には聞き慣れねーよ。察せるか、ボケ」
口では言えたが、俺は内心焦りまくっていた。
マジかよ。
確かにあのクソボケブスはケツの軽いバカだしクソムカつくのは間違いねえ……。
だが、其処迄の罪を…背負ってるのか?
分からねえ。
だってちょっと聞いただけでも大概グロかったんだぞ、あの処刑法!!
「躊躇する余裕は無いよ。あの屑女はショーンに毒を盛ってるからね」
「……ハァ!?毒!?」
毒だと!?
目を剥く俺にアレキちゃんはゆっくりと続けた。
つまんなさそうに、えげつねえ事を!!
「弱い弱い神経毒。屑女がショーンに押し付けた贈り物の包み紙に塗ってある」
「な、な……何でアレキちゃんがんな事知って……」
「別に疑問は誰が調べても良くない?」
「そう言う問題じゃねえよ。だってお前…ルディと滅茶苦茶仲悪いじゃねえか」
「悪いけど、利用は出来るだろ」
俺は怒鳴りそうになるところを抑えた。
今はアレキちゃんじゃねえ。
クソボケブスの話だ。
……クソボケブスが、ルディに毒を塗ったモンを押し付けていたと言うのが、本当なら……。
幾ら弱い毒だろうが……今のルディには、致命傷じゃねえか!!
「どういう毒なんだ」
「一時的に相手の意識を朦朧とさせて、若干依存するような錯覚をする毒らしいね」
「……依存ってのは」
「端的に言えば、好意らしいけど。媚薬…でもないか、毒だし」
「毒なのは間違いねえのかよ」
「相手の体調やら気分を悪い方に変えるなんて普通に毒でしょ」
そりゃそうか…。
て言うかその首傾げる動作、ルディに似てんな。
流石イトコ。顔は似てねえのに。
……若干ホッとしちまって、腹立つ。
「夜間、裏通りに店が出てるらしいね。一時的に一方的な恋愛関係に持ち込む為の道具として。
学内でも蔓延ってるらしくて、騎士団も動いてるらしいな」
俺はそれを聞いて、ブスが結構な遅い時間に裏通りに消えていった事を思い出した。
「それ、あのクソボケブス見た事あんぞ」
「ああそう、裏が取れたね。騎士団に言っといたら?」
「アレキちゃんが言えよ」
「嫌だ。折角だから騎士団に君の顔でも売っておけば?もしもの際に揉み消してもらえるかもね」
「もしもの時って何だよ。悪さをする予定はねーっての」
「君、頭良いのに馬鹿だね。王子の友人ってだけで暗殺者に狙われかねないのに」
忘れてたが、狙われてたな。それで帰省出来てねえんだし。
ヤな事思い出させやがって。
「……もう狙われてるわ、ボケ」
「あっそ、大変だね。ショーンとの付き合い止めればいいのに」
「……次言えば帰んぞ」
「此処まで色々教えてあげたのに何もしないって?虫が良すぎるよ、鳥番」
ぱちっと音がして、炎の気配がする。
気配!?
……いつの間に練った?
ヤベエ、全然魔力の高まりに気付かなかった。
何時の間にか、フワフワと炎が付いたり消えたりしているのが周りに見えた。
腕に炎を纏わせて、アレキちゃんがこれまた悪ぃ微笑みを浮かべてやがる。
また美人だから迫力が有るのなんの…絵になる…っておい!!
ムカつくな!!
コレも魅了の一環か!?
「火花は止めろや。森が火事になっちまうぞ」
「こんなに乾燥してたら、いずれは燃えるんだよ」
放火魔みてーな事言う奴だな!!
どういう思考してんだ危ねーわ!!
「……俺に何をさせてーんだ。
言っとくが、鳥は俺の言う事を聞くような便利な道具じゃねーんだぞ」
「知ってるよ。彼らは本能に従うだけだろ」
……鳥の事まで知ってんのかよ。
アレキちゃんは何処まで知ってんだ、俺の事を。
いや、俺らの一族の事を。
「処刑の為の薬を渡せ、レルミッド・ルカリウム。報酬は弾むから」
薬。
その単語に胃がヒヤッとした。
……此処三年間で作り方は知らされた薬、の事だよな。。
……其処も知ってんのか。
……名前何だっけな。また変な大層な名前が付いてんだよ…。
結構作るのめんどいし手順多いしよ……。
「……俺の一存で出来ると思うか?」
「王族の命令だから平気だよ」
ああ言えばこう言う…
……口じゃ勝てそうにねーな!!
あああああぶっ飛ばしてえ!!
うぜえええええ!!こういう交渉事は本当に無理だ!!
「……報酬って何だよ」
「そうだなあ…あの屑が死んだら嬉しいでしょ」
おい。
真顔で何を軽ーく言ってんだコイツ。
死んだら嬉しいでしょって言われても別に嬉しくねえよ。
生きてても嬉しかねーけど。
「確かにルディを苦しめた奴だが、人の生き死にが嬉しいとかそんなボケな心根はしてねえよ」
「甘い奴。じゃあ何がいいのかな…ショーンの命とか?」
命?
……ルディの命だと?
「……どういう意味だ」
「生きてればいいでしょ、とりあえずは」
「とりあえずはって……殺されんのかよ!?」
「君、あの王城でショーンが死なない保証が有るとでも思ってるの?」
死なない保証は……ねえな。
実の親に弱体化掛けられて、
周りは信用ならねえ環境で、
ルディがあのまま生きられる保証はどこにもねえ。
確かにそうだ。
アレキちゃんなら、王城に入れる。
守るにはうってつけだしな。
「それは……アレキちゃんがルディを守るって事かよ?」
「え、嫌だ。何で私がそんな事しなきゃならないの」
ハァ!?アッサリ否定すんな!!
何で!?何でだと!?
お前今までの話の流れえええええ!!
「……おい!!そーいう話の流れだっただろ!!」
「知らないよ。やっぱり面倒そうだから金品でいい?」
「良くねえわああああ!!」
何なんだコイツの自由さはああああ!!
金品で済む話の流れじゃ無かっただろ!!
何なんだ、偉い奴っておかしいだろおおおおお!!
「煩いなあ…じゃあ何?徴の解き方?」
「知ってんのかよ!?」
「知ってるけど」
「知ってんのかよ!!ああそう言えば詳しいんだっけか!?
て言うかサッサと言えよおおおおおお!!」
「煩いなあ…それでいいんならいいよ、それで」
何で俺が悪かったみたいな言い方なんだよコイツ!!
あああ腹立つ!!
「……お前、友達いねえだろ」
「どうでもよくない?」
いねえんだな。そうだろうよ。
と言うか結構なお取り巻き居たような気ィすっけど、どーしてんのかね。
こんな女の周りにいたら胃とか壊してる奴いそうだよな。
気の毒によ。
「じゃあ纏まったね。薬っていつ作れるの」
「つっても…10日くらいか」
刻んだり漬けたり煮たり…バカみてえに手間が掛かるんだよな……。
どうせ何か手ェ掛けるんなら別の面白そうな事がいいぜ…。
ホント王都って碌な目に遭わねえわ…。
草原で特に何も無かった毎日がマジで遠いぜ。
何もかも投げうって戻りてえ訳じゃ勿論ねえがな。
「冬の夜会には間に合うか…じゃあそれでいいよ」
「それでいいよも何もそれしか無理だっての」
何処まで上からだよアレキちゃんはよ!!
ちったあ申し訳なさそうにしたらどうなんだよ!!
「10日後に今の時間、この森に取りに来るから」
「人の言う事を聞け」
「聞こえてるよ」
「それ聞いてねえんだよ、ボケ!大体徴の解き方はどうするんだよ」
「何かに書いて持って行くよ。どうせ口頭で説明したところで無駄だしね」
クソムカつくなあああああ!!
何なんだよアレキちゃんよお!!
人を怒らせる天才か何かか!?
そりゃルディとも仲悪くなるし俺も苛つくわ!!
「それに、呼びに来たみたいだよ」
「は?」
アレキちゃんの指が俺の背後を指す。
爪の先まで綺麗なそれを視線で辿ると、茶色の猫が居た。
ふさふさとした、茶色い猫だ。
何でこんな森に?
「……猫」
「じゃあ、私は行くから。約束を破ったらショーンを燃やすからね」
「ハアアアアア!?」
とんでもねえ捨て台詞を吐いてアレキちゃんは猫とは反対方向に歩いて行った。
相変わらず全く足音を立てずに。
……この落ち葉の中でどーやってんだ、本当に。
バケモンじみてるぜ。
「にゃあ」
猫が落ち葉をカサカサ踏みしめてこっちに寄ってきた。
…だよなあ、普通こういう音するよなあ。
俺はアレキちゃんに踏み荒らされまくった心を癒すべく、猫に近寄った。
手を伸ばしても逃げねえ。
空気を読む出来た猫だぜ…。
ざりっ
「……ざり?」
ふわふわの感触を予想していた指に与えられたのは違う感触だった。
まるで土に触ったような……
「……土、人形……」
触った途端に、ざわり、とした背中に伝う怖気。
昔も、つい最近も感じた気配。
掌には、土が付いている。
「……オバケ、猫」
呼びに来た。
さっきアレキちゃんが言ったのは、コイツか。
……この猫はきっと、呼び出し。
ルディが、俺を呼んでいる。
悪役令嬢なので、義姉さまがアローディエンヌ以外に態度が悪いのは素で仕様です。
次回、ルディ君が出てくる予定です。




