番外編そのろくの14 隠された繋がりを手繰る
お読みいただき有難うございます。
火災の描写や人死に等の残酷なシーンが出てきます。苦手な方はお戻りを。
王子まで辿り着かなかった!!
火災現場で神官商人との会話から始まります。
新キャラと言うか、名前は出てたけど喋ってなかったキャラが出てきます。
何なんだコイツは!!
まだチビッこいけど……魔力が結構有るみてーだし
……もしかして俺とおんなじ学生か?
あの学園に居たってのかよ…。全然知らねえ。
まあ、俺人付き合い出来ねえし知らねえのも無理ねえだろ。
フツーに周りから浮いてるしな…。
……て言うか、アレッキオ・ユール?
誰だソイツ。またアレキちゃんに似た名前だけどよ。
……アレキちゃんの身内か?
何か名前からしてそれっぽいな。
まさか双子の兄貴とかかァ!?
うわ、居そうだ!!スゲーツラは良くても邪悪で陰険なのが居そうだ!!
もし居たとしても絶対出てくんな!!見たくねえ!!
「アレッキオ様とは、どなたでしょうか?
(この非常時に追加の面倒は止めろよマジで!!)」
「ああ、アレッキア様の方がいいですかね…
まあ、どちらも同じ方なんですが」
同じ方ァ!?
は?何が同じなんだよ…。
何言ってんだコイツ訳が分からねえ……。
「そう構えないで下さい。俺もある意味貴方とご同輩なんですから」
そう言うと、またチビがニコッと胡散臭い笑顔を浮かべやがる。
……愛想良い割に何か…ゾッとすんな。
火災現場で笑う奴なんて碌な奴じゃねえって事は確かだけどよ。
「貴方の一族と同じく王家から迫害を受けた身の上なので、俺」
「……は?」
「かつて焼き払われた女神神殿の神官一族の出ですから」
は?
今コイツ何て言った?
……焼き払われた?
神殿?
王家から迫害…?
火が何かを焦がしたのか、バサッと音がしている。
……まさか。
まさかコイツが……この、火を放った!?
「まさかこの火災は…貴方が?(お前がやったのかよ!?)」
「俺では有りませんよ。俺火の魔術は操れませんし」
「……アレッキア様…(いや、やったのはアレキちゃんだろ絶対)」
「一応違います」
一応って何だよ!!
ハッキリ言えこのボケ!!
「まあ、俺の略歴如きでは警戒を解いては頂けないようですね?」
「アレッキア様関係と言うだけで…少し(結構に!充分に!ヤべえ案件だろ!!)」
「本当に顔と台詞が合ってないんですね…。
気の毒ですけど、俺にはどうしようもないし…お預かり物をお渡しします」
「はい?お預かり物?(ハァ?何だそりゃ)」
カイジュって名乗ったチビは俺の手に紙を押し付けて来た。
……この前と同じ紐が巻き付いた、紙だ。
これが二段構えの最後って訳か。
……さすがにもう一つはねえよな?
「早くご覧になっては?」
「っ……分かっています!!(煩えな!!)」
そうだ、時間がねえ。
ルディを探さなきゃなんねえのに!!
俺は震える手で紐を解いた。
其処にはまた短い文だけ。
……何か字が汚えな。
前のはもうちょっとマシだった気がすっけど、
実はアレキちゃん字が汚え?
それとも俺に対する嫌がらせか?
……そっちっぽいな。
ムカつくから気にしねえ。
「……王家に連なる者が過去の王から玉座を奪えば、徴は消せる……?」
……何の事だ?
俺の眉間の皺を見かねて、カイジュが声を掛けて来た。
「まあ、普通にお読み下さい。王位継承権を持つ人が玉座に座ればいいそうです」
「回りくどい!!(そう書けや!!)」
「主はお忙しいので」
「アレッキア様!!(その継承権持ち?を玉座に座らせろって方が短いだろ!!)」
「そうですね、そして貴方はその人を知っている訳ですが……」
カイジュはニコッと笑った。
イカレてんな!!
「どうしますか?」
「行きますよ!!(どうするもこうするも有るか!!行くに決まってんだろ!!)」
「この炎の中をお進みに?」
カイジュが示したのは、王城。
……炎の勢いが増している気がする。
熱い。
揺らめく炎が、あちらこちらで物を燃やしているのがチラチラ見える。
煙の臭いがこっちまで漂ってきた。
……見た事ねえ。
こんな光景、見た事ねえ。
……。
気が付いたら、足が震えていた。
やっべ……滅茶苦茶怖え。
俺は踏み出そうとした足を、思わず引いていた。
そんな俺にカイジュは指し示す。
何だよ!!
別にビビってねえよ!!
「逃げてもいいと思いますよ」
「……何ですって?(逃げるだぁ!?)」
「火が消えてから、他の継承者を座らせれば宜しいでは無いですか。
例えば、若様…アレッキア様」
「ハァ!?」
何言ってんだコイツ!!
「俺個人ははその方を心底恨んでいるので、焼け死んでもいいと思っていますよ」
カイジュの笑みに俺は頭をぶん殴られたような気がした。
焼け死んでもいいだと?
……恨みがあるだと?
……ふざけんな。
俺はルディを助けに来たんだぞ。
……そうだ、何を考えてんだ俺。
アレキちゃんは味方じゃねえ、利害がほんの一瞬一致しただけの敵だった。
「……ご親切にどうも!!(ふっざけんな、ボケ!!)」
俺は紙を掴んで走りだした。
門に向かって。
炎が見えるが、知った事か!!
全くもって怖くねえ事はねえが!!
走れねえほどじゃねえ!!
カイジュは追っても来なかったし、何も言わなかった。
……とっとと帰りやがれ!!
「……ルディ!!ルディ!!」
俺が門から入り込んだ先はデカすぎる庭で……誰も居なかった。
……生きている奴も、死んでいる奴も、見当たらない。
此処には居ねえか。
……何処に居んだよボケ!!
まだそんなに此処は燃えてねえな。
ちょっとホッとした。
テーブルがあちらこちらに有って、
ひっくり返ったのもあるし、
何かやたら派手な割に食い甲斐の無さそうな料理を
載せたままのもある。
手つかずに近いな。
ほっとかれたまんまだ。
……夜会の支度中か、始まって直ぐ位に燃えたみてーだな。
松明が燃えたままの照明も有って、蹴とばしても壊れそうにねえから
風魔術で壊しといた。
……王族が誰も居なきゃ王城内でも使えるんだな、よし!!
それにしてもクッソ広いな!!
どっから入るんだよ!!
後テーブルばっか邪魔だうぜえ!!
蹴っ飛ばしてえけど無理か…つってもあんま魔術ばっか使うと
後でぶっ倒れても困るな。
「……ルカリウムの坊主か!?」
「はい?」
俺が誰だか知らねえ奴に反射的に返事をした瞬間、
横を何かが吹っ飛んでいった。
後ろを確認すると、テーブルだ。
そっか、テーブルが吹っ飛んで行ったのか。
……
………
……ハアアアアア!?
テーブルぅぅぅ!?
あっ!!しかも誰か下敷きになってんぞ!!
足だけしか見えねえけど!!
「な、な…ななななな!!」
「すまんな驚かせた!!」
其処にはガブット熊のオッサン…じゃねえ、バルトロイズのオッサンが居た。
ああ、勿論息子の方じゃねえ、親父のオッサンの方な。
ってそっか、騎士団だもんな!!
救助活動に居るか!!
それにしてもこんなごっついのに全然気配感じなかったけど凄えな。
「何を、何をしたんですか!!(テーブルがやべえええええ!!)」
「坊主の後ろから殴りかかろうとした奴が居たからな、テーブルをぶん投げた」
……テーブルはぶん投げるもんじゃねえええええ!!
これ、一人じゃ普通に動かせないデカさだぞ!!
当たったら即死じゃねえか!?
騎士団怖えええええ!!
そりゃ助けてくれて嬉しいけどよ!!
俺が言うのもなんだけど、もうちょっと穏やかになんねえ!?
「悪漢はどうでもいいが、何故ここにいる、坊主」
「あのバルトロイズ様こそ…(他の騎士とかいねーの?)」
お偉いさんの割には一人じゃねえか。
大丈夫かよ、オッサン。
滅茶苦茶強いのは分かったけど、ここ火災現場だぞ…。
見た目からして水魔術使えそうにねーし。
多分俺と同じ風属性だろうな。
「個人的な忘れ物で部下を巻き込む訳にはいかんからな」
ん?王城に家の鍵とか財布でも置いてんのか?
……それでも普通取りに行くもんじゃねえよな、火事の真っただ中に。
いやまあそのお陰で助けてもらったけどよ…。
地味に過剰防衛とかにならねえのか気になるぜ。
「それにしてもあの方は大丈夫でしょうか
(……その悪漢とやら、首の骨とか折ってんじゃねえの?)」
「単なる火事場泥棒だ、あの程度で死んだらそれまでだろう。それよりも」
……あ、そうなのかとしか言えねえな。
今自由に言えねえけど気分的に。
……まあ、本職に言われちゃどうしようもねえけどよ。
それよりも、と促してきたから、なるべく後ろを見ずに俺は答えた。
「ええと、私はルディ様…ショーン王子様をお助けするために此処にいます」
「……王子を?何故だ?」
いや、何故も何も…。
ホント王家って嫌われてんだな……。
いや、俺もルディ以外を救いに行こうとかからっきし思わねーけどよ。
野垂れ死にしてても知らねえし。
「私は彼の友達ですから」
「ああ、君の従弟だからか?」
俺とオッサンの声が被った。
「……は?」
「……何だ、知らなかったのか…。ああそうか、従順なる囀り…失念していたな」
……何だと?
何て言ったよこのオッサン。
脳に情報が染み渡らなくて、目を剥くばっかの俺に、
全然悪くなさそうにオッサンが独り言を言っている。
いや、待てよ。
ルディは…アレキちゃんのイトコ…だよな?
俺のイトコじゃねえよ。
おっちゃんは親父の弟だけど、
確か早くに嫁さん死んでずっと独り身だしイトコは居ねえよ。
……嫁さん見た事ねえし、ウチの母ちゃんと同じく外から来たんだっけか?
…何処の家の人だかも知らねえな。それでも…いや?ええ?
んん!?
どういう事だ!?
「その……イトコ?あの、どなたかとお間違えでは?(アレキちゃんのイトコだろ?)」
「取り合えず、探しながら話そう。かくいう俺もショーン王子を探している。
妹の忘れ形見だからな」
「……は、は、ハアアアアア!?」
ちょっと待て!!
俺の従弟!?
このオッサンの妹の忘れ形見!?
え、何だ?忘れ形見って何だ!?
普通に考えたら、子供の事だよな!?
ショーン王子が妹の忘れ形見…って言ったよなこのオッサン!!
どういう事なんだよ!!
誰の話してんだよこのオッサン!!!!
何なんだこのぶっ飛んだ話!?
ホラ話にしては、えげつねえぞ!!
「ば、ば…バルトロイズ様!!(オッサン!!どういうことだオッサン!!)」
「取り合えずこっちが入り口だ、坊主。俺の事はオーフェンのオッサンとかでいいぞ」
「言えませんよ失礼な!!(じゃあそうすっけど!!)」
ああクソボケ!!上手く言えねえな!!
何で反対に口から出てくるんだよ!!
俺は言いたいことが言えないで、
口をパクパクしたまま思わずオッサンの服を引っ張った。
間抜けっぽいが、しょうがねえだろ!!
「お前の事情も知ってる。
言いたいことは顔で何となく分かるから。
とりあえずフードと服は燃えるから水に浸しとけ」
其処らのテーブルに有った水差しでばさっと水を掛けられた。
若干温い。柑橘系の匂いがすんな。
……多分水に漬けてあったんだろう輪切りレモンが何枚か引っ付いちまったのが、
場違いで間抜けだ。
くっ付いたレモンを払う間もなく、オッサンは俺の腕を掴んで引っ張った。
そういやオッサンも濡れてんな。俺を助ける前に被ったのか。
それにしても、え、このオッサン俺の事情知ってんの?
混乱しまくる俺を引っ張って、
でけえ柱が並ぶ廊下へ連れて行った。
ああ、道知ってんのか?流石騎士のオッサンだ。
俺一人だけじゃ確かに無理だしな…。
と言うか…ええええ!?
それよりも、さっきの…説明!!
「廊下が長いから走るぞ。
囀れねえだろうから一方通行になるが、まあ気にすんな、坊主」
「レルミッドで結構です…」
「じゃあレルミッド。お前の母ちゃんの名前は分かるか?」
え?母ちゃん?
何だよ急にさっきから!!
て言うかオーフェンのオッサン図体のデカさの割に走るの早えな!!
着いて行くの結構大変なんだけどよ!!
魔術師フツーにやってるモヤシ野郎なら置いてかれんぞ!!
「ノエミ・ルカリウム…ですけど」
「嫁ぐ前はノエミ・クレモンティーヌ・アルヴィエって知ってたか?」
ハア!?何だそのクソ長え名前!!
え、あの母ちゃんが?そんな名前なのか!?
全然聞いたことねえ!!
……貴族みたいな名前だな。
「知りません!!(初耳すぎんだけど!!)」
「母方の祖父ちゃんちとか行ってねえか?」
「あり、ますけど…普通の家で(スゲー小さい頃だけどな)」
つか母ちゃんの実家…祖父ちゃん独り暮らしだったな。
暫く行ってねえから殆ど覚えてねえわ。
やべ、あっちにも顔出さなきゃな。
最近馬鹿みてえに忙しいから忘れてた!!
うっわ、その内怒られんな。
「アルヴィエってのが、俺と同期でな。近衛副隊長をやってんだよ」
「は、え……」
「そいつの姉だ、お前の母ちゃん」
……へー、知らなかったぜ。
俺の母方のおっちゃん騎士だったんだな。
て言うか、それと何の関係があんだよ?
話が全然見えねえ!!
「それで、俺の妹だが…」
「っ!?」
何か踏んだ!!
何かぐにっとしたモン踏んだ!!
オッサンがよろけた俺を引っ張ってコケねえようにしてくれた。
……いいオッサンだな、オーフェンのオッサン。
さっきから言ってる事がついてけねーけど。
「あー、死んでんな……ったく、火事場泥棒だらけだな」
「は?」
火事場泥棒?
恐る恐る見て見たら、結構綺麗な格好してんぞ。
何か抱えてるみたいだけど、キラキラしたモンが零れて…宝石か?金か?
あれ、コイツら……どっかで見たような……。
……ルディの侍従!!
間違いねえ!!
ルディに群がるブスを放置したあの役立たず野郎だ!!
「この方は…ルディ様の、侍従!!」
「主人の金目のモンをドサクサで盗んで逃げだす最中に仲間割れか?
……大した忠誠心だ」
「そんな……(えっ、まだ誰かいんのかよ!?)」
オーフェンのオッサンが目をやった先に、似たような服の血塗れの足が見えた。
……うえ、マジか。あれかあああ!!
うわあああ見たくねえー!!
「まあ、こんなのはどうでもいい。急ぐぞレルミッド」
「は、はい……」
死んでる奴らをこのままにしといていいのか、分からねえ。
どっちにしても今の俺じゃどうしようもねえ。
若干気分的に後ろ髪を引かれるが、オーフェンのオッサンについて行くしかねえな。
……此処入って見慣れねえモンばっか見てんな畜生。
だけど急がなきゃな…。
王城は広え。
この火災では、急がないとルディが生きていられるとは思えねえからな。
「お前の母ちゃんと俺の同期は姉弟だが、半分しか血が繋がってねえ。
俺んとこも同じだ」
「……それは、どういう事で?」
意味が分からねえんだが。
半分?
やべえ、さっきから情報が意味分からなくて頭がちっとも働かねえぜ。
よくコケかけるしよ!!
「母親が一緒なんだよ、お前の母ちゃんと俺の妹は」
……。
……ハアアアアア!?
「おっと、大丈夫か!?」
驚きすぎて、また何かにコケそうになったのを
オーフェンのオッサンが手を取って助けてくれた。
……これも、見ないように…俺はそっと足をずらす。
知らねえ。見てねえ。気にしねえ。
「そんで、王妃。あの喚き散らし女……。アレも一緒の母親の腹から生まれたんだ」
「は…は……ハアアアアア!?」
え、何、何だって?
え、どういう事だよ!?
母ちゃんと、オッサンの妹と、王妃が……血ィ繋がってるってことか!?
ちょ、えええ!?
ちょっと待て…。
王妃って、隣の国の王女だよな!?
何でそんなのとウチの母ちゃんとオッサンの妹がおんなじ母ちゃんから生まれてんだ!?
何をどうしたらそんな事になるんだよ!?
『騎士サジュ』の御養父様オーフェン・バルトロイズ様参上!です。
崖っぷち夫人の評する通りいい人です。
隣の国に嫁いだ『王女』
彼女の所業は『とある童話とアローディエンヌ』で書いてます。
手を出したのは沢山ですが、書かれていた相手は『騎士』と『貴公子』と『魔法使い』です。
『神官』にはフラれてますが(笑)
次回王家の真相と言うか、『闇部分』のちょっとだけ説明になる予定。
そして王子…かな。




