番外編そのろくの6 王都では囀れぬ
お読みいただき有難う御座います。
学園まで辿り着けませんでした…。
王都に強制おのぼりさんをさせられるレルミッドの話です。
それからルディから手紙はチラホラ来た。
でも何でだか塗りつぶしまくった手紙だった。
…返事になんねーししょーがねえからこっちの事も色々書いといたけど。
もしかしてこっちの手紙も塗り潰しに有ってんのかもな。
アイツ王子だし。
大人のやる事ってマジで汚えな。
そんなこんなで数年経って、俺は15になって…
親父の宣言通り王都に叩き込まれることになった。
何故か学生として……。
女神学園とか言う胡散臭さ満載の名前の学校に…。
何でだよ。
自慢じゃねーがこの歳迄学校とか行った事ねーよ。
学校も学校だ。そんな奴を受け入れて心配じゃねえの!?
どーかしてると思わねえのか!?
都会っておかしすぎんだろ!!
「向こうではお前は叔父さんの世話になることになるからな」
「遊び目的以外で超行きたくねえ」
「安心しろ、俺もそう言って抵抗したけど親父に叩き込まれた。
お前も一緒だ」
それから滅茶苦茶大喧嘩になった。
草原がちょっと…まあ、ほんのちょっと抉れたけどな。
テントの支柱が折れなくて良かったぜ。
もし帰って来ても寝る所無くなるとこだった。
「ああああー!!!
明日王都に出かけるのに打ち身と切り傷だらけじゃないの!!」
「親父が悪ぃ!!」
「お父さん!!手加減!!」
「出来ねえ出来ねえハッハァ!」
そんなこんなで全面対決してたら…、
俺は左目は腫れ、こめかみからは出血し、腕と足には切り傷…まあ簡単に言やああちこち包帯塗れになっていた。
普通に痛えよ。
「あんたら今日のご飯は半分でいいね!!」
「えっ!!!」
「母ちゃん腹減ったあああああ!!」
「大体そんな怪我だらけで大量に食べたら危ないだろ!!」
親父が全面的に悪ぃのに母ちゃんがキレて飯減らされた!!
遠慮もへったくれもなく攻撃喰らわしてきた親父のせいだろ!!
食い盛りなんだぞ腹があああああ!!
俺は都会に叩き込まれる前に飢餓に叩き込まれる羽目になった。
クソボケ親父いいいい!!
でもまあ翌日の朝飯は山盛りだったけどな。
死ぬほど食っておこう。
馬車って何があるか分かんねえしな。
「レルミッドもまあまあ反抗できるようになったじゃねえか!!」
「痛えわ労われクソボケ親父!!!」
「ガハハ、男前だぞバカ息子」
「死ね!!」
「ついでに賢くなって来い」
「ならねえ」
なるつもりねえし!!
勉強とか御免だ。
「王都ではこれ着ろ」
親父が寄越してきたのを広げて見たら…何だこれ…フード付きの外套か?
…無駄に赤いな。羽みたいな模様付いてるし…。
……何処からどう見てもだっせえ。
こんなの誰が着ても不審者じゃねーか。
て言うか鳥から離れろよ服ぐらい!!
それにフードに顔面包帯って、おかしい奴全開じゃねえか!!
「女が出来てもフード毟られるなよ。ガキ産ませたい程の女ならいいけどな」
「何で」
「隷属の徴を晒したらろくでもねー事に巻き込まれるからだよ」
親父は目を細めて自分の首の後ろを親指で叩いた。
わーってるよ……『従順なる囀り』だろ。
うぜえ隷属の徴だよな……。
でもまあ…分かったけどこのだっせえフードはねーわ。
王都言ったら短期労働か何か探さねーとな。
小遣い稼いだらこんなクソだせえフードは、速攻別のもんに変えてやる…。
「……今の状況からして充分碌でもねーよ」
「違いねーな」
親父のドヤ顔本当腹立つな。
殴りてえ。
「お前の世話は弟に頼んであっからな」
「親父は行かねーのかよ」
「基本王都行くのは一世帯一人だ。
流石に母ちゃん一人で家に残せっか。仕事になんねえ」
「……マジかよ」
「鳥預ける先も有るからよ」
「えっ!!鳥と離れて暮らせんの!?」
昨日親父にボコられるわ、
夕飯減らされるわ、
都会に叩き込まれるわって憂鬱でたまらなかったけどな!!
今までで一番の朗報じゃねーか!!
やったぜええええ!!
「まあ交代で世話はしなきゃならねーけどな……」
「いや、常に付きまとわれてるかより全然いい!!」
「お前本当に鳥嫌いだな……」
そんな半目で見られてもな。
て言うか散々言ってんじゃねえか。
信じてねー親父が信じらんねー。
「時期によっちゃあ朝からクシャミが止まらねえんだぞ。
後、俺は猫が飼いてえ」
「鳥の世話しなきゃなんねーから猫は却下だ」
「……クッソボケ鳥……っ!!」
相変わらず鳥は俺の上を飛んでギャアギャア煩え。
くっそウゼエな!!
「まあ元気でやれよ。王族には気を付けろ」
「……行かねえって選択肢……」
「どーしても嫌ならお前が実力で選択肢を作れ」
「王都では体に気を付けるんだよ、レルミッド」
クソボケ親父!!
マトモに見送ってくれたの母ちゃんだけだったじゃねえか!!
そんな訳で、俺は一日に二回しか来ない混み捲った駅馬車に乗せられる羽目になった。
何でこんな混んでんだよ!!
こんな混むんなら増便しろや!!
俺が人混みで苦しむ中、鳥は勝手に飛んで着いて来てた。
来んな!!
集落に寄って馬に水やったり馬変えたりする為に休憩があっから、そん時に乗客は食うもの買ったり用足ししたりする。
駅馬車用の待合には土産物屋とか便所もあるからな。
で、便所を済ませた休憩時間に、鳥は俺にいちいち寄ってきやがる。
来 る な!!
俺はお前らの休憩所じゃねえ!!
バサバサボワボワしやがるしうぜえ!!
羽が擽ってえし暑い!!
呑気に飛びやがって!鳥連れだと全然満喫出来ねえよ!!
「あのお兄ちゃん鳥だらけだよ、いいなー」
「仲良しねえ」
おい、どっかの親子連れ、和むな。
俺は鳥と仲良くねえ。
いっそアイツ等迷子になって減らねーかな!!
俺を見失って減れ!!
王都迄半日の道のりらしい。
もっと小さい頃に行った気がすっけど…記憶にねーな。
「うっ……」
草原生まれの俺が馬車の揺れに慣れなくてもしょうがねえだろ。
俺は王都に近づくにつれ…スゲー酔ってきた。
親父にぶん殴られた傷も有って、気分も体調も最悪だ。
「まあまあ…坊ちゃん、大丈夫?」
「平気…です…うえ…ご迷惑を…」
「これはハーブ茶だよ。
気分が良くなるよ、良かったらお飲み?」
同じ乗りあった人たちは超親切だった…。
何なんだこの細やかな神経の人達は…。
揺れて無ければ此処に住みてえ位親切だぜ…。
うう、マジ王都とか行きたくねえ…。
「可哀想に…何でそんなに傷だらけなんだい?」
「親父と喧嘩を…しまして…うっ…」
「元気がいいのはいいけど…体調は大丈夫かい?」
「早く着くといいねえ…どこで降りるんだい?」
「王城広場…です」
「お迎えはあるのかい?」
「叔父が…私を迎えに…」
そう言った途端、俺は喉に違和感を感じた。
違和感つっても風邪とかじゃなくて…。
俺、さっきから何か喋り方が変じゃねえか?
「どうしたんだい?」
ひときわ親切にしてくれたおばちゃんが俺の様子に瞬きした。
俺と同じくどっかの民族なんだろうな。
日に焼けた顔の人懐っこい、田舎で暮らしてる感満載の、フツーのおばちゃんだ。
いや、マジ何でもねーんですわ、有難うなおばちゃん。
そう言おうと思っていた。
「……何でも無いですよ。ご心配とご迷惑ををおかけして申し訳ありませんご婦人」
……。
「まあまあいいんだよ。お上品なお坊ちゃん」
……ハアアアアアア!?
俺、今何て言ったよ!?
「……私…は」
「おや、顔色が悪いね!!また気分が悪いのかい?」
何で私とか言ってんだ俺!?
馬車酔いとは別の意味で胃がひっくり返りそうになったじゃねーか!!
俺は慌てて馬車の日よけを外して、窓の外を見てみた。
そこには、田舎では有り得ない程の石を敷き詰めた道と、狭ッ苦しく建てられた家が連なっていた。
行きかう人々はスゲー多い。狭い道にひしめき合ってる。
流石ら下手したら一週間家族以外に会わねえ草原とは違うな。
しかしまあ俺みたいにだせえ恰好はしてねえな…。
通りの向こうは…店か?色んなもんが置いてある…。
…服屋ねーかな。フード買いてえ一刻も早く。
そんで遠くには馬鹿みたいに白くてでけえ…王城か?あれ。
…どっかの砦じゃねえな…あんな飾りまくって派手なの。
うーん、普通にぶっ飛ばして攻め落とせそうだな…。
見かけ倒しに作ってあって実はスゲーとか?
でもルディがイトコと結構な数の部屋ぶっ潰したんだっけ…。
じゃあ普通に見掛け倒しなんだな。大丈夫か。
あそこにルディがいんのか…。
そう思っても別に親近感は湧かねえな。
しかし……何時の間に王都入りしてたんだよ!!
御者のおっちゃん教えてくれよ!!
いや言ってたのかもしんねえけど
俺気分悪くてから聞いてねえかも!!
と言う事はだ。
この今の俺のクソボケな喋り方……。
隷属の徴…『従順なる囀り』のせいかああああああ!!
冗談じゃねえのかよおおおお!!!
冗談であってくれええええええ!!!
そう俺は都会の街並みに叫びたかった。
叫べなかったけど、スゲー顔はしてたと思う。
ちょっと道行く通行人に二度見されたからな…。
……おい、オノボリさんが感動してるわって今言った奴…聞こえたからな。
王族で無いならぶっ飛ばしていいんだからな。
外で会ったら覚えとけボケ!!
「そうそう、景色を見た方がいいよ」
「……はい、ご親切にどうも……」
俺が窓の外から首を出したのを気分転換だと思ったらしく、おばちゃんが声を掛けてきた。
その返事に、俺の口からは信じられねえくらい丁寧な言葉が流れていく。
あー、悪ぃなおばちゃんって喋ろうとしたんだぜ、これ。
「うわああああ…王都だ…(マジかよこんな喋り方クソボケ!!)」
「凄いねえ」
「馬車酔いの坊主、もうちょっとで王城広場だぞ」
俺が猫被り…羽毛被り?にショックを受けている内に着いたらしい。
王城広場は何台か駅馬車が停まっていた。
停留所が何個か有るって事は…長距離駅馬車の専門の乗り場か何かか、ここ。
視線を移したらお迎えに来た奴とかが待てそうな日除けが
何ヶ所か張って椅子も置いてある…。
都会は気が利いてんな。
ウチの近所の停留所にも日除け張ってくんねえかな。
夏場、地味に暑いし、鳥見なくて済むし。
…あ、あれおっちゃんじゃねーか。
親父の弟の。
クソだせえフード被ってるな…。
ってアレさっき俺が被らされた奴!!
まさかのお揃いかよ!!
ガアアアア!!!
止めてくれ一族郎党お揃いとかクッソ恥ずかしい!!
「レルミッド、よく来ましたね」
「有難うございます叔父さん(おっちゃん何その言い方キモッ!!)」
気持ち悪いいいいいいい!!
おっちゃんまで口調違うじゃねえかあああああ!!
親父と変わらねえ口の悪さだっただろうがああああ!!
「言いたいことはよく分かります。まずは落ち着きましょう」
「……了解しました、叔父さん
(おっちゃん、分かったけどマジ落ち着けねえ)」
そんで俺の口からは言いたい事の半分くらいの丁寧語…。
ド畜生が!!!
「良かったねえ坊ちゃん、おじさんに会えて。」
「今日は馬車酔いしてたから旨いもん食わせて貰えよ」
馬車から他の乗客が俺に朗らかに俺に声を掛けていく…。
具合の悪ぃ俺にも親切にしてくれてマジいい人達だな…。
打ち身に堪えるから背中は叩かねえで欲しかったけどな…。
でもいいわそんくらい。
もう俺あの馬車のメンツに囲まれて住みてえわ。
この口調だけでも超嫌すぎんぜ。
どうなってやがんだ俺の体は!!
叫びたくても叫べねえ俺の頭に羽玉が乗っかってきた。
くそっ、早速鳥が集ってきやがる…。
何で逃げねえんだ絶好の機会なのに…!!
お前らとっとと自然に帰れよ!!
飼い慣らされることにダレてどーすんだ!!
「お世話になりました皆様。この御恩は忘れません
(あんがとなおっちゃんおばちゃん…)」
褒め言葉はちょっと盛られんのか…。
まあそれはいいけどよ…。
「……じゃあ行きましょうか、レルミッド。
荷物は先に届いていますからね」
おっちゃん…違和感がスゲーわ。
揺れない地面に落ち着いた俺は、頷いた。
…地面が堅えのが慣れねえけど。
「王都での我々の仕事もおいおい教えますから」
「王都での仕事…ですか?
(聞いてねえぞ学校だけじゃねーのかよ)」
「ええ、塔の管理です」
「塔?」
おっちゃんは王城の方の森を指さした。
今は暗くなってきたところだからよく見えねえな…。
木の中に…ちょっとだけ尖がってる建物の事か?
「あそこに七階建ての塔が有ります。明日はあそこに鳥を連れて行きますよ」
「鳥を…ですか?(えっ、あそこに鳥置いてけんの!!マジやった!!)」
「あそこで我が一族が交代で鳥を管理します」
「そうですか
(世話を交代か…聞いてたけどマジで嫌だな。永遠に置き去りにしてえ)」
「今は滅多に使われませんが…
ちゃんと王家のお役に立たなければいけませんからね」
「王家のお役に…?(マジ立ちたくねえよそんなもん)」
鳥と塔が一体何の役に立つんだよ。
訳分かんねーなって顔でおっちゃんを見上げると、おっちゃんは低い声で言った。
「ええ、残酷な愛に殉じる塔です」
「……残酷な愛…に殉じる塔?」
また変な単語出て来たぜ…。
何かまたオバケ関係じゃねーだろうなあ…。
て言うかおっちゃん俺が具合悪ぃの分かってんのかよ。
分かってるだろーな。親父と兄弟なだけ有って、俺を怖がらせんの大好きなんだよこのクソボケ叔父!!
「叔父さん、実は私少々父と仲違いした上に、馬車酔いしまして体調がどうも優れません。
(結構体力使いまくってしんどいんだよ腹減った)」
「ああ、その顔はそうでしょうね。すみませんでしたね、怖がらせて」
全然悪いと思ってねー顔がまた親父に似てるな、クソボケ叔父!!
でもまあ田舎じゃ見たことねえでっかい肉の入った煮込みとか、
色とりどりの野菜の蒸して香りが滅茶苦茶いい凝ったソース掛かったのとか、
バターたっぷりで旨すぎるパンとか
ふわっふわのクリーム掛かった甘いケーキとか食わしてくれたからちょっと許す!!
て言うか食い物屋の店とか死ぬほど昔に入ったきりだな。
覚えてるか怪しいくらい昔に。
「それで叔父さん…この個性的なフードですが(このダセえフード変えたい)」
「変えるのは却下です。それは王の紋章が入れられているので」
「……そうですか(何でそんなもん入れてんだクソボケ王家死んじまえ!!)」
フードを変えてー俺の希望は叶わなかった…!!
次こそ学園に…話を進めたいです。




