番外編そのろくの3 隷属の徴
お読みいただき有難う御座います。
レルミッドとルディの田舎草原の話が動き出します。
んで、一か月くらい経っただろうか。
俺の環境は…
「駅馬車郵便取って来たぞ!」
「普通の馬に乗れええええ!!オバケ馬に乗っていくなああああ!!」
鳥は失せねえし、ルディはまだいるしオバケを出すのを止めないし、親父もまだ居る。
俺の穏やかな生活は消え失せたし、俺の肺と喉は毎日死にそうだクソボケ!!
「だからオバケではないというのに…」
「息してない動くモンはオバケだろうがあああああ!!!」
「レルミッドは全然死霊に慣れないな」
「慣れてたまるかあああああ!!!」
大体何時までいんだよ、ルディ…。家が直ったら帰れよ!!
いや貴族の家直す工事期間なんて知らねーけど!!
…でも結局22部屋だっけ?
潰れたんなら普通にスゲー掛かりそうだな。
「大体…お前、まだ帰んねえの?」
「何だレルミッド、僕が居なくなったら寂しいのか?」
「いや全然。帰ったら家直してくれた大工に謝っとけ」
「大工に会うかどうかは分からんがそうしよう。
しかし同じような事を言われても、アレキなら埋めてやりたいほど腹が立つが、友達のお前なら特に腹が立たないな」
オバケを消す前提なら百歩譲って友達…に認定してやってもいいが…。
何かまた怖い事言ってんぞコイツ…。
何時も結構馬鹿っぽいのによ、
イトコ関係に関しては真っ黒すぎんぞコイツ。
「だから何でお前そんなにイトコに対して物騒なんだよ」
「顔が良く無くて弱ければ、この世に留まる事を許してないんだがな!」
「お前幾らイトコでも、人に対して顔だけしか褒めねえって失礼だから止めた方がいいぞ」
「大丈夫だ!アレキは顔しか惚れるところはない!」
は?惚れる?
…イトコのアレキちゃんって女かよ?
いや聞いてる分にはどっちでも良かったけど…。
「……惚れてんのかよ?」
「まあ、一応婚約者だからな」
……おい。
今までの罵詈雑言って婚約者向けの言葉かよ。
遠回りに死ねって言ってたよな。
まあ俺も喧嘩してたら親戚連中にも言うけどよ。
それも喧嘩してる内だけだろ。
こんな爽やかに堂々とアイツ死ねとか言わねえぞ。
都会の奴って怖えわ。
「て言うかお前婚約者がイトコなのかよ!?」
「あ、しまった。秘密だぞ?」
小首を傾げんなボケ!!
貴族の秘密なんて結構ろくでもねー気しかしねえ!!
て言うか大丈夫なのか俺の安全は!!
オバケに囲まれてるっていう超絶危険の上に、俺の物理的な身の安全はああああ!!!!
「お前どんだけ口軽いんだよボケ!!
お前の秘密知った俺の身は大丈夫なのかよ!?」
「僕の友達であるお前なら大丈夫だ!
それに後何年か経てば国中に流布するだろう!問題ない!」
何が問題ねーのかさっぱり分からん!!
貴族の事情とか知らねー!!知りたくねー!!!
スゲーマジ嫌な予感しかしねえ!!
俺の予感は当たりそうで怖い!!
「それにレルミッドは強いじゃないか」
「流石に大人には勝てねーよ!!
目だけしか出してねー被り物とか、飛び道具とかメッチャ使ってくるとか、真っ黒なカッコの暗殺者が送られて来たりしねーだろうな!?」
「レルミッド…大衆読み物の読み過ぎじゃないか?」
「来ねえのかよ!?」
「来てほしいのか?」
え……居ねーのか?
まあ、それに越したことねーけどよ。
タダでさえ鳥もうぜーしオバケもこここわ…怖くねえ!!
危険で溢れてるから来ねーに越したことはねえけどな!!
「……来ねえんだな!?」
ルディはニコッと笑った…。
……何かまた嫌な予感がすんだけどよ!?
「暗殺者は真っ黒な恰好なんかしないんだぞ!!」
「ギャアアアア!!」
「大丈夫だ怖くないぞ!
何か異変が有れば其処らの死霊が教えてくれるから!!」
「ハギャアアアアアアアア!!!!」
ふざけんなボケエエエエエ!!
余計悪い!!
余計悪いわアアアアアア!!!
「…うーん、レルミッドのオバケ嫌いは全然治らないんだなあ…」
「ふざけんなボケルディ!!治るかああああ!!!」
「うん?レルミッド、誰か来たぞ?」
ルディが指さす方向に…スゲー小さく鳥が見えた。
…?
頭上の鳥もギャアギャア鳴いてる。
この鳥共は同類が来たら余計に騒ぐんだよな…うぜえ。
って事は間違いねーか。
「アレ、モドナの鳥か…」
親戚のモドナが来やがった。鳥連れだ。
何しに来たんだあのブス。
ただでさえ頭上がウザいのに鳥増やすな。
……て言うかよく見えたよな、ルディ。
草原生まれの俺でも、目を凝らすレベルで確認できたってのに。
「何で分かんだよ」
「だから死霊が」
「やめろおおおおお!!!」
「何やってんのレルミッド!おばさん呼んでた!さっさと行きなよノロマ!!」
「アァン!?」
喧嘩売ってんのかブス。
睨みつけてやったら、途端に顔を背けやがった…と思ったら、横のルディに釘付けだ。
……マジかよ、モドナの顔が赤えのはいいけど、目がマジすぎて怖すぎるだろ。
狩る気か?
しかしルディの顔はこんなド田舎草原のブスにも有効なのか…。
あ、田舎のブスだから都会のキンキラがいいのか。
身の程知らず過ぎっからいい気味だけどよ…。
「おい、クソブス」
「女性にブスは失礼だぞ、レルミッド」
「…失礼も何もねー、コイツだって俺にヒデー渾名で呼んでくんだ」
「はわぁん!?な、何そのメッチャ可愛い子…」
うわっ、気持ち悪ぃ声だな!!
鳥肌立っちまった…。
その鳥絞めたみたいな高い声どっから出てんだ?
まさかマジで鳥か?キモイな。
「うん?誰だ?」
「……ああ、親戚のブスだ、気にすんな」
「誰がブスだコラァ!!初めましてー、モドナって言いまーす。
そこのボケ大将…じゃない、レルミッドの親戚です」
「そうか、僕はルディだ」
「おい誰がボケ大将だボケ!!!」
コイツ後でぶっ飛ばすぞ。
俺は強えから弱え奴に手加減はするが、男女差別はしねー主義だからな。
それにルディ、お前もうちょっと長え名前じゃなかったっけか。
一か月も前だから忘れたけどよ。
…もしかして長え名前面倒になったのか?
そういやこの一か月、其処らの親戚にもパラパラ会ったけど、俺からコイツはルディだって紹介してたし、自己紹介もしてたな。
……あれ、俺のせいか?
まあいいか、どうせコイツ永住しねーし細かい事は………何か有ったら……無いな!
いっか、こんな田舎草原だし!!と言う事にしとく。
「それよりも、レルミッドのお母さんがどうかしたのか?」
「あっ、そうだよ大変なんだよ、ばあちゃんが…体調悪いって!!」
……はああああ!?
ばあちゃんがかよ!?
あの元気なばあちゃんが体調悪いって!?
マジか!?
「早く言えブス!!」
「い、言おうとしたけどそこの可愛い子が!!」
「煩え!!お前早く医者呼んで来いクソボケブス!!」
「わ、分かってるってば!!る、ルディ君またねー!!」
手とか振ってる場合かあんのクソボケ!!!
「おい、ルディ。ソッコー戻んぞ」
「分かった、乗れ」
……乗れ?
何に?
……そのオバケ馬、増えてねえか?
さっきは1つだったよな?
目の錯覚か?やべーな…。
「……アァン?」
「乗れ、と言ったんだ、土人形馬に。
本気を出したら生きてる馬よりも早いから」
「クソボケ………ルディ、お前は……また出したのか、オバケ馬を!!!!
何で2匹?2体?も出すんだよボケエエエエエ!!
2倍怖…2倍危険だろおおおお!!!」
「怖いのは分かるが非常事態だろ」
「ハギャアアアアアア!!!」
「おいレルミッド…」
「ウギャアアアアア!!!」
「……仕方ないな!
よし、レルミッド!心おきなく寝ててくれ!」
ルディのボケな声と共に、ゴン、という音が響いた気がする……。
主に俺の頭に何かが強打したような…何ぶつけやがった!?
……確認する間もなく、俺は、意識を失った。
「全く…何でアンタ迄目を回してるの……」
母ちゃんがブツクサ言ってるのが聞こえて、俺は目を開けた。
「後頭部が無茶苦茶痛えんだけどおい!!
何ぶつけやがったルディ!!」
「静かになさい」
「理不尽!!」
「アンタのコブは、ついでにお医者さんに診てもらったから大丈夫よ」
ハアアアア!?
コブ出来る位どつきやがったのかあのガキャア!!
「ルディ出て来いこのボケ野郎マジ削るぞ!!!」
「煩い。
ルディ様はおばあちゃんの面倒を見てくれてるんだからね!」
俺は傷を負った身で有りながら、水汲みしてばあちゃんのテントに運ぶよう母ちゃんに言いつけられた。
腹立つな!!
しかも重てえな、相変わらず。
何かもっといい感じの設備ねーのかよ。
……そういや久々に井戸使ったな。
オバケ馬とルディが何時も水汲み…って!!!
いや!!自分でやんのが一番だからな!!
当たり前のことだからな!!
……慣れたくねえ。決して便利だなんて思いたくねえ。
「おばばさま、体調はどうだ?」
「坊ちゃん、勿体無い」
「お、レルミッド!気が付いたか」
「お前マジ覚えてろよボケ」
「後で怒られよう。布を濡らしていいか?」
「仕方ねえな」
俺は汲んだ水をばあちゃんのテントの水盤に移す。
それでルディが布を濡らして絞ってた。
……最初はコイツ吹き掃除もやれねーし、絞るのも出来なくてびっちゃびちゃだったが、地味に進化してんな。
まあ、掃除できる貴族になったってだけでも草原に来た甲斐有ったかもな…。
貴族とかどー言うモンか知らねーけど。
「どうだ、おばばさま、気持ちいいか?」
看病も出来て…
「何してんだこのボケ!!布は畳んでばあちゃんのデコの上に載せんだよ!!」
「顔の上じゃなかったのか…」
出来てねえ!!
死ぬだろ!!
絞ったの態々広げて置く奴が有るかよ!!
駄目だ!!この辺のボケ加減は全然なってねえ!!
マトモになってねえ!!
ああコイツどうしてくれよう。
俺が頭を抱えていると、ルディはばあちゃんの枕元に座った。
「なあ、おばばさま。
どうして首の後ろに鳥籠の模様が着いている?」
「……っ!?」
あん?鳥籠?
何妙な事言い出してんだ…。
またオバケ関連じゃないだろうな。
だが、ルディは…今までに見た事が無いくらい真剣だった。
でもコイツしれっと変な事言うからな…。
「不思議だったんだ。
この草原に居る人間達全て…ではないが、首の後ろに感じ取れるんだ」
首の後ろ?
……服で見えねえけど…。
「何言ってんだルディ」
「レルミッド、お前は知っているか?
全て皆鳥籠の模様が有るんだ」
「……いや、知らねえ」
て言うか普通服の中なんか覗かねえし。
痴漢か痴女なら犯罪だしな。
ああいうのはホント田舎でもよく出るからな…。
まあ俺ならやられる前にぶっ飛ばすが。
「……そ、れは……」
「ばあちゃん?」
何でそんなに弱っちい声なんだ?
……具合悪ぃからなのか?
「僕にはそれがいいものには見えなくてな」
「……」
「あん?何言ってんだルディ…。
なあばあちゃん…ばあちゃん?」
しかし、ばあちゃんの顔を見て俺は息を呑んじまった。
……ばあちゃんは真っ青になっていたからだ。
気の強いばあちゃんのそんな顔は、見た事が無え。
じいちゃんが死んだ時ですら、厳しい顔で前を向いてたのに……。
……どういうことだ?
何でそんな顔すんだよ!?
「間違っていたらすまない。それは……隷属の徴じゃないのか?」
ぐわ、とばあちゃんの鳥の鳴く声がする。
まるで、ルディに返答するかのように。
俺の頭もグラグラしてきた。
……レイゾクノシルシって……何だ?
スゲーろくでもない言葉に聞こえんだけど。
話が薄暗くなってきましたね。




