番外編そのごの2 悪役令嬢の悪戯
ファンタジーです。
…それにしても、私何か悪いことしたかしら?
昨日の変なフラグは叩き折った筈よね?
目がおかしくなったかしら?何で今更なの?
「おはよおー、アローディエンヌう」
「……義姉…さま?」
ふわっふわの赤い長い髪を翻して抱き着いて来たのは…やっぱり……義姉さまだよ。
生で初めて見たよ、悪役令嬢アレッキア。
しかもドレスだよ。何処から出したの?あ、自分のか…。
あれ、でも通いの使用人って2人で、1人は料理人。
今私の朝の着替え手伝ってくれたから…義姉さまは1人で着たのかな。
うわ、自分でちゃんとしたドレス着れんのね。
…器用ですね義兄さま…いや義姉さま。
あ。他人に触られるのまだ嫌なんだっけ…そりゃ自分でやるわな。
私なんか駄目令嬢だから被って脱ぐタイプとか、前にボタンあるタイプじゃないと無理だわー。
何で態々ドレスって背中にボタンを付けるのかしらね…。
ジッパーとかファスナーの存在が懐かしい。
もうボタンには慣れたけど誰か開発してよ…。
せめて一人でドレス着れるようにならなきゃ…。
駄目令嬢街道まっしぐらじゃない…。いや、それが普通なのか?
元現代日本人として駄目だわー。
それにしても義姉さま、コルセット無しでもいいプロポーションですね…。
……義兄さまの匂いと言うか、いつものいい匂いがちょっと甘いような感じ…。
そして後ろ髪が長い。これが付け毛?よく分からないな。
布を複雑に巻いた髪飾りには宝石が付いてる…。
あ、これゲーム中で付けてた奴じゃん。
間近で見ると細かくキラキラした石付いてるのね。
何処へ出しても恥ずかしくない美人だな、おい。
うわー、懐かしいようなそうでもないような恐怖なような…。
画面上でコテンパンにやられた記憶がー!!
まあ…でも別に抱き着かれても怖く無かったな。
意外だわ。
ぎゃーーーー殺されるううううう!?ってなるかと思ったけど、普通。
…当たり前か、中身義兄さまだし。
しかしかつて画面で見た主人公に対してのあのツンツン加減は何処に行ったの?
甘ーい声を出してフニャフニャニコニコ笑って、
私に抱き着いて頬擦りしてくる。抱きしめられる。
うっわ、子供の時とは違う柔らかさだな…。
義兄さまとは違う…本人だけど。
……。
……まあ、全くときめかないけどな!!
中身義兄さま…でも傾かないぞ!!
昨日のセクハラを思い出せ!!
……よし!正気に返れた!!私は正気!
「……義姉さまのお姿は初めて見ましたわね」
「どう?どう?どうかなあ?」
そんなワクワクされた目で見られても大した反応が返せないんだけど…。
何を期待されているの、私。私は正気だ、正気なのよ。
うん、この姿なら私は紛れもない義妹だからね。
……中身義兄さまだけど。
……ああ、よく分からん!!
もういいや、普通の対応で。
「どうもこうも滅茶苦茶お美しいと思いますけど」
そしてより私のモブさが際立つけどな。
まあどの道義兄さまの横に居てもモブさが際立ってるし、もういいわ…。
どの道私の面もモブさも変わらないのよ…。
愛されない系の無表情モブ、それが私…。
「そう!?私、可愛い!?」
「可愛い…より美しいんでは?」
「えー!?可愛くないのお?」
しゅーん、と肩を落とす悪役令嬢…。
……おいおいすげーもん見てるな、今。
伏せられた睫毛は赤くて滅茶苦茶長いし、薄い青い色の目はうるうるしてるし…ゲーム画面上では全くしない表情だ。
現実であることがよく分かるわ…。
寧ろまだゲーム通り表情固定気味の私がおかしいのよね。
「だから褒めてるじゃありませんの」
「だってえ、アローディエンヌが意地悪言ったあ。
私のこと可愛くないってえ言ったあ!」
ちゃんと褒めたつもりだし可愛くないとは言ってねえだろ。
いつも通り面倒くさいな義兄さま…じゃない今は義姉さま。
「…面倒くさい女みたいな事言わないでくださいませ」
「?私、今は女だし、僕でもアローディエンヌは面倒くさがってるよね?一緒だよ?」
わ ざ と か!!
面倒くさい自覚あるのかよ!!
ふざけんな!!義兄さ…今は義姉さま!!
ブチ切れていいっすか、本当に。
「義姉さま…私に我儘を言って楽しんでますの!?」
「どうしてえ?」
「どうしてえ?じゃありません」
「好きな人に我儘言っちゃ駄目え?」
こて、と顔を近付けられて目を合わせられた。
薄い青い目が私をじっと見つめる…。
顔いいなあアレッキア。
アレッキオの方が好みだけど、でも本人だしなあ。
……あ、ヤバい。この人推しなんだった…。今は女性だけど…顔いいなあ…。
「…………幼少期から仰ってますわよね?」
危ねーーー!!!
危ない道に入りそうになった!!
グラっとしそうになったーーー!!!
いや、義兄さまと結婚!?してる時点で、もう危ない道に入ってるけどまだ現実を直視したくない!!
だって私が踏みとどまらねば誰が踏みとどまるの!?
私は正常ノーマルな嗜好なんだってえええ!!
「?だって私、小さい頃からアローディエンヌしか好きじゃないよ?」
「……ソウデスカー」
ええ、一年前程前にお聞きしましたね。
流石にずっと言い続けられては思い知らされました。
…何時からとか聞きたくないなー。
凄い濃い恐ろしい系の話が出てきそうよね。
そこはファンタジーにしておいて。
幾ら近くても知らなくていいことも有る。
知りたくないことも有る。
義兄さま…今は義姉さまって、この頃隠さないから赤裸々にお話されたくない!!
「だからねえねえアローディエンヌう、男になってみない?」
「なれる訳ないでしょ!!」
やっぱりだ!!
恐ろしい話になってきた!!
私の勘は正しかった!!間違ってなかった!!
普通の勘も有って良かった!!サポートのみに使われてなくて良かった!!
最近ちょっと不安だったのよね!!ああ良かった!!
「何でそんな話になるんです!?」
「だってえお姫様同士は嫌だって言ってたのは聞いてたよ?」
何だそれ…。
ええー、言ったか?
…うん、覚えが無いなー。
「…言ったかしらそんなこと」
「もー、言ったぁー!!」
そんなプンスカ怒られても、覚えてないんだから仕方ない。
本当の事だから愚痴程度で言ったかもしれない。
と言うか嫌がってたの聞いてたならやめろや!!嫌がらせか!!
そんで、主人公にはツンツンツンでデレ皆無のアレッキアが
義兄さまの口調ってとんでもなく違和感有りまくるわ!!可愛いけど!
「ねえー、男になってみない?1日でいいから」
「何でや…。じゃない、私は義兄さま…義姉さまみたいに性別は変わりませんよ!」
だってモブのサポートキャラだぜ。チートな自分と一緒にしてくれるなよ全く!!
つかこの国で性別変えられるのって義姉さまくらいだろ。
引き籠りで、情報惰弱だし、探してないから知らないけどさ。
居たら吃驚はするけどな…。
て言うかこの人だけでも手一杯だから大した反応出来なさそう。
「出来るよ?」
「何でや。…じゃない、種族が違うと申し上げてますが!!」
聞けよ人の話!!
と言うか人の設定…いや、能力!?
もうゲーム外だから設定とか言うのおかしいからな!
もう慣れよう!いい加減慣れよう!!
頑張って私!!此処は現実!!チートが目の前に居るけど、現実を見るの、私!!
結構お先真っ暗な気しかしないけど!!
「私の魔力とアローディエンヌを大分馴染ませたから、ちょっと魔力を弄れば1日位は男になれるよ」
「はあ!?そんな無茶苦茶な!!」
何だそれ。現実味は何処へ消え去るの。
急にファンタジーを高速で混ぜてこないで。
現実だと認識した決意が早速崩れ去りそう。
大体どういう理論なんだ。
…非常に嫌な予感しかしないから聞きたく無くなってくるわ。
「毎日してるでしょ?キスとかー、夜?」
「……そんなことのために私に…む、無体を働いているんですか?」
言いたかないが、言いたかないが…本当に……
その為に夜に人を置かないのかよおおお!!
嫌だ!!爛れてる!!これ乙女ゲー!!…だった筈の現実ー…!?
ハハハ、前世ではオタクだけど!!
見る専門で高みの見物してたかったのに、
思いもしない現実に返り討ちに有ったしー。
そんな私はれっきとした令嬢だ!!モブだけど!!
見たいの!乙女ゲームの現場を見たい派!!
自分が、その…エロい目に遭わされたい訳がないんだよおおお!!!
そりゃ…いや別に興味がない訳じゃないけど、限度が有るのおおお!!
倫理観何処行ったああああ!!
「えー、違うよお。愛だよお」
「…」
「えへ、でもちょっと趣向を変えてみたいって気がむくむくしただけだよぉ」
何がむくむくだ。可愛く言うな。
「……」
「男女ならいいんでしょ?」
「女に組み敷かれる趣味はないんですが!!」
しつけえな義姉さま!!
前世のことはこの頃思い出せないし、
覚えてないはずだが、何かトラウマが!!刺さる!
「え、じゃあアローディエンヌが組み敷いてくれるの!?」
「何でや!!変な事を言うの止めて下さい!!」
「もぉー、試すだけだよお。好きなひとが相手だと男女関係ないよぉー、多分」
多分じゃない!!多分で済む話じゃない!!
要らんわそんな新しい扉!!くぐりたくも無い!!
流石、男女両方なれるとなると倫理観が大幅におかしいな!?
「私は男女は構います。
女性とその…関係を持つとかハッキリ言って地雷です」
「ジライってなぁに?」
「地面に埋めて隠して相手をぶっ飛ばす爆発物です!」
「それいいねえ。使おうかな」
「はっ、私今変なオーパーツをもたらして…!?」
たまに思い出す前世の事も、変な事ばっかり思い出すし!?
義兄いや義姉に変な事を言うと、碌なことにならない!!
「ねえー、一回でいいよー。男の方が気持ちいいし慣れたしはらま」
「今、朝アアア!!じゃあ現状維持で良いじゃないッスか!?」
…何を口走っているのだ、私は!!
自分で袋小路に全力で駆け込んでどうする!!
逃げてない!!逃げれてないわ!!
「まあ、それでもいいけど?」
「いいい…いいならいいでしょう!!」
あああ私は一体何を…!?
でも背に腹は代えられない!!
「どうせなら、両方味わって欲しいと思って?」
小首を傾げるな、妖艶で可愛いわ。
ふざけんな!
男女両方麗しいとかモブの私に喧嘩売ってるのか。
…くそう!!
いっそ義姉さまが誰か攻略キャラと絡んでよ!!
軽くでいいわよ!!肩に手を置くとか!向かい合って微笑む位でもいいわよ!!
うわあそれ見たーーい!!
身長差的にサジュさまがいいなー!!
王宮で見たけど超カッコ良かったー!!
他の攻略者でもいいけど、まだ会ってないから義姉さまとの身長差とか分かんない!
ロージアとなら分かるんだけど、ムカつくからパス!!
…じゃない。今は私の大ピンチだわ。
…主に違うけど貞操的なので…。
いや、性別を変えられそうって、貞操?最早何だ?
何なんだこの爛れた状況。
あの『ゲーム』ってそんなマニアックな趣向は無かった筈よ?
いや、終わったんだった!!終わったからこの状況!?
悪夢か?
私なんかした?
寧ろ何もしなかったのが悪いのかあああ!?
「……義姉さまが得するだけですわよね?
私に何の得がありますの?」
あああ今日も悪役令嬢に塩対応が捗るわあ!!
私はこれでも大いに動揺しているし、脳内では何時も通り大音量で大騒ぎだけどね!!
ハハッ、全く私と来たらサポートキャラの鑑だな!!
もう主人公と音信不通だというのにな!!
あー何処行ったのかねロージアは。
思い出すだけで腹が立つわああああ!!
……はい、正気になれた!!
思い出すだけで目の前に打ち勝てる心を取り戻した!!
ありがとうどっか行ったロージア!!(自棄)
全くよお!何を考えているんだこのひと…!!
私は色事関係は見たい派の
物慣れない心の底から淑女だと言っているだろうが!!
「我が儘聞いてえ?アローディエンヌ」
可愛く言うなっての!!
と反論しようとしたら…ぱちん、と目の前に火花が散った。
よろけると、後ろに有ったソファに座り込むことになった。
何時の間にソファの所に誘導されてたの?
…訳分からんわ。
「!?」
「うん、完成?」
「ん…むぐうっ!?」
筋肉が軋む感覚がすると思ったら、布が引き攣れる音がした。
そしてちゅう、と言う音を立てて…唇に肉厚な感触が伝わる。
…キスされた!!
え、何でこの状況で!?
しかも離した途端にまた口を塞がれて…コイツ、舌入れてきた!!
「えへ、キスは一緒だねえ」
「だから女性は嫌だって……!?」
なにこの声!?めっちゃドス効いてない!?怖っ!!
え、誰!?不審者!?
いや、周りに誰も居ない…。
と言うか、義兄さまが知らない人を家に上げる訳が無い…。
目がチカチカする。
…ん、ドレスがキツイ。というかボタンが弾けとんでる。
えっ、太った…!?この短時間で!?
まだ朝食も摂ってないんですけど!!
て言うか朝食…!
いや…そして…これは…!?
……体の感覚が…違うわ!?
手が違う。腕が違う…。…足が違う…。
「っ義姉さまあああ!?」
………声、怖っ!!
何これ私が放った声!?
恐ろしい程ドスが効いてて怖っ!!
何でこんなに怖いの私の声!?
と言うかどうなってるの!?
お約束です。
男女の恋愛です。
次回、声が怖いサポートキャラが自分の姿とエンカウント。




