番外編そのにの12 愛する方、どうか私の呪いを解いて
崖っぷち令嬢、ロマンチックなフラグをぶっ飛ばして最初から怒られています。
「……大体なあ、スカートが捲れてるのに、男に蹴りを入れるだの抱き着くだの…本当に令嬢としてどうかと思う!!」
「ええと、スカートって布なんだから多少捲れるもんじゃないでしょうか?
風とか吹いたら…」
「令嬢が捲れる位動くな!!風が吹いたら押さえろ!!」
…超怒られた。それはもう、こっぴどく。
何故…いや、何故と聞いたら更に怒られそうな雰囲気だわ。
ひたすら平謝りするしかないのね、そうなのね?
「あの、すみません」
「俺は姉だの妹はやたらいるが、家族以外に女慣れしてないんだよ!!
分かってるのか!?」
「初めて知りました」
はい、今知りました。
ご家族事情まで知りませんでした。
と言うか、姉妹居ても女慣れしてなかったのねルーロさま。
可愛いな何だそれ…。
と思ったけど、別にサジュも女慣れしてないわね。
「君は慎みが本当に足りない!!
勘違い野郎に執着されてたし、もしもの時はどうするんだ!?」
「本当に申し訳ありません」
「幾ら強くても本当に気構えが足りない!令嬢としての自覚が無さ過ぎる」
「すみません…」
何で怒られてんの、私。
さっきの…本当に10分程前の…甘いあまーい雰囲気の物語のような感じは何処へ消え失せたの!?
ホントに何処へ行ったの探してるんだけど!!
「それに引っかかった俺も本当にどうかとは思うけど…」
「あ!?え、そこを詳しく」
「煩い!」
うう、調子に乗ったら怒られた。
折角ルーロさまがデレたのに…。
はい、私のせいですね、すみません。
「……すみません」
「ドリー、この申し出を受けたら、
君は令嬢としてキズモノになる」
「キズモノ…」
また古いな、表現が。
まあその通りだけどさ…。
「未婚の男女が三日三晩、その…」
「……」
夜明けにキスをして、一緒に過ごすんだっけ。
まあ、照れるけど最高に素敵な解呪法じゃないの。
やっだあ恋人っぽいー新婚っぽーーーーい!!
きゃあああああ!!いやーーー!!
「つまり、俺の妻にならなきゃいけないんだ」
「……」
「よく考えて…答えを」
何故そんなに真面目な感じなのかしら、ルーロさま…。
いや、今更なの?
答えも何も、決まってるでしょう!
この熱い思い!!
ぶちまけたら怒られたんだっけ。
…ええと、何が正解だったのかしら…。
とりあえず大人しくしてろってことで…正解…?
つっかえつつも、つらつらと語るルーロさまの前に、座らされた私…。
あのさっきの心躍る感じの雰囲気は本当に何処へ行ったの?
解せないわ。
「……回りくどくないかしら」
「は?」
「お立ちになって、ルーロさま?」
「……何をする気だ…?」
目を丸くしながらも、立ち上がってくれた。
よし!警戒心露わでちょっと悲しいけど…、よし!
ルーロ様は分かっていないわ。
だって、もっと、甘いのがいいのよ!
激しい感じ…はさっき駄目だったから、こんなのはどうかしら?
私はルーロさまの前に膝をついた。
これで自動的に見上げる形になる。
「愛する方、私の事をお好きなら、どうか呪いを解いてください」
大きく目を見開くルーロさま。
ああ、素敵ね…下から見ても可愛いわ。
そして手を前に組んで、彼を見つめる。
わあ、物語の様よ!!
ええと、大丈夫よね?
この位は、いいわよね!?
だって、これは素敵な恋だもの。
それっぽく…。
ルーロさまの目が…何か怖いわ…。
据わってるって言うの?
……だ、駄目かしら?
何か…何か言って?
「……」
「……な、なんちゃってえ?」
べしゃっ!!
べしゃ?
え、何!?目の前が真っ暗と言うか、石!!
何故石!?
あっ、これ石板!?ルーロさまの家宝石板!?
近づきすぎて見えないけど、この石っぽい感触と大きさからしてやっぱり家宝石板!!
ルーロさまが家宝石板をぐいぐい顔に押し付けられてる!!
さっき愛を誓ってくれた乙女の顔に、何で石板を押し付けるの!?
痛い!地味に痛い本当に痛い!!
「痛い!!痛いわルーロさま!!
紋章の彫ってある部分が、角?が顔にめり込んで痛い!!」
「……君と言う奴は…!!」
「ええ、何で!?何で!?何処が悪かったの、ルーロさま!!」
「そういう煽ってくるところだよ!!」
「えええ、何を煽ったの?」
石板を外してくれたものの…無茶苦茶睨まれた。
…どうしてそんなに怖い顔をするの。
「……私、カイジュ・ルーロ・ノロットイは
ドートリッシュ・ムニエ・モブニカとの契約を解除します」
「え?ちょ、わっ!?まぶしっ!!」
またびかーって石板が光った!!
ちょ、毎回眩しい!!
近いから本当に眩しい!!目に痛い!!
何でいちいち光るのよ!?これ何とかならないの!?
しかも自棄っぽく言い放ったのはどうしてなの!?
「…これで、対等だ」
「対等?」
何が対等なのかしら…。
そして声が低くて怖いんだけど…。
おお、まだ目がチカチカするわ…。
ぱしぱしする…。
「これで……契約は解いたよ」
「えっ、……何で?」
「……何で?何でだって?この状況で、何で?だって…」
え、何でって思ったから何でって聞いたんだけど…。
駄目なの?沈黙が怖いわ。
そしてルーロさまの表情、優しさの欠片も無いわ、超怖い。
ちょ、ちょっと茶化しただけじゃん!?
だって私恋愛偏差値無い令嬢なのよ!?
恥ずかしいんだよ!!
察して!!
…無理か!?
「……」
「……えっとお、黙らなくても宜しくない!?」
「…ドートリッシュ」
「…ハイ!?」
裏声になっちゃったよ!!
怖いよルーロさま!!
「……お望み通り、喜んで…」
「…ルーロさま」
わー、声、怖い。
何故かしら、
微笑みながら迫ってくるルーロさまが超怖いと感じるのは?
何で?
何で?
あれ、何か…怖いよ?目が…超怖い。
あれ、石板から、光?魔法陣出て来てるよ。
何の魔法陣?
どうして魔法陣が私とルーロさまを囲っているの??
「…俺が責任を以て愛しい貴女をキズモノに、致しましょう」
キレてるわ、よね?
あれーこれは…わあ、台無し!?
こうして私は攫われ…無事に三日後、呪いは解けたのでした…。
……え、単純すぎるって?
言える訳ないでしょおおおお!?
そして三日後。
初夏の朝日がとってもとっても眩しいわ…。
私は学園に通う事が出来たの。三日ぶりにね。
ふらふらだけど。
うん、ふらっふら。
あ、イケイン伯爵令息だ。
…相変わらず囲まれてるな。
今掛かって来られたら太刀打ち出来るかな…。
足払いくらいなら、何とか…。
「うん?……あの令嬢を見ると、何だか後頭部の痛みと動悸が…」
「まあ、いけませんわ!!まだ具合が宜しく無いのね!?」
「担架を!!担架を!!」
「お待たせしました!!イケイン伯爵令息様!!」
あ、運ばれて行った。
すっかり手馴れてしまったのね、お取り巻き達…。
元気そうに見えるから慰謝料の心配無しね。
後で文句を言って来たら、暴言の件を持ち出して相殺に持ち込みたいわね。
でもあー良かった。…解けたのね…。
……これで解けて無かったら、どうしようかと思った。
ルーロさまを小一時間問い詰めたいところだけど…。
今は…今は…恥ずかしいから会いたくないけど!!
そうしてふらふら歩いていたら、
今度は血相を変えたサジュに取っ捕まってしまった。
「居た!!居た!!やっと居た!!」
「どうしたの、弟よ…。」
貴方の姉さんはお疲れなのよ…。
朝から元気に挨拶が出来ない感じなのよ。
「どうしたのじゃねーだろ!?姉さん!!3日間何してたんだよ!?
拉致られたのか!?」
「……それを実の姉に聞くの!?」
こんな朝からそんな事、乙女の口から言える訳ないでしょう!?
何考えてるの、サジュ!!
「は?普通に心配したんだよ!!
あれだけノロットイ関係で泣きじゃくってたのに、3日間失踪って事件に巻き込まれたかと思うだろ!
今日見なかったら御養父殿と王城乗り込もうかと思ってたんだぞ!?」
「……すみませんでしたァ!!!」
私は素早くお辞儀を決めた。
状況からして、私の方が何考えてるのって感じだったわ!!
た、確かに事件性は有るわよね…。
他人事なら私もそう思うし、何より身内だものね…。
しかも王宮に乗り込んで助けに来てくれるつもりだったなんて…。
王宮に攫われたと思っていたのね…。
まあ、居たのはあんなクズ過ぎる王城じゃあ、無いんだけど。
「だ、だ、だからって…だからって、話せるわけないでしょ!?
三日三晩……。
み、三日三晩…うわああああああ!!」
「一体何が有ったって言うんだ…」
「いやもう急展開過ぎて、何処から何を話したらいいのか…!?」
何かもう、ふらっふらで頭が全然動かないんだけど…。
変ねえ、ご飯もちゃんと食べたと言うのにねえ…。
ああああああ!!
記憶、記憶があああ!!
「俺が、ドリーの呪いを解きました、バルトロイズ先輩」
「うおおおおお!!ルーロさまぁ!?」
どうして?気配を全く感じなかったわ!!
何でそんなひょこっと私の後ろからご登場なの!?
軍属のサジュも吃驚してるって事は、本当に居なかったのよね!?
何!?瞬間移動魔術!?
有るのそんなの!?
そうじゃなきゃ何処から現れたの、一体!!
そう言えば…ペンダント落とした後にも駆けつけてくれたような…。
うん、幾らチンピラにイラついてたとはいえ…
あの場にはいなかったわよね?
神出鬼没が過ぎるわ…。
マジで謎の多い人だわ、ルーロさま。
「お?え?ええ?ノロットイ?…姉さんの呪いを…解いた?」
「はい」
サジュは突然のルーロさま登場に目を白黒させている。
そ、そうよね。
普通にそう思うわよね。
「1000万ゼニゼロを稼いだのか!?労働で!?
この短期間で?どうやって…」
「いやあ…労働…ではないの」
「まあ、労働じゃないですね」
ルーロさま!!変な補足は要らん!!
微妙にニヤニヤしないで!!
泣くわよ!!
恥ずかしくて泣くわよ!?
「ま、まさか姉さん…どんな悪事を働いた!?」
「働くか!!姉に何てこと言うの!?」
「いや、軍属として、可能性として有れば疑わなきゃ…いてっ!!」
取り合えず失礼なので弟の脹脛を蹴っておいた。
「…例え話だろ…。
じゃあアレか。
準強姦を訴えて、殿下を強請ったのか!?」
「強請タカリも悪事でしょ!!」
しかも中途半端に罪がショボいな!!
いや、王族相手だから結構な犯罪なの!?
あっ、でも1000万ゼニゼロは高額だからどうなの!?
経済犯罪なんて他国でも自国でもさっぱり分からないわ!!
「え、準強姦…?それはどういうことですか、バルトロイズ先輩」
「いや、殿下が姉さんを一晩召すとか何とかで…」
「……はああああ?聞いてない、ドリー!」
「後で話しますから!!」
ルーロさまがイラッとした声を出しているけど、今気にするのはそっちじゃないでしょ!!
「違うの!!お金を出さない方向で…そのお!!あのう!!」
「何なんだよ」
「呪いを俺が解きました」
「え、そんなに呪い解く方法って…いくつか有るのか?」
「有ります」
「え、だったら何で最初っからそれやらないんだ?」
「呪いを受けた当初のドリーなら不可能でしたが、条件が合致したので」
うおおおお!!恥ずかしい!!
条件とか言わなああああい!!
何か嫌!恥ずかしい!!
本格的にニヤニヤしないで、ルーロさま!!
弟の前!!時と場合!!
恥ずかしいいいいいい!!
「…おお?んんん?
……何だか分からねえけど、姉さんの呪いは解けたって事か?」
「完全に解きました」
ルーロさまこっち見ないで!!
見てもいいけど、その目で見ないでええええ!!
「へー、姉さん、首見せろよ」
「違う意味で駄目ええええええ」
とんでもないこと言い出すな!?
サジュが訝し気な顔をしたけど、駄目!今は絶対に駄目!!
何の為に首が詰まった服を着てると思ってるんだ!!
察しろ、弟!!
いや、やっぱいいや!
気付かないでいて!!
お願い!!家族に察してほしい話題じゃないの!!
首の怪我くらいに思っておいて欲しい!!
そう、襟元開けたら軍属でも引く位の怪我を!!
「は?何で?」
「何でも何も、絶対に駄目!!
肉が抉れて骨が見える程度の首の怪我でもしたと思ってて!!」
「重体じゃねえか!流石に死ぬだろ!!死んでるだろ!!」
「気分的にはそのくらいなのよ!!」
「意味が分からん!!」
取っ組み合いして揉める私達に、若干引きながらルーロさまが口を挟んだ。
何で引くのよ!!
単なる軽めの姉弟喧嘩でしょうが!!
「……えっと、弟とはいえ、
御婦人の服の中を見るのはどうかと思います、バルトロイズ先輩」
「ええー?そんな大層なもんかあ?」
おお、やっと離したわね。
姉じゃなくて他の人の意見なら聞くなんてどうかと思うわ。
それにルーロさま、もっと早く止めてくれないかしら。
貴方のドリーの危機なのよ!?貴方のドリーの!!
おお、慣れんことを考えると…凄まじく…恥ずかしいわ。
全く…サジュめ。
折角の服の襟が破けるかと思ったじゃないの。
折角ルーロさまに貰ったのに…。
破いていい服と悪い服の区別を付けなさいよね、非常識だわ。
若干怒りを堪えて、私は服を直した。
「ええ、そうです。それと…」
「うん?」
「貴方の姉君のドートリッシュと結婚することにしました。
今後とも末永く、宜しくお願いします」
ルーロさまは流れるような仕草でサジュに最上礼を取った。
わあ、優雅……。
少なくとも不貞腐れて王子の前で披露した私とサジュの礼より断然優雅だわ。
貴族みたいね。あ、神官だっけ?いや、今は神官じゃないのか。
うん、現実逃避したけど、突然すぎるわ。
爆弾発言が過ぎるわね、ルーロさま。
お陰で腰が抜けるかと思ったわ。
サジュも同じような衝撃だったらしく、すっかり固まっている。
私達を見て、ルーロさまは納得したように独り言を言った。
「成程。やっぱり似てるな…何で誤解したんだろう…そっくりだ、今の顔」
「あの、ルーロさま?」
「…ノロットイ?…まさか、三日三晩…お前と姉さんは…」
「まあ、お察しの通り、既成事実ってやつです」
言っちゃった!!
言っちゃったよ!!
言われちゃったじゃないのおおおおお!!
「家族の前で何てこというのおおおおお!?」
「家族に事実を隠蔽する方がどうかしているよ」
「ええ…おおお…?うーん?…あああんん?」
ああ……サジュの顔が青くなったり白くなったりしているわ。
うん、本当にごめんなさい。
よく分かるわ!!家族のそんな事情なんて聞きたくも無いわよね!!
私も同じ立場なら聞きたくない!!
とっても分かるから本当にごめんなさい!!
ルーロさまって最近知ったけど、とってもマイペースなの!
其処もいいんだけど!!
でも私も恥ずかしいからどうしようもないの!!
不甲斐ない姉さんを許して!!
「ええと…と言う事は、御家断絶は、なくなった…で、いいのか?」
「ああ、はい。それは勿論」
「…そっか、頼りになる…な?」
勿論なんだ、頼りになるう…。
今、その事実をすっかり忘れていたわ。
そっちも命が懸かってる重大案件だと言うのに…。
おお、しまった。
色ボケってこういう事かしら…。
「領地も見てきましたけど、1月有れば見直せますね。
初期投資しても、直ぐに回収できるし…」
「…え、ええー?
ウチの実家の借金ってそんなに…チョロいのか?」
「まあ商人教育受けていれば、1年程度で立て直せるレベルですね」
おお、何てことでしょう。
ウチに商人教育を受けている人間が居ないのが敗因だと…。
いや、貴族だから当然だけど…発想すらなかっただと…。
誰か、誰か…気付かなかったのね!?私も気付かなかったけど!!
ルーロさま、3代前から嵩んだ借金の山を一年でどうにか出来るなんて何と言う有能さ。
そしてウチの一族の経営手腕の無さと言ったら…おお、どうしてなの?
悪事は働いていないのに!?清く正しく生きてるのに!!
理不尽だわ!!
ホントに理不尽だわ!!
「と言うか、実家の領地、まあまあ遠いんだけどどうやって…」
「…まあ、そこは企業秘密で」
サジュの指摘は最もだわ。
それもそうよね…。
何時の間に行ってきたのかしら、ルーロさま。
殆ど三日間一緒に居たのに…全く気付かなかったわ。
私がくたばっていたせいかしら。
…あああああ!!思い出したくない!!
恥ずかしいいいいい!!
「まあ、その何だ……ノロットイ。
ちょっと、胡散臭いけど…お前、いいやつだな」
「…俺が、ですか?」
胡散臭いって失礼ね。私も出会った当初はそう思ったけどさ。
ルーロさまが意外そうにサジュを見てるわ。
怒らなくて良かった…。
あああ、サジュに礼儀正しいルーロさま可愛い!
ずるい!私にもその扱いして欲しい!!
でもされたらきっと恥ずかしいいいい!!見たあああい!!
「ちょっとアホで猪突猛進だけど、ウチの姉さんを頼むわ」
「其処でそう来ますか。
……あなたも大概いい人だと思いますよ、サジュ殿」
「おお、そうか?何かよく分からんが…
姉さんとバルトロイズの家にも遊びに来てくれよ。
何時でも構わないから」
「流石にドリーじゃないんですから先触れは出します。
近い内に伺いますね、有難うございます」
…あれ、人が羞恥でのた打ち回っている間に何か二人が和んでるわ。
しかも文句を言う前にサジュが帰って行ってしまった。
地味に二人とも私に言い草が対して酷くない?
愛が足りない気がするんだけど。
特にルーロさま。
「所でドリー」
「…ひゃいっ!?」
二人きりになると、滅茶苦茶緊張するわ…。
嬉しいんだけど、嬉しいんだけどおおおお!!
「また噛んでる…」
「……何でございましょぉう…?」
「俺が付けた跡は、骨が見える怪我位嫌だっていう事?」
「……」
「傷付くな…」
「……あの、屋外なので首の後ろを撫でないでください」
あの、手つきが、手つきがどうして何か、ヤバいんでしょう?
ゾワゾワするんですけどおおおお!!
どうしてなの、女慣れしてないんじゃなかったの!?
つい先日の可愛いルーロさまは何処へ行ったの!?
本当に、かーわいい感じだったのよ!?
ほんの、ほんの一時だけだったけど!!
あの可愛いルーロさまは何処へ!?
ええ今は間違いなくご本人が目の前に!!
……でも、今は恐怖しか感じないわ、色んな意味で!!
「殿下にも一体何を言われたのか…教えてくれるよね?」
「あの、襤褸雑巾にしてやりたい位腹は立ちましたが、
もう別にどうでも良くて」
「襤褸雑巾…ズタズタってことか…」
「ルーロさま?」
「心配しなくても雲の上の方だから、然るべき方に報告するだけだよ」
ううん?何か目が怖いな…。
どういう事だろう。
アレッキア様に報告するんだろうか、もしかして。
アレッキア様なら襤褸雑巾にしてくれるかしら、王子を…。
…いけないわ、考えが令嬢らしからぬ過激になってしまったわね。
これからルーロさまの妻として…おしとやかに…。
なーんて、きゃーーーー!!妻ですって!!
さっき私、弟に私を妻にするって言われたんですよー!!
プロポーズ!!
…あれ、ちょっと、何か違うかな?
いいやあ!!似たようなものよ!!
その内きっと何か有るわ!期待しちゃおーっと!!
抱きついちゃえーーー!!
と思って近寄ったら、後ろに一歩引かれた。
「ひ、酷いわ…どうして下がるの…」
「抱き上げて俺を振り回すのは止めろよ」
「うっ…」
心を読まれていただと…。
ちょ、ちょっとだけじゃん…。
ちょっとクルクル回りたいだけな乙女心を…許されませんか。
そうですよね、ハイ。
殿方って難しいわね、ええ。
「…ルーロさまがでっかくなったら出来ないんだし…いいじゃないのお」
「意地でも成長してやるし、返り討ちにされたいの?」
「うっ、それを言われると…」
「全く懲りないドリーだな。
それより、王子に触られはしなかったよな?」
「いや、それは全然ですよ。
あ、もし触ってきたら正当防衛で手首ごと折れたんですね…」
「避けろよ。何でそんなに戦闘狂なんだ」
「目撃者が多かったので…国際問題にするには派手でも良かったな…」
「……」
そんな冷たい目で見なくても良くない?
私、被虐趣味は無いから優しくしてほしいわ。
「…イケインには触られてたな…」
あれ、まだ続くの?
何か雲行き怪しいな。
足払いして投げ飛ばすのは触られる内に入るのかしら?
「…いや、ぶっ飛ばしたのは触った内に入るんでしょうか」
「何でさっきから他の野郎を庇ってるんだ?」
「あの、何か怒ってます?」
「ドリーは俺が居ないと駄目だね、本当に駄目だ。少しは自分で察しないと」
にこ、と笑われた…。
あ、可愛い。
……そして、怖い。
ああ、出会いから一生この人に勝てる気がしないわね。
そして、呪われた崖っぷち令嬢は神官商人に捕まりましたとさ。
めでたしめでたし?
次はとある赤毛の貴公子と神官商人の話にする予定。
二人の悪役の密会かつネタ晴らし回ですね…。
今までと打って変わってテンションは低いです。




