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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編

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16/212

15.『婚約破棄』で『誓われた愛』

暗い…。

『悪役令嬢』と『攻略対象一番手王子』の会話です。

婚約者同士の筈なのにどうしてこう、殺伐と…。

それから少し経った頃、

ショーンの誕生日パーティをすっぽかしてやった。

勿論気紛れだ。真剣に祝いたくないという気持ちで一杯だし。

王族の手前、会場に行きはしたよ。

まあ、両親には誤魔化すように言っておいたから…どうしてるかは知らないけど。


令嬢の姿で訪れて、途中男に戻って着替えた。

こっちの方が落ち着くね、やっぱり。

離れたところから上へ下への大騒ぎを眺めているのは

ちょっと面白かった。

今までちゃんと我慢してきた分、心のままに動くのって楽しいね。


気分良くしていたら、そんな僕を見ている誰かが居た。

ねっとりとした、気味悪い視線。


…『魅了』は、封じている。

と言うか、封じないと気分が悪いことこの上ない。

普通に寝てる時でも解かないよ。

通り間際に僕を見る人間は居ても、其処まで露骨な視線を浴びせてくるものは滅多にない。

僕は成長したんだ。

なのに誰が?

幼い頃に沢山味合わされた、あの感覚が肌身をなぞる。

何でだ。思い出したくもない。気持ち悪い。


「……」


おぞましいあの屑の視線だった。

確認するんじゃなかったよ…確認せざるを得ないけど。

気持ち悪い筈だな。

殺してやりたいが、準備が出来ていない。

さっさと帰ろう。

アローディエンヌに会いたい。

アローディエンヌ、僕を見て。

僕はその思いだけで、足を動かした。


「はあ、最近は無かったのに…夜中にお呼び出しですの…?」


僕のアローディエンヌは眠そうで機嫌が悪く、怒られたな。

ごめんね?


そして、それから数日。

家にあの屑女が来ていた。

それだけでも不愉快極まりないのに、

いつも通りノコノコとやって来たあの屑は、

あろうことかアローディエンヌにこう言い放っていた。


「お礼をすればいいのね?いままでありがとう」


あの屑はアローディエンヌを侮辱した。


可哀想に、優しいアローディエンヌは、何時もの動かない表情のまま嘆いていた。

何時もちょっと迷惑そうに僕から逃げようとするのに。

抱きしめても、珍しく僕にされるがまま。

嘆く彼女は美しく、愛らしかったけれど。


うん、準備は出来た。


冬の夜会。…何回目だっけ?やたら開いてるよね、アレ。

最後でもないのに最後の冬の夜会とかだったかな?

まああんな暇の塊の会はどうでもいいや。

炎はよく燃えるだろう。

乾燥してる時期は手頃だしね。


「取り合えずショーンからかなあ」


色々考えたけど…計画は万全に確実に。

僕の信念のひとつだ。


でもアローディエンヌを置いて夜会に出かけるの嫌だな。

今回でカタを付けるとしても、嫌だな。

必要だとは分かってるけど、置いていきたくない…。


グズグズと伸ばしていると、アローディエンヌが僕の格好を滅茶苦茶褒めてくれた。

今まで全く無かったことだ。

僕は物凄く狼狽えたよ。

しょうがなくない?

好きで好きでたまらない子が褒めてくれたんだよ!


「好きよ、義兄さま」


僕は耳を疑った。


「あんな子に構うより、

義兄さまともっと過ごしておけば良かったと後悔しているわ」


僕の妄想ではない、よね。

どんなに小さくともアローディエンヌの声を聞き逃すものか。

しかも微笑まれて、可愛いセリフだし…噛んじゃうし。

玄関先だけど押し倒そうかと思った。

全て放って逃げたかった。


だけど、屑は処理しないと。

僕の安全と、アローディエンヌの幸せの為に。


好きだな。

本当に愛しているよ。

僕の愛するアローディエンヌ。

僕だけの可愛い人。


こんな事態を引き起こしてくれたあの屑女には充分なお礼をしなくては。


僕の最愛の信頼を裏切った彼女には苦しい死に手を尽くそう。

知恵と誠意を以てね。


小さい頃から来ている僕にとっては、家の次に間取りを知っている、通い慣れた王城の廊下は冷えていた。

ショーンはあの屑でも探しているのか、キョロキョロしている。

何であんなに暇そうにしてるんだ、王子だろ。

まあ部屋に踏み込む羽目にならなくて良かったけど。

面倒だし。

侍従とかも居ないみたい。

まあ、その辺に護衛が居るしね。


「おいショーン」

「何だよ…って誰だ、お前」


間抜け面だなあ。

一応学園でキャアキャア言われているのに、台無しじゃないか?


「俺はアレッキアだよ」

「…はあ?」

「知らなかった?俺は私、私は俺…」


察しの悪い従弟の為に、大盤振る舞いで体を女に変えてみせた。

ショーンは唖然とした顔になっている。

男の服は、体に合わないしずり落ちそうだが、しょうがないな。

ドレスに着替える暇もないし。

胸が邪魔で、少し身じろぎすると遠慮のない視線と生唾を飲み込む音が聞こえた。

……気持ち悪い。


「お前の嫌いな婚約者は、お前より優秀な王子様にもなれるんだ」

「…どういう、ことだ」

「先祖返りっての?まあその辺はどうでもいいや」


コイツは僕の顔と体だけは気に入っているのは分かっている。

少しだけ、形だけ色っぽく…見えるように微笑んでやった。

案の定耳まで真っ赤にして、もぞもぞしている。

うわ、気持ち悪い。


「良い事を教えてやるよ。お前に絡んでたあの屑女、ロージア?」

「なっ…彼女に何をした!?」


人の事凝視してる癖に、食いつきがいいなあ。


「お前から俺に乗り換えたいんだって」

「……はぁ!?」


うん、ショックだよね。

真っ赤な顔のまま、ショーンは愕然としている。


「あの屑が義妹に宣言してたのを盗み聞きしたから、間違いないよ」

「なっ、そんな…お前、何かしたな!?」


僕が?

特に手を下すまでも無かったんだけどね。


「何にも。

お前の無様な誕生日を男の格好で見物してたら、気持ち悪い視線を向けられただけ。

お前らって気持ち悪いね。お似合いだ」

「そんな、嘘だ…嘘…」

「本人に聞いてみろよ。この後エスコートの約束してるんだろ?

婚約破棄するつもりだろ?」


目に見えてショーンの顔色が変わった。

図星を突かれるとそうなるよな。


「ああ、それともしたんだっけ?どっちでもいいや」

「…恨みか?お前を放っておいたから、この私を怨んでいるんだろ!?」


えー意外な事言うなあ。

恨む…。何で恨まないといけないんだろう。

ムカつくけど別に恨んでないよ…。


「俺は俺の為だけにしか動いてないけど」

「嘘だ!お前は努力を踏みにじる私を怨んでいるんだ!!

だから一番大事なロージアを奪うんだ!!」

「へえ、あの薄っぺらいロージアが大事なんだ。この私よりも?」


近寄って、まるで姫君にするように手を取ってやると

ショーンは抗わなかった。

プライドの塊の癖にプライド無いのか。

あの屑女が一番なんじゃないのか、何デレデレしてるんだ、コイツ。


「…大事、だ」

「嘘つきだ」

「違…」

「俺を王妃に据えたらあの屑は…専属の傍仕えかだったな?

だって側室だと能力が下すぎるもんな。

大丈夫、ちゃーんと計画は知ってるよ」

「……何を」

「王も王妃もお前も、納得しての筋書だったよな?

でも、あの屑女にはこの夜会で俺と婚約破棄をするって約束した…。

そしてあの屑女はそれでもお前を裏切りに来る…。

何故なら俺に一目惚れしたからだって」


行儀見習いのついでに、ちゃんと聞いてるよ。

王と王妃の崇高なお考えって奴を。

無駄に王宮に呼び出し喰らってるんだから、ちゃんと有益なものは得ないと。

僕だけ嫌な事を課せられてるなんて不公平だしね、

一時的に魅了を使ったら、ペラペラお話してくれた。

あんまり使いすぎると、うちの両親みたいに唯唯諾諾になるからつまらないけど。

あの人達は其処まで嫌いでもないしね…好きでもないけど。


ネタ晴らしをしてやっても、ショーンは僕の手を撫で続けていた。

ドロドロと欲望の混じった目で僕を見たままで。

……とても気持ち悪い。


「…お前は、悪魔だ」

「そういう種族もあったかもね。

それなら従兄弟のお前にもきっちり流れているさ、楽しいな」


悪魔ねえ。僕を嵌めようとしてるお前も同類なんだけどね。

笑ってやると、ショーンは僕の手に両手を重ねて来た。

…何その仕草。今までしてきたことも無かったけど…されても嫌だけど。

うーん……気持ち悪い。


「…アレッキア、愛しい悪魔。結婚しよう」


……想像はしてたけど、馬鹿だな。

この状況で口説いてと来たか。

異常だね。


「アハハッ、じゃああの屑女を完膚なきまでに棄てて来いよ。

別にいいだろ?裏切り者は切り捨てろよ」

「……分かった」


えー、聞くんだ、こんな酷い命令…。

普通じゃない。…目がどっかに行ってる。

…最後までつまらない奴だなあ。


「ちゃんと見ててあげるわ。

そうね、私を巡って殺し合いだと面白いかな」

「言う通りにしたら、結婚してくれるな?」

「生き残ってから言ってくれる?

貴方がロージアに負けたら、私はロージアのものになるかもしれないのよ?」

「…アレッキアが、ロージアのものに?」

「そうよ、あの屑女。餌を見る目で私を見てたの」

「……許さない」


僕の手を放し、ふらふらとショーンは出て行ってしまった。

結局どっち付かずだよなあ、アイツ…。


あれからどうなったか?

僕には興味が湧かない。

それにしても、何であんなに歪んだ模様を背負うんだろうね。

僕はショーンに『魅了』を掛けた事なんてないのに。

少なくとも意識的には掛けていないのに。

…思い込みが激しいのかな?

まあどうでもいいけど。


王子様は流されやすくて思い込みが強いようです。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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