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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編

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17/212

16.残酷な愛に殉じる塔

お読み頂き有難うございます。

バッドエンドの裏側が進みます。この拙作きっての残酷回です。

苦手な方はお戻りを。


取り合えずショーンもどこかに行った事だし、僕は体を男に変えた。

きつかったりずり落ちるんだよねえ…。

当たり前だけど、不便だ。

僕が廊下を歩いて外に出ようとしたとき、何処からか炎が上がっている。

物が倒れる音…逃げ惑う人々の金切り声…。

まあ、此処の軍は優秀だから、ちゃんと誘導に従えば逃げられるだろう。

逃げないと決めて留まる人間以外は。


両親は頼んでおいたことをちゃんと守ってくれたみたいだね。

そこから動くなって言っておいたから、まあ加害者兼被害者になっちゃうかな。

誰か気付けば助けてくれるかもしれないね。運が良ければ。

僕がアローディエンヌに出会えた奇跡程、いい運が転がってるとは思わないけどね。


で、心の底から僕は帰りたかったけど…やることが有る。

最後の屑を見つけなきゃ。


とりあえず燃えてる中を歩いたら…歩けるけど不自然か。

折角アローディエンヌが褒めてくれた服が焦げちゃう。

燃えてい無さそうな所…あんまりないな。

探しながら歩いていたら、間もなくあっちから声を掛けて来た。

…よく見つけるよね。

いっつもキンキラ白々しい格好のショーンと違って、結構闇に紛れそうな恰好なんだけど。

しかも赤毛なんて別に珍しくもなんともないのに。


きゃあきゃあと甲高い声がうざったい。

適当に返事したけど…相変わらず屑女の言う事は芝居がかっている割に、空っぽだった。

…乗ってやる気にもならないな。

コイツの相手をするときの気分は底辺を這いずるよ。

本当に茶番だな。

茶番は派手な方がいいのかもしれないけれど…僕はそうは思わない。

つまらないものを派手にしてどうするのかな。

様式美って奴なのかもしれないけど。


ノコノコ着いてくるらしいから僕はまあまあ険しかった森を抜けて、七階程度の螺旋階段を上がった。

よく初対面の人間を口説いて着いて来るよ。

危機意識って無いのかな。

あの屑女は途中何度か転んでいたけど、知った事ではないから無視した。

あんな恰好なのに運よく落ちずに上がれたようだった。

落ちても良かったのに。


辿り着いたのは塔の最上階。

ここにはバルコニーしかない。

丁度四階程度の所に張り出した屋根が良く見える。


「アレッキオ様、美しいですね、あの鳥」


頬を染めて、塔の周りを飛ぶ赤と白の鳥にウットリしているのは、真っ赤に染まった白い服の屑女。

…あれ、気にしてなかったけどこの屑、何か赤いな。血か?

それでこいつが此処に居るって事は…

ショーンを殺すか殺すような傷を負わせたんだろうな。

約束は守ったけど負けたんだね、ショーン。

どうでもいいけど。


しかしこの屑女、

そんな事をしでかして鳥が美しいの何だのと…流石常軌を逸しているな。

そう言えばコイツにも『魅了』掛けて無いけど、

歪んだ蠢くものを背負ってる。

ショーンに似てるけど、コイツの方が気持ち悪い。

隙間から字が読めるけど…『移り気』?

何それ。まあどうでもいいや。


「あれは旅路を祝福する鳥」

「旅路?」

「人生の門出を祝福するとも言われてる」

「まあ…素敵…。アレッキオ様と見られて幸せです」


よくそんな血塗れで軽い事が言えるなあ。僕は感心した。

人生の門出。結婚式とでも考えているのか?それとも逃避行とでも?

…門出って幅広い意味があるんだけど。


「お前、俺が好きなの?」

「…はい、大好きです」

「どうして?」

「貴方のその瞳に囚われて、他の事が考えられないからです」

「ふーん」

「きゃっ」


空っぽな言葉に適当な返事を与えておいたら、屑女は震えて顔を真っ赤にした。

背後にウゾウゾ変な模様が蠢いているから気持ち悪いだけなんだけどな。


構わず抱き上げてバルコニーの手すりに載せたら、

うっとりと、屑女は僕の肩に手を乗せてきた。

…触らないでほしいなあ。

手袋してても嫌だし服越しでも気持ち悪いんだけど。


嫌悪感を押し殺して、僕はコートの内ポケットを探る。

目的のものは直ぐ見つかった。

金属製品の飲み物入れを出し、中身を煽る。


ねっとり見られた。

仕掛けたのは自分だけど、

好きな相手以外にねっとりと見られて嬉しい人間が居るのかな。

喉なんか見て何がいいんだか。

気持ち悪い。


ああ、でもアローディエンヌが見てくれるならどこでもいいけれど。

アローディエンヌは何処を好きかな。

教えてくれるかな。何時か言わせたいな。


「喉が渇いた?」

「え。あ、はい」

「ふーん」


まあここまで歩かせてきたから喉が渇いて当然だしね。

取り合えず口に含んで、屑女の半開きの口に液体を流し込んだ。

…普通、殆ど初対面の人間にこんなことされて抵抗しない?

僕なら裂く。

うーん、全く抵抗は無かった…。気持ち悪い。


目は見ないようにしたけど…よく他人の口移しでウットリ出来るもんだ。

僕は吐きそうになるのを堪えるのが精いっぱいだと言うのに。

胃まで引き攣って鳴るのが分かるよ…。


「アレッキオ、様…」


屑女が何か言っているが、構わず空を見上げた。

上を向くと、鳥が集まっている。

近くで見るとあの鳥、まあまあ大きいね。

それに…本当に賢いな。

ちゃんと準備したら、意図を感じ取ってくれる。

下手な文官より賢いんじゃないの?


さて、頃合いが来た。


「遊びは終わった?浮気者さん」


背後の空は赤い。どれだけ燃やしたんだろ、両親は…。

やりすぎだね。


出来るだけ優しい声を出して、

僕は屑女の手を払い、肩を軽く押した後大きく後ろへ下がった。


あの屑の背後に壁は無い。


反射的に僕を掴もうとする腕は血が乾いてはいるが、赤い。

赤い赤いその手は空を切って、後ろへと落ちて行った。


「きゃああああああああっ!!!」


いち

にい

さ…どすっ。


ちょうど三つ数えるか数えないか位で音が聞こえた。

丁度都合よく張り出した、屋根に落ちた音だ。

入口に有る小さな蓋を開けたら、あの屑女の息が聞こえる。

昔に作られたって聞いてたけど、ちゃんと使えるんだな、この施設。

ちゃんとした人間が整備してるみたいで何より。


「大丈夫、即死しない、生きてられる高さだ。そう計算されてる」

「い、痛いっ、アレッキオ様!?」


この塔は特殊で、あの屋根に落とされた人間と会話が出来る。

丁度頭の辺りに仕掛けがあり、

どんなに小さな声でも拾うような設備があって管が頂上まで伸びている。

大型の糸電話のようなものだろうか。

聞いたときはとても悪趣味な仕掛けだと思った。

その時は使う事になるとは思わなかったけどね。


「この塔は、残酷な愛に殉じる塔って言うんだ。面白い処刑塔だろ?」

「しょけっ…処刑塔っ!?」


屑女の声が恐怖に染まっている。

がさがさ動いている音がするから扉でも探しているのだろうか。

残念だけど、この塔にはバルコニーと屋根しかない。

上から魔術なりロープなりで降りて、掃除することは出来るけどね。

他の階は、明り取りの腕も通らない大きさの窓が開いてるだけの螺旋階段だっただろ?

最上階以外に扉が無いのは見てるはずなのに…注意力が無いにも程がある。


「その屋根痛いだろ?丸い石が埋めてある。

背骨とか多分骨折してるよ。

ああ、首くらいしか動かせないだろ?」

「い、痛いですっ!!痛いです!!」


痛いなら喋らなきゃいいのに。

もがもが動こうとしている音も聞こえる。

聞いたとおりになってるみたい…計算されてるよなあ。

背骨折ってるから動けないし…万が一下に落ちないように周りは盛り上がってるし。

設計して作った人間の陰険さが怖いね。


「ああそう言えばさっきお前が強請ったあの飲み物、愉快な効果が二つ。

神経が過敏になるように出来てて、最初は擦り傷でも痛むんだ」

「ひっ…痛い…痛いいいいい!!」

「でも段々痛みは麻痺してくる。良かったな」

「どう、どうして…ひっ!?」


ばさばさ、と羽音がする。それも複数。

もう寄って来たのか。仕事が早くて助かる。


「その鳥は賢いよ。

普段は種や木の実を食べるが、特殊な物を嗜好品として食べる。

で、嗜好品を食べる為、三つの事をちゃんと覚えている」

「いやっ、何っ!?来ないで!!」


屑女の焦った声が大きくなってきたな。

普段から耳障りな声だと思っていたけど、

金切り声になると更に聞き苦しい。

でもまあ、我慢しようか。しょうがないし。


「一つはこのバルコニーから突き落とされる人間であること。

その人間は白い服を着ていること」

「いやっ、鳥がっ!!アレッキオ様!?嘘ですよね!?」

「痛みが引いてきたか?良かったな」

「いっ、痛みは引きました!?でもこの鳥は…っっ!!」


鳥が増えたかな。羽音の方が煩くなってきた。

聞き苦しいからちょうどいいや。

この声、本当に神経に触る。


「ああ、そうそう。最後。

さっき与えた飲み物を体内に取り入れていること」

「あっ、あっ、あ…の!?」


よくそんなに声が出るなあ。

意外と余裕なんだろうな。

流石図太い。

体も丈夫なんだろうな。


「この三つの条件を完璧に満たしたものを、生で啄んで喰らうのが大好きなんだ」

「あああああああああ!?」


僕は耳を抑えた。

あー煩い。半歩離れてちょうどいい位かな。

ああ、気分が悪い。

僕は至って普通の思考回路だから、断末魔なんて聞いてて楽しいものじゃない。


「鳥葬なんて芸がなくてごめん?

5時間くらいで綺麗にドレスと髪と骨にしてくれるから」

「いやっいやああああああ!!」

「運が良ければあの燃える王宮から誰か助けに来るかもな?

あ、お前が殺したんだっけ?まあどうでもいいや」

「いやあああ!!どうして!?助けて!!どうして私が!?」

「普通は役人だけど…今は俺が処刑人だから、お伝えするよ」


昔からの言葉ってどうも仰々しい。

まあ、面白いとは思うけど、趣味じゃないな。


「残酷な愛に殉じて口を閉ざせ」


言い終えた僕は、

バルコニーの厚い木の扉を閉めて、通話口の蓋を閉じた。

こうしてしまえばこの塔は防音だ。

人の声如きの音量は漏れてこない。

大砲の音位なら聞こえるだろうね。

塔自体は丈夫だからそうそう壊れないけど。

礼拝堂と処刑塔…。王城にはワンセットなんですよね…。


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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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