表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/212

13.義妹の瞳

お読み頂き有難うございます。

普通でない人が普通の人に出会う話です。

僕の義理の妹は可愛い。

少し黄色がかった灰色の髪の毛も、深い青の大きな目も、そばかすの有る小さい鼻も、噛みしめるのが癖の赤い唇も、動きにくい表情も全てが可愛い。

アローディエンヌは僕をおざなりに扱いながらも、絶対に僕を放り出さない。

どんなに甘えても、放り出さないんだ。

どんな言葉にも返事をくれる。


滅多なことでは動じない濃い青の目に、少しの愛情を込めて僕を見る。

僕にとっては掛け値なしの愛情を込めて。

その事実を確信するだけで幸せになれるんだよ。


おぞましい魅了が効かないのに、愛情を込めてくれるんだ。



両親は大嫌いだ。

こんな厄介な能力を与えておいて、僕を守らない。

お蔭で昔は随分酷い目に遭わされたな…。


物陰に引きずり込まれるのは日常茶飯事。

下卑た目を態度を常に顕にされて、恐怖しかなかった。

泣いて叫んで引き離されて、また同じことが起こる。


アイツらの…特に気持ち悪さに拍車をかけたのは…顔もだけど、彼らの背負う…いびつな模様で塗られた何かを強制的に見せられること。

幼い頃は何の事か分からなかったから余計に恐怖だった。



5歳の時、雨の器の茂み。

襲われた僕を見つけてくれて、王子様のように助けてくれたアローディエンヌ。


「だれかー!!

おんなのこがおとこのこに、ここの茂みでおそわれてるー!!」


大人に助けられてから…僕は泣いた。泣きまくった。

だっていつもそうだった。

今日は良くても明日は?

また誰かに襲われるの?

もう嫌だ。

どうしてこんなことが続くんだ。

子供だったから泣くしかできなかったんだよね。


大人は僕を遠巻きに眺めるだけ。

彼らにとっても僕は頭痛の種だったんだろうね。

いつもそうだった。

でも、その日は違った。

そんな僕に寄ってきたアローディエンヌはハンカチを差し出したんだ。

構わずワンワン泣く僕に、彼女はちょっとイラッとしたように言った。


「助けてあげたのに、何よそのたいどは」


ちょっと偉そうに、ぺちんとおでこを叩かれたんだ。

…普通にされた。

僕に見とれるとか、惚けるとかしてない。

寧ろ迷惑そうだ。

その事実が信じられなくて、余計に涙が出た。


青い目をした、僕のただ一人のお姫様。

あのとき、アローディエンヌと目が合わなかったら、

逢わなければ。

とっくの昔に心が壊れるか、

体の何処かが誰かに奪われて欠損していただろう。

自分で首を掻き切ったかもしれない。


魅了の効かないアローディエンヌ。

僕が心の底から欲しいと願ってやまなかった彼女は、僕の義理の妹となった。

あの目を求めて、焦がれて、

熱病の様にあの頃は彼女を常に欲しがった。

まあ今でもそんなに変わらないんだけど…

ちょっとだけ幼少期は激しかったんだよ。

後悔はしてないけどね。


両親はこれ幸いと厄介な僕をアローディエンヌに押し付けた。

まだ4歳だったのに、アローディエンヌは大人びた子供で、驚くほど根気よく僕の面倒を見た。

それを良いことに、僕は何処までも年下の子供のように甘えた。

でも彼女は決して僕を見放さない。


魅了が効かない彼女を寄越してくれたことを初めて神に感謝した。

彼女なしでは生きていけない。

そう思うようになるのは三ヶ月と経たなかった。

僕は男にも女にもなることが出来る。どちらも僕であり、私である。


でも、アローディエンヌは女の子だから、相手は男の子がいいだろう。

だから『僕』でいたいと考えた。

小さいなりに色々考えたんだよ。

出来るだけ彼女と一緒の時は男の姿を取った。

でも


「そのドレスとかみがたではとのがたに見えませんわよ。

それと、れいじょうのしぐさはりっぱですね。おみごとです」


そ…そうだけどさあ。

あれはショックだったなあ。

結構泣いたらアローディエンヌがかなり困った顔をしてた。可愛かった。


でもアローディエンヌの言葉は正しい。

まだ4歳の彼女の言葉は、親の言う事なんかよりいつも常識的だった。

僕は考えた。

今まで女の子として育てられたから、男の子の仕草じゃ変なんだ。

いや、女の子でも男の子でも有るし…。

今までは親の言うことを聞いていたけど…その時から男として生きたいとしか思えなくなった。


僕は親に形だけ頭を下げて、貴公子としての教育も受けることにした。

性に合ったのだろう。

令嬢教育なんかよりとても楽しかった。

出来る出来ないじゃなくて、興味が湧かなかったんだよね、令嬢教育って。


そして、出来るだけアローディエンヌを呼ぶ。

大体泣いたら連れてきてもらえるし、くだらない事でも呼びたかった。

ずっと傍に居てほしい。

一日中一緒に居れて楽しかったなあ、あの時は。


「ゆりはきらい」


アローディエンヌはたまに分からないことを言う。

でもちゃんと僕は聞く。

あの時、アローディエンヌに百合は絶対贈らないと心に決めた。


でも、アローディエンヌは花の好みを言ったわけじゃないらしい。

どうやら違う意味のようだった。


「おひめさまどうしのれんあいなんてごめんだわ」


…やっぱりか。

女の子同士では嫌だと思っていたらしい。僕の思った通りだ。

僕の今の格好は女の子だ。男の子がいい。

体を変えても、恰好が女の子じゃアローディエンヌには男の子だと思ってもらえない。

こんなドレスを脱ぎたかったけど、子供では拒否権が無い。

僕は必要な時に必要な恰好がしたかった…。



アローディエンヌが好きなのは王子様だって聞いたのもその時だった。


「き、きらぴかりんお月さまのお話のおうじさまかしら…」


あの童話に憧れてるんだ。

年相応な所も有ったんだね。可愛いよアローディエンヌ。


だから暇が有れば童話を一緒に読んだなあ。

強いのと、乙女を一途に思ってる所が好きなんだって。

アローディエンヌをずっと想ってる所は僕と一緒だったけど…。


「でもショーンさまは好きではないけど。会ったこともないし」


でもショーンは絵本と一緒の王子だ。

アローディエンヌに興味を持たれるなんて生意気だ。ムカつく。

その時からショーンには殊更冷たくすることにした。

出来れば悔しがらせてイビってやるためにたくさん勉強した。

元々アイツは嫌いだったから丁度いい。

それに、強くならないといけなかったし。


それと、話の後で僕は…母の趣味で庭にも生やしている百合を、一掃するよう庭師に言いつけたんだったかな。

いや、燃やしたんだっけ?

生えてる草を燃やすのって加減が分かり辛くって…結局他も焼いたっけ?

懐かしいな。

まあ、あんなゴテゴテした庭は嫌いだったからすっきりしていいよ。


そして僕は強くなるために頑張った。

あの諸悪の根源、魅了を抑えようと努力した。

抑えられるようになった時。

良かったですわね、って、嬉しそうにアローディエンヌが言ってくれたことは忘れない。

あのアローディエンヌがちょっと微笑んでたんだよ!!

抱き着いたら暑いって言ってたけど。

嬉しかったなあ。


「アレッキア、お前はいつもえらそうだぞ」

「あっそう」

「ぼくはおうじなんだからな、ちゃんとうやまえ」


一つ下の従弟は本当にうざったい。

別にお前が何かを頑張って王子になれたわけでもない癖に…。

憎まれ口を叩く割にショーンは…ちゃんと魅了を和らげているにも関わらず、こっそり下卑た目を向けて来ていた。

変な暗い模様をべたべたと背後に貼り付けて…。

分からないとでも思っているのかな。

僕は人の視線には敏感になっていると言うのに。


あんなバカ王子に憧れる余地もないくらい、アローディエンヌのカッコいい王子様にならなきゃ。

そしてお姫様にしてあげるんだ。

でも、アローディエンヌは慎ましい。


「なりたくないなりたくない!!そんなめっそうもない!!」


何故望まないの?

君は何が欲しいの?


未だに解らないんだ、アローディエンヌ。

君を得るには何を贈ったらいいんだろ?

何を言えば君は僕を好きになるのかな?


「義兄さま」


その少しの愛情は、いつ沢山に変わってくれるのかな。

どうしたら君に向けるこの思いに気付いてくれるんだろう?


小さい頃から色々やらかしてます、悪役令嬢。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ