12.やさしいきおくにきみがいる
お読み頂き有難うございます。
今回から悪役令嬢目線が始まります。
童話ってどう描写していいものか…。短いです。
今回はそんなに暗くないですね。
子供の頃。僕が泣くと、慌ただしくなる。
ある時から使用人に連れて来られた君は、いつも困った顔をしていたね。
面倒だって言われたことも有ったかな。
「お呼びですか…お義姉さま」
「やっと来たー僕だよーアローディエンヌー」
「…義兄さま」
「えへへー、ねえー、アローディエンヌー。ご本よもうよー」
「ええー、またこれですの?義兄さま好きですわね…」
幼い君に懐く、少し年上の僕。
不安定すぎた僕だったけれど、君は文句を言いながらも拒まなかった。
僕はアローディエンヌの手を引きながら、一緒に椅子に座る。
くっつきたいのに、アローディエンヌはいつも逃げる。
でも僕はくっつきに行く。
椅子の端に追い詰めて、やっとアローディエンヌは諦める。
それの繰り返しだった。
「ここからねー」
「何でこんなちゅうとはんぱなページからなんですの…」
ぶつくさ言いながらもアローディエンヌは本を音読してくれた。
あんまり感情は籠ってなかったけど。
うん、今でも口だけ冷たい所は君の魅力だよね。
『悪者は乙女を捕らえ、酷い呪いを掛けました。
乙女は呪いの痛みに耐え、嘆きます。
「ああ、旅の方…王子様…。どうか逃げてください。
わたしは貴方が傷つく方が辛いのです」
しかし、王子様は死闘の上、悪者を倒しました。
そして、苦しみから解放された乙女を抱きしめます。
「悪者は私が倒し、あなたの呪いは解けました。
乙女よ、どうか私と結婚してください」
「いいえ、旅の方。わたしは貴方のような高貴な方に相応しく無いのです」
「貴女は私のただ一人の方。貴女を心から愛しているのです」
「ああ、旅の方…わたしの唯一の方。わたしも貴方を愛しています」』
僕は其処でページをめくろうとするアローディエンヌを止めた。
凄く嫌な顔をされたなあ。
可愛いけど。
「そこもいっかい言ってえ」
「…えー、何でですの…」
「言ってえーアローディエンヌー」
「何でこのページばっかり…」
でもちゃんとページをめくり直し、読み直してくれる。
僕はアローディエンヌにしがみ付いたまま。
「暑いですわ、義兄さま!」
「あったかいねえ」
「何で!!」
ちゃんとまともな答えが返ってくる幸せを噛みしめる。
僕は幼かったけど。
今でもずっと、覚えている。
あのセリフのページだけボロボロになったことを。
君が憧れた王子様みたいになろうと思ったことを。
君の体温が間近に感じられて、幸せだったことを。
ヒーローが敵をばったばったと薙ぎ倒して姫を救う童話って…
意外とそんなに知らないかも。




