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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編

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12/212

11.あなたは燃える空の下

お読み頂き有難うございます。

裏ヒーローがお早めに家に帰ってきました。

義妹限定で約束を守る義妹限定で有言実行の人です。

あ!!

もしかしてロージアとの逃避行の荷物を引き取りに来たとかだろうか。

…そんなもん適当に路銀でも持っていって旅行中に揃えろや!!馬車に積んどけや!!

…しかし、馬車の音は聞こえなかった…。

まさか、義兄は徒歩で帰って来たのか?

…結構王宮から距離有るんですけど…。


「…義兄さま?」

「えへへえー、アローディエンヌうー」


義兄は私に抱き着いて、持ち上げて、頬やら額やら口の端やらにキスをしてきた。

…何でよ。義妹にべたべた口づけするな。シスコンが過ぎる。

……何だこの展開。


いや、ロージアは?


「はっ!?な、何ですか!?いや、それよりご無事…で…?」

「心配してくれたのー?うれしー。ご無事だよー」


…まさかと思うが、

ついでに義妹も一緒に連れての逃避行じゃなかろうな。

いやいやいやいや、無いわ。

それなら全力で断ろう。

確かに私は生活力は無い。令嬢力もそんなに無い。


だーがー!!ロージアが連れなのは嫌だ。

死んでも嫌だ。


だってあそこ迄無能呼ばわりされたんだぞ!?

どの面下げて仲良く逃避行!?了承したら私頭おかしいよ!!

いやいやいや義両親より無理。

顔見たら条件反射で何か投げて逃げるわ。


と、全力で拒否する気合は十分。


…ロージアは出て来ない。

…あれ?

あれー!?


「義兄さま、お城は」

「放火かなあ?」


いやいやいやいやいや!!絶対お前の仕業だろ!!

このバッドエンドの火事…つまり今が一番派手だが、何処のルートでも黒幕は義兄…いや、義姉の起こした火事は結構出てきてた。


何てったって燃え落とす紅の蝶々だぞ。

放火はお家芸…いや、同じ家に住んでるが、私に大規模放火は不可能だ。

立派な義兄の個人芸?だ。

今のヘラヘラ笑う義兄に似合わない二つ名だなーと心底思うけどね。


『主人公』のステータスが規定に足らなかったら…

何かの火事(悪役令嬢由来)に巻き込まれて焼け死ぬバッドエンドが一番多かったし…。

ああ、あれは語るに涙する酷い話だった…。

いやそうじゃない。


「ロージアはどうしましたか」

「知らなーい。何か僕に惚れたとか言ってついてきたけど、森に入って撒いたー」


何だって?

…惚れて付いてきたけど撒いた?

いや、病的に惚れてんのは痛い程知らされたけど…撒いた?

撒いた?

……何で?


「…塔は?」


……ロージアと塔でのキスは?

貴方はあそこでロージアと過ごしたんじゃないの?

だってこの流れだと絶対そうよね!?

具体的に聞けないけどさ!!

…私は疑問を込めて義兄を見た。

そうしたら義兄に小首を傾げられた。


「塔ってなあに?」

「礼拝堂の…」

「ああー、残酷な愛に殉じる塔だねー」

「は?」

「アローディエンヌはよく知ってるねー。

あれは石造りだから燃えないんじゃないのかなー。もし登り切れたら助かるかもねー」

「……残酷な……愛?」


……それ、ゲームで聞いたことないんですけど。

疑問で頭一杯でパンクしそう。

そんな目を白黒させる私が面白いのか?

ニコニコしながら義兄は答えてくれた。


「うん、浮気者を成敗する塔だよ?」

「…は?」

「あのねえ、頂上で誰にも祝福されない残酷な愛を誓うと、酷い死に方をするんだって」


浮気者を成敗する塔…。

浮気者を…成敗?

……物騒な単語…。

あの塔は、そんな物騒な物だったの?


義兄は無邪気に微笑んでいるし…。




それに…酷い死に方って?

そんなの、あのバッドエンドには無かった。

バッドエンドに書かれて無かった…のに?



義兄はニコニコと私の手を自分の頬に添えさせた。

…恐ろしくスベスベしてるな、羨ましい。


「義兄さま?」


相変わらず接触過多の義兄に戸惑う。

分からない人だわ…。


だけど、その瞬間…まるで映像を見ているかのように

鮮明に二人の姿が私の脳裏に流れた。



何故?

どうして?

こんなものが見えるの?義兄さまが見せてるの?

前世の記憶?

音声と立ち絵とスチルのみしか私は確認できていない。


それに、今まで、私はイベントを見ることは出来無かったのに?




「待ってください、素敵な方」


戸惑う私を置き去りにして、映像が流れていく。

…ロージアの可憐な声が聞こえるわ。

…白い、ひらひらとした…私が勧めたドレスだ。

但し、ショーン王子攻略時になんだけど…。

凄く可愛い服が良く似合う、やっぱり…。

憎たらしいけど本当に可愛いわ、ロージア。


「…何か用?」

「私、ショーン様への愛を撤回してまいりました」

「それが俺に何の関係が?」


謎の男…はロージアに興味を示さない。

…うわ、義兄さまだ。こんな不機嫌な義兄見た事ないわ。


「私は一目見た時から、貴方を心から愛しています」

「へーえ。じゃあ、付いてきたら」

「本当ですか!?」

「どの道こんな火事場で話が出来る訳ないだろ」


ロージアは謎の男に軽やかに従った。

かつて愛した王子を置き去りに、燃え盛る王宮に目もくれず。

…おお、目の当たりにすると本当に酷いな。


「俺の正体はこれだけど、貴女分かって私に愛を囁いているの?」


森の中、謎の男は男物の服を着た妖艶な美女に変わった。

それは、散々悪役令嬢として立ち塞がった、アレッキア・ユール。

わー…この人生で義姉さま初めて見たんですけど…いや、これ映像?私の妄想…?

しかも男装。まあすげえ美人だな…。


「…アレッキア、様」

「そうよ、男の姿の名前はアレッキオだけど」

「そんな、どうして…」

「どうもこうもないわ。私はこういうものだからでしょ。

それとも、俺が気味が悪いか?」


会話の途中でアレッキオに戻って、彼は妖艶に微笑んでいた。

その微笑みにロージアは赤くなって首を振っていた。

…分かるわ。


「いいえ、いいえ。びっくりしただけです。

その、二人とも同じ方なんですね…」

「貴女、私を憎んでいたんじゃなくって?

ショーンへ愛を囁くのに邪魔だったでしょう」

「そんな…そんなことありません。

それに今私はアレッキオ様を…」

「まあショーンのことは別にどうでもいいから良かったけれど、

他の件で少し貴方は許せないわね」


再びアレッキアに戻った彼女は、蔑んだ目をロージアに向けて来た。

何時も浴びていた筈のその視線が、何故かロージアをゾクゾクさせた。

因みにその声に私もゾクゾクもした。


……いかん、プレイヤー目線になっている。

さっきから自分の感想が煩くて入り込めない。


「そ、そんな…。どうしたら許してもらえますか」

「許されたいの?」

「はい、私に出来る事なら何でもします」

「何でも…ねえ」


アレッキオはちらっと、後ろ側にある塔を見た。

うっわ、この冷たい雰囲気の義兄さま死ぬほど萌えるな…。


「じゃあ、あの塔の天辺に登るか」

「…礼拝堂の、塔ですか?」

「足腰に自信が無いか?じゃあさよなら」

「い、行きます!!」


ひらひらした白いドレスのロージアは、森で何度か転んでいだ。

…アレッキオは全く手を貸さない。

…冷ったい!!態度冷たい!!

まあだって裏ヒーローかつバッドエンドの担い手だからなあ。

他の攻略相手だと甘々ばっかりだったこの終盤に、ツンツン加減が逆にいいなと思ったものだった…。


「はあ、はあ…」

「遅い。登るよ」


正直あんな森を抜けたら、7階建てくらいの塔を上るなんて無理じゃないか?

でもロージアは必死に登っていた…根性あるんだな…。

…ロージア…呆れるけど…これが彼女の言う自由な恋?いや愛故?

まあ何にせよ凄いな。

引き籠りの私には登れる気がしないわ。


そして二人は塔の天辺へ着いて。



背後には空を焦がすかのように燃え盛る城。

アレッキオに愛を誓うロージア。

バルコニーの手すりに腰掛けさせられ、長い口づけを…。



そうだよ、これだよ…。

このシーンが…

私の手を離れた、ロージアの選んだエンディング…!!

私は魅入られたように、顔を近付け…



ぱちり。




そこで……何か弾けるかのように、映像が途切れた。

今のは、何?

そして…その後は?



目の前に見えるのは、義兄の顔。

冷たい表情なんて微塵もない。

……義兄は私の目の前にいて、ニコニコしている。

此処にいる…のはどうして?


…私はぞくっとした。

この映像は何?

義兄の仕業?

義兄はゲーム通りにあの塔に登っていた?

そして、ロージアが傍に居た、筈だ。



義兄の背後には、開け放たれたドア。

使用人の気配はない。もしかしたら逃げたかもしれない。

茂みに誰か隠れてでも居ない限り、外に人の気配はない。

だが、不審者が居たら義兄が間違いなく消しているだろう。

幼いときとは違う。



……義兄は私の前以外ではそういう人に、なった筈だ。



今ここに居るのは義兄アレッキオと、私アローディエンヌのみ。



酷い死に方をしたのは、誰だ。



「…義兄さま、ロージアは」

「何か見えたかな?アローディエンヌ」


今見えた映像は、義兄の仕業なの?

ロージアを『魅了』したの?聞きたいことが…沢山有るけれど…。


これは、何が正解なの?

…心底体が震えが止まらない。

ロージアの恐ろしさ?

私はどうすればいいの?



「アローディエンヌの不安はなあに?」



義兄が私に微笑む。何時ものように、

蕩けた氷の目で私を見つめた。

…何時もの目だ。

何時も私に向ける目だ…。



私の不安?

……私の不安。

それは…今は…



「……もう、他に誰も居ないの?」



義兄はよく聞いてくれたとばかりに私を抱き締めた。



「そうだよ、僕だけの可愛いひと!!僕とアローディエンヌのふたりだけだ!」


ふたりだけ…。

義兄の肩越しの空はまだ燃えている…。

私は義兄に助けてもらえるの…?守ってもらえるの?


おずおずと…私は義兄の背中に手を伸ばした。

普通なら……抱き返さない。

だって義兄だもの。子供の頃とは違うんだもの。


でもこの人が居れば何も怖くない。

…恐ろしい目には、遭わない…。


何でそんな事を考えてしまったのか。

……この時正気を失っていたのは……否定できない。

次辺り一番怖い人の目線で書こうかと。

ネタバレパートが始まりますね。

結構えぐくなりそうなので、

怖いのが嫌な方はここで読了されるとご気分が宜しいかと。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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