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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない  作者: 宇和マチカ
本編

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11/212

10.傍観者の時間は終わる

『主人公』が選ぶ『エンディング』が始まります。

「…」


あっという間に窓の外の季節は変わった。

秋は終わり、今日は冬の夜会だ。

最後の冬の夜会。

……今日、王宮は燃える。


「行ってくるねえ、アローディエンヌ」

「…義兄さま、令嬢の格好は?」


分かっている。

今日の義兄は、義姉ではない。

義姉であってはいけないイベント。

だが…緊張感がまるでないな、この義兄は。


「えへへ似合うー?」


綺麗な暗いグレーのコートに葡萄色のタイ、臙脂のベスト。

暗めの組み合わせだが、義兄の赤の髪と、薄い青の目によく似合っている。

闇に良く溶けて消えそうな…あのスチルと一緒だ。


うん、最高に暗い気分だが義兄は結局の所萌えで推しだ。

これで…くるくる回ってコートを翻して

ヘラヘラ笑ってなければ更に萌えるんだがな…。

シリアスな一枚が欲しいわ。

でもこのヘラヘラ笑顔迄…眩しいわ、末期だ。


「…素敵ですわ。ええ、好みです」

「…え、本当に?」


急に口調と顔色が変わって義兄が私に詰め寄って来た。

顔近いな。どうしたんだ?

…そんな悲壮な顔で言われるようなことを言った?

真剣な顔して口調変わるとゲームのアレッキオそのまんまで

萌えるからやめてほしいわ。

ちょっとときめくから。

…いや、まあ正真正銘本人なんだけど。


「何がですの」

「さっきのだよ、だって、アローディエンヌが僕を褒めるなんて…」

「人の事を何だとお思いで。

私はいつも義兄さまと誠実に向き合っているでしょう」


塩対応だけど…それは本当だ。

子供の時から面倒だったけど、義兄に対しては結構誠実にやってきたつもりだよ。

何にも無い私は、それ位しか取り柄は無いのだから。


「あー、うん、そうだよね。えへへ」

「何ですの…いい加減に義妹離れなさいませ」

「僕は義妹じゃなくて、アローディエンヌが好きなんだよ?」

「一緒でしょうが…」


何故デレデレに照れるの…。

救いがたいシスコンめ…。

これだから裏ヒーロー扱いされないんだよ、私に。


あー、ゲームやってる時は全く分からなかったわ。

これが裏側って奴なんだな…。

…私がこれからどうなるかは分からないけど…冥途の土産に良いもの見たわ。


馬の嘶きと、馬車の音がかすかに聞こえてきた。

義兄を送る用意が出来たのだろう。そろそろ使用人が呼びに来る。


多分ここでお別れだろう。

私は義兄さまの姿を目に焼き付けんと、見詰めた。


「義兄さま」

「なあにー?」


締まりのない顔。

私は、アローディエンヌとして生まれて、

義姉…今は義兄の彼に会って、殆どこういう顔しか見ていない。

…悪役令嬢っぷりを全く見た事がない。


だから、ゲームで散々辛酸を舐めさせられたアレッキア・ユール悪役令嬢は、実際にこの目で見た人じゃない。

だから、アレッキア・ユール…アレッキオ・ユールは

目の前の、この義兄しか知らない。

この甘ったれで、

だらしなくて

多分中身は極悪非道で容赦ないんだろうけど…。

私の前では駄目な義兄が。



「好きよ、義兄さま」



つい、口から零れてしまった。


言ったとたん、義兄の薄青の目が、零れそうなくらい大きく見開いている。

ああ、ちょっと後悔。

塩対応ばかりでなく、もっと優しくすれば良かったかな。


「あんな子に構うより、義兄さまともっと過ごしておけば良かったと後悔しているわ」


…上手く笑えただろうか。

可憐に微笑む立ち絵が無い私。

無理に笑おうとすると口の端がピクピクするのは知らなかった。


サポートキャラの立ち絵は、そんなに用意されていない。

だから基本私は無表情なのだろうか。

いや、本来は…前世はもっとキャアキャア笑って泣いたりしてた…筈なのにな。

…もしかして、死ぬ前には、表情は戻るのだろうか。


「…しゅ…直ぐに、帰るから」


義兄はまっすぐにこっちを見て、そう言った。

しまらないな。

噛んで真っ赤になっているけど…この歳になってもまだ義兄は噛むのか。

…まあ、そんなに私がデレたのが珍しいのかねえ。

…ちょっと照れるな。


それにしても、いつも通り締まりのない顔だわ…。

これが今生の別れの顔なのか…。

私と義兄らしいけど。




馬車は時間通り出発した。

私は外に出て、窓から身を乗り出して手を振る義兄を見送る。

長いな…落ちないか?

まあ、滅多に見送ったりしないもんな…最近は。

義兄が見えなくなって、私は木枯らしに身を竦めた。



冷たい風が身を冷やす、普通の冬の日。

今から起こることは分かっている。

でも止めることは出来ない。私は表舞台に立てないのだ。

私には何も動かせない。


王宮は燃えて、王子は死に、他の攻略対象は行方不明。

義兄はロージアと塔に上り、二人は闇へと消える。


主人公が選んだのは、一番悲惨なバッドエンド。

私の立場では、見に行くこともできないけれど。

サポートキャラとして…いいや、傍観者の時間は終わる。


その後は?

…スタッフロールのその後の、黒い画面の…その後は?


主人公、ロージア・ハイトドローの運命も。

自分自身、アローディエンヌ・ユールの未来も。

私の知識は潰えてしまった。

語ることも出来ない。


私に見えるのは、暗い暗い王宮に通じる道だけだった。













と…シリアスに馬車を見送って、バッドエンドは始まったらしい。

……この通り、見に行けないから知りようが無いのよね…。

冬の夜空が赤らむほどの火事は、少し離れた我が家からも良く見えた。


おおおおお危ねえなあ…。リアル大火事じゃん…。マジか…。

…どう見てもやべえな、あの燃え方…。

消防車とか無いのにこの世界…いや、魔法か?魔法の力で何とかなるのか?


うーん、アレ消せそうな…水のすんごい使い手居たかなあ。

主人公が勉強チート極めたら、ちょっとした虹ぐらいは出せたけど…。

魔法使い?…うーん、あの人…風属性だったな。余計燃えちゃうわ。

と言うかバッドエンドだから生死不明じゃん!!

やっぱり私の知らない有能な大人が何とかしてくれるのだろうか…。


そんな期待を込めて空を眺めてみるが…

赤々と燃える空は…火が消えてそうな気配がゼロ…。

居ないのかよ!!

そんな気がしてた!!


…どうしよう、ウチに飛び火とかしないよな…。

避難どうしようかな。一人で逃げるのも怖い…。


前世なんて関係ねえ!今の私を生きるぜ!!

なーんてある意味ロージアのお陰で思うようになったけど、日本人的な『何か起こっても集団で逃げたい心理』がしっかり根付いていた…。

あ、忘れてたけど義両親も夜会に行ってるんだけど、どうなってんのかな。

絶対帰ってきても頼れない。

寧ろ帰ってきたら一人で逃げようか…。同行するの嫌だし。

あんまり会わないから顔忘れかけてきたわ…。


やきもきすること、3時間くらい。

私、優柔不断にも程がある…。

所詮頭の中で騒いでいようと…小市民!!

…ダメだ、本当にダメだ…!!

引き籠りで先延ばしは本当に駄目だ!!

…何十回そう考えて、避難しようかどうしようか、悩みに悩んで玄関をうろうろする私の耳に、信じられない人物の声が聞こえた。



「ただいまあー、アローディエンヌぅ」



……何でやねん。

何でバッドエンドの裏ヒーローが帰って来とるんだ。

しかもなんか、ちょっと服が焦げてる…?



何故ここに居るの、義兄さまあ!?

……実は頼れる人が帰って来てくれて、

ちょっーーーと嬉しいけどさ!?

シリアス書くの難しいですよ…。1000字位で終わってしまう。



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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。とてもネタバレ気味です。
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