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第87話 北へ

 アレンとフィアナが光の向こうへ消えてから、一晩が過ぎた。


 王城の会議室には北方まで含めた地図が広げられ、その周囲を八人が囲んでいた。王国側の地図は国境を越えたあたりから急に情報が粗くなり、山脈と河川、主要な道らしい線のほかは空白が目立つ。


「ヴァレク。昨日から何度も聞いてるが、本当にこれ以上は絞れねえのか」


 向かいに座るガルドに呼ばれ、俺は地図から顔を上げた。


「何度聞かれても同じだ。表示が北方を示していたことまでは分かる。それだけで場所を当てられるほど、北は狭くない」


「分かっちゃいるんだがな」


 ガルドは苛立ちを隠そうともせず、太い指で国境の北側を叩いた。


 その隣ではセレナが、地下で書き取った表示と古い記録を並べている。


「『NORTHERN RELAY』。アレンの読解をそのまま受け取れば、北方に関係する中継先という意味になる。ただし、施設名を示しているとは限らないし、同じ役割を持つ場所が複数ある可能性もあるわ」


「北にある古代施設って、そんなに多いの?」


 ミラが尋ねる。


 まだ身体は完全に戻っていないらしく、弓は持っていない。それでも地図を見る目は、普段と変わらず細かな道筋まで追っていた。


「盟主側で把握している場所なら、ある程度は分かる。だが全てではない」


「氏族だけで管理してるところもある?」


「ああ。それに、盟主が再封鎖を求めても従っていない氏族があることは、お前たちにも話した通りだ」


 ユリウスが椅子へ身体を預けたまま、国境の先を見つめる。


「その中から二人が出てきそうな場所を探すって、結構な話だね」


「だから闇雲に回るわけにはいかん」


「でも、施設から外に出てるなら、人から探せるかも」


 ミラが地図の街道へ指を置いた。


「黒髪の若い男と銀髪の女が二人で歩いてたら、この辺じゃ目立つんでしょ?」


「場所によるが、目立つだろうな」


「なら、交易商とか宿とか、荷を運んでる人にも聞いた方がいい。施設の場所を直接聞くより警戒されにくいし」


「その方が現実的だな」


 アルノルトが静かに頷いた。


「まずは情報を得られる地点まで行く必要がある。ヴァレク、国境を越えてから盟主側と接触できる場所は?」


 アルノルトは国境の先へ視線を移した。


 重傷から回復途中の身体で遠征に出られる状態ではないが、地図を見る目は落ち着いていて、話を聞きながら必要な情報を一つずつ整理しているようだった。


「いくつかある。だが、どこもここから直接連絡できる距離じゃない」


「早馬を出して返事を待つ、では間に合わないか」


「往復させるくらいなら、その間に俺たちが北へ入った方が早い」


 それでも、盟主側に何も知らせず動くわけにはいかない。


 こちらから武装した人間を何人も連れて北方へ戻れば、理由を知らない氏族から見れば王国側の侵入と区別がつかない。


「じゃあ四人くらいで行けばいいだろ」


 ガルドが言った。


「俺とセレナとオスカー、それにヴァレク。大軍じゃねえ」


「白金級二人と黒鋼級一人を連れた北方盟主の使徒だぞ」


 窓際に立っていたオスカーが笑う。


「数だけ見れば四人だが、向こうが素直に捜索隊だと思うかは別の話だ」


「戦いに行くわけじゃねえよ」


「お前がそう思っていても、相手が知らなきゃ意味がないってことだ」


 ガルドは何か言い返そうとして、結局口を閉じた。


 俺から見てもオスカーの言う通りだった。


 王国と北方は三十一年間、大きな戦争をしていないだけで、正式に和平を結んだわけではない。国境近くでは小競り合いも残っている。


「だから王国側の書面は必要ね」


 セレナが言う。


「捜索目的だと証明できるものと、盟主側との協議に関わる人員だと分かるもの。北方に入ってから効くかは別としても、王国領内での移動には必要でしょう?」


「そうだな」


 アルノルトが頷いた。


「それと補給だ。四人だから身軽に動けるとはいえ、北方へ入って何日で戻るか分からん。国境までの馬、食料、防寒具、野営具、治療用品は最低限揃える必要がある」


「準備してる間にも二人は動くかもしれないだろ」


 ガルドの声に苛立ちが戻る。


 すると、それまで黙っていたクラウディアが地図から顔を上げた。


「アレン、また自分でどうにかしようとしてないかな」


 ガルドがそちらを見る。


「フィアナが一緒なら、一人じゃねぇだろ」


 クラウディアは少し首を傾げた。


「でもあの子、困った時ほど自分で何とかしようとするところあるから」


「……あるな」


 ガルドが苦笑する。


「ちゃんとご飯食べてるかな」


「そこですか?」


 ユリウスが思わず聞き返した。


「大事でしょ」


「いや、大事ですけど」


「フィアナが一緒なら、その辺は大丈夫だと思いますよ」


 ミラが言うと、クラウディアは少し考えてから頷いた。


「そっか。それなら大丈夫かな」


「居場所はまだ分かってませんけどね」


「そうだった」


 あまりに素直に返すので、ユリウスが小さく笑った。


 張り詰めていた空気がわずかに緩む。


「クラウディア、お前は行くなよ」


 ガルドが言った。


「まだ行くって言ってないけど」


「顔に書いてある」


「行けるなら行きたいよ」


「今のお前も、俺も無理だ」


 アルノルトが先に答えた。


「長距離を移動して戦闘になれば、守られる側になる。それでは人数を絞る意味がない」


 クラウディアは自分の身体へ一度目を落としたあと、反論せずにセレナを見た。


「……見つけたら、早めに知らせてね」


「ええ」


「二人とも」


「もちろん」


 今度はミラが口を開く。


「私も、やっぱり無理?」


「今の状態で何日も馬に乗ったあと、強弓を使えるか?」


 アルノルトに聞かれ、ミラは少し唇を尖らせた。


「無理」


「なら残れ。ここで情報をまとめてくれた方が役に立つ」


「分かってるけど」


「俺も同じですよね」


 ユリウスが脇腹を軽く押さえながら聞く。


「分かっているなら聞くな」


「もしかしたら俺だけ奇跡的に許されるかなって」


「ない」


「ですよね」


 口調こそ普段に近いが、二人とも地図から目を離そうとはしなかった。


 扉が開いたのは、その時だった。


 マティアスが二人の近衛を伴って入ってくる。手には王家の封蝋が押された書簡を持っていた。


「ヴァレク。陛下から預かったものだ」


 俺は立ち上がり、差し出された書簡を受け取る。


 王国が盟主との正式な協議に応じること。


 和平の条件を今後詰め、古代施設についても互いの情報を交換していく意思があること。


 そして、北方へ移された可能性のあるアレンとフィアナについて、盟主側にも捜索への協力を求めること。


 陛下から聞いていた返答が、正式な書面になったものだった。


「思ったより早かったな」


「二人の件もある。今は形式だけに時間を使っている場合ではない」


 マティアスは机上の地図へ視線を移した。


「本来なら、その書簡は君自身が盟主へ届ける予定だった」


「ああ」


「だが、捜索に同行するなら、必ずしも盟主の本拠へ直行するわけではないんだろう?」


「場所が分からない以上な。北へ入ったら、まず情報を集めることになる」


 施設を抱える氏族、最近異常が報告された地域、街道や交易路での目撃情報。


 そこから候補が見つかれば、盟主のいる場所とは別方向へ向かうこともある。


 俺は手元の書簡を見る。


「だから、一つ頼みがある」


「聞こう」


「これを俺より先に北へ送りたい」


 ガルドが眉を上げる。


「誰に持たせる?」


「王都に仲間を一人残してある」


「……初耳だぞ」


「話していないからな」


「お前な」


 ガルドが額へ手を当て、オスカーが面白そうに笑った。


 マティアスは表情を変えない。


「いつからいる?」


「俺と一緒に王都へ来た。王城へ入ったのは俺だけだが、戻れなくなった時に北へ情報を運べるよう残していた」


「王城へ出頭する前からか」


「ああ。敵地へ使者として入るんだ。何も備えないほど楽観的じゃない」


「今まで黙っていた理由は?」


「お前たちが俺をどう扱うか分からなかったからだ」


 修道院で俺がしたことを考えれば、王国側に拘束されるだけならまだいい。処刑される可能性まで捨ててはいなかった。


「だが、もう隠す理由はない」


 書簡を持ち上げる。


「そいつを先に帰す。王国が協議に応じることと、アレンたちの捜索協力を求めていることを盟主へ届けさせる。俺たちが準備している間にも、向こうで情報を集め始められる」


「私たちが着いてから知らせるより早いわね」


 セレナが頷く。


「その人は盟主のところまで一人で行けるの?」


 ミラが尋ねた。


「途中までなら知っている道を使える。盟主本人のところへ直行できなくても、盟主側の連絡役に渡せればいい。そこから先は北方の経路で運べる」


「返事は待たないんだな」


 アルノルトの問いに頷く。


「待つつもりはない。俺たちは準備が整い次第出る」


「それがいい」


 アルノルトは国境近くへ指を置いた。


「使者の往復を待っている間にも状況は変わる。情報だけ先行させて、捜索隊は別に動くべきだ」


 マティアスもしばらく考えたあと、俺の手元の書簡を見る。


「分かった。その者の身元と所在は確認させてもらうが、問題がなければ国境までの通行文書も用意する。今日中に動かせるか?」


「できる」


「なら手配しよう」


 ガルドが待っていたように机へ身を乗り出した。


「で、俺たちはいつ出る?」


「早くても数日後だ」


 マティアスの答えに、ガルドの眉が寄る。


「今日明日じゃねぇのか?」


「北方へ遠足に行くわけじゃない」


 アルノルトが呆れたように言う。


「馬に食料、防寒具、野営具、治療用品。国境を越える文書と、その先でどう補給するかも決める必要がある。四人だから準備がいらないわけではない」


「分かってるけどよ」


 クラウディアがガルドを見る。


「夜に一人で出たりしない?」


「しねえよ」


「ほんとに?」


「何でお前まで疑うんだ」


「ガルドなら、ちょっとやりそうだから」


 冗談を言っている様子でもなく、本気で心配しているらしい。


「俺も少し思った」


 ユリウスが言う。


「お前は黙ってろ」


 また部屋に小さな笑いが起きた。


 待つしかない連中にとっても、そのくらいの余裕は必要なのかもしれなかった。


     ◇


 その日の午後、俺は近衛二人と王都の一角へ向かった。


 災害の被害が比較的少なかった場所でも、復旧の音は絶えない。瓦礫を積んだ荷車が通りを塞ぎ、屋根へ上った職人たちが壊れた板を交換している。


 仲間を残していたのは、旅人向けの小さな宿だった。


 部屋へ入ると、事前に連絡を入れていたこともあり、荷物はすでにまとめられている。


「先に北へ戻れ」


 そう告げると、男は近衛へ一度だけ目をやり、すぐ俺へ戻した。


「盟主のところまで?」


「まずは盟主側の人間へ繋げ。可能なら本人まで届けろ」


 王城から預かった書簡を差し出す。


「王国からの正式な返答だ。協議に応じる意思がある。ただし、和平が成立したわけじゃない。そこは間違えるな」


「分かった」


「それと、もう一つある」


 王都地下で何が起きたのかを、必要な範囲で説明した。


 施設に北方を示す表示が現れたこと。


 アレンとフィアナが光に包まれ、その場から消えたこと。


 二人が北方のどこかへ移された可能性があること。


 王国側も少人数で捜索へ向かう準備を始めていること。


「盟主にも、施設を抱える氏族から情報を集めてもらいたい。最近になって異常が出た場所があれば優先して確認してくれ」


「封鎖に従ってない氏族も?」


「当然だ。ただし、古代施設が王都と繋がったという話は途中で広めるな」


 男は表情を引き締めて頷いた。


 今の北方で施設の再稼働という情報は、それだけで人を動かす。


 危険だから閉じるべきだと考える者ばかりではない。


「二人は無事だと思うか?」


 問いに、少し考える。


「死んだと判断する材料はない」


「そうか」


「だから探す」


 それ以上の答えはなかった。


 男は書簡を懐へ収め、荷を背負う。


「途中の連絡所が使えれば、書簡より先に要点を送る」


「頼む。急いではほしいが、馬を潰すな。途中で止まれば意味がない」


「ヴァレクは?」


「準備が終わり次第、追う」


 男は頷き、近衛と通行手続きについて話すため部屋を出ていった。


 俺が王都へ運んできた盟主の言葉が、ようやく王国の返答を伴って北へ戻り始める。


 同時に、二人を探すための情報も動き出した。


     ◇


 翌日からは、北へ向かう準備にほとんどの時間を使った。


 同行するのは俺、ガルド、セレナ、オスカーの四人。


 人数を増やせば戦力は上がるが、その分だけ補給が重くなり、北方側へ与える印象も悪くなる。何より、これは軍事行動ではない。


 王城からは国境までの馬と通行文書が用意され、食料や水、防寒具、野営道具、治療用品も必要な分だけ揃えられた。


 北方へ入った後は現地調達も使う。


「全部持っていけば安心ってわけでもないからな」


 荷の一覧を見ながらアルノルトが言った。


「重くなれば移動が遅れる。馬を休ませる場所と、補給できる集落はヴァレクと確認しておけ」


「ああ」


「それから無理に一日の距離を伸ばすな。最初に馬を潰したら余計に時間を食う」


「それ、ガルドにも言ってくれ」


「もう二度言った」


「俺はちゃんと聞いてるぞ」


 少し離れた場所からガルドが返す。


「なら三度目はいらんな」


「信用されてねえな」


 その横では、ミラが北へ入った後に情報を拾えそうな場所を書き出していた。


「宿、交易所、荷運びの人、狩猟者。あとは国境近くなら密貿易してる人も情報は早いかも」


「そういう連中は王国の人間を嫌がるぞ」


「ヴァレクが聞けばいいでしょ」


「便利に使うな」


「そのために一緒に行くんじゃないの?」


 間違ってはいないので、言い返せなかった。


 ユリウスはセレナが持っていく資料を選ぶのを手伝っていたが、紙束が一向に減らないことに気づいたらしい。


「セレナ、それ本当に全部いる?」


「必要なものしか残してないわ」


「その台詞、さっきも聞いたけど」


「北方の記録と照合する可能性があるでしょう」


「馬一頭、資料用に増やした方が早くない?」


「そこまでじゃない」


 オスカーが横から鞄を持ち上げる。


「十分重いぞ」


「返して」


 取り返したセレナを見て、ミラが笑った。


 俺がこの連中と王都を出ることになるとは、セレスで剣を交えた頃には考えもしなかった。


 もっとも、向こうも同じだろう。


 三日目の午後には必要な装備がほぼ揃い、王城からも翌朝の出発許可が下りた。


 先に出した仲間から返事が戻ってくるには早すぎる。


 今頃どこを走っているのか、俺にも分からない。


 それでも予定通り出ることになった。


     ◇


 日が落ちる前、最後の確認を終えて廊下へ出ると、クラウディアが壁際で待っていた。


「ヴァレク」


「どうした」


「お願いがあるんだけど」


「言ってみろ」


 少し考えてから、彼女は真面目な顔で言った。


「アレンを見つけたら、無茶しないように止めてね」


「それは俺には難しい」


「そんなに?」


「あいつが俺の言うことを素直に聞くと思うか?」


 クラウディアはしばらく考えた。


「……聞かなさそう」


「だろう」


「じゃあフィアナに言って」


「見つける前提なんだな」


 聞くと、今度は不思議そうに首を傾げた。


「見つけるんでしょ?」


 迷いのない言葉だった。


「そのつもりだ」


「なら大丈夫」


「何が大丈夫なんだ」


「ちゃんと帰ってくるなら」


 よく分からない理屈だったが、この女が二人の無事を疑って待つより、帰ってくる前提で心配する方を選んでいることだけは分かった。


 そこへミラとユリウスも歩いてくる。


「明日出るんだよね」


「ああ」


「二人を見つけたら」


 ミラは一度言葉を止めた。


「……元気なら、それでいいから」


「伝える」


「俺からもあるよ」


 ユリウスが手を上げる。


「勝手に消えるなら、せめてもう少し探しやすい場所にしてくれって」


「それも言うのか?」


「無事だったらね」


 笑ってはいたが、目は笑っていなかった。


「分かった」


 俺が答えると、三人ともそれ以上は引き止めなかった。


     ◇


 翌朝、まだ空が青くなる前にレーヴェンハルトの北門へ向かった。


 王都は完全に眠っているわけではない。復旧作業へ向かう荷車が石畳を鳴らし、城壁の近くでは交代する兵士たちの声が聞こえていた。


 門の前にはすでにガルドとオスカーがいる。


 セレナも馬の横で荷を確認していた。


「遅いぞ」


 ガルドに言われ、俺は空を見た。


「時間通りだ」


「俺たちが早かっただけだな」


 オスカーが笑う。


 馬へ近づいたところで、セレナの鞍に括られた鞄が目に入った。


「昨日より膨らんでないか」


「気のせいよ」


「紙を増やしたな」


「必要な分だけ」


 オスカーが横から鞄を軽く持ち上げた。


「こりゃ必要な分って重さじゃねえな」


「返して」


 セレナが鞄を取り戻したところで、後ろから複数の足音が近づいてきた。


 ミラとユリウス、クラウディア、アルノルトだった。


「見送りまで来たのか」


 ガルドが言う。


「来ちゃ駄目だった?」


 クラウディアが首を傾げる。


「いや、そういう意味じゃねえよ」


「ならよかった」


 アルノルトはその横を通り、ガルドの馬の荷を一度見た。


「馬を潰すなよ」


「またそれか」


「聞いているか確認しただけだ」


「三回目だぞ」


「覚えているなら問題ない」


 ミラはセレナへ折り畳んだ紙を渡した。


「昨日まとめたやつ。途中で聞けそうな場所」


「ありがとう」


「何か分かったら、できるだけ早く知らせて」


「ええ」


 ユリウスはガルドとオスカーを見比べる。


「ガルドが先走ったらお願いします」


「任せろ」


 オスカーが即答した。


「何で俺だけなんだよ」


「だって一番ありそうだし」


「お前らな……」


 最後にクラウディアが俺たち四人を順に見た。


「二人とも連れて帰ってきてね」


「当たり前だ」


 ガルドが答える。


「フィアナもだからね」


「分かってる」


「アレンだけ見つけて満足しないで」


「するわけねえだろ」


「なら大丈夫」


 ようやくクラウディアが笑った。


 門兵から出発の合図が届き、ゆっくりと北門が開いていく。


 その向こうには、朝靄の残る街道が伸びていた。


 盟主への返答は、すでに俺たちより先を進んでいる。


 こちらもこれ以上待つ理由はない。


「行くぞ」


 俺が馬を進めると、ガルドたちが続いた。


 レーヴェンハルトの城壁が背後へ遠ざかり、街道はそのまま北へ伸びていく。


 国境の先は、俺にとって知らない土地ではない。


 それでも今は、そのどこに二人がいるのかさえ分からなかった。


 だからまず、探すところから始めるしかない。

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