第76話 百八十年前
ヴァレクは近衛に挟まれたまま、会議室の中央で足を止めた。
両手は前で拘束され、腰にあった細身の剣もない。王都南東で俺を助けた時と同じ黒い旅装には、戦いの跡を繕った箇所がいくつか残っていた。
暗い赤の目が室内を一度見渡し、俺とフィアナのところで僅かに止まってから、上座のレオポルトへ向く。
「ヴァレク・ノルガ。北方盟主に仕える五人の使徒の一人だ。盟主の言葉を届けに来た」
王を前にしても口調は変わらなかった。
ディートリヒの眉が僅かに動いたが、レオポルトはそこには触れず、先に確認を済ませる。
「身体の確認は」
「済んでおります。武器は正門で預かり、ほかに危険な物も所持しておりません。拘束はそのままとしております」
「分かった」
レオポルトはヴァレクへ視線を戻した。
「盟主の言葉を聞く前に、こちらから確かめたいことがある。セレスで、お前はフィアナ殿を連れていこうとした。その直前、アレン殿にも施設が反応したことで、二人が揃っていることを警戒していたな」
「ああ」
「なぜだ」
ヴァレクの視線が俺からフィアナへ移った。
「百八十年前にも、二人いたからだ」
マティアスの筆が止まった。
「二人?」
「聖女エレノアと、もう一人だ」
セレスの地下で見た表示が頭に浮かぶ。エレノアの名と、その横にあった壊れて読めなかったもう一つの表示だ。
マティアスが机上の資料を一度確認してから尋ねた。
「そのもう一人にも、施設が反応したのですか」
「ああ。ただ、エレノアと同じ反応ではなかったと記録されている」
「それが、フィアナ殿とアレン殿に起きたことと似ている?」
「北方ではそう見ている。まったく同じかは分からない」
セレナが聞いた。
「その二人がいた頃に、施設の異常も起きていたの?」
「ああ。百八十年ほど前、人間の国々と北方の各地で、長く止まっていた古い施設が次々に動き始めたという記録がある」
「同時に?」
「同じ日じゃない。場所によって時期はずれている。ただ、数年の間に各地で続けて起きた」
「王都も?」
「ああ。ここも含まれている」
マティアスが紙を一枚抜き出した。
「年代は合います。こちらの記録でも、その時期に地下区画の閉鎖や埋め戻し、水路の変更、大規模な道路工事が集中しています。ただ、古代施設が各地で動いたという形では残っていません」
「やっぱりおかしいわね」
セレナが紙面へ視線を落とした。
「百八十年前でしょう。古代と言うには近すぎる。王都だけじゃなく、大陸の各地で同じ時期にそんな規模のことが起きたなら、ここまで抜け落ちるもの?」
セレスから戻る途中にも、セレナは同じ時代の史料について話していた。原本が途絶えて後世の写本へ切り替わったものや、調査に関わった人物の記録が途中から薄くなる例が、離れた地域の資料にもある。
「北でも、そこは疑われている」
ヴァレクが答えた。
「人間側では大きな戦いが数年で収まったらしい。施設を閉じたあと、それを知っていた者が死んだり、軍、神殿、領主、町、それぞれに分かれていた記録が継がれなくなった場所もあるだろう、と」
「北方側の推測ですね」
マティアスが確認する。
「ああ。人間側の記録が消えた理由まで確かめたわけじゃない」
「意図して残さなかった可能性は?」
セレナが続けた。
「ある。危険な場所の位置や、開け方まで後に残すべきじゃないと考えた者もいただろう。ただ、それがどの程度だったかまでは知らない」
「誰かがまとめて消したと考えているわけではないのね」
「そこまでは分かっていない」
マティアスは答えを書き留めてから口を開いた。
「こちらでも、組織的な抹消を示す証拠は確認できていません。散逸した資料もあれば、保存先が変わったものや、後世に一部だけ写されたものもあります。意図的な秘匿が含まれていたとしても、それだけですべてを説明するのは難しいでしょう」
「北方では失われなかったの?」
フィアナが尋ねた。
「失われたものはある。ただ、人間側よりは残った」
「どうして?」
「忘れられなかったからだ」
ヴァレクは机上の北方地図へ目を向けた。
「人間側の大きな戦いが収まり始めたあとも、北では施設から出たものとの戦闘と封鎖が続いた。どこを閉じたか、何がいたか、何をすると動き出すか。残さなければ、同じ場所でまた死ぬ」
「それが何十年も?」
「場所によって違うが、主要な施設を閉じるまで数十年かかった」
フィアナが目を瞬いた。
「……数十年?」
「ああ。閉じた場所を監視しながら別の場所を調べ、出てきたものを倒し、また閉じる。その繰り返しだったらしい」
王都の地下が開いてから、まだ十日ほどしか経っていない。それでも街には瓦礫が残り、負傷者の治療も、死者や行方不明者の確認も続いている。数十年という長さは、うまく実感できなかった。
「当時、何が出た」
ヴォルフラムが尋ねた。
「場所によって違う。黒い獣に似たものもいた。王都に出た大型の人型に近いものも記録されているがそれ以外もいたことが記録されている。地下に残されていた魔物が一緒に出た場所もある」
「今回と同じとは限らない?」
「違う。開いた区画も、出てきたものも同じじゃない。北方の記録でも、すべての施設が同じ構造だとはされていない」
レオポルトがヴァレクを見る。
「エレノアたちが、その異常を起こしたと北方では考えているのか」
「そこまでは言っていない」
ヴァレクはすぐに否定した。
「二人が施設へ近づく前から、不安定だった場所もある。ただ、二人が各地の施設に関わっていた時期と、動きが広がった時期が重なっている記録はある」
「原因だとは言えないけど、無関係とも言えないということね」
「ああ」
セレナの確認にヴァレクが頷く。
フィアナが少し考えてから尋ねた。
「エレノアに起きた反応が私と似ていたから、セレスで私を警戒したの?」
「そうだ。完全に同じものだとは確認できていないが、聖女に施設が反応したという点は一致している」
「じゃあ、もう一人は?」
セレナが続けた。
「その人には、どんな反応が出たの?」
「そこまでは詳しく知らない。ただ、エレノアとは別だった。北方の記録では、聖女の同行者や、古い文字を読む人間と書かれていることが多い」
俺はヴァレクを見る。
「古い文字を読めた?」
「ああ」
「古代施設の文字を?」
今度はセレナが聞いた。
「そうだ」
「どうして読めたの?」
ヴァレクは僅かに目を伏せた。
「本人が残したとされる記録には、自分が生まれるより前に、別の場所で生きた記憶があると書かれている」
何を言われたのかは、すぐに分かった。
膝の上で組んでいた指に力が入る。
「……生まれる前?」
セレナが聞き返した。
マティアスの筆も止まっている。クラウディアはヴァレクの言葉を確かめるように眉を寄せた。
「どういう意味だ」
ヴォルフラムが尋ねる。
「俺にも分からない。記録にはそうある」
「それだけ?」
「今とは別の場所で一度生きた記憶があり、そこで使っていた文字と、古い施設に残る文字が同じだった」
セレナがしばらく黙った。
「本人が書いたものなの?」
「本人の記録として伝わっている。俺が見たのは、その内容をまとめたものだ。原本がどこにあるかまでは知らない」
「後の人が、そういう意味だと解釈した可能性は?」
「あるかもしれない。そこは俺には分からない」
セレナの目が俺へ向いた。
古代文字を読めることは彼女も知っている。何も言わずにいると、隣からも視線を感じた。
フィアナだった。
彼女だけは、俺がもう一つの人生の記憶を持っていることも、そこで使っていた文字と古代施設の文字が同じことも知っている。
ヴァレクが話している人間は、その二つまで俺と同じだった。
「その人間にも施設は反応したのだな」
レオポルトが確認した。
「ああ。エレノアとは違う反応だったと記録されている」
レオポルトは俺を一度見たが、何も聞かずにヴァレクへ視線を戻した。
「二人は、その後どうなった」
「エレノアは亡くなった」
フィアナの表情が僅かに固くなる。
「どうして?」
「分からない。俺が知っている記録には、死因まで残っていない」
「同行していた人は?」
今度は俺が聞いた。
「エレノアが死んだあと、北方へ来た」
「北へ?」
「ああ。北方でも同じような異常が続いていると知ったらしい」
ヴォルフラムが腕を組み直した。
「当時も人間側と北方は敵対していたはずだ」
「していた」
「それでも残れたのか」
「最初から受け入れられたわけじゃないらしい。だが、残った」
ヴァレクはそこで一度言葉を切った。
「古い文字を読み、危険な場所を調べ、閉じる方法を探した。北方の主要な施設が封じられるまで、何十年も関わっていた記録がある」
「その後は?」
セレナが聞く。
「知らない」
「記録がないの?」
「俺が知らないだけかもしれない。主要な封鎖に長く関わっていたところまでは教えられているが、その先までは聞いていない」
「北方へ行けば、もっと記録がある?」
「あるだろう。ただ、何が残っているかまでは俺も知らない。俺は歴史を調べる役じゃない」
その人間がどこから来たのか、なぜ古代文字を知っていたのか、エレノアとどう出会ったのか。聞きたいことは増えたが、ヴァレクに答えがないなら、ここで続けても仕方がない。
代わりに、セレスでずっと引っかかっていたことを聞いた。
「だから、フィアナを連れていこうとしたのか」
「ああ」
ヴァレクは俺を見る。
「聖女が現れ、古い施設が反応した。そこへ、お前にも別の反応が出た。百八十年前と似すぎていた」
「だったら、あの時そう話してくれればよかったじゃない」
フィアナが静かに言った。
「話せば北方へ来たか?」
フィアナはすぐには答えなかった。
「……行かなかったと思う」
「なら、俺はあの場で施設から離すことを優先した」
「そういうことじゃないよ。事情を知らないまま急に連れていかれそうになるのと、話を聞いた上で断るのは同じじゃない」
ヴァレクはフィアナをしばらく見てから頷いた。
「ああ。それは分かっている」
「今は?」
「盟主の言葉を届けに来た。お前を連れていくためじゃない」
フィアナはそれ以上言わなかった。
レオポルトも二人のやり取りを止めず、区切れたところで口を開いた。
「では、今の北方で何が起きている。百八十年前に封じた施設が、また開かれようとしているのか」
「それだけじゃない」
ヴァレクは北方地図へ目を向けた。
「自分たちで封鎖を解き、中に残っているものを使おうとしている氏族がいる」
オスカーが顔をしかめた。
「何十年もかけて閉じたもんを、また開けるってのか?」
「そうだ」
「懲りねえな」
オスカーはそれだけ言って、椅子へ背を預けた。
「何のために」
ヴォルフラムが尋ねる。
「北方で力を得るためだ。黒い獣や大型の人型、それ以外にも施設に残っているものがある。動かし方を掴めば、他の氏族より大きな戦力を持てると考えている」
クラウディアが眉を寄せた。
「王都であれだけ勝手に動いてたものを?」
「百八十年前は扱い方を知らなかっただけだ、と考えている連中もいる」
「今なら自分たちに扱えるって?」
「ああ」
「ずいぶん自信があるね」
「俺もそう思う」
クラウディアはそれ以上続けなかった。
「盟主は反対しているのだな」
レオポルトが確認する。
「ああ」
「理由は?」
「施設から出るものは、ただ命令された通りに動くだけじゃない。周囲を見て動きを変える。別の獣を集め、相手に合わせてやり方を変える。王都でも見ただろう」
統制体の動きが頭に浮かんだ。
知っていた攻撃を外し、別の手を使った個体。黒い獣を集め、狙う相手まで変えた。
「使っているつもりで、逆に利用されるかもしれないってこと?」
フィアナが聞く。
「盟主はそう見ている」
ヴォルフラムが北方地図へ置かれた札を見る。
「では、我々が確認している北方内部の衝突は、施設利用を巡る争いか」
「ああ。盟主側が封鎖を守ろうとしている地域と、開こうとしている氏族がぶつかっている」
「すべてではない?」
「違う。昔からの氏族間の争いもある。人間側との国境へ兵を回そうとしている者もいる」
「南下を考えている勢力は実在するのだな」
「ああ。施設に残る戦力を使って北方で力を持ち、そのまま人間側へ攻め込もうとしている者もいる」
ヴォルフラムはしばらく地図を見ていた。
北方で兵が動いていること自体は間違っていなかった。ただ、それが一つの命令で南へ向かっているわけではないらしい。
レオポルトがヴァレクへ視線を戻した。
「一つ確認しておこう。お前の言う盟主は、我々が魔王と呼んでいる者で間違いないな」
「同じ地位だ」
「北では、そう呼ばない?」
「ああ。盟主だ」
セレナが口を挟む。
「人間側の史料でも、魔族という言葉は一つの種族を指しているようには見えなかった。北方のいくつもの集団をまとめて、こちらがそう呼んでいると考えていたんだけど」
「大体合っている」
「大体?」
「北方にいるのは一つの種族じゃない。俺のような者もいれば、見た目だけなら南の人間とほとんど変わらない者もいる」
「それぞれ別の種族ということですか」
マティアスが尋ねた。
「別の種族として暮らしている者もいる。ただ、何代も混ざっている家もある。そもそも北方には人間もいる」
マティアスが顔を上げた。
「人間が?」
「ああ。少ないがな。南から移った家もあるし、昔から北で暮らしていると言う家もある。ほかの種族との間に子が生まれることも珍しくない」
セレナも少し驚いたようだった。
「じゃあ、北では人間と魔族をきっちり分けて暮らしているわけでもないのね」
「南で考えられているほど、きれいには分かれていない」
セレスから戻る途中、セレナから「魔族」は一つの種族名ではないらしいと聞いていた。それでも、人間が北方で暮らし、違う種族同士で家族を作ることまで珍しくないとは知らなかった。
「盟主は、その北方全体を直接支配しているわけではないのだな」
レオポルトが尋ねた。
「違う。各地には氏族や集団ごとの長がいる。盟主は、北方全体に関わることをまとめる立場だ」
「命令すれば、すべてが従うわけではない」
「従うなら、今こうして内側で争っていない」
ヴォルフラムが顔を上げた。
「なら、盟主が人間側と取り決めを結んでも、北方すべてを従わせられるわけではないということだな」
「ああ」
レオポルトが続けた。
「その上で、何を持ってきた」
ヴァレクはレオポルトを真っ直ぐ見た。
「盟主は、人間諸国との正式な和平を望んでいる」
マティアスの筆が止まった。
レオポルトもすぐには返さなかった。
「第三次北方戦争以来続いている休戦を、正式な和平に変えたいということか」
「そうだ」
「その先は?」
「古い施設と、それを利用しようとしている勢力への対応で協力したい」
ヴォルフラムが尋ねる。
「その取り決めを、北方全体に守らせられるのか」
「できない」
ヴォルフラムの眉が僅かに動いた。
「盟主側と、盟主に従う氏族が人間側へ攻め込まないことは約束できる。だが、従わない氏族まで言葉一つで止められるとは言わない」
「それを承知で和平を求める?」
「今の休戦も、北方の全員が同じ考えだから続いているわけじゃない」
ヴァレクは北方地図へ目を向けた。
「北で兵が動けば、人間側は侵攻を警戒して国境へ兵を寄せる。人間側が兵を増やせば、北でもさらに兵が集まる。今は、それを続けている余裕がない」
「内側の争いがあるからか」
レオポルトが聞く。
「それだけじゃない。閉じていた施設の反応も増えている。施設を開こうとしている氏族が動き始めた時期と重なるものもあるが、全部がそいつらの仕業とは言えない」
セレナが顔を上げた。
「王都も、その一つだと見ているの?」
「分からない」
「王都の地下を開いたのが、その氏族かどうかも?」
「分からない。北方で起きている異常と、王都で起きたことが同じ原因かどうかも、まだ分からない」
ヴァレクは北方地図から王都地下の図面へ視線を移した。
「百八十年前には、北と南の両方で近い時期に施設が動いている。今も両方で異常が起きている。それ以上は、調べないと何も言えない」
会議室に少し間が空いた。
北方の動きと王都の地下が繋がっているのか、誰かが意図して王都の施設を動かしたのか。その部分には、まだ答えがない。
「なぜ今なのかは分かった」
レオポルトが言った。
「人間側との大規模な戦いまで始まれば、北方内部の争いと施設への対応を同時に抱えることになる」
「そうだ」
「この国だけへの提案ではないな」
「違う。他にも使者が出ている」
「どこへ送った」
マティアスが尋ねる。
「全部を話す権限はない。一つの国だけと話すつもりじゃない、とだけ言える」
「和平の条件を詰める権限は?」
「ない。俺の役目は盟主の意思を伝え、そちらの返答を持ち帰ることだ」
レオポルトはしばらくヴァレクを見たあと、机上の資料へ視線を落とした。
「こちらも、今ここで受け入れるとは言えない。盟主が実際にどこまで北方を動かせるのか、お前の話がどこまで事実なのか、確認が必要だ」
「分かっている」
「王都で起きたことについても同じだ。盟主側が関与していないという証拠はまだない」
「今ここで出せるものはない」
ヴァレクは俺を見る。
「俺が王都で、あれを止める側にいたことくらいだ」
「それは俺も見た。でも、それだけで盟主側全部が無関係だとは言えない」
「ああ」
ヴァレクは否定せず、机上の地下図面へ目を向けた。
「なら、俺も地下へ連れていけ」
ディートリヒがすぐに反応する。
「理由を聞こう」
「北方で見た施設と比べられる。似た構造や印があれば分かるものもある。王都で起きたことと北方の異常に共通するものがあるか、確かめる材料にもなる」
「お前を自由に歩かせるつもりはない」
「必要ない。見張ればいい」
ヴァレクはオスカーへ目を向けた。
「不安なら、あいつの近くに置け」
オスカーが口元を上げる。
「俺かよ」
「嫌か?」
「別に嫌じゃねえ」
「オスカー、勝手に決めるな」
ディートリヒの低い声が飛ぶ。
「分かってるよ」
オスカーは笑ったまま椅子へ背を戻した。
レオポルトは地下図面をしばらく見てから口を開いた。
「同行させる価値はある。認める方向で詰めよう。ただし、王国側の指示には従ってもらう。監視も付けるし、行動範囲はこちらで決める」
「構わない」
「具体的な条件は別に詰める。和平の提案についても、今は保留する。地下で得られる情報、北方の情勢、百八十年前の記録を確認してから判断する」
「ああ」
マティアスが手元の紙を入れ替え、ヴォルフラムも北方の地図へ視線を戻した。
俺の頭には、百八十年前の名前も分からない人間のことが残っていた。
生まれる前の記憶と、古代文字。そこまでは俺と同じだ。
その先を、ヴァレクは知らない。
隣を見ると、フィアナもこちらを向いていた。聞きたいことがあるのは分かるし、俺にもあったが、ここで話すことではない。
俺も何も言わず、机の上の地下図面へ目を落とした。




