第5話 西へ
10/16 全体的に推敲し文章をアップデートしました。(内容は変更なし)
出発の日は、思っていたより静かに始まった。
夜明け前に宿を出ると、冒険者街はまだ薄暗く、夜通し開いていたらしい酒場にだけ灯りが残っていた。荷を運ぶ商人や店先を掃く者とすれ違いながら、俺は大神殿へ向かう道を歩いた。
背負い袋には着替えと雨除け、水袋、簡単な治療道具などを収めてある。三週間分の食料や野営道具は荷馬車へ積むことになっているので、自分で持つのは道中ですぐ使うものが中心だ。
剣と短剣を含め、装備は昨夜のうちに確かめてある。それでも長く街を離れるとなると、何か忘れていないか気になるものだった。
大神殿の南門へ着く頃には東の空が明るみ始め、門前に並んだ三台の荷馬車の周囲では、神殿兵や世話役たちが忙しく動いていた。
「早いな」
荷馬車の脇から声をかけてきたのはガルドだった。
「ガルドさんも」
「年寄りは朝が早えんだよ」
「四十一でそれを言ったら、もっと年上の人に怒られますよ」
「そん時は逃げる」
ガルドは笑い、大剣を背負い直した。
近くではミラが矢筒の留め具を確かめ、手元に残す矢と荷馬車へ積む予備を分けている。どの束から使うかまで世話役に伝えており、準備に抜かりはなさそうだった。
その反対側では、ユリウスが長杖に身体を預けて大きなあくびをしていた。
「眠そうですね」
「眠いよ。日の出前集合は人間向けじゃないだろ」
「昨日は早く寝なかったんですか?」
「寝た寝た」
離れたところから、ミラが顔も上げずに口を挟んだ。
「酒を三杯飲んでからね」
「三杯くらい、寝付きには影響しないだろ」
「じゃあ、どうして毎回眠そうなの?」
「朝が早いからに決まってる」
ミラは呆れたように首を振り、矢筒を荷馬車へ載せた。
四年も一緒に仕事をしていると聞いていたが、こういう細かなところまで互いに把握しているらしい。
俺も野営用の毛布と予備の衣類を荷馬車へ移していると、すぐ横で馬が強く鼻を鳴らした。
一頭が落ち着かない様子で首を振り、何度も前脚で地面を掻いている。御者が宥めながら手綱を持ち直したものの、しばらくするとまた同じ動きを繰り返した。
「どうした?」
ローデンも気づき、こちらへ歩いてきた。
「さっきから機嫌が悪くて。普段はこんな馬じゃないんですが」
御者が首筋を撫でても、馬は落ち着かない。
ガルドが腹回りを覗き込もうとしたところで、南門の方から声が聞こえた。
「少し待ってください」
フィアナだった。
白い長衣の上に薄手の外套を羽織っている。神殿内で着ていた礼装より裾が短く、歩きやすいように仕立てられていた。
付き添いの神官へ一言断ってから、彼女は馬の脇へしゃがみ込んだ。
「フィアナ様?」
神官が戸惑ったように声をかけたが、フィアナは腹帯の辺りを見ていた。
「この革紐、捻れていませんか?」
言われて御者も屈み込む。
腹帯につながる革紐の一本が、金具の手前で半回転していた。荷を積み直した時に捻れたらしく、その部分だけ馬の腹へ強く当たっている。
「ああ、これか。すみません、気づきませんでした」
御者がすぐに留め具を外し、革紐を直して締め直した。
馬は何度か鼻を鳴らしたものの、前脚で地面を掻くのをやめ、御者に首を撫でられるままになった。
「よく分かりましたね」
俺が言うと、フィアナは立ち上がりながら服についた土を払った。
「家では馬を飼っていませんでしたけど、牛はいましたから。紐が擦れて嫌がるのは似ているんです」
「なるほど。馬具まで分かるとは思いませんでした」
「そんなに意外ですか?」
「神殿で会った時の印象とは、少し違いますね」
フィアナは自分の服を見下ろし、それからこちらへ顔を上げた。
「村にいた頃は、もっと汚れる仕事もしていましたよ」
「それは頼もしいですね」
「……何だか、まだ意外だと思っていません?」
少し疑わしそうな顔をされたところで、ローデンが出発前の確認を始めると告げた。
俺たちも荷馬車の前へ集まった。
冒険者が俺、ガルド、ミラ、ユリウスの四人。ローデンをはじめとする神殿兵八人に、治癒術師二人、ベルナールを含む神官や世話役が数名。そして巡礼の中心となるフィアナ。
三台の荷馬車を含めれば、小さな隊商ほどの規模になる。
ローデンは人数と荷の確認を終えると、地図を広げた。
「市内では隊列を縮めます。西門を出た後、ガルド殿とアレン殿は前方へ。ミラ殿には必要に応じて先行警戒をお願いします。ユリウス殿は中央付近で、前後のどちらにも魔法で支援できる位置を取ってください」
「了解」
ユリウスが頷いた。
先ほどまでの眠そうな様子はなく、地図の街道へ目を向けている。
「神殿兵は荷馬車の前後と左右を守ります。フィアナ様には基本的に一台目の馬車付近にいていただきますが、道中ずっと乗っていただく必要はありません。ただし、異常が起きた場合は私か護衛の指示に従ってください」
「分かりました」
フィアナも素直に頷いた。
最後に車輪や荷の固定を確かめ、ローデンの合図で一行は南門から市街へ出た。
◇
朝のルミエルは、すでに多くの人で賑わっていた。
巡礼団だと気づいて道を空ける者もいれば、立ち止まってフィアナへ頭を下げる者もいる。子供を抱いた女性が胸元で手を組むと、フィアナも馬車のそばから穏やかに会釈を返していた。
つい先ほど、馬の腹帯を確かめるために地面へしゃがんでいた姿を思い出す。
聖女としての振る舞いはすっかり身についているようだが、フィアナ自身は村での暮らしを忘れていないのだろう。
やがて西門が近づき、俺たちは門兵の確認を受けて街の外へ出た。
白い城壁の先には街道が伸び、石畳はほどなく踏み固められた土へ変わった。両側には朝露の残る畑が広がり、遠くでは農作業を始めた人々が鍬を止め、巡礼団を眺めている。
街の喧騒が遠ざかるにつれて、馬の蹄と車輪の音がよく聞こえるようになった。
俺はガルドと並んで先頭寄りを歩き、時折後方を振り返った。
三台の荷馬車は一定の間隔を保ち、神殿兵たちもそれぞれの位置についている。今のところ、隊列の動きに問題はなさそうだった。
「どうだ、ルミエルでの初仕事の気分は」
ガルドが尋ねてきた。
「まだ街を出たばかりですからね」
「そう言うな。三週間も一緒にいりゃ、嫌でも互いの癖が分かってくるぞ」
「ガルドさんの癖もですか?」
「俺のは分かりやすい。飯を食って寝る。敵が来たら斬る」
「それだけなら楽そうですね」
「だろ?」
笑いながらも、ガルドの視線は道の先と左右の畑を行き来していた。
俺も街道脇に目を向ける。
人通りの多い道ではあるが、畑の向こうには低い林が続いている。まだ魔物が出るような場所ではなさそうでも、荷馬車を連れている以上、周囲への警戒は必要だった。
◇
午前中は順調に進み、昼前には街道脇の開けた場所で休憩を取ることになった。
ミラが先の道を確かめて戻り、神殿兵たちが馬へ水を与えている。ユリウスは荷馬車の車輪を眺めながら何か話していたが、問題はなかったらしく、ほどなく近くの木陰へ腰を下ろした。
最初は馬車に乗っていたフィアナも降りてきた。
世話役から自分の荷を受け取り、歩きやすいように外套を直している。
「午後は歩くんですか?」
水を飲みながら尋ねると、フィアナは頷いた。
「はい。ずっと座っていると、かえって身体が固まってしまうので」
「聖女様なら、もう少し馬車でゆっくりするのかと思っていました」
「またそれですか」
フィアナが少し呆れたようにこちらを見る。
「私だって、村にいた頃は毎日歩いていましたよ。畑仕事もしていましたし」
「朝も牛のことを話してましたね」
「ええ。家畜の世話や薪運びもしていました。弟が二人いるので、あの子たちの面倒を見ることも多かったですし」
「弟さんが二人いるんですね」
「はい。うるさいのが二人」
そう言いながら、フィアナは少し楽しそうに笑った。
「でも、今も手紙はくれるんです。下の子なんて、いつも同じようなことばかり書いてくるんですよ」
「何て?」
「いつ帰ってくるの、って」
フィアナは笑っていたが、最後の言葉だけ少し声が小さくなった。
「なかなか帰れないんですか?」
「そうですね。神殿の仕事もありますし、村はルミエルから離れていますから」
彼女は水袋を持ち直し、街道の向こうへ目を向けた。
「でも、手紙はちゃんと返しています。二人とも、私より字が上手になったって自慢してくるんです」
「それは見せてもらわないと分からないですね」
「そうなんです。今度帰ったら、ちゃんと比べようと思ってます」
少し得意そうに言うので、俺も笑った。
そこへ、装備の確認を終えたミラが近づいてきた。
「フィアナ様、午後は歩かれるんですか?」
「はい。そのつもりです」
「それなら、外套の裾だけ気をつけてください。森へ入ると枝に引っかかることがあるので」
フィアナは自分の裾を見下ろした。
「このくらいでも引っかかりますか?」
「道の上なら大丈夫だと思います。でも、街道を外れると意外と引っかかるんです。私も昔、踏んで転びましたから」
「ミラさんでも?」
「私でもです」
ミラは笑い、自分の外套を軽く持ち上げて見せた。
それから、少しだけ声を落とした。
「それと、フィアナ様。一つお願いしてもいいですか?」
「何でしょう?」
「これから三週間、一緒に旅をするでしょう? よければ、フィアナって呼んでもいい?」
フィアナは一瞬驚いたようだったが、すぐに表情を和らげた。
「はい。もちろんです」
「ありがとう。私にも気を遣わず話してくれていいからね」
「分かりました、ミラさん」
ミラは頷き、今度はこちらへ目を向けた。
「アレンも、呼び捨てでいい?」
「はい。俺は構いません」
「アレンの方は、無理に合わせなくていいよ」
「ありがとうございます。しばらくは今の方が話しやすいので」
「そっか。じゃあ、それで」
それ以上は気にした様子もなく、ミラは矢筒を背負い直した。
フィアナも隣で水袋をしまっている。
「そういえば、アレンさんは冒険者になる前、何をしていたんですか?」
「冒険者になる前ですか?」
「はい。二十歳で金級なんですよね。いつから剣を使っているのかなと思って」
「子供の頃から習ってました。魔法も一緒に。十三くらいから冒険者の仕事を手伝い始めて、正式に登録したのが十五です」
「十五歳?」
フィアナが目を丸くした。
「ずいぶん早いですね」
「登録できる年齢ではありましたから」
「そういうことじゃありません。うちの村では、十五歳なんてまだ大人に怒られてばかりですよ」
「俺も怒られてましたよ」
「何をしたんです?」
「勝手に危ない仕事について行ったりですね」
フィアナはしばらく俺を見ていた。
「……今も、あまり変わってないんじゃないですか?」
「どういう意味です?」
「危ない場所を見つけると、自分から入っていくところです」
どうやら、巡礼宿での救助のことを言っているらしい。
「あの時は、中に子供がいましたからね」
「それは分かっています。でも、建物が崩れかけてたんでしょう?」
「そうですね。実際、出た直後に入口も崩れました」
「……危なかったんじゃないですか」
フィアナの表情が少し真剣になった。
「危険だとは思ってました。だから一緒に入った冒険者とも相談して、動かす瓦礫を選んだんです」
「それでも、怖くはなかったんですか?」
「もちろん怖かったですよ。崩れたらどうしようもないですから」
俺が答えると、フィアナは少し意外そうな顔をした。
「そうなんですね」
「怖いものは怖いです。ただ、あの子たちの場所も分かってましたし、何とか助け出せそうだったので」
フィアナは頷き、しばらく考えるように水袋の紐を指で弄んでいた。
「……私も、助けられると思ったら無理をしてしまうので、気持ちは少し分かります」
「そこは、お互い気をつけないといけませんね」
「そうですね」
珍しく素直に意見が一致したところで、ローデンから出発の声がかかった。
ミラが立ち上がり、フィアナの外套を一度確かめる。
「大丈夫そうね。道が悪くなったら教えて」
「ありがとう、ミラさん」
フィアナは頷き、一台目の馬車の方へ戻っていった。
俺も荷を背負い直し、ガルドの待つ先頭へ向かった。
◇
昼を過ぎる頃には畑が少なくなり、街道の両側へ低い林が近づいてきた。
反対側から二台の荷車とすれ違い、徒歩の商人らしい三人組も通っていった。人の往来はまだあるが、道が緩やかに曲がる場所では、木々に遮られて先まで見通せない。
「この辺り、魔物は出ますか?」
ガルドへ尋ねると、彼は街道脇を見ながら答えた。
「狼系と小鬼ならいるな。ただ、人通りが多いから、でかいのは滅多に出ねえ」
「小鬼なら群れが気になりますね」
「ああ。だが、見つけたからって追い回す必要もねえぞ」
「分かってます。護衛が優先ですから」
「ならいい」
ガルドは頷き、木々の間へ目を向けた。
俺も反対側を確かめる。
道端には獣の足跡や折れた枝が残っていたが、今のところ新しく荒らされたような場所は見当たらない。
しばらくして、前方の確認へ出ていたミラが戻ってきた。
「少し止めたい」
声をかけられ、俺とガルドは歩調を緩めた。
「何かありました?」
「右側に小鬼らしい足跡がある。少し古いけど、この先の林へ続いてる。それと、曲がり角の向こうだけ鳥が少ない」
ミラが指した方へ耳を澄ます。
まったく鳴いていないわけではないが、確かに街道が曲がった先からは、鳥の声がほとんど聞こえてこなかった。
ガルドが後方へ片手を上げると、ローデンはすぐに隊列を止め、神殿兵へ周囲の警戒を指示した。
「俺たちで見てくる」
ガルドが言うと、ミラは左右の林を見比べた。
「私はここから両側を見る。アレン、ガルドさんと前をお願い。右から回り込むのがいたら知らせる」
「分かりました」
俺はガルドと並び、曲がり角へ向かった。
街道は緩く右へ曲がり、両側から木々が迫っている。剣の柄へ手を置きながら十数歩進んだところで、湿った毛皮に似た臭いが鼻についた。
ガルドも気づいたらしく、ほとんど同時に足を止める。
右側の茂みが揺れた。
現れたのは、人間の子供ほどの背丈しかない人型の魔物だった。灰色がかった皮膚に痩せた手足、手には石の穂先を括りつけた粗末な槍を持っている。
その後ろでも枝が動き、さらに三体が姿を現した。
「小鬼だな」
ガルドが低く言った。
見えるのは四体だが、林の中にも物音がある。群れの全体が出てきたわけではなさそうだった。
先頭の一体が俺たちを見つけ、短い叫び声を上げる。
ガルドが背中の大剣を抜き、俺も剣を鞘から滑らせた。
◇
先頭の小鬼は、粗末な槍を構えたまま俺へ突っ込んできた。
体格の割には速いが、踏み込みに合わせて槍をまっすぐ突き出してくる。俺は半歩だけ左へずれ、穂先を通り過ぎさせてから内側へ入り、肩口から斜めに剣を振り下ろした。
小鬼が勢いのまま倒れる。
続いて二体が左右へ分かれ、一体はガルドへ、もう一体は俺へ向かってきた。
こちらへ来た小鬼は短い刃物を振り上げていたが、足元への注意がない。
俺は踏み込んでくる位置へ少量の魔力を流し、土をわずかに盛り上げた。
小鬼のつま先が引っかかり、前のめりになったところへ剣を合わせる。刃が胸元へ入り、そのまま地面へ崩れた。
横では、ガルドの大剣が重い音を立てて振り抜かれていた。
向かってきた小鬼は一撃で倒され、道端へ転がっている。
剣の大きさを考えれば、もっと大振りになると思っていたが、踏み込みから刃を戻すまでの動きに無駄がなかった。あの重さの武器を正確に扱えるだけの技術と腕力があるのだろう。
「何だ、もう終わりか?」
ガルドが剣を構え直した。
残る一体は、俺たちの前で足を止めていた。
林の奥から小鬼の声が重なると、その一体も踵を返し、茂みの中へ逃げ込んでいった。
「追いますか?」
「いや。向こうから来ねえなら放っとけ」
俺も同意見だった。
林の中にはまだ複数の個体がいるようだが、ここで奥まで追いかければ巡礼団から離れてしまう。荷馬車を通す道が確保できれば十分だろう。
後方へ合図すると、ローデンが神殿兵二人を伴って近づいてきた。
「状況は?」
「小鬼です。四体出てきて、三体倒しました。残りは林へ逃げていますが、奥にはまだ何体かいると思います」
俺が答えると、ローデンは周囲を確かめた。
「追撃はしません。護衛を前方へ厚くして、そのまま通過します」
「それがいいだろうな」
ガルドも頷いた。
ミラが少し遅れて戻ってくる。
「左側へ回り込んだのはいない。右の奥には三、四体くらい動く音がしたけど、街道から離れていってる」
「分かりました。では、隊列を進めます」
ローデンは神殿兵へ指示を出し、前方の警戒を一時的に増やした。
俺たちは倒れた小鬼を街道の端へ寄せ、もう一度林の様子を確かめてから荷馬車を呼び寄せた。
しばらく進んでも、新しい小鬼の姿は見えなかった。
曲がり角を抜けて見通しのいい場所へ出ると、ローデンは隊列を元の配置に戻した。
一台目の馬車のそばを歩いていたフィアナが、こちらへ目を向ける。
「怪我はありませんか?」
「大丈夫です」
「ガルドさんも?」
「かすり傷もねえよ。あの程度なら心配いらん」
ガルドが答えると、フィアナはほっとしたように頷いた。
ユリウスも長杖を持ったまま近づいてくる。
「結局、俺の出番はなかったな」
「近づいてくる前に終わりましたからね」
「一応、魔法は準備してたんだけど」
「使わなくて済んだならよかったじゃない」
ミラが言うと、ユリウスは肩をすくめた。
「それはそうだけどさ。初日なんだから、少しくらい働いたところを見せたかったんだよ」
「誰に?」
「新しく組むアレンに」
俺は思わず笑った。
「魔法なら、これからいくらでも見る機会があると思いますよ」
「そうだな。じゃあ、その時に見せるか」
「その時も、必要なければ温存してね」
ミラが釘を刺すと、ユリウスは分かっていると答えながら持ち場へ戻っていった。
フィアナも馬車のそばへ戻り、俺はガルドとともに先頭へ出た。
小鬼との接触で少し時間を使ったものの、街道の状態は悪くない。このまま進めば、日が落ちる前に予定の野営地へ着けるだろう。
両側の林は次第に低くなり、木々の隙間から西へ続く道が見え始めた。
ガルドが肩越しに荷馬車の位置を確かめ、歩調を少し緩める。俺もそれに合わせ、後方の隊列が間延びしない速さを保った。
三台の荷馬車が、車輪を軋ませながらゆっくりと後に続いてくる。
俺たちは西へ向かう街道を、そのまま進んだ。




