第一話:ファーストコンタクト➁
あの日以降、教会には寄りつかない様にしていた。
今、この場所から連れて行かれたく無いからで、まだ恩返しが出来て無いので全力で逃げていた。
しかし、そんな事も言ってられないイベントがある。
ロックが3歳の誕生日を迎えて、教会で洗礼を受ける事になっている。
洗礼は家族全員で教会に出向き、神様に祈りを捧げ、3、5、7歳で賜経本に触れると運が良ければスキルをもらう事が出来るイベントで、王家から貧乏平民まで必ず受ける事になっている。
ここでスキルを貰えれば平民が騎士や文官に登用され生活が変わる事もある、優秀なスキルを貰えればそこから貴族の養子なども良くある話で、教会が洗礼の際にしっかり教会がスキルの有無と付与されたスキルの名前がしっかりと記憶されその国の教会本部と国の管理機関に報告される。
ただ、殆どの場合スキルが貰えない事の方が多く、貰えたらラッキー、3回の洗礼で1つでも貰えたらラッキー、って言う感じで通過行事程度でしか捉えられてない家が殆どで2つも3つも貰えたら国王に呼び出された挙句、貴族と養子縁組の上で結婚させられる。
リアク?(行きたく無いな・・・)
そんな事を思いながら1日1日が過ぎて行き、ロックの洗礼の日となった。
二つ隣に教会に家族揃って歩いて行く。
教会の扉は既に開かれており、中にはマザーは立っていた。
ロックは洗礼でスキルが貰えるよりも洗礼後に貰えるクッキーが嬉しくて早く洗礼が終わらないかとウズウズしているが、リアクはマザーの顔を見てあの日の事を思い出して少し暗い顔をしていた。
マザーがリアクの顔色見て悲しげな表情をするがまず本来の行事の為にロックに声を掛ける。
マザー「ロック、こちらへ」
女神像の祭壇前にロックを誘い、ロックはマリアンナ母さんから教わった通り、ぎこちなく祭壇前で膝を着き両手を合わせる。
目を瞑りマザーの女神への宣言を口上する。
それが終わると祭壇に置いている賜経本に両手を置く。
ロック「めがみさま、われにしゅくふくを」
ロックの宣言が終わると賜経本が光り、その光がロックを包む。
ジャック「スキル付与だ」
ジャック父さんが立ち上がり、興奮する。
賜経本の表紙に光で文字が浮かぶ。
《身体強化》
マザーは素早く賜経本に浮かぶ文字を読み上げた。
マザー「ロックは女神より身体強化のスキルを授かった」
興奮するジャック、少し寂しげなマリアンナ、何が起こったのか分からないロック。
ジャック「やったなぁ、ロック!スキル貰えるなんて、思いもよらなかったよ」
ロックを抱き抱えて喜ぶジャックに対してリアクの横にいるマリアンナ。
マリアンナ「リアク、ロックの事好き?」
リアク「うん、みんなすき」
リアクの表情は固く少し青白い。
その表情を見てマリアンナはリアクに語りかける。
マリアンナ「リアクは私の子供だからね、何処にも行かないでね・・・」
その目には薄ら涙が溢れそうな顔をしていた。
リアクは何も言わずにマリアンナに抱きつく。
リアク「にいちゃん、どこかいっちゃうの?」
マリアンナ「ううん、まだ何処にも行かないよ」
リアク「まだ、にいちゃんとおあそびしたい」
マリアンナ「うん、おあそびできるよ」
そこへマザーが近づいてくる。
マザー「リアク、この前は怖がらせてごめんなさい」
優しく声を掛けるマザー。
マザー「あの人はね、あなたがいつも見ている図鑑や本を持って来てくれた人なの」
マリアンナの服をギュッと掴むリアク。
リアク「やだよ、かあさんいきたくないよ」
泣きながらマリアンナにしがみつきリアク。
その行動を見てマザーが愕然とする。
マザー「ああ、なんて事・・・、あなたは優秀な子が別の家族になる事を理解していたのね・・・」
その場で泣き出してしまうマザー。
マリアンナ「マザー様、どうかこの子はもう少し私達の家族としていただけないでしょうか・・・」
リアクを抱きしめてマザーに懇願するマリアンナ。
マザー「そうね、多分今受け入れてもらってもリアクは納得しないでしょうね・・・」
マリアンナから離れようとしないリアク。
二人の唯ならぬ雰囲気にジャックとロックから喜びが消える。
ジャック「どう言う事だ、マリアンナ、リアクが別の家族にって・・・」
マリアンナ「ごめんなさい、あなた、この前リアクが領主様の執事に会ってしまったみたいなの・・・」
マザー「私がいけないのですよジャック」
マザーが割って入ってくる。
マザー「リアクが教会へ来ては祈りを捧げ、私の執務室にある図鑑や魔術書を見ているので、もしかしたらと思い招き入れたのですが、リアクは分かったんでしょうね、直ぐにそこから立ち去り、今日さっきまで会う事すら出来なかったのです」
泣きながら淡々と説明するマザー。
マリアンナ「マザー様、この子が私の所へ来て初めて我儘言ったんですよ・・・、預かってからまるで私達に遠慮してるかの様に、いつも泣かないで我慢して、ロックが我儘言っても喧嘩しないでロックにしてあげたり、初めてなんです・・・」
リアクの頭を撫でながら抱きしめているマリアンナ。
リアク「ウグっ、ウグっ・・・」
リアク?(どうやら精神年齢に感情が引っ張られて、どうにも泣き止む事が出来ない、もう一人のリアクも同じ考えを本能で持っていた事が凄く嬉しかった)
折角、ロックにスキルが付与されておめでたいはずがリアクのとった行動が元で祝う所ではなくなって来ている。
ジャック「じゃあ、引っ越すか」
ジャックが突然突拍子もない事を言い出す。
マリアンナ「そうね、家族がバラバラになるぐらいなら何処か引っ越してしまいましょう!」
リアク?(この旦那にしてこの嫁ありなのか・・・)
今のやり取りで完全に涙が引いてしまった。
マザーの顔が引き攣る・・・。
マザー「いや、待ちなさい、今ここで貴方方一家が居なくなってしまっては村の警護が成り立ちません、それに裕福な家庭に子供が行けば、その分残された家族にも十分な手当が出ます、考え直してもらえませんか?」
いつになく真剣な表情のジャック。
ジャック「マザー、貴方の考えは一理ある、でもなそれは経験した俺やマリアンナは違うんだよ、家族はな一人でも欠けるとその時点でバラバラになるんだよ、一時の生活でそれをやって後悔してる奴はいくらでも居る、俺はそんな家族にはなりたく無いし、息子達をそんな目に遭わせたく無いんでね」
焦るマザー、良かれと思っていた事が、この家族は違った。
普通の考えなら子供が生活豊かな場所生活でき、残された者達は、子供を送り出した者から援助として金品が受け取れる、自分達も生活が豊かになるのだ、やって当然だと思っていた。
ところがこの家族は違った、経験しているというのだ。
経験した上でここから離れる決意を直ぐにした、それは良く無い事を経験しているということだ。
ただ、ジャックが居なくなるという事はこの村が色々な面で外部からの力が無くなるという事。
ましてや、息子のロックは身体強化のスキルを授かった、ジャックがロックに戦う事を教え込むのは決定事項であり、親子二代で村に住んでもらう事が出来れば暫くは外部からの力に怯えなくても生活が出来る。
それだけジャックと言う存在がいかにこの村に重要な人物かが判る。
マザー「ジャック、分かったわリアクの養子についてはこちらからお断りの手紙を出すわ、だから引っ越してしまうのだけはやめて頂戴」
ジャックに懇願するマザー。
考えるジャックが家族の顔を見る。
ジャック「分かった、今回は引っ越しは辞めておこう」
その言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろすマザー。
ジャック「ただし、今後も今回みたいな事が起きるとも限らない、だから直ぐに旅立てる準備は抜かり無くしておくとる」
焦るマザー。
マザー「今後もない様に努力するわ、唯、私経由は誤魔化せても、突発的な事は防げないから、そこは理解して頂戴」
ジャック「それはそうだ、その時はその時でまた考える、兎に角出来るだけ自分で足つけて生活出来る様になるまでは養子の話は無しだ、良いかいマザー?」
納得は行かないがこのままジャック一家が自分が原因で村から居なくなるのと下手をしたら殺されるかねない事態に発展するのが分かっているので渋々了承するマザー。
マザー「今後、貴方の家族には話は持って行かないわ」
こうして取り敢えずリアクの養子の話は無くなった。




