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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第4章
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爪の垢でも、煎じて飲むつもりなのかな

「も、もぶぅ……ゔぁあぁぁーん」


「なんだその声は」


 はい、今日は許して極楽気分、佐倉サクラです、どっぷりだよ。


 ハナコさん所有のプライベートビーチには、本格岩造りの露天風呂が設置されていたのです、海の近くだから、というわけでもないのでしょうが、透き通った塩化物泉で、最新型の泉質調整機にて成分と温度が適切に保たれているとの事です。いゃぁ、こいつはいいぜ……なんか最近のストレスとか、オーバヒート気味の私の脳を、程よく癒してくれる的なアレがあるよ……もうね、出たくない、私ここに住む。


「ここ最近は、特別に慌ただしかったですものね……サクラさんが喜んで頂けたならば……ふぅ、わたくしも嬉しいですわ」


 今はパレオを外したハナコさんが、なんとも色っぽい身ごなしにて、私の隣に入浴してくるのです……うぅん、さっきまでみんなラッシュガードとか羽織ってたから……再び露わになったこの弩級果実……おのれ、なんたる破壊力か、完全にはみ出してるよね、それ、本当に水着のサイズ合ってるの?


「いいなぁー、華村ちゃんはおっぱい大きいから……ちょっと分けてくんないかなぁ」


「へぇっ! 」


 栗原さんの一言で、ハナコさんは途端に両腕を交差させ、真っ赤になってしまうのです。こう見えて純情なんだよね、ハナコさんってば、真面目だしね……おい、ロボ君、視線がいやらしいぞ、分かってるぞ、横目で見てるだろ、そういうの、女の子には分かるんだからね、あとで説教だよ、溜まってるからな!


「別に、大きさは関係ないだろう……ただ、あったら見栄えが良くて、あとは……そうだな、なにか色々できそうだな、それだけだ」


 うん、ロボ君や、フォローになってないぞぅ? むしろ貴様のエロスが露呈されだだけだからね? しばくぞ、なにがノーエロスか、あの頃のロボ君はドコ行ったんや、言ってみろ。


 ぷりぷりと、なにか言葉にならない文句を口にした私だったのですが、ロボ君は、ぱちんと肩を叩いた私の手を引くと、そのまま自身の胡座の上に、手のひらサイズのマイボディを抱え込んだのです。


「ふ、ふわぁっ」


「まぁ、俺にはこのくらいが丁度いい」


 うごご、すっぽりと抱き込まれてしまった! ちょっと、なんだこれ、なんの羞恥プレイか! や、やめ、やめろ、見られてるから! というか、なんか恋人同士というよりも、親子連れの絵面だろう、これ、俯瞰しなくても分かるぞ、さては遊んでるだろ、は、離してったら! というかくっ付いてるから、いろいろ密着してるから!


「いいなー、サクラちゃん、ずるいなぁ……私にも、どっかにイイ男転がってないかなぁ……」


 ばちゃばちゃと暴れる私をよそに、指を咥えて星空を見上げる栗原さん、彼女も案外、夢見がちなのかもしれないね、まぁね、花の女子高生だもんね、でも、助けてはくれなさそうだね、期待薄だよ……何故か両手を広げてニッコニコのハナコさんも望み薄だし……なんだ、順番待ちでもしてんのか、行かへんぞ。


 最後の希望たるシャーリーくんだったのですが、彼女は先程から、膨らんだもこたんを浮き輪にして、プカプカとお湯に浮いてるだけ……完全に温泉を満喫してるな、定年退職したお爺ちゃんか。


「……この世界にはな、神様がいた」


 ぽつりと呟くのは、ロボ君です。ん? なに? なんの話? また突然に脈絡なくブッこむ気なの? いいから離せ、胸に当たってるから、というか何故いま話す。


「情報の擦り合わせだ、今なら落ち着いて聞けるだろう? こいつの前で話すのは……まぁ、俺はこいつらを信用していない、と表明するためかな」


 ……こいつってのは、栗原さんの事だよね、うぅん……どうなんだろう、出会ったばかりで、まだなんにも知らないけれど、少なくとも、吸血鬼には見えないかなぁ……どうなんだろう? というか神様ですか? そういやケン先生も言ってたか、私の血を吸うとどうこうって。


「でだ、神様はある日な、爪を切ったんだ……邪魔だったのか、ただの気まぐれか、当たり前の事か、特別な事か……それは知らないがな」


 ほうほう、爪切りしたと、まぁ、神様だって爪が伸びたら切るかもね? んで、それがどうしたの?


「その爪がお前だ」


「なんやと」


 ……んん? ロボ君、ちょっとなに言ってるのか分からないよ? 冗談にしては意味不明すぎるよ? 情報の擦り合わせだよね? お父さんとかお母さんはどこ行ったのさ、なんかいきなり話がしょっぱくなってきたよ、温泉のせいか、それとも海のせいか。


「……辛島さま、今のが本当の話だと仮定して、なぜ中京の騎士や吸血鬼がサクラさんを狙うのか、その理由が分かりませんわ……サクラさんが天帝の娘だという、彼らの主張の方が、余程に納得いくのですが」


 そ、そうだよ、私がちんちくりんなのは承知してるけどね、私になんの力も無いってのも、自分でよく分かってるけどね、でも、実際に狙われてる以上さ、なんかあるんじゃないですか? ねぇ、だって爪なんか、なんの役にも立たないよ?


「さぁな、そいつら全員、天帝がどうのこうのって話を信じてるんだろう……もしくは、そうだな」


 私のお腹に回した腕に、少しだけ力を込めたロボ君は、やはりというか、どこか興味無さげに、つまらなさそうに、お風呂の縁に背中を預け、湯気と共に吐き出したのです。


「爪の垢でも、煎じて飲むつもりなのかな」


 そうだね、ちょうどいまお風呂入ってるしね、良い出汁出るかもね。


 ……ねぇ、ほんとなんなの、爪の垢ですか私は、なんか急に力抜けてきたんだけど。


 私の周囲から、手皿で掬ったお湯を飲み干すハナコさんの脳天に手刀を落としたあと、なんとなく色々と納得のいかない気持ちの私は、とりあえずロボ君の胸に背中を預けたのでした。



 

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