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自叙
そこは、まっしろな場所でした。
まっしろな空、まっしろな大地、どこまでもまっしろな、でも、光と闇と、太陽と月の生まれた世界。
その世界の真ん中に、ぽつんと鎮座ましましているのは、小さな鏡台と日記を読みふける真っ白なひと。
その真っ白なひとは、ふと、ページをめくる手を止めると、こう思いました。なぜ、自分は日記を読んでいるのだろうかと。
本当なら、日記など読む必要もないのです、だって、真っ白なひとなら読むまでもなく、全部わかってしまうはずなのですから。
そこまで考えて、ああ、そうか、と、真っ白なひとは理解しました。
真っ白なひとに、無知が生まれていたのです、自己が生まれていたのです。それは、とても心地よいものでした。
なので、真っ白なひとは、再び目を落とすの です。
日記には、まだまだ続きがあるのですから。




