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ロボ君と私的情事  作者: 露瀬
第3章
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ゴリラ

「さ、サクラさん! 」


 ろぼバスに揺られ、てくてくと帰宅した私を迎えてくれたのは、やはりというか、ハナコさんでした。別行動していた彼女には、シャーリー君の端末にて、私の無事を伝えてはいたのですが、動物の苦手なハナコさんが、もこたんに抱き着き、不安そうに庭にしゃがんでいる姿は、何か捨てられた子犬のようで……あ、こら! もこたんを投げるな! さっきまで慰めてくれてたんでしょ、もっと丁重に扱いなさい。


「た、ただい、ま、ハナコさん……ごめんなさい、心配、かけちゃった」


「サクラさん! あぁ、サクラさん、よくご無事で……お怪我は、何か酷い目に遭わされては……良かった、そういった事はなさそうですわね、あぁ、良かった、ひとまずは安心いたしました、でも、お可哀想に、ろくな食事も取れなかったのですね、吐瀉物から戦闘糧食の匂いがしますわ、サクラさんがいつ戻られても良いように、未熟ながら毎食の支度はしておりましたが……この格好では落ち着いて食事もとれませんわね、 先にお風呂にしましょうか、ささ、ならば参りましょう、わたくしが洗ってさしあげます、辛島さま、ちゃーはんとたまごスープを作ってありますので、温めておいてくださいまし、がさつな殿方にも、そのくらいならば出来るでしょう? 」


「とぅっ」


「あぁんっ」


 相変わらずだよ、相変わらずだよハナコさん……なんか安心したとさえ思うけれどね、とりあえず人の匂い嗅いでんじゃないよ、わたしの体臭には、どんだけの情報が詰まってんのよ、麻薬中毒の名探偵か、あと、お風呂は一人で入ります! あ、ただいま、もこたん、ごめんね、心配した? 今は汚れてるから、あとでギュってしてあげるね。


「サクラ先輩、僕も入りたいので一緒に行きましょう、あと、何か着るものを貸してください、華村先輩のは着たくありません、色んな意味で」


「いいよ」


「はぁ? 」


 確かにね、シャーリーくんも汚れてるしね、おぱんつ見えてるしね、ウチのお風呂は広いから、二人でも湯船に浸かれるしね、そうだ、洗いっこしようか……ぐへへ、ようやっと、そのおみ足を他人に晒す覚悟が出来たのかい? 良いよ良いよー、お姉さんが検分してあげるからね、あ、そうだプールにも行こうね、ヒモッヒモの水着も選ばなきゃ。


「サクラ先輩……いつも言ってるでしょう、その目をやめてくださいって、いやらしい……生まれついての、淫売……ビッチ……ポリガミー……」


「も、もう、やめてよ、ごめんってば、早く入ろ、私も、さっぱりしたいよ」


「……は? はぁ? ちょっと、意味が、分かりませんわ」


 あ、ロボ君、ハナコさん見張っといてね、なんだかお風呂に突入してきそうな予感がするから……あと、ぽりがみーってなに?



 浴室の強化磨りガラスの向こうで、ハナコさんの哀願するような声が、すすり泣きに変わった頃、ほっこり湯上りの美少女二人は、ようやくに人心地ついたのです……はい、調子に乗ってごめんなさい、でもね、シャーリーくんってば、やっぱりすんごい綺麗なの、お人形さんみたいだよ、いいなぁ、羨ましい……怒られるから、あんまり詳しく言わないけどね、ごめんね、目の保養になりもうした。




「……なるほど、分かりました、バラン家については、わたくしの責任において根絶やしにしておきますわ……根絶して、根切りして、抹消しておきます」


 そうだね、怖いから、そういうのはナシの方向でお願いします。それとチャーハン美味しかったよ、料理上手ってのは本当だね、もしかして、隠れて練習してたのかな。


「ですが……その中京騎士の言った事は気になりますわね……辛島さま、サクラさんが天領の皇女だというお話、それは本当なのでしょうか、こうなれば、隠し事は無用に願います」


「……事実かどうかは兎も角、そう思っている奴らが居るのは確かだ、吸血鬼どもがサクラの血を吸いたがるのも、それが理由とは思う」


「天帝は、不思議な力を持っていたって噂ですからね、でも、身辺警護の天領騎士ですら、素顔を見た者は居ないらしいですし……そもそも、本当に実在するかどうか不明とまで言われてたのに、そんな人物の娘だなんて、変だとは思わないんですかね? 世の中馬鹿ばっかりですよ」


 うぅん、どうなんだろう? 個人的には、そんな話なんて信用できないけど……でも、吸血鬼だのテンプル騎士だの、こうも本気で狙われてるとねぇ、ひょっとしたらひょっとするんじゃなかろうかと思わなくもないよ。ところで、シャーリーくんも自然に参加してるんだけど……いいの? こんなヤバげな話に加わっちゃって、まぁ、なんか色々と知ってそうだけどさ、いいけどさ、どうせ話してはくれないんでしょ? ふんだ、さっきの姿は私の脳内に焼き付けたからね、記憶遺産に登録してやるからね。


「と、とにかく、私、本当の事が知り、たいよ……このままじゃ、嫌なの、駄目だと思う、か、辛島、くん、私、知りたい、教えて欲しい」


「……俺は、お前を幸せにしてやりたい……だが、真実を知る事が、幸せだとは、限らない」


 それは……確かにそうかもしれないよ、でも、でもね、私の幸せなんて、私にしか決められないよ、どんな決断して、どんな風に生きるのかなんて、自分で選ぶことなんだもの、例え、それで失敗して、すっごく後悔したって、それが幸せってこともあるんだよ……ねぇ、ロボ君、少なくとも私は、このまま何も知らずに、みんなに甘えて生きてたって、きっと幸せにはなれないよ、この先ずっと、心の隅っこがモヤモヤしたまんま、何も選べずに生きて、そして死ぬなんて、そんなの……嫌だよ。


「それでも、私、知りたい、だって自分のことなんだもの……ロボ君が、私の為を思ってくれてるのは、すっごくわかるよ、ありがとう……でも、心配しないで、私は、きっと、笑って生きるから、それが、私の約束……ううん、私の決めた事なんだもん」


「そうか……」


 ロボ君は、優しげな笑みを浮かべていました。


 いや、ハナコさんもだし、意外なことに、シャーリーくんまで、なんか感心してるような表情だよ。うん、やっぱり、間違ってない気がする、そんな気がするよ。


「分かった、お前を信じると言ったのは、他でもない俺自身だしな……それがサクラの幸せなら、俺も腹を決める……だが、覚悟はしておけよ? ここから先は、世界中が敵だと思え」


「えぇ……う、うん……うん? そ、そう……なの? 」


 おお……なんかいきなり話のスケールが……うん、本気で怖くなってきた……あの、なんか尻込みしてきましたので、お手柔らかにお願いします、ちょっとずつ、ちょっとずつでお願いします。


「なに、心配するな、俺がついてる、もう離さないと言っただろう、任せておけ」


「いいえ、お任せ出来ませんわ、サクラさんは私がお守りします、辛島さまのようなけだものが側に居れば、別の危険を招きそうですもの」


 はい、お前が言うな、一番の危険人物やぞ! 分かってんのか! ロボ君とはセットにします、仲良しなんだからいいでしょ……でも、ハナコさんもありがとう、私、ほんとに感謝してるんだよ。


「ま、慌てる必要もないさ、おいおい話していこう、前にも言ったが、俺だって全てを知ってる訳じゃない、殆どが又聞きなんだからな」


「そ、それ、それなんだけど……あの、あの、ロボ君って、もしかして私のおばあちゃんと知り合いなの? 森の中で、おばあちゃんと、おんなじ技、つかってたよ? 」


 くいっ、と片眉をあげて……これは驚いたのかな? ロボ君はポリポリと頬を掻くのです……あ、なんか言いにくそう、なんだ? 何かあんの? 怪しいなぁ。


「それも、おいおいだな……そうだ、森の中で思い出した、あの時もそうだったんだが……ずっと気になってたんだよ、なぁサクラ『ロボ君』ってのはなんだ? もしかして俺のことなのか? 」


「ほげ? 」


 ……あれぇ……え、あれ? もしかして……口に出してた? わたし、え、嘘だ、あ、あわわわ、しまった、思わず、脳内愛称が、垂れ流しに! 蛇口が! 開いてた!


「あ、あ、あの、あのあの、違う、の、その、これは……ぐぅ……ごめんな、さい、あだ名、で、すぅ……」


「なんだよ、別に怒ってはないぞ、彼氏彼女なら、そういうもんだろ……そう聞いてたが……まぁ、悪い気はしないな、あだ名の意味は分からんが」


 そこは分かろうね? ロボ君は完全にロボ君だよ、むしろそれが分かんないからこそのロボ君だよ? 分かってる?


「ふふ、せんぱいには、ぴったりなんじゃないですかぁ? 乙女心の分かんない、とーへんぼくですもんね、だから早く人間になって下さいね、待ってますからね? 」


 ほら、シャーリーくんも同意見でしょ、みたかロボ君、多数決だよ、数の勝利だよ、ハナコさんだってそう思うよね? ……あれ、どしたのハナコさん。


「さ、サクラさん、わたくしには! わたくしにも、なにか愛称は、ふたりだけの、特別な! 呼び合うような、甘美な響きの! 」


 ちょっ、ちょっとハナコさん落ち着いて、私の頭が、がっくんがっくんしてるから、むち打ちなるから! や、やめ、やめろ! ハウスハウス! もう! ハナコさんにはもうあるでしょ、立派な二つ名が、というか、そんなんだから、こんなあだ名になるんでしょうに……ねぇ、ほら、皆んなも頷いてるじゃん。


「……華村先輩には、もうあるでしょ、ちゃんと渾名が」


「うん、あるよ、あるね」


「あるな、ぴったりのやつが」


 はい、まとまりました、じゃ、言ってみましょう、せーの。




「怪獣王女」


「怪獣ゴリラ」


「ゴリラ」



 ぶふっ……ちょ、ロボ君、また進化してる、だから、やめて、そーゆーの私、弱いんだから、ちょっと、もう、やめて、息が、酸素、酸素……ご、ごめんねハナコさん、悪気は……ぶふぅっ、だからやめてったら、なんでドヤ顔なのよ! もう、やめて、しぬ、死んじゃう、酸素が。






 おばあちゃん、天国のおばあちゃん、見てくれてますか?


 色々と、未来は大変そうだけど、私は大丈夫、みんなが居れば、この先もきっと、笑えます。


 だから、安心してね。









これで三章も終了です、ここまでお付き合いしてくださった皆様には、マリアナ海溝よりも深く感謝しておりマッスル。


物語もそろそろ折り返し地点を迎えたのですが……お仕事が忙しくなってきましたので、更新は不定期になると思います。


でも、キリの良い所まで頑張ったので許してくださいね。


かしこ

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