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第22話 協力的なアイツ

「言わずとも僕には分かる」第22話です。

お読みいただきありがとうございます。

ようやく斑鳩さんは作法室を出てきた。

正直ここまでずっと僕は内心ヒヤヒヤだった。

会話を耳に挟んで偶に心の中で突っ込みしたりしてこそいるが常に周りを警戒しないといけないのは疲れる。

特に最後はもういつ出てくるかでずっと右往左往していたし。

だが耐えの時間も終わり。

案内員もぞろぞろと部屋から出てきたが全員どこかに消えて斑鳩さんは今一人!

千載一遇のチャンスだ!

後は誘導だけ。

この西側校舎に居る内に決める!


 僕は今、廊下を歩く彼女の進行方向に先回りして角で待ち伏せしている。

僕はポケットから取り出したサングラスとマスクを身に着ける。

これで話す準備はOKだ。


 あいつに感謝しなきゃ…か。


 ~~~


「それは…校舎裏の倉庫に二人を集めることだ。」


 僕が引き締まった表情で放課後の作戦を告げても福島はきょとんとしている。


「校舎裏の倉庫?

 体育祭とかで使った道具とかが適当にブッこまれてるあそこ?

 そこになんかあるのか?」


「あるのは物じゃない。

 環境だ。」


「環境?

 まだ話が見えねえな。」


「…。

 僕のオーラルフィールドは喉の集中が少し切れるだけで解除されてしまう。

 ヘリウムガスの効果時間関係なくね。

 さらに今日はもう既に一回使ったから二回目はより不安定さは増す。」


「そうだな。

 それは俺もなんとなく知ってる。」


「だが、ある条件を満たせばガスの効果が切れるまでは安定してオーラルフィールドを維持できる。

 それはある一定の広さ、まあ要は自分の部屋と同じくらいの広さの部屋にいることだ。

 僕の喉と耳は自室用にチューニングしてあるから音響的に似た環境なら同じパフォーマンスを出せる可能性は高い。」


「なるほど。

 慣れてる環境なら喉に割く集中力のリソースも小さくて済むってわけか。」


「学校で言うとズバリ校舎裏の倉庫。

 何回も検証したし実戦で使ったこともある。」


「その時は上手くいったのか?」


「その時はね。

 後で結局バレてしまったけど。

 でも今回はしくじらない。

 どうにかしてあの二人を倉庫に誘導してメロメロにする、海外に行っても繋がる連絡先をゲットする。

 そして今度こそ僕のハーレム生活の幕開けにする!」


「なるほど~。

 そりゃ楽しみだな。

 案内役は昼休み、教室まで二人を迎えに来るんだとよ。

 じゃあ俺は先帰ることにするわ。

 明日の吉報を楽しみにしてるぜ。」


「お前に言われずとも必死で食らいつくわ。」


 僕はそう吐き捨てて教室の方へ足を向けた。

それに併せて福島も付いて来ようとしていたが、福島はまるで深い霧が突如開けたかのように顔を軽く上向けた。


「…あ、そう!

 いいものがある。

 これ貸してやるよ。」


 そう言って福島が手渡して来たのは太い環の鎖型のグラスコードが付いてるサングラスと縁だけ金に色づいている黒の不織布のマスクだった。


「なんだこれ?

 …。

 ガチで何?」


「変装だよ。

 その声のまま素顔で二人に話しかけるわけにはいかないだろ?」


 確かに…!

僕はとにかく二人とどう接触するかしか考えていなかったがそれは盲点だった。

呼び出した後倉庫の中でオーラルフィールドを発動するという条件なら、倉庫外で普通に話しかけたら僕のことをゲロボイスの人と当然認識されてしまう。

いつもとは全然違う状況だから顔の事なんて気にしてなかった。

だけど…。


「なんでお前こんなもの持ってんだよ。」


「んー。

 まあ陸上やってると日差しが気になるだろ?」


「ああ、そういうことか…。

 いや、にしてもこんなの付けてたら普通は笑い者だろ。

 ちょっとかっこ良いけど…。」


 僕はこういう厨二心をくすぐるものが昔から好きだった。


「それに道案内しなきゃいけなかったからな。」


 ?

最後のセリフは良く分からなかった。

だが、これは確実にありがたい。


「遠慮なく借りさせてもらう。

 その代わり明日の朝、清々しいニュースをお前に届けてやるよ。

 今すぐ爆発しそうな鬱憤でも吹き飛ばすくらいのな。」


「おう!」


 福島は飾らない気さくな笑みで答えた。


 ~~~


 斑鳩さんは作法室を飛ぶように出てきたのにも拘わらず息を弾ませることもほとんど無く端然とした様子だ。

誰も見ていない所でも変わらない。

その一貫性から滲む本物の淑女感に僕はますますときめいた。

必ず彼女を手に入れなければならない…!と思わされた。


「汀の方にだけ行ってくれればいいのに。」


 僕は驚いた。

斑鳩さんが独り言を呟いたからだ。

曲がり角からこっそり様子を見てる限り電話している様子は無いし内容も気になる。

行ってくれればいいのにって勧誘会の事?

汀って誰だ?

そういえば蒼井さんの名前だったっけ?

でも二人は他人同士のはず…。

名前で呼ぶような仲なわけないよな。

違う人の話か…?

…そろそろ彼女がこの突き当りまで来てしまう。

まだ全然考える時間が足りていないが、もうここで出ていくしかない。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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