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第18話 ”仮転校”

「言わずとも僕には分かる」第18話です。

お読みいただきありがとうございます。

「何のつもりだ?

 おちょくってるんなら本当に許さないぞ。」


 トイレ前の水飲み場で僕を待っていた福島へ僕は噛みつくように問い質した。


「まさか。

 さっきの白鳥の話聞いてからお前ずっと血眼になってるから一回落ち着いて欲しくてな。」


「白鳥?」


「白鳥遥。

 さっき廊下で話した奴。」


「フン。

 余計なお世話だよ。

 逆にそれだけ言うために呼び出したんじゃないだろうな?」


「…。

 今日の放課後、ウチの全部活が新入生勧誘会がやるんだとよ。」


 新入生勧誘会。

急に飛び出したその言葉の意味を考えてみたが二人との繋がりがまるで分からない。


「何のことだ?

 それもう春にやったやつだよな?」


「まあ聞け。

 お前の疑問はもっともだ。

 四月にやったのにまたやる意味あるのか?

 ってのはな。」


「ああ。

 新入生って言ったってモチベあるやつは大体もう部活決めてるだろ。

 別に今年の一年が特別に帰宅部多いわけでもないだろうし。

 再募集の必要性も感じないけど。」


「でも、今日二人来ただろ?」


「え!?

 まさかあの二人のためだけに!?」


「そう言う事らしい。

 俺も二、三日前に陸上部のラインで初めて知ったんだが斑鳩と蒼井のためだけに勧誘会をやるから今日は練習休みらしい。

 まあ、見学のために見世物として走ることはあるかもしれないって話だがサボろうかと思ってる。

 それなら行っても意味無いしな。」


「お前なんでそんな重要なこと黙ってた?」


「別に教えてなんて言われてないぞ?」


「でも僕が知りたがる情報だってことはなんとなく思ってんじゃないのか?」


 問い詰められると福島は悪どく笑った。


「いや俺もまさか明日には居なくなってる可能性なんて考えて無かったんだよ(笑)

 今日なんかあるんだな~としか思ってなかったわ(笑)

 …まあ、直ぐ居なくなるかもしれない相手に派手な勧誘会なんてやっても意味あるのかって話だよな。

 こっちが勝手に目輝かせて歓迎してるだけだからあの二人からしたら多分知ったことじゃない、内心迷惑な話なんだと思うぞ。」


「…。

 今日二人だけのためにこの高校の部活が総出で勧誘会やることは分かったけど、また四月と同じ方式なのか?

 ほら、校門そばでチラシとか配って宣伝しまくる感じ?」


「んー、それは違うな。

 俺が知ってる限りだとそれぞれの部活で選出された案内役が部室なり活動場所に連れて行って自分の部をアピールする感じのはず。」


「そう言う事か。

 なら取り合えず、放課後直ぐに校門を出て取り巻きを連れたまま帰られるっていう最悪のパターンは回避できそうだな。

 学校に居る内に斑鳩さんだけでも連絡先を交換出来れば今日最低限の目標を達成できるってわけか。

 そうすれば仮に明日居なくなってもまだ接点は残る。

 蒼井さんは明日以降にして斑鳩さんの事だけ考えてればいい。」


「それは多分違うぞ。

 蒼井だって同じだ。」


「は?

 蒼井さんはそんな噂無いじゃないか。」


「確かに噂こそ入ってきてないが、清峰を辞めて特にこれと言った動機も分からずに緑丘に入って来たのは蒼井も一緒だ。

 斑鳩が単に言いふらすタイプだったってだけかもしれねえし。

 まあ仮転校なんてシステムは聞いたことが無いが、清峰は留学以外にも海外の有名校に転校すること自体はよくあるらしい。

 元々秀才が集まる所でもあるからな。

 もしかしたらあっちじゃよくあるパターンなのかもしれねえな。

 なら蒼井にも同じ可能性があると考える方が自然だろ?」


 確かに。

コイツ普段おちゃらけてる癖にやたら思考は筋道立てってやがる。


「そもそもなんでそんなに二人を特別扱いするんだよ。

 確かに特別だけど部活にとってもそんなメリットあるのか?」


 賢い福島が少し癪なのと、僕が今日クリアしなければならないミッションのハードルがまた上がったこと。

それらで気持ちの整理が追いつかなくなり悔しさからか思わず本題とはズレたことを聞いてしまった。


「まあ、あるんだろうな。

 斑鳩がどこの良家の子供かは知らないが多分親は超がつく大物だろう。

 そういうヤッピーを部活の顔として入れておくと学校での存在感が上がるかもしれない。」


「存在感が上がって良いことあるのか?」


「それはある。

 分かりやすいので言うと、部員が勧誘しやすくなったりとか学校の施設を比較的優先して使えるようになったりするな。

 顧問としてもそういう奴を抱えた部活の方が学校からの心証は良くなる可能性がある。

 それに少し際どい話だが、目立つ部活の方が部費の配分も大きくなりやすいらしい。」


「なるほどな。」


「蒼井は水泳で自由形の県新記録更新してたし、他の競技でも全国大会レベルの身体能力なら兼部でも良いって運動部は欲しがるに違いねえ。

 それに蒼井だって清峰に居たんだから斑鳩ほどじゃないかもしれないが、それなりには“お嬢様”のはずだ。」


「そうか…。

 でも県新記録ってのはさっき教室で誰かが言ってたのとは少し違くないか?

 全国大会の決勝行ってるんだからそれくらい当たり前じゃない?」


「…。

 そうそう。

 そういう事だ!」


 福島は一拍遅れて大きく頷いた。

なんか急に歯切れが悪くなったように感じたが僕は気にはならなかった。


「くそ、そいつら二人をモノとしてしか見てねえじゃねえか。

 下心で動きやがって。」


 憤慨する僕を見て福島はニヤついた。

『どの口が言ってんだか(笑)』


 福島はそれを誤魔化すように僕をなだめる。


「しゃあねえよ。

 やっぱ清峰ってブランドじゃ結構デカいニュースになっちまうからな。

 顧問から聞かされた時は部室も大騒ぎになってたわ。

 陸上部に女子居ないのにな(笑)

 スポーツ的に女子一人でも入れるっちゃ入れるけど態々(わざわざ)飛び組んでくるわけ無えのに(笑)」


「まあ分かった。

 取り合えず感謝しとく。

 ありがとう…。」


「良いってことよ。

 で、どうすんだ?」


「…。

 この状況で僕が取れる策はもう一つしかない。」


「というと?」


「それは…校舎裏の倉庫に二人を集めることだ。」


 ~~~


 福島の情報が確かならこいつらはそれぞれの部活を代表して斑鳩さんを部室まで連れていく案内員ってことだ。

こいつらが居ない内、もしくは僕が何とか引きはがして斑鳩さんが一人になったところであの辛気臭い校舎裏倉庫まで来てもらえるように上手く伝えなければ…!

だが、斑鳩さんの方から案内が来たのは好都合だった。

蒼井さんは水泳選手という側面がある以上、少なくとも水泳部の見学で時間を稼げることはほとんど間違いないからだ。

まあどうせ入るなら見学せずに入部だけして帰るなんて可能性もあるがもうそこは祈るしかない。

今は出来るだけ早く斑鳩さんをここから連れ出すことを考えるんだ。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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