第15話 オスとメスの仕組み
「言わずとも僕には分かる」第15話です。
お読みいただきありがとうございます。
「おーい。」と僕の眼前で振れる福島の手の平が考え事に最高に邪魔だったのでブンとそれを手で払った。
なんてことだ…。
あの二人、最高過ぎる!
それぞれ完成されたキャラ!
清峰出身というこれ以上ないステータス!
そして何よりあの容姿…!
少なくとも僕が知ってる中じゃSNSで知り合った配信のリスナー含めてもぶっちぎりでトップだ!
あの二人を手に入れることができれば…!
僕は昔いた一人の元カノのことを思い出していた。
僕が緑丘に入ってから三番目に付き合ったアメカジ系で色白ギャルの高梨先輩。
当然速攻でフラれているのが実は初回のデートの時すごいことが起こったのだ。
その日は確か少し遠出して原宿でデートしていた。
気合入れて練ったプランの通り、クレープを一緒に食べ歩きして古着屋で試着を繰り返す彼女を褒めちぎったりした。
その後、僕らはゲーセンのプリクラコーナーに行った。
ムードがそれなりに良くなってきていて手ごたえを感じていた頃だった。
偶然、高梨先輩の友達と鉢合わせしたのだ。
で、少しの間立ち話になった。
言っても僕は彼女の友達とは顔見知りくらいでしかないのでほとんど喋らずに端っこで会話が終わるのを待つことしかできなかった。
僕に都合の悪いことを話されてないか会話の内容を耳に挟みながらも早く終わらないかと気を揉んでいた時だった。
僕の手を見知らぬ誰かがグイッと引っ張った。
あれよという間に僕は連れ去られた。
その時は顔が見えなかったがその人が僕の腕を握る手の爪はマニキュアがゴテゴテについていたのが悪い意味で印象的だった。
連れてこられたのはゲーセンの女子トイレ。
洗面器の前まで思うがままに連れてこられた僕の顔は冷や汗でびっしょりだった。
なぜなら五、六人の女子に囲まれていたから。
しかもゴテゴテとしたピンクリボンがいくつもついたフリルのブラウスを着た人や、黒木調で十字架が施されているテレコトップスを身に着ける人もいたし、全員がそんな感じで正に王道地雷系の集団だった。
聞いたことなんてなかったけど東京じゃこんなハイエナみたいな弱男専門のカツアゲがあるのか?なんて考えて僕は肩を震わせていた所で、一番前の女が口を開いた。
「私たちも彼女にしてくれませんか?」
「え?」
「私達、あなたに一目ぼれしたんです。」
「ええ!?」
僕はパニックになりかけたが心を落ち着けて一旦よくありがちな可能性を考えた。
「なんか誰かと勘違いしてねえか?
なんか有名人とか。」
当時もYoujubeはやっていたが登録者一万も居ないし、何より顔出しは今ですらしていないので《奏》だと見抜かれていることは無いだろうということもあった。
「いや、違うの!
私達は今日竹下通りで初めてあなたを見た。
むしろ見た目だけで言うならあなたの彼女さんの方が気になってて。
ああいう感じの色白のギャルに憧れてるの…。」
「じゃあ余計分かんねえな。
なんで俺をここに連れて来たんだ?」
するとまた違う女が順に喋り出した。
「ああいうタイプの人が見込んだ男ならいい男に決まってる!
根拠は無いけど私達全員そう思ったの。」
「理屈なんて関係ないじゃん?
ビビッて来ちゃったんだから。」
「ねえ難しいことは置いといてまずは都合のいい女で良いからさ、私達の彼氏になってよ。
まだ、やきもちで刺したりしないからさ。
最初はね。」
女子軍団はキャハハと笑っていた。
僕はその時身のすくむ思いを感じていた。
だが感じたのは恐怖だけではなかった。
それ以上に自分のモテ度が上がったことに胸が高鳴っていたのだ。
後で調べたらこういうのを生物学の理論で《配偶者選択の模倣》というそうだ。
一つの突出した要素に引っ張られて全体の評価も歪んでしまう《ハロー効果》にも似ている。
要は優れた個体の下した判断に同調が起こりがちな事象のことだ。
そして、よく考えてみたらそれは生物の原理的なシステムとして何の不自然も無い当たり前のことじゃないかと気付いた。
理論を体系化したに過ぎない。
トラクエモンスターズだって強いモンスターを連れてるほどスカウトアタックが決まりやすい。
そう言う事なのだ。
…まあその後のことはというと、僕と地雷軍団が仲良さそうに話してデレついているのを高梨先輩に速攻見つかった。
「ほ、本当に浮気…?
さっき皆が言ってたこと本当なの?
神崎君…。」
と女子トイレに飛び込んできてこちらに困惑の眼差しを向ける彼女を見て、僕はうっかり喉の集中を解いてしまったのだ。
後はお察しだろう。
変化した声の落差に業を煮やした高梨先輩はその日が終わった後も僕のことを学校各所で愚痴りまくり僕のモンスター像は確かなものになった。
三か月ほど前の話だ。
だがこの仕組みをちゃんと利用できさえすれば僕だって“ハーレムもの”の主人公みたいな生活を手にできるはず…!
しかもはっきり言ってあの転校生二人はビジュアル的に高梨先輩すら遥かに凌駕する器なのは間違いない。
さしづめ高梨先輩が〇マならあの二人はエ〇タークやダーク〇レアムくらいの強さがある。
容姿のレベルを肉体的な強さに置き換えたらね。
分かりやすい例えで気に入った。
それくらい僕の人生にとって今は正念場なのだと僕は今確信した。
僕は興奮の勢いで大振りの咳が出そうになったが何とかそれを払った。
「おい、大丈夫か?」
「福島渉、僕は二人を絶対に落として見せる。
僕のハーレムのために。」
「…。
でもお前らしくて良いかもな。」
?
何が“でも”なんだ?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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