第11話 odd rumor
「言わずとも僕には分かる」第11話です。
お読みいただきありがとうございます。
教室に入ってからも当然僕について
「うわ。来たよ。」
「良く来れるな。」
「尊敬するわ、もはや。」
等ひそひそと喋る声があちこちで聞こえたがすべて無視した。
ようやく教室の端、自分の席に着く。
顎に手をついて窓の外を眺めながらホームルームの始まりを待った。
耳を澄ますと鳥のさえずりが聞こえる。
体育館の入口にある巣から飛び立つツバメ。
騒がしい教室と対照的に世間様の事など何も気にせず鳥は鳴きたい時に鳴き、飛びたい時に飛ぶ。
そのカオスの狭間で「早く学校終われ」と心内にぼやいているのが僕の学校での日常だった。
久しぶりだなこれも。
別にここまでボロクソに言われてなくても良いじゃないか、とは思う。
そもそも大多数の人達には僕は一切関与してないし、声を掛けた一部の人にもデートに誘ったり連絡先を交換したりしたかもしれないが特にセクハラじみたスキンシップや暴言を吐き散らしたわけじゃない。
ハーレム思考もあるだろうが、オーラルフィールドが何らかの原因で解けた結果、それまで僕が育てたイメージが崩れてしまった結果の失望の方が多分大きい。
後、僕は普段喋らないからその不気味さもあって妄想が妄想を育てているのだと思う。
オーラルフィールドの代償で声が終わっている時も多いからそれは仕方ない。
だがその結果、ばい菌、汚物、とか言われるのだ。
まあ、そういう意味では誤解されている部分もあるかもしれないが元は僕が蒔いた種だし、弁明するつもりもない。
多少憂鬱だが僕は元々一人だし僕には配信がある。
学校はこいつらに負けたと思われたくないから来ているに過ぎない。
どうでも良い。
そんなことより配信こそ僕の生きる道で、それを疎かにしないことが大事だ。
この時間も配信のネタでも考えて時間を有効に活用しよう。
そうは思ったが沈んだ気分を引きずり続け何も思い浮かばないまま僕は黄昏続けていた。
登場の瞬間こそうるさかったが、皆すっかり僕のことを忘れて和やかに話している。
そうして五分くらい立った頃。
ホームルームのチャイムが鳴った時に福島が教室に滑り込んできた。
こいつ先に行くとか言ってなかったか?
「危ねえ、ギリセーフ!」
「よっ渉!」
「おはよー。」
騒がしく現れた福島にクラスの奴らが顔を合わせる。
掃除ロッカー周りの机にたむろっている男子グループにも、教壇で喋くる女子グループにも福島は万遍なく爽やかに軽口を叩いていた。
一通り済むと最後に僕の隣の席に座る。
「おう、宮沢先輩どうだった?」
「…。」
ひそやかに尋ねられたが僕は無視した。
その様子を見て福島は察したような顔で軽く頷くような仕草を取ったように僕は見えた。
そう言うのが嫌なんだよ。
「そういえばなんで今日お前最初からイケボにしてきたんだ?
いつも最初からじゃないのに。」
僕は耳を覆って机に伏した。
僕以外と喋ってて欲しい。
「はーん、分かったぞ。
最初から誰かナンパしてやろうと思ってきたんだろ。」
図星だ。
「にしてももったいないことしたな。」
は?
「今日はとびっきりの転校生が来るっていう噂しらないのか?」
「なんだって!?」
つい声を出してしまった。
僕のしゃがれた発声は水を打ったように教室中を静寂に導いた。
僕は再び机に顔を埋める。
空気が元通りになるまで待った。
落ち着いてから福島の方に耳打ちする。
「とびっきりの転校生!?
マジで言ってんのか?
女子?」
「ああ。
しかも二人いるらしい。」
うっわマジか。
そんな可能性考えてなかった。
学校に行く意味もうないと思ってたけどそのパターンがあったか!
しかも二人!
確かに宮沢先輩に一回分使ったのはミスったか?
一瞬そう思ったが落胆はしなかった。
僕は鞄から缶を取り出して福島の方へクイっと横に振って見せた。
「予備の缶か…!
持ってきてたんだな。
流石蒼汰。」
そう褒めるので存分に見てもいいぞ、もっと称えよ、という態度で缶を手渡した。
「ナンパに関しての準備はぬかりねえな。
でも今日は辞めといた方がいいんじゃ…。
…ン?」
缶を手にした福島は何か首を傾げていた。
だがその期待とは違った反応に僕が不満を漏らすことは無かった。
不意に走ったある閃きが僕の脳裡を過っていたからだ。
なんでこいつは“とびきり”の転校生ってわかったんだ?
噂って言ってたのに。
会ったことあるのか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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