第53話 騎士団長…ロシアン・マフィアその6
しばらくして寺の敷地に停車している警察指揮車両に戻ってきた有馬新一隊長が、被害状況をモニターカメラに向って安全な会議室にいる警視総監や都知事にむかって報告をしていた。
「殉職した隊員は六名、他に銃撃やあのグレネードランチャーでの重軽傷が十三名です。」と言って元気なく俯いていた。
三十名いた隊員の六割が倒されてしまったのである
「我々の持っている武器ではまったく手に負えませんでした‥‥」とその反省する声は弱弱しかった。
SATからの銃撃がやむとロシア人達も攻撃をすることなく機動隊隊員の救出の邪魔をすることはなかった。
敷地に負傷して血だらけで倒れていたSAT隊員を救出のために機動隊の隊員は通常の盾を二重にして慎重に近づき、倒れているSAT隊員を引きずるようにして安全な場所まで引きあげてきたのである。
すぐに待機していた消防の救急隊員にストレッチャーに乗せられ救急車で近くの病院へと運ばれていった。
廃車中古車買取センターにつながる国道411号滝山街道の半径500mの場所には、規制の為に警察がパトカーで国道を通行止めをしている場所まで、各社マスコミが大勢あつまり派手な銃声や短機関銃の音に爆発音とそれに道路の先で立ち上がる黒い煙、とても平和な日本では、普段聞くことのないような銃撃による騒音に各社のリポーターはTVカメラに向かって「た、大変ですこの先で、ついに戦闘が始まりました!」と声をからして生放送をしていた。
銃撃の音がやむとしばらくして現場から次々とサイレンの音を鳴らしながら列をなしてやってくる救急車をマスコミは撮影、その白いボディにはSAT隊員達の出血で赤くなった手形がいくつもついていた。
その映像を見たお茶の間の国民はひょっとしたら警察が敗北したのではと感じていたのである。
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東京都の市ヶ谷にある防衛省の統合幕僚監部の会議室には五代宗一統合幕僚長を中心に影山陸上幕僚長、竹之内海上幕僚長、神代航空幕僚長の自衛隊の陸海空の将官とその副官達が江藤律子東京都知事からの、治安出動の依頼を受けて緊急会議を開いていた。
会議室のモニターには、ロシア人からの銃撃でSAT部隊が殲滅されて行くようすが警視庁から送られてきたドローンの録画映像によって鮮明に写し出されていた。
「これは、ひどいな~‥‥」その様子を五代統合幕僚長は眉間にしわを寄せて見ていた。
「最初にマスコミのヘリコプターを撃墜したのはロシア軍が使っている最新の携帯式対空ミサイルシステム『9K38 イグラ』ですね~」
「あんなものが、ロシア人のマフィアの連中が持っているなんて‥‥‥」
「あっ!、SATの装甲車が‥‥あれはRPG-7「携帯対戦車グレネードランチャー」じゃないか‥‥あんなものまで~これじゃロシア軍を相手にしているようなものだ!」
「連中の使っているアサルトライフルも最新の軍用銃だ!」各国の陸軍の兵器に詳しい陸上自衛隊を統括する影山陸上幕僚長が説明をしていた。
「あんなものを使いこなすなんて、連中はただのマフィアじゃないですよ。」
「そうだ、警視庁の資料によるとここには、元ワグネルに所属していた隊員がこのマフィアの組織にいて、このアジトに潜伏しているそうだ。」と五代統合幕僚長が説明を始めた。
「連中は、日本で覚せい剤を卸していたり、人気の国産高級車の盗難車を日本の裏組織から引取り欧州の市場へ流したりしているようだ。」
「ワグネルといったらロシアの準軍事組織で、民間軍事会社(PMC)として活動してきた傭兵集団じゃないか~戦争屋‥プロ集団ですよ‥‥」と影山陸上幕僚長が驚いていた。
「今回はあの、浅草で起きた警官殺害事件の実行犯として指名手配していて、連中のこのアジトを見つけて身柄を拘束するために警察も全力をあげたわけだが‥‥‥」
「返り討ちにあったわけですね……警視庁のお偉方も身内を殺されて功をあせったんでしょうか、もっと慎重に連中を調べてから動けばよかったのに」
「いくら元ワグネルでも陸自さんの16式機動戦闘車を出してあの105mm砲で事務所に2~3発撃ち込めばすぐに片付くんじゃないですか」と言うのは神代航空幕僚長
【16式機動戦闘車とは歩兵支援や軽戦車・装甲戦闘車両の撃破を目的とした高速装輪戦闘車両で8つのスタッドレス・タイヤを使い、舗装道路では時速100kmを出せるため、トランスポーターで運ぶ戦車とは違って、自力で長距離移動でき増加装甲を使い対戦車火器を想定した防護力がある。装備は105mmライフル砲・12.7mm重機関銃M2・7.62mm機関銃】
「そうですね、これは影山陸上幕僚長、練馬に駐屯している第一師団の司令部に指示してもらい中隊を派遣してこの元民間軍事会社にいたとんでもない連中を殲滅してやってください。」
「フフフ、、お任せ下さい、こんなヤバイ連中をいつまでも好きなようにさせて起きませんよ」と張り切る影山陸上幕僚長
海自の竹之内海上幕僚長は”こんな連中を相手にするには、海自は出番がないな~”と思って陸自の影山陸将と幕僚長との話しをのんびりと聞いていた。
そこへ統合幕僚監部の連絡士官が慌てて会議室に入ってきて一礼すると横須賀に司令部をおく”第一水上戦群”からの緊急連絡メモを竹之内海上幕僚長へと渡してきた。‥‥
それを読む彼の顔色が変わったしまった。
いきなり立ち上がりその場にいた五代統合幕僚長に向って
「た、、大変です!‥硫黄島近海での訓練から横須賀に帰還中だった”第七水上戦隊”のイージス艦「こんごう」から緊急連絡がきて艦に装備しているトマホーク巡行ミサイルが東京都内の目標に向ってかってに発射されてしまいました~!」と”何かの間違いであってくれ~”と思いながら統合幕僚長に大声でメモの内容を報告をした。
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少し前‥‥‥防衛省をハッキングして使えそうな兵器を調べたエーアイは一つの兵器を選んでいた。‥‥
横須賀を母港にして司令部を置く海上自衛隊・”第一水上戦群”‥‥艦載機発着用に艦首から艦尾まで全通式の飛行甲板発着用を備え海上自衛隊史上最大の自衛艦でヘリコプター搭載護衛艦「いずも」全長248mを旗艦として二隻のイージス艦に十隻のミサイル駆逐艦で編成されていた。
その中の”第七水上戦隊”イージス艦「こんごう」中心に護衛駆逐艦「あまぎり」・「ゆうぎり」・「はるさめ」を引き連れ硫黄島の近海で対潜水艦訓練を終えて母港の横須賀に向っていた。
【”イージス(Aegis)”名前の由来はギリシャ神話のゼウスが娘アテナに与えた盾「アイギス(Aegis)」で、あらゆる攻撃から守る象徴として名付けられました。イージス艦 とはイージスシステムを搭載した高度な防空・多目的戦闘艦のことでシステムの最大の特徴は、遠くの敵機を正確に探知できる索敵能力、迅速に状況を判断・対応できる情報処理能力、一度に多くの目標と交戦できる対空射撃能力を備える画期的なシステムで艦隊を守る盾としている重要な艦である。】
「右前方に八丈島が見えてきました!」とイージス艦「こんごう」の艦橋で双眼鏡を覗いていた当直士官が艦長に報告した。
「そう、それじゃ予定通り今夜には横須賀につきそうね……」とブリッジの艦長専用椅子に座り返事をするのは、桐谷玲子一等海佐(55歳)海上自衛隊初の女性イージス艦艦長、高校生の時に湾岸戦争のニュースを見て愛国心を覚え、防衛大学校への進学を決意する。
家族の反対を押し切り、女子の入学が自衛隊、初めての一期生として入学した内面に確固たる意志や信念を持ち、外圧に屈しない精神的な強さをもった女性だった。
女性として初めての一等海佐、無事に訓練を終えて”第七水上戦隊”を引き連れて横須賀の艦隊基地に向っていた。
その時彼女の前にある艦内電話が鳴り響いた。
すかさずその受話器を取り耳にあて「はい、艦長の桐谷です。」と答えると‥‥
「こちら、戦闘指揮所 (Combat Information Center・CIC)の当直士官の河村2等海尉です。艦長‥た、たいへんですイージスシステムが何者かに乗っ取られました~」
「そ、操作が、できません~ああ~イージスの武器システムでトマホークの一基に目的の座標がかってに入力されています。止められません」
「す、、すぐに電源を切るのよ!」と叫ぶ桐谷艦長
「ダメです~それもできません‥‥」
「こ、この座標の‥‥も、目標は東京都のあきる野市方面です~」
「もうなにをしても止められませ~ん!」と泣き叫ぶように言ってきた。
【トマホーク (BGM-109 Tomahawk) は、アメリカ合衆国で開発された巡航ミサイル、あらかじめ設定されたルートに従い自動で飛行して目標に向かうことができる。誘導方式は、GPS(全地球測位システム)に加え、TERCOM(地形等高線照合)とDSMAC(デジタル景観照合)の組み合わせによって極めて高い精度を実現していて、弾頭は約450kgの高性能爆薬を搭載し、堅固な目標や広範囲の目標に対して効果的な打撃を与えることができる。】
「艦長!~船首にあるMk.41 垂直発射システムVOLの三番セルのキャニスターのフラップが開きました~」と艦橋にいた当直士官が叫んだ!
何もできないまま、急いで艦橋の前部窓に走り寄る艦長の桐谷玲子そこから見える艦首の八基ある垂直発射システムVOLここには複数の種類のミサイルを多段に搭載していて三番セルには対地・対艦攻撃に高い精度もち低空飛行してレーダーを回避し精密攻撃ができる長距離・精密誘導型の亜音速巡航ミサイルのトマホークが収納されている、その射程距離は1600kmあった。
そのトマホークが収納されていたセルのフラップがパカッと開いているのが見えていた。
「ああ~発射されました!」と叫ぶ艦橋にいた当直士官
艦首の三番セルからはいっきに白煙とオレンジ色の炎がもうもうと吹きだし上空数十mに飛び出したトマホークはそこで向きを変えて日本の本土に向けて亜音速に加速して飛び出していったのである。
それを眺めていることしかできなかった艦長と当直士官だった。
つづく、、、




