第47話 騎士団長…現場実習その3
御遺体の反対側にはこの部屋の借主でOLの麻倉静恵が立っていてその彼女としっかりと目を会わせてビックリしてしまった団長‥‥
「えっ!‥‥あなた‥‥私が見えるの?‥‥」と彼女は聞いてきたのである。
遺体が着ているベージュのスウェットと同じ上下を着て団長にしか見えない麻倉静恵もビックリした顔をしていた。
「もう本庁の刑事があらかた調べていったから何もないと思うけど……勉強の為だ、もう一度なにか遺留品がないか見ていくぞ」と指導官の石塚刑事が部屋の方へ行くと……
「了解しました~それでは自分は浴室の方を確認します。」そう言って麻倉静恵に向って顎をしゃくるといっしょに浴室と洗面所の扉を開けて中に入った。
一度、死んでいる団長は霊の存在には敏感になっていた。
「ああ~しっかりと見えているよ~麻倉静恵さん、いったい誰に殺されたんだよ~」
「あああ!、ほんと、本当に見えているのよね……よかったわ~最初に本庁からきていた刑事さん達は私の携帯を調べながら”ふられた元カレの仕業じゃないか~”とか言いながら私のつきあった男歴が悪いからこうなったとか勝手な事ばかりいって失礼しちゃうわ~」
「犯人は隣の大学生よ……田舎には金をもってる親がいて育ちがいいくせに女とは縁のない根暗な奴よ~前からこのマンションの廊下ですれ違うたびにエロイ目で見ていやがって~」
「きっとあいつは童貞よ~」
「”田舎から送ってきた野菜が食べきれないのでおすそ分けです~”とか言いながらやってきたので玄関を開けたら、いきない刃物をもって乱暴してきたのよ~」
「くそ~開けなきゃよかったわ~……私の上に馬乗りになって刃物を見せて脅して体を求めてくるから激しく抵抗したらいきなりブスッ!と刺してきたのよ!」
「フンッ!…私も奴の左手の甲を思いっきりひっかいたから傷が残っているはず‥‥」と言いながら右手のきれいに伸びた爪を見せていた。
「それと返り血を浴びていたから、あの服やデニムは明日が燃えるゴミの日だからきっとまだ奴の部屋にあるわよ‥‥」
「いっしょに行けばすぐ私が探し出すわ!」
「わかったよ…あんたが成仏するようにそいつを捕まえてやるよ~」
”ご主人様~本当に成仏してくれますかね~なんか、まだこの世に未練がありそうですけど~……”
”マ、マジか~一応確認しておくか~”
「あんたを殺した奴を捕まえたら……ちゃんと成仏するんだよな~」
「えっ!……そんな事、知らないわよ~まだ他にも未練はあるけど~なんでこうなったかわからないわ~おばあちゃんから聞いた話では四十九日目に故人の魂が生まれ変わる先が決まるとかいっていたからそれまではいるんじゃないの」
”まあ、面倒になったら俺の神剣であっちの世界に送ってやるか……”
「そんな事より早く隣のあいつを捕まえてギャフンとさせましょうよ~」と催促をする気の短い霊魂だった。
浴室と洗面所の部屋からでると司法解剖の為に御遺体を運ぼうと担当者が担架に移そうとしていた、そこに近づき彼女の遺体の右手の爪を指さしながら‥‥
「石塚刑事、こ、これを見て下さい‥‥爪の先になにかひっかいたのかピンクの皮膚片がついています。」
「こ、これは‥‥抵抗して相手の手や腕にでもひっかいたのではないでしょうか‥‥」とわざと演技をして麻倉静恵から聞いた事を話す団長
「どれどれ~う~ん、確かにこれは重要な証拠かもしれないな~いずれにしても司法解剖でこの皮膚片のDNAも調べるはずだ」
「容疑者の手にひっかき傷があるということは新しい発見だな~よく見つけたな~永瀬巡査、さっそく捜査会議で報告できるな‥‥」
御遺体が外に運ばれると部屋から出て来た二人だったが‥‥ここでまた団長が
「この隣の部屋の住人は何か事件の時に言い争う声とか聞いていませんかね~」と言い出すと
「もう本庁の刑事達が初動捜査でなにか聞いているだろう‥‥」
「でも、勉強の為に私がもう一度、状況の確認をさせてもらっていいでしょうか‥‥」とこれまた演技をする。
「まあ~何でも勉強のためだ~見ててやるから、聞き込みをしてみろ‥‥」と言ってくれた石塚刑事と共に後ろには麻倉静恵もついてきた。
表札には小山雄二の名前がマジックで書いてあり玄関のドアベルを鳴らすとドアチェーンの隙間から根暗そうな小太りの若い男が顔を見せて用件を聞いてきた。
すぐに警察手帳を見せながら「お隣で起きた事件の事で少し話を聞かせてもらえませんか?」と団長が言うと……
面倒くさそうにドアチェーンを開けて「さっきも警察の人に話したんですが~」と言いながらドアを開けてくれた……
その右手の甲を見るとデカい絆創膏……石塚刑事もすぐにそれに気がついて団長と目を合わせた。
すでに麻倉静恵はいつのまにか中にはいって、あっちこっち見渡して台所の片隅にいって‥‥
「あった!‥これ、これに私の返り血を浴びた服とデニムが入っているわよ~」とデカいゴミ袋に指をさし団長に向かって興奮して大声でしゃべっていた。
二人には何も聞こえていないのが不思議に思っていたが、あまり気にせず小山雄二に質問をぶつけた。
「その右手の甲の怪我はどうしたんですか……」
「えっ!……こ、これは公園で猫に引掻かれて……」としどろもどろの答えに石塚刑事もピン!ときた顔になっていた。
「申し訳ありませんが、その台所の隅のあるごみ袋の中身を見せてもらえませんか!」
「ど、ど、どいうことですか…なんで…なんで見せないといけないですか~」
「え~、いいじゃないですか~、逆になんで見せられないんですか……それとも見られてまずいものでも入っているんですか~」
「例えば‥‥隣の麻倉静恵さんを刺した時の返り血で汚れた服とかデニムとか‥‥‥」その言葉を聞いて”まさか!‥‥”と思った石塚刑事
「ウッ!………」と言葉を失う小山雄二………その様子をみて”これは!”と思い、すぐに中に入ってごみの袋をあける石塚刑事、出て来たのは返り血で汚れてた衣類が上下とも入っていた。
「小山さん……麻倉静恵さん殺人の容疑で逮捕します。」そう言って手錠をだす団長だった。
浅草南署の会議室、そこには本庁の捜査一課もきてOL殺人事件の帳場が立って第一回の捜査会議が始まろうとしていた。
本庁の捜査一課で凶悪事件を担当する第一係の加藤係長はすでに被害女性の元カレが復縁を断れ腹いせに殺したのでないかと疑っていた‥‥捜査も殺されたOLの異性関係を調べるよう指示するつもりだったが‥‥
そこへ浅草南署の刑事があわてて駆け寄ってきて……
「加藤係長、た、大変です!‥‥OLの麻倉静恵さんを殺害した容疑者をうちの刑事が引っ張ってきました!」
「な、なんだって~やはり容疑者は元交際していた男か?~」
「いえ~隣の住人で男子学生です!‥‥見習い巡査が隣人を疑い聞き込みをして「ガイシャ」の返り血を浴びた衣類をその容疑者の部屋で発見して”自分が殺した”と白状しております。」
騒然とする会議室……今朝わかった殺人事件が見習い巡査によって昼前に解決したのである。
自分を殺した学生を団長が連行していくのを笑顔で見送る麻倉静恵、団長が振り返り彼女に頭を下げてあげると、もうそこに麻倉静恵は消えていなくなっていたのである。
”自分を殺した犯人が捕まってやっと未練がなくなってこれで成仏できたか~”
”よかったですよ~ご主人様‥‥これで霊につきまとわれたら大変でしたから……”
こうして事件を早期に解決した永瀬巡査……浅草南署での活躍は警視庁まで広がることになった。
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浅草南署でのロシアマフィに所属するアントン・キーロフの事情聴取では、本庁の組織犯罪課の天城係長もやってきて何度も行われていたが、口が硬くず~と黙秘を続けていた。
それでも、5kgのコカインを持っていたことで覚醒剤取締法違反で調書が作られ、東京地検に送検されることになり署員が三人ついて黒塗りのワゴン車での移送となった。
浅草南警察署をでて浅草4丁目の交差点に近づくと前方にセダンの車が割り込み後方にも同じようにセダンの車がついてワゴン車が動かないように止まった。
黒い戦闘服に防弾チョッキをつけて仮面をかぶった不審者が前から二人、後方から二人片手にバールを持った男がワゴン車の窓ガラスを割るとロシア軍用銃・ウダフ拳銃(GRAU6P72)を腰のベルトから抜くとなれた手つきで上部をスライドさせてチャンバーに弾丸を送り込むと運転手の警察官の頭に向って「パ~ン」と乾いた音を立てて射殺すると他の仲間たちも
次々と残りの二人の警官の頭を撃ち抜いた。ものの数分で流れ作業のように手早く仲間のアントン・キーロフを奪取するとそのまま引き上げるセダン車二台だった。
こうして容疑者を送検中に街中で襲われ警察官が三名が銃によって射殺されるという日本中が大騒ぎになる事件が起きたのである。
つづく、、、




