第44話 騎士団長…教場その3
気持ちが昂ぶって目が血走った状態の不審者は団長を刺し殺す気いっぱいで近づいてきた。
包丁を右手で握りながら高く振り上げそのまま団長へ切りつけてきたところを団長は素早くのその右手を掴み捻りあげながら、不審者の背中に回ると腕を相手の背中側に引っ張り、捻り上げることによって相手の腕と肩関節の自由を奪いそのまま地面にひざまつかせ動かないように首根っこを掴んでいた。
「ウッウウウ……殺す、殺す、殺す…みんな殺す!……」とうわ言のように首をまわして団長を見つめながら繰り返ししゃべる不審者
”やべ~奴だぜ!‥‥早く気が付いてよかった、こんな奴が暴れていたらどんだけ被害者がでたんだ~”
”本当そうですよ~見て下さいよ、こんな危険な状況なのに野次馬が逃げないで笑いながらスマホで撮影している馬鹿な連中がいっぱいいますよ”
”あとで馬鹿なこいつらの映像データみんな削除しておけよ……”
”了解しました……ついでに初期化してみんな消しておきます~”
”フフッフ~任せるよ~”
しばらくして数台の神奈川県警のパトカーがサイレンを鳴らして近づくと玲亜が慌てて野次馬をかき分けて3~4人の警官を連れてきた‥‥
「だ、大丈夫ですか~」とその警官は言いながら、団長は掴んでいた腕をその警官に引き渡した、すぐに後手で手錠をされる不審者、その足元には鋭利な包丁が落ちていた。
横浜みなと警察署で玲亜と二人、たっぷりと事情聴取を受けて団長が警視庁警察学校の見習い巡査だとわかると、とんでもなく驚いていた。
「学校には連絡しないでくれますか‥あんまり目立ちたくないです‥…なんせ鬼のような教官に目を付けられると、大変なんで‥‥お願いしますよ~」と団長はお願いしたが‥‥
事情聴取する年の若い巡査は苦笑いしながら警察学校の厳しい事を思い出し‥「そうだよな~…あそこは理不尽なところだからな~‥‥だが書類にはウソはかけないから……あとはこれを読んだ上司次第だ」
そう言って俺達はやっと解放されると、横浜駅の近くで遅い昼食を食べて新宿まで戻りそこで別れた‥‥
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翌日の新聞には小さい記事で”山下公園で包丁をもった暴漢が取り押さえられる!”とのっていたが、数日のあいだは何事もなかった。
ある日、校長室に呼ばれた団長、ノックをして氏名をなのり部屋に入ると‥‥部屋には鬼勝も呼ばれて立っていた。
「君が、永瀬巡査か‥‥横浜みなと警察署の署長は知り合いで君が暴漢を取り押さえたと聞いたよ‥‥」
「よく、そんな危険な人物だとわかったな~」
”くそ~あれだけ学校には言わないでくれ~と頼んだのに~”
「はい、学校の教官から習った職質と不審者の見分けが役にたちました!」とちょっと鬼勝と学校をよいしょする団長
「向こうの署長からもお礼の連絡がきていたんで、君に知らせようと思ったんだが、たいしたもんだ~」
「そうか、そうか~それじゃ~これからもしっかりと警察職務に関する勉強を頑張ってくれ……」と校長の激励と感謝の言葉を頂いて鬼勝といっしょに退室した。
「次の授業は剣術科授業だったな~校長もああ言っていたから、みっちりと指導してやるから覚悟してろよ……フフフッフ」
「………はい、ありがとうございます……」と大声で答えた。
”オメ~こそ~俺の一撃をくらわしてやるから覚悟していろよ~”と思っていた。
体育館には運動着に剣道の武具である頭部を守る面や手首から指先を守る甲手に胸部を守る胴やたれをつけた生徒達が教官を待っていた。
そこへ袴に剣道着を着込み胸部を守る胴には勝沼と名前まで入った正式な道着でやってきた教官、一通りの基本動作として上段の構えや足さばきそこからの面打ちなどを教えて学生の動きを見ていた。
鬼勝は難癖をつけようと団長のそばにくると‥その動きには無駄がなく足さばきも完璧で器用に動かして剣技を続けていたのを見て…
「永瀬巡査…お前はここにくるまえは高校で剣道でもやっていたのか?…」と聞いてきた。
「いえ!……高校では将棋部の部長をしておりました……」と一応、ほんとうの事なのでそう言った……
「しょ、将棋部だと~まあ~だいぶ根暗な事をしていたんだな~だがお前のその足さばきは素人ではできない、誰かに教わっていたんだろう~」
「あっ!……知り合いの爺さんに週末に10ヶ月位習っていました。」
「そうか、やはり習っていたんだな~」と念を押す鬼勝
「よ~し、みんな練習をやめてこちらに集まれ~」と教場の学生を集まて自分と永瀬巡査の前に座らせてた。
「これから、この永瀬巡査と剣道の乱取りで技のいくつか見せてやる、この永瀬巡査も剣道経験者なので十分に私の相手になってもらうことができると思う」
「みんな、しかっりと見ているように……」
”フフフッフ~この乱取りでこいつのなまいきな鼻ぱっしらを折ってやるぜ……”と考えていた
「教官、質問があります…」と団長が鬼勝に聞いてきた。
「もし、剣術の練習で……いや乱取りで教官が怪我をするようなことになったら私は責任を取ってここを辞めないといけませんでしょうか……」
「えっ!‥‥俺がお前と乱取りして怪我をするだと~ハハハハッハ…面白いことをいうな~」
「おい…佐久間巡査部長…もし乱取りで俺が怪我をさせられても永瀬巡査には非がない、練習中の事故でそれは誰にも責任はない、はっきり言ったぞ…分かったな」
「ここにいる学生もみんな証人だ!いいか~」と助教の佐久間巡査部長は頷き……教場の仲間たちも「ハイ!」と大声で叫んだ……
仲間達は要領がよく隙のない団長を見て、心の中で一心に”絶対勝ってくれ~、あの理不尽な鬼勝を打ちのめしてくれ~”と期待した目で見ていた。
”フフフフ~これで思いっきりできるぜ~井上くんや辞めていった連中の仇を討ってやるぜ!”
”ご主人様~ほどほどでお願いしますよ~”と団長の殺気を感じて相手の怪我を心配するエーアイ
こうして助教の佐久間巡査部長が審判して鬼勝と団長の試合のような乱取りが始まった。
鬼勝がカン高い声をだしながら本気でくりだす打突を竹刀で受け流しながらつばぜり合いのようにして近づく団長……
小声で‥‥「なんか、教官の腕は大したことないですね……」ちょっと鬼勝をあおる団長
「な、なんだと~!……」と有段者で全国警察剣道選手権大会で常連の鬼勝は怒りの目でにらみつけてきた。
鬼勝は得意の面打ちで相手をしとめようと、少し後ろに下がると中段の構えから様子を見ていたが、団長がわざと隙を見せると”今だ!……”と上段に素早く構えてから一瞬のうちに踏み込んで闘争本能をあらわにした右頭上からの打ち下ろしを団長の頭部に向って会心の一撃を打ち込んだ!……
同じように中段に構えていた団長も鬼勝の会心の一撃に合わせてすばやく振りかぶってそのタイミングを逃さず、体捌きでかわしてまっすぐにふり下ろし相手の竹刀がのびてくるところを出会い頭に、鬼勝の竹刀をそのまま右ななめ前に打ち落す……そして素早くもう一度振りかぶると思い切り、鬼勝の手首から指先を守る右手の防具甲手に向かって重い一撃を与えた。
「バシ~ン…”パキッ!”…」と手首の骨にダメージを与えた。
竹刀を床に落として右手首を左手で押さえながら膝をつき痛みを我慢する鬼勝
周りの見ていた仲間達からは「オッ~オ~」とどよめきが起こる。
「な、なんだ~今のは…」と自分の得意な面打ちが決まったと思った瞬間に残像を残すように体さばきで竹刀をかわしその剣と剣の交差する瞬間でそれを打ち落とし間髪を入れずに振りかぶって相手に一撃をあたえる技……鬼勝はその技を知っていた。
「なんで、なんでお前みたいな奴が剣技『切落とし』ができるんだ!~」
「先ほど言った剣術を教えてくれた知り合いの爺さんに教えてもらいました」
「えっ!‥‥そ、その爺さんとは……ま、まさか300年以上続く古武道の天城神道流の伝承者で人間国宝の天城信義先生のことか?……」
全国警察剣道選手権大会や他の剣道大会にも毎回、「VIP」として招待され大会の初めに模範演技を披露したり剣道をやっている者にとっては憧れの存在…神のような人物だった。
”あのスケベな師匠が人間国宝だって~ウソだろう”と普段の師匠をよく知っていて逆に驚く団長
「な、なんで~、お前が天城先生に教えてもらっているんだ~」
「あの~今は”師範代”の免状をもらってからはもう教える事はないと言われてたまに夕飯をごちそうにになってるくらいです。」
「お、お前があ、あの”天城神道流”の師範代だって~」そ、そんな事があるのか~と驚く鬼勝……明らかにそれは自分より上位の証である。
「それより、教官の右手は大丈夫ですか‥‥」と近づくと助教の佐久間巡査部長も近づき鬼勝の武具を外して右手首を見るとそこは青く腫れあがっていた。
「手首の骨が折れているかも知れません、すぐに医務室に行きましょ……」と言って教官を立たせる佐久間巡査部長
「ああ分かった、これは俺自身の指導責任だ永瀬巡査にはなんの関係もないからな…みんなも分かったな!」とその場で見ていた学生にも念を押して佐久間巡査部長と医務室に向かう鬼勝だった。
それから診断で右手首の剥離骨折でひと月ギプスをして首から三角巾で右手を吊るす事になり、学校にきてもチョークが持てないので助教の佐久間巡査部長が臨時教官となっていた。
おかげで井上くんをはじめ同じ教場の運動の苦手な数人の仲間の体力テストは甘い判断で無事に合格のC判定をもらっていたのである。
つづく、、、
次の投稿は‥‥未定しばらくお待ちください。
作者




