第31話 騎士団長…体育祭に走る。
目黒のひき逃げ事件の事態は急変した。
目黒”西”警察署の警察官を引き連れた久我鷹司検事が、横浜の八神博隆夫婦が住む高級マンションの入り口に入っていった。
エントランス手前の立派な自動扉の前で部屋番号を押して、応対にでた家主の八神博隆が見ているインターフォンのモニターカメラに向けて、裁判所が発行した逮捕状を見せながら、「八神博隆! 目黒の女子高校生ひき逃げの容疑でお前に逮捕状が出ている。すぐにこの施錠をあけろ!」と大声で発した。
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TVのニュース番組では目黒のひき逃げ事件の”本当の犯人が八神博隆だった”と言う内容で盛り上がっていた。
団長はすっきりとした顔で、おばあさんが作ってくれた夕食のハンバーグを食べながらニュースを見ていた。
”ご主人様、ついにあの息子が捕まりましたね~”
”ああ、だがなんかこの世界は本当に面倒だよな~、犯人が分かっていても証拠とやらがないとなんにもできないだからな~”
”俺達は領民に罪をきせるような悪い貴族には、闇夜の夜に覆面を被って盗賊の仕業で成敗していたからな~フフフフ”
”えっ!、権力に従っていたんじゃないんですか~”
”そんなわけね~だろう~、罪を被せられた領民はわざと牢獄の移送途中に逃がしてやってたよ~”
”さすが~ご主人様です~”
”それにしても、ばあさんが作ってくれた、このハンバーグはうめな~、このタレが絶品だぜ~”
そう言って今日もまた三杯飯を食べる団長だった。
天城達也もこのニュースを見ていた。
結局この事故のすべての責任は八神博隆が被った、父親に迷惑が掛からないようにあの弁護士が知恵をつけたのだろう、身代わりの運転手も自分から頼んだと言って父親は何も知らないと言い張った。
自首してきた運転手、本人は誰から頼まれたのかは完全黙秘を続けて釈放された。
被害者への弁済も相当な金額が渡ったのかあまり騒ぎはもしなくて、娘さんのケガの状態も奇跡的に元のように回復したことから、ひき逃げ事件としては罪は軽く済み実刑ではなく執行猶予がついたとんでもなく軽い罪となっていた。
被害者家族からの減刑要請もあったんだろう、さすが黒い事件をグレイにできる優秀な影山弁護士だ、
自由民政党の幹事長の八神辰巳は、息子の不祥事をすぐお詫びしていたが、この身代わりについては”何も聞かされてない”としらばっくれて、会見をしていた。
目黒東署の署長、貝沼誠一警視正は渋谷の大型ハイビジョンで流れた疑惑で、きちんと調べないで上級国民側に立って事件を進めようとしたんではないかと誹謗と中傷でネットでさんざん叩かれ、警察の権威を思いっきり下げてしまったことで派閥から外され責任を取らされ北の果ての警察署の署長として移動が決まった。これでもう二度と中央には戻れない、代わりの署長は関西系大学の派閥人事で決まりそうだ。
まったくもって上級国民は金を使ってうまく逃げやがる、しかし誰があの渋谷の大型ビジョンを乗っ取ってあの画像を流したんだ、そうとうシステムに詳しくないとハッキングもできないだろう。
あのメールもそうだ回収したノートPCから勝手に送られていたことがサイバーセキュリティ対策室の同期の長澤係長が確認してくれた。
”このノートPCはまるで、自分の意思をもっているかのように作動している、またお告げが送られてくるかも知れない”と言って長澤係長はあのノートPCのバッテリーが無くならないように注意していた。
確かに、犯罪者の資料が送られてくることはうれしいが、なんで俺の携帯だけにくるのかさっぱり心当たりがなかった。
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『アルフレート』が福島のいわき市にある里美牧場の広い放牧場をゆったりとして歩いてたまに止まりそこに生えている牧草を食べていた。
それを愛おしく見つめている里見健一と娘の彩夏‥‥
「お父さん、『アルフレート』はどのくらい、牧場にいられるの」
「春の開催ではずいぶん活躍したからな次は新潟の夏開催にむけての調整だから、3週間位だそうだ」
「この放牧で『アルフレート』をリラックスさせてレースや調教では脚や筋肉に負担がかかるからその疲労を取り除き、次走に向けてフレッシュな状態を作るのさ、」
競馬における「放牧」は、単に休ませるだけでなく、競走馬のパフォーマンスを高める重要な調整手段で調教師の真田凛子も次の夏開催にむけて『アルフレート』を仕上げていた。
7月と8月の新潟の夏競馬、二つの特別レースの参戦させてうまくいけば、次の秋競馬はいよいよGⅢクラスで東京で勝負するつもりだった。
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夏休みも近くなった7月の最初の土曜日、恒例の体育祭で王子南高祭が行われていた。
各学年八クラスが縦割りで、学年の壁を越えて協力し合い、笑いあり、感動ありの連合を組んで八色のチームカラーの鉢巻きをしながら、業者が鉄パイプを組んで立てた大きな桟敷席に各連合ごとでテーマ―を決めてそれを桟敷席の背後にデカいパネルにはアニメチックな主人公のイラストを描いて王子南高祭を盛り上げていた。
競技が次々と進行していくと、俺はハーフパンツと半袖の体操着を着て頭にはチームカラーの黄色い鉢巻きをしてスタートラインがひかれたグランドの脇で出番を待っていた。
体育祭での競技で三年生クラス対抗男女混合リレー、周りにはクラス代表としてアンカーを任された、足の早そうな連中が7人膝をまげてストレッチなどをしていた。
”なんで~、こんなことをしなければいけね~んだよ~”
”いい年して、かけっこなんかして何がおもしれんだ~”
”ご主人様、この世界ではみんなで一体感になってひとつの目的に向って団結することも大事な教育なんですよ。”
”見て下さいよ~、下級生の皆さんも含めてクラスメイトの方々がご主人様を応援しておりますよ~”
壮太が応援団長となって桟敷席前のグランドにお立ち台を置いてその上に立って、どこから借りてきたのか学ランを着て足元は下駄をはいて連合のカラーの黄色の長い鉢巻きをなびかせ、伝統の応援団の振り付けをしながら声を張り上げていた。
少し前のこと体育祭の競技の出場者をホームルームで決めていた時に、興味のなかった団長は他人事のように見ていたら、気がついたら、最後の男女混合リレーが残り他に手を上げなかった生徒と一緒に選ばれてしまった。
”クソ~出るからにはぜってぃ~1位を狙うぞ”と決意していたが、一周200mをクラス代表の女子2名男子2名が順番に全力で走りバトンを繋ぎ順位を決めるのだ。
どのクラスも最後のアンカーには足が速い奴らが選ばれていた。
最初の女子がスタートラインに立つとスタートのピストルがなると一斉に8人の女子が走り出した。
そこそこの順位をダンゴ状態で第二走者の男子につなぐと前の席に座っていた少し影が薄くおとなしい伊藤貴信君、意外と様になって駆け出していったが最初だけだった。
後半はバテバテとなって追い抜かれ6位でバトンを繋ぎ、次は隣に座るマシュマロ体形の山田芽依さん、デカい胸を揺らせてけんめいに走る姿に娼婦のマリリンを思い出して興奮する団長”そのまま~頑張れ~”と思っていたら、最後のコーナーで足がもつれてコケてしまった。
次々と足自慢の最終ランナーがバトンをもらい駆け出していくと、最後にやってきたコケて泣きそうな顔をした芽依さんからバトンを渡されて駆け出す団長、すでに先頭は20mほど先を走っていた。
”ちょっとまずいですよ、、ご主人様、普段鍛えていてだいぶ体も仕上がってきましたが、先頭の彼は陸上部のエースじゃないですか~”
”このままじゃ~負けますよ~”
”仕方がねな~自分でバフをかけるか~”
駆け出して繰り出す両手を強く握り締めて、小声で「女神の加福の力を!」と叫び、エナジーを自身の体に送り込みその能力を30%あげるバフ効果をかけた。
その瞬間パワ~がみなぎってきて、グランドを蹴りつける両足は力強くなりその走りだす歩幅もスピードも3割増しになった団長、どんどん追い上げていき一人二人と抜き去り応援する桟敷席では味方の連合が団長の走りに驚きながら応援団長の壮太が懸命に黄色の連合旗を振って声をからしていた。
最後のコーナーを曲がる頃には先頭を走る陸上部のエースに追いついていた。コーナーを曲がると足がバテてきたエース‥‥そこを追い抜き見ごと一位でフィニッシュした団長だった。
その走りをストップウォチを二度見しながら見ていた陸上部の顧問は口を開けてぶたまっげていたのである。
次の競技は天城玲亜が出場する”借り物競争”だった。
メモに書かれたお題のものを会場内で探し、それを借りてゴールする競技で足の早さを競う徒競争とは異なり、引いたお題が競技の勝敗に大きく関わるため
運動に自信がない人も楽しめるのが特徴だ。
一周200mの途中にテーブルが置かれて表にお題が書かれ折りたたまれた沢山のメモが入った箱、それを早いもの順でランダムに引いて行くのだ。
スタートのピストルがなると一斉に8人の男女が走り出しスタートした。
テーブルめがけて走り出し、箱からそのメモを取り出して広げて書かれた”お題”を見ると各自の連合桟敷席や来賓客に向かったりしていた。
そこのメモには”髪の長い人”、”イケメン”、”お腹の出たおじさん”など盛り上がりやすいお題となっていて、一緒にゴールして順位を決めるのだった。
桟敷席ではリレーに出てエナジーも使ってへばって見ていた団長、いきなりハーフパンツと半袖の体操着の玲亜がお題が書かれたメモを持って‥‥
「ハァ~ハァ~永瀬くん、すぐについてきてよ~また出番よ~」すぐに彼の腕を掴むと無理やり駆け出した。
”エ~、また走るのかよ~、かんべんしてくれよ~”
”ご主人様~急いでください~きっと借り物の紙には、"優秀なエーアイ"と書かれているんですよ~”
”そんなわけね~だろ~”と思いながら玲亜の右手を握りながら顔を赤くしてドキドキしながら一緒に走り出す団長‥‥‥
ゴールして係員にお題のメモを見せて了解をもらうとそのメモを自分のハーフパンツのポケットにしまい込んだ。
「おい、玲亜、お題にはいったいなんて書いてあるんだよ!」と団長が聞くと
「エッ!?‥‥フフフフ、それは秘密よ~」と少し顔を赤くして照れながら玲亜はなにもしゃべらなかった‥‥‥‥そのポケットの中のメモには
‥‥‥‥”クラスで一番好きな人”と書かれていた。‥‥‥‥
第一章‥‥‥終幕
夜の銀座の街で一人のホステスの行方が分からなくなった。
お店のママが出勤してこない彼女を心配して実家に連絡をとった。家族はすぐ本人の自宅を調べたが何もわからなかったのである。
都会での行方不明は何か事件と関わりがなければ家族以外、だれも興味はもたない新聞やニュースにでる事はなかった、最寄りの警察署に行方不明の届けをだす。それしか方法はなかった‥‥‥




