第30話 騎士団長…ひき逃げ事件‥その7
関東旭大学医学部附属病院の5階の脳外科病棟
久我鷹司検事と検察事務官、尻沢悦子が事故にあった山口紗香さんの様子を確認しにやってきた。
「確か、被害者の山口紗香さんは頭を強く打ってしまい、意識がないとかニュースで言っていませんでしたか~」といやいや、ついてきた尻沢悦子
「でもさ~、悦ちゃん、この事件を起訴するかどうかは大事な責任じゃん」
「被害者の事ももよく知らないでさ~判断できないし、両親からでもなんか聞けないかな~と思って来てみたのさ」
慌ただしくしている5階の脳外科病棟のナースルームで山口紗香さんとの面会の了解をしてもらおうと二人が近づくと
「大変~ 聞いてよみんな、奇跡よ~すご~い奇跡!!、502号室の山口紗香さんが目を覚ましたわ~すぐに先生を呼んでちょうだい‥‥」
「エ~~~ウソでしょ、だって先生がもう駄目だろうって言っていたじゃないの」驚く、その場にいた日勤の看護師たち
「それとおなかがすいているそうだから、昼食を急いで手配して~、あと”紗香さんが目を覚ましました!”と御両親の携帯にもすぐ連絡するのよ~」そんな声が響いていた。
「えっ!?‥‥‥」と顔を見合わせる二人‥‥
すかさず検察事務官、尻沢悦子が受付の看護師に「検察事務官証票」を見せて、隣で久我鷹司検事が‥‥‥
「検察のものですが、ひき逃げ事故の件で山口紗香さんが車を運転する犯人を目撃していないか話しをさせてもらえないでしょうか!」と期待を込めて聞いてみた。
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週刊スクープの記者、朝比奈緒美
”えっ!…なんで、誰がこんなことをしたの…”
朝比奈緒美は取材で渋谷にきていて夕方、会社に戻る途中、スクランブル交差点で各所の大型ビジョンに写し出される、あのひき逃げ事件の画像を見ていた。
”あ、あれは、情報提供してくれ刑事さんの画像じゃないの~”
”いやだ~”目黒の女子高生ひき逃げ事件の本当の犯人で~す”て、えっ~息子の名前もさらしているわ~”
”フフフフ~いい気味、ざま~見ろよ…いったい誰がこんな事をしたのかしら、これなら誰も奴に報復を受けることなく世論が動くかもしれない‥‥”
周りでは多くの若者達がスマホを向けて大型ビジョンに写る画像を録画していた。
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東京の街が渋谷の大型ビジョンのハイジャックで大騒ぎになっていた時‥‥
東京都千代田区の永田町にある自由民政党の本部ビル、その幹事長室のドアを叩いて第一秘書成瀬信介が慌てて入ってきた。
「先生、大変です。これを見て下さい!」
そう言って自分のスマホのネットニュースを見せるとそこには、”渋谷の大型ビジョンのシステムが乗っ取られ目黒のひき逃げ事件の真犯人が‥‥‥”
「何じゃ~これは‥‥」
「いったい誰が、こんな事をしたんだ!~」
「ウウウ~、クソ~この日本で、まだ儂にケンカを売る奴がまだいたのか~」
「すぐに~、この大型ビジョンを止めるんだ~そして、すぐにこの映像の訂正とお詫びの文言でも入れて流すように圧力をかけろ~」
「ですが、先生、もう手遅れかも知れません。」
「すでにネットで拡散されてしまい、この事故には先生の関与と疑惑それに目黒東署の貝沼署長の関与を疑う内容で溢れております。」
「へたに動くと、このままでは、先生のところまで火の粉が飛んでくるかもしれません」
「くそ~、それでは打つ手がないのか」
「ここは、一刻でも早くあの運転手の佐山さんを裁判所に起訴してしまえば、本人は”自分がやった”と言っているわけですから、あの映像は何とでも言い訳ができます。」
それを聞いた八神辰巳は少し落ち着きを取り戻し‥‥
「そうだ、我が家に長年尽くしてくれた佐山がいたんだった、アイツが供述をかえる事はない、フフフ、なんせ孫の命がかかっているからの~」
「だが、この私にケンカを売ってきた奴は許さない、いったい誰があの映像を流したのか、警察にはよく調べるように言ってくれ、絶対思い知らせてやる。」
「わかりました。それと先生、もう一つ気がかりな事があります。」
「何だ!……」
「博隆さんの助手席に座っていて事故の事を目撃していた、あの銀座のクラブのホステスですよ。」
「この画像にも顔は隠して身元もわからないようですが‥‥万が一にでも彼女が警察に行って‥‥」
「唯一の目撃者ですので‥‥‥」
第一秘書の成瀬が何を言いたいのかすぐに理解した八神辰巳は‥‥
「わかった、すぐにあの会長と連絡を取ってくれ、また、いつものように始末を頼むか‥‥‥」
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その頃、銀座のクラブ「月の光」のホステス中江友里恵は目黒西警察署にタクシー横付けすると慌てて飛び込んでいった
受付の婦人警察官に向って「私は、あの女子高生ひき逃げ事件の車の助手席に座っていて全てを見ていました!」
「全て、証言しますので、身の安全を‥命を狙われています。助けてくださ~い」と叫んでいたのである。
ホステス中江友里恵からの証言でひき逃げ事件の明細が目黒西警察署の丹下修署長に報告があがると彼は狂喜して喜んだ‥‥
すぐに派閥のトップに立つ警視庁のお偉い人物に伺いを立てた。
「東の桜花会、目黒東署の貝沼警視正がやってくれましたよ、あの会の後ろ盾になっている八神からきっと頼まれて息子の起こした事故の後始末で自首してきた運転手を犯人に仕立ててもみ消そうとしておりましたが助手席に乗っていた息子の愛人が自首してきて全て話してくれました。」
「上手く、すればあの目黒東署の署長の座もこちらの陣営で埋めることができます。フフフフ‥‥」
「それで、どのように処理を進めればよろしいでしょうか?」
「はい、わかりました。すぐに事件を扱っている東京地検、品川分室に再捜査を依頼して連中が犯人に仕立てた男の起訴を取り下げるようにいたします。」
こうして事件の真相を知った目黒西警察署は派閥の利害ですぐに動き出した。
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翌日、東京地検品川分室の久我鷹司検事官の部屋
久我鷹司検事のデスクの前には、再び身柄が「送致」された佐山信二が大人しく座っていた。
脇のデスクにはいつものように検察事務官、尻沢悦子がノートPCを前に会話記録を残す為に座って様子をみていた。
「それでは、佐山信二さんもう一度聞きますが‥‥」
「あなたは、ほんとうにひき逃げ事件を起こしたのですか‥‥」
「はい、私がひき逃げしました。」と答える佐山信二
「う~ん、それはウソですね~実はあの被害にあわれた女子高生の山口紗香さんに昨日、面会してきました。」
「えっ!……」と驚く佐山氏、、
「なんか~とっても元気で、本当にあれで事故で頭を打って意識不明の重傷とは思えないほど元気で、お昼のごはんをもりもり食べていましたよ~」
「それで事故の時の話しを聞いたらしっかりと運転していた人物の顔を覚えていて、なんと助手席には若い女性も座っていたと言ってましたよ~」
「佐山さんの写真を見せても”こんなおじいちゃんが運転をしてはいなかった”と言っていたんですよね~」
「佐山さんがもし運転していたなら、隣に座っていた女性は誰ですか~」
しばらく黙り込む佐山氏‥‥
「そ、それでも私がやりました。わたしがひいて逃げたんです。私を裁判所に起訴して下さい‥‥‥」
「ごめんなさい、佐山さんあなたは無実です。何で犯人をかばっているのかわかりませんが、そんな人を起訴することができません。」
「すでに目黒西警察署にその助手席に乗っていたその女性が自首してきまして犯人もわかり再捜査が始まりました。」
「あなたの控訴は取り下げ、不起訴といたします。」
「目黒東警察署に戻りしだいすぐに釈放となります。」
「えっ!………それでは困ります。私が犯人なんです!本当に私がやったんです!。」と食い下がる佐山氏
「あっ、それから目黒東警察署の交通課の心優しい婦人警官さんから、あなた宛てのお手紙を預かりました。」
「なんでも奥さんからの手紙で、目黒東警察署の上司に渡すとこの手紙がどうなるかわからないので、こちらに朝一番に持ってこられましたよ。」
「すみませんね~決まり事で内容の方は読ませてもらいました。」
そう言ってその手紙を佐山氏に渡すと、彼はそれを急いで開き読み始めた。
彼の手は震えて、その目からは涙が溢れて止まらなかった。
そ~とハンカチを渡す事務官の尻沢悦子
「奇跡ってほんとうにあるんですね。お孫さんの病気が治って本当によかったですよ…」
そう言うとニコ~と魅力的な八重歯をだして笑みを浮かべる久我鷹司検事だった。
つづく、、、




