第24話 騎士団長…ひき逃げ事件
「キャ~すごいじゃないの、、全国高等将棋選手大会の団体、東京都代表になったのよ~」
「早く‥‥校長先生に連絡しないと」そう言って顧問の黒木綾乃先生は携帯を取り出して連絡をはじめた。
二組の代表になるための戦いは壮太の「振り飛車」と「鬼殺し」はツボにはまり桐山俊介君と壮太に俺は瞬殺で勝ち上がった。
準決勝以降ではさすがに壮太の策は見破られて勝てなかったが俺と桐山君とで二勝をとり、順当に東京都の代表になることができた。
8月の本戦、将棋の聖地、山形の天童市で開催される全国高等将棋選手大会(夏の将棋甲子園)に出場を決めた。
先生は小さな東京予選の優勝トロフィーを俺に持たせて右隣では壮太が表彰状を広げ左となりには照れくさそうにしている桐山君を立たせて、大仙高校の体育館の前に立っている東京予選大会の看板の前ですごい笑顔で盛んにスマホで写真を撮ってくれた。
家に帰るとすでに二日前に元気に回復して退院している、ばあさんが二番目に好きな物に下がってしまった得意のカレーライスをつくって待っていてくれた。
「凄いじゃないの、東京代表になったのかい、将棋好きのお爺ちゃんがいたらどんなに喜んでくれた事かしら」
「お爺ちゃんも元気にしていたら、山形の天童市にユーちゃんの応援でぜったいに行っていたわよ~」
「えっ~、そんなたいしたことじゃないよ~、ものすごく強い後輩が活躍してくれたのさ」団長は褒められてちょっと照れくさそうにして山盛りカレーライスを平らげていた。
そして何気なくTVを見ていたら昨日起きた自転車に乗った女子高校生のひき逃げ事件、この世界の大物政治家の専任運転手が弁護士と共に出頭して「自分がひき逃げをしました。」と自白しているというニュースだった。そのTVに映し出された犯人の運転手の目を見て何かを感じた団長
”どこの、世界でも悪い奴らはいるもんなだな~”
“向こうの世界でもいやがった、貴族の身内や貴族自身がやらかした王国での犯罪、その罪を税が払えない領民を身代わりにして我々、騎士団の警護所に出頭させて罪から逃げようする輩が‥‥”
”ご主人様、そうだとしたら、この運転手は誰かの身代わりですかね~”
”ああ~、間違いね~いつも弱い奴らがトバッチリをくらうのさ”
画面に映った年老いた運転手のその怯えた目を見て、今まで何度もみてきた貴族のやらかした事件の身代わりになった領民と同じ目だと団長はすぐに気がついた。
”それでは、お仕置きをしなければいけませんね~フフフフ、”とまた変なスイッチが入ったエーアイ
”悪いが、エーアイこのひき逃げの本当の犯人を見つけてまた玲亜のオヤジさんに映像を送ってくれないか‥‥”
”ラジャー!”そう言って張り切るエーアイだった。
~~~~~
ひき逃げ事故の当日、息子から連絡を受けた自由民政党の幹事長の八神辰巳(59歳)の邸宅
鷹のような鋭い眼光、すこし白髪が混じった髪をオールバックにして固め肌はゴルフで日焼けしてハリがあった。
その鋭い眼光を光らせ”あのバカ息子が‥‥またやらかしたか~、最近はあの夜の女とつきあってからは大人しくしていたのに、中学では辛辣なイジメで同級生を自殺未遂に追い込むは、高校や大学時代は女性を無理やり犯しては強姦罪で大騒ぎ寸前までいって後始末と謝罪金でどれだけ金がかかっていると思っているんだ。頭は悪いくせに下半身だけは立派に活躍しやがって‥‥‥”
私はすぐに息子の後始末でいつも頼んでいる優秀な影山弁護士に連絡をとった彼はどんな真っ黒な事件でも薄いグレーや白までもっていける、口が達者な弁護士だ。
”今までも息子がどれだけ悪事をしてもすべて表に出ないで被害者とは示談にしている。金はかかるがこんな時にこそまた彼に頼めば何とかしてくれるか”
”だが、さすがにひき逃げはまずいか、身代わりには父の時代から我が家に尽くしてくれた口が堅くて律儀な運転手の佐山に頼むか、孫の心臓病で金がかかると言っていたからな~その孫の面倒を見てやることで罪をかぶってもらうか、悪いが彼はもう67歳だし私の車の運転はもう卒業してもらおう、”
~~~~~
週刊スクープの記者、朝比奈緒美
また、あの刑事からとんでもない真実のネタが舞い込んだ、あの女子高校生のひき逃げ事件の犯人は現政権の自由民政党の幹事長の八神辰巳の長男、八神博隆でありその隠ぺいの為に八神家の先代から長年つくしてきた運転手の佐山氏がその罪を被ったと言うのである。
きっとあの幹事長の八神辰巳の悪魔のような取り引きにのらざるをえなかったのだろう。
彼ら八神一族は昔から黒い噂が絶えなかった。
それを明らかにしようとした正義感のある記者は何人もいたが、彼らはいつのまにか行方不明になったり不審死をした。警察も本気で捜査なんかはしない。
昨年まで、防衛大臣だった八神辰巳、自衛隊の防衛装備品を巡る大手企業との癒着や裏金を調べていた私の先輩の高山記者‥‥‥
「奈緒美ついに、八神の不正をあばく決定的な証拠をつかんだぞ、楽しみしていろ。」そう、私にラインしてきた翌日の朝、自宅の高層マンションの駐車場で落下遺体で発見された。
屋上にはわざとらしくキチンと履いていた靴が揃えてあり、印刷された遺書までご丁寧に置いてあった。私はこのラインを見せてなんども八神に殺害されたと警察に言っても「殺害された痕跡はない」と満足な捜査もしないですぐに自殺として処理してしまった。
きっと八神が権力を使って警察の上層部を動かし速やかに処理したのだろう。
幹事長の八神辰巳には関東最大の暴力団組織仁龍会がついているというウワサだ。彼らがかかわっているのだろう。
八神家と暴力団組織仁龍会は先代の時からの古いつながりで、都市開発の利権や公共事業などに関わり甘い汁を吸っている、そして八神家の闇の部分の仕事を請け負っているというウワサだ。
この黒いウワサを調べていた他社の知り合いの記者も行方不明になっているきっとどこかの山に埋められているか、魚のエサにでもなっているだろう‥‥
そんなグレーなうわさに尾ひれもついて我々、TV局や新聞、雑誌などのマスコミ関係者は八神の裏の顔のウワサをみんな知っているが誰もが警察権力も味方にした巨悪人、八神辰巳に関わることを避けた命がいくつあってもたりないのだ。
そこへあのひき逃げ事件の決定的な監視カメラ画像が送られてきた、それだけでなく政策秘書で長男の八神博隆と銀座のクラブ「月の光」のホステス中江友里恵とのなまなましい不倫画像これはとんでもないスクープだ。
私は喜々としてすぐに経験が豊富な上司の山本デスクにこれを見せた‥‥‥
「デスク、こ、これは凄いスクープですよ!あの目黒の高校生ひき逃げ事故の真犯人が政権幹事長の長男の八神博隆‥‥それを親の八神辰巳が事件をもみ消そうと、自分の運転手に罪を被らせたんですよ~」
「どうでしょうか、これ、トップ記事でいけないでしょうか‥‥」
しばらくその動画や画像を見ている山本デスク‥‥そしてむずかしそうな顔を上げて
「奈緒美、お前は馬鹿か~、この内容が正しくても記事になったとたんお前はきっと次の日にはいなくなるか、どこかのビルの屋上から突き落とされてつぶれた死体になっているぞ!」
「今さら、『真犯人は八神の長男です!』といっても、その映像の出どころを話せるのかどうせ正義感の強い警察関係者だろう、それが本当に事故後の映像だと誰が証明ができるのだ‥」
「警察が事件として調べて出て来た映像じゃないんだから、あの八神についている口の達者な影山弁護士だったら、いくらでもこれが証拠にはならないと言ってくる。」
「俺が影山弁護士だったら『これはただの交差点に止まっている車の画像で、ひき逃げ犯になるのか!~』とか言って名誉棄損でお前が訴えられるののが目に浮かぶよ‥‥」
「あとは、不倫証拠の写真なんか、あの下半身の勢いだけで行動する息子の後をつけてればいくらでもでてくる、今さらそんな写真でなんになるんだ、奴にとってはただの女遍歴の勲章だよ!」
「悪い事は言わん、もうこの罪を被った運転手はきっととんでもない弱みでもつけこまれて腹を決めたんだ。今更、息子が真犯人だ~と記事に書いても警察も動かないしこの運転手も証言を変えないよ…」
「つまり、記事を出しても誰のとくにはならないのさ‥‥」
「まあ~神様でもいてくれないと、こいつらにとんでもない天罰でも下してほしいよ‥‥」
山本デスクは静かに正論をいってくれた。
力のある政治家で、警察権力それに裏社会の関東最大の暴力団組織もついて、表の世界と裏の世界を自由に動かせる力がある、それが八神辰巳だった。
私は情報をくれた刑事さんにメールを送った。
”すみません、アイツは怪物、だれも手がだせません‥‥神様からの天罰を待つしかありません‥”
つづく、、、




