第22話 騎士団長…玲亜を喜ばせる。
道場での練習も終えて夜も遅くなったため、天城玲亜を近くの自宅のマンションに送るため二人は商店街を歩いていた。
薄化粧して可愛い半袖のワンピースを着た玲亜の横顔を見て、若い頃の妻の面影を見た団長はドキドキしながらとなりを歩いていた。
「きっと、お爺ちゃんなんか気がついたわよ、笑ってごまかしていたけど、永瀬君からもれでる気配は私にもわかったわ」
「向こうの世界での騎士団でいったい何をしてきたの?」
「えっ~、そ、それは、こっちの世界と違って、人権や命なんてものはとんでもなくないのさ、魔物や盗賊が村や旅人を襲い殺されたりして、連中を捕まえたり退治しなければ奴らは何をしたっていいのさ、」
「俺がいたアルンヘルム王国の騎士団はそういう悪い連中や、強い魔物と戦うんだ、どれだけ命がけの実戦をしてきた事か、魔物は数えていないが、剣や素手で殺した悪人どもは7~80人はいるかな」
「腕や足を切り落としたりしてキズ者にした悪い連中なんかもっといる。」
「それにくらべたら、TVでよく見るこの世界の裏社会の暴力や彼らのいう脅し文句なんて、まるで向こうの世界の孤児達の不良グループが騒いでいるような感じにしか見えないよ。」
「本当に、向こうには非道な極悪人ばかりしかいなかったからな~」
「だから、つい格闘術では本気の気配が本能的にでてしまったかも~」
「そうなの、そんな世界であなたは正義を守っていたのね、」
「ところでさ~、魔法使いは長いローブコートやガウンとか着て杖をついて魔法の詠唱とか言ってファイアーボールとかウインドカッターで魔物を倒したりするのかしら、フフフフ、、」
すっかり、異世界小説の魔法使いにハマってる玲亜はいきなりオチャメな話しをふってきた。
”ふぁいや~ぼ~るにう、ういんどかった~なんだそれは?~”
団長のいた異世界では魔道具を使って何もないところで、ちょこっとした飲み水や焚火の種火くらいしか使えない魔法とも言えない術しかなかった。
”ご主人様、ここは玲亜様を喜ばす為には盛りに盛った話しをでっちあげて喜ばせてやってください”優秀なエーアイは目をキラキラさせて聞いてきた玲亜の期待通りの話しをするようにアドバイスしてきた。
玲亜の自宅のマンションに着くまで団長はとんでもなく山盛りの大嘘の魔法使いの話しをしてあげて玲亜を喜ばせるのだった。
その頃、師匠の天城信義は納戸の奥にしまっていた古文書が入った大事な漆塗りの箱を書斎にもってきて、その中の戦国時代に書かれた天城神道流の御先祖が書き残した300年程前の古い伝承記をあれこれと引っ張り出して読みふけっていた。
そこには、二代目の御先祖が異国の世界のおなごの神様の依頼でその世界に飛ばされて、そこで暴れまわる鬼人を退治し、その国の武芸者に天城神道流を伝授して御先祖が大事にしていた初代‥天城鬼切丸を異国の武芸者に渡してこの世に戻ってきた不思議な伝承記‥‥
書斎には、その御先祖が同じ刀職人に頼んで作った二代目の天城鬼切丸が床の間に鎮座していた。
若い頃に読んだときはおとぎ話しと信義は思っていたが、その異国の名は『あるんへるむ』と書かれていた。団長はまた無意識の内に天城神道流の今では教えていない古い技をいくつも師匠にかけていたのだった。
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天城達也(玲亜の父親)
街の正義を守るために警察官になった、TVドラマなどを見て若い頃から憧れていた殺人、強盗、傷害、いわゆる「強行犯」事件を扱う捜査一課、刑事部の中では「花形」と言われ胸につける赤いバッジに憧れていた。
刑事ドラマで、警視庁捜査一課の刑事役が、背広の胸元に朱色のバッジを着けているのを見たことはないだろうか。
丸形で直径15ミリ。金色の文字で『S1S』と刻印され、「捜1バッジ」「赤バッジ」と呼ばれる。
『S1S』は「Search 1 Select」の略で「選ばれし捜査一課員」という意味だ
私が捜査一課に着任すると、赤バッジを課長から直接手渡され、その場ですぐに着けるよう指示される。これは決まり事で、その時に初めて自分が捜査一課の一員になったと実感する。
赤バッジの裏には通し番号が刻まれている。現在は4桁だ、それだけの先輩捜査員がいたということだ。
所轄の警察内部ではこの警視庁捜査一課について「捜査一課様、機捜(機動捜査隊)のやつら、所轄(警察署)の野郎ども」という「格言」があった。
殺人や強盗などの事件で捜査一課員が臨場すれば、機捜や所轄の刑事を部下のように使い、無理難題も平気で言う。だから、『捜査一課様』がなにか言っていると陰口を言われていた。「選ばれし者」という自負が、おごりを生んでいるのだろう。
そんな花形の捜査一課から少し前に移動となり、私は暴力団犯罪を専門に扱う刑事部の部署でかつては捜査四課と呼ばれ、現在は「組織犯罪対策課」の第二係長になっていた。
都内で続いた連続強盗事件、当初は同一犯の反グレ集団や暴力団の犯罪ではないかと思われていた。
警察になり済ました不審電話で、高齢者の自宅に現金がある事を調べてそこをちゅうちょなく残忍な手口で犯行を行っていることから、我々も捜査一課の応援で対策本部に駆り出された。
王子の事件が起きたその日の午前中に、事件を起こした犯人達の情報が監視カメラ映像や上空から撮ったような赤外線情報などの画像と犯人の住所、氏名が顔写真とともに私の携帯電話に送られてきてその結果、思いかけず早期に犯人にたどりつき「組織犯罪対策課」が事件解決をしたと大きな手柄として評価されてしまった。
古巣の捜査一課の連中は手柄を横取りされて面白くなそうな顔をしてこちらを睨んでいたが、父から教わった警視庁随一の格闘術の腕前をもっている私に彼らは一目おいていたので文句を言うやつは誰もいなかった。
あれから、サイバーセキュリティ対策室の同期の長澤係長が上司にうまく話しをして、警視総監のノートPCに不具合があるという事で気づかれないようにあたらしいPCにかえて、回収をして解析をはじめた。
確かに警視総監のメールの発信履歴には送られてきたデーター残っていた。
だがいったい誰がどうやってこのPCをのっとりそれを発信したのか、いまだにその理由はわからなかった。
「このPCにデータを送り込んだ相手先がわからないんだ、まるでこのPCが自分でデーターを取り込んで意図をもってお前の携帯にその情報を送ったとしか思えない。」
「なんだって、まるでこのノートPCがエーアイのように自分で目的をもって動いたという事か!」
「警視庁内のWi-Fiなどを通じてデジタル信号などで警視庁の厳重なPCセキュリティーソフトをかいくぐり、こんな事ができる人間がいるのか」
同期の長澤係長はどうやったのかさっぱりわからないと私に言ってきた。
実行犯は今まで犯罪に関わったことがない素人の連中で、ギャンブルなどの借金で金に困っている一般人をスマホやSNSを使って『高額バイト』の募集をよそおい自分の正体を隠して、そこで得た個人情報で相手が断ると、脅し文句によって犯罪を強制されたことがわかった。
だが、彼らの犯した強盗殺人に強盗傷害は重大な犯罪だ、ほぼ人生の一番大切な時を刑務所で暮らす事になる、そんなことになるとはわからずに手を染めた若者達は一生後悔することになるのだ。
伊達直樹警視
三件の高齢者の自宅を狙った強盗殺人事件と強盗傷害事件は実行犯はつかまり自供をはじめると彼らの背後には犯罪組織が存在していることがわかった。
それが、いったい誰でどこから指示しているのか、彼らの携帯の解析を始めているが一定時間後に自動削除されるようなテレグラムというメッセージが暗号化されるだけでなく、隠匿性の高い連絡方法で指示しているため犯罪集団の実態はつかめていなかった。
私はその事実を報告して、この背後の連中を潰さなければまだまだ類似した犯罪が国内中に起きるのではないか、と進言したが、上層部は一週間で世間を騒がす凶悪事件の犯人を捕まえたことで、警察のメンツが立つと判断した。
どちらの派閥にも属せない外様の私については、犯人の早期逮捕では評価をしてくれたが意見具申については全く興味をしめさず、実行犯から自白がとれるとスマホやSNSなどを使う、この新しい犯罪の恐ろしさにはまだ各部署の高級官僚達は気がつかないで、翌日には事件解決の記者会見を開き、素人の人間に犯罪を指示したり、警察に成りすましての資産の確認電話や盗んだ金の回収などの背後の組織的な連中には口を閉ざしてその成果を発表したのであった。
事件解決で合同捜査本部は解散した。
だが伊達直樹警視は天城達也係長の「組織犯罪対策課」第二係に、この背後にいる連中についての調査を極秘に依頼をしていたのである。
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週刊スクープの記者、朝比奈緒美(32歳)
私は、マスコミとも親しくしている「組織犯罪対策課」の刑事さんから情報源を明かさないと言う約束で、今回の高齢者の資産家を狙った暴力強盗犯罪について大事なネタをもらった。
きっと昨日の警視庁の高級官僚達の事件解決の記者会見になにか思う事があったのだろう。
私はその内容に驚いた、今まで犯罪に関わったことがない一般人をスマホやSNSを使って『高額バイト』をエサに強盗犯罪を実行させる悪い奴らがいるという事だ。
「それを何とか記事にして、そんな罠に一般人が関わらないように記事を書いてほしい」と頼まれた。
私は一般人を容易に高額報酬をうたって特殊詐欺でよくある「受け子」「出し子」の犯罪行為に加担させるアルバイト、裏社会やネットで最近使われはじめた「闇バイト」という名称をキーワードにして注意をうながす記事を書くことにした。
「若者が安易に加担して犯罪を犯せば一生後悔する!」とその刑事は話していた。
つづく、、、




